ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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3話 クソみたいな世界

 

 

何日か経った日、母が弟だけを連れて一緒に町へと出掛けていった。

 

夕方、帰ってきたのは母だけだった。

他の兄弟たちが、あれ、母さんだけ?と聞く。

 

母は、弟は町で屋敷勤めをすることになったのだと、少し苦しげに笑って話した。

 

 

 

その日の夕食は、いつもよりも少しだけ豪華だった。

 

 

 

最低な家族だと思っていたが、ここまでクズだったとは。

 

 

 

 

喋ることが出来ない弟は、屋敷勤めなんて出来るはずがない。

町で奴隷商に売られたのは誰が見ても明らかだった。

 

村人たちは、家族さえも、みんな揃いも揃って安心した表情を浮かべていた。

バケモノが居なくなってせいせいした、などと言う者も居た。

 

僕と幼馴染だけは、なんとかして弟を見つけ出そうと思った。

でも、弟を見つけ出して、助ける為には僕には力が足りない。

 

そう歯噛みして何日かした後のことだった。

 

僕は"強欲"の権能を手にしたのだ。

 

完全に完成された、完璧な存在になれた。

そう、満たされた僕になったのだ。

 

逃げ惑う村人も、家族も、みんなクソだ。

だからこれは僕に与えられた当たり前の権利の行使だ。

ちっぽけで、清貧な僕に与えられた機会だ。

 

殺した。殺して、殺して、いくら殺しても蛆虫の様に湧いてくる馬鹿な村人も、くだらない命乞いをしてきた低俗な家族も、幼馴染に、陰で忌み子とはもう関わるな、力だけあって言葉も喋れないアレは魔獣と一緒だとか、そんな奴の家族との結婚なんて許さないとか何とか言っていた幼馴染の家族も、彼女を除いて全員殺した。

 

自分たちがやってきたこと、言ってきたことの報いを、完璧に満たされた完全な僕が直接受けさせてやったのだから、ありがたく思って死んで欲しい。

 

妻となった彼女を連れて、村を壊滅させた後、この貧相な村を管轄する領地を、僕たちから搾取してきた町を、見て見ぬふりをしてきた国を壊滅させようと思った。

 

そして、その際に弟を探し出そう、どうにかして見つけよう、と彼女と一緒に考えた。 

 

 

 

 

 

母はそんなに離れた場所で奴隷商と取引したわけではないだろう。

 

 

 

町へ行くと言って昼頃に出ていって、帰ってくるのが夕方過ぎからだったから、一番近くの町で弟を売り払ったと考えるのが妥当だ。

 

 

 

奴隷商は、効率よく儲ける為に"商品"を買い取った後、何人か揃うまで待って、暫くしてから商品を競売にかける。

 

まだ期限はあるはずだ。

 

 

 

村は終わった。

 

次はその町から攻め落とそう。

 

 

僕は平和主義者だが、許されないこともある。

今回のことは僕と妻の逆鱗にふれる、最低な行為だ。

いくら無欲な僕でも、赦される行いではない。

 

弟は喋られないから、きっと酷い目に遭わされているに違いない。

 

早くしなければ、と彼女を抱えて空中を蹴り進んだ。

 

 




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