ここだけレグルスに弟がいて、幼馴染ちゃんも幸せな結末を迎える世界線   作:ねえ、おなまえは?

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8話 大喝采!!!

 

どっかーん、ばっこーん、ちゅっどーん!

 

地響きと共にブワリと押し寄せる衝撃波に目を細める。

 

ようやく国に着いて、誰も居なくなってもはや意味をなさなくなった関所を通ったと思ったらこれだよ。

 

なんだってここでも争いが起きているの?

 

戦争でも始まったのかなぁ、うーん、いや、そんなこと急に始まるかなぁ。

争い事があるなら、もっと予兆があるはずだし、この世界は一応統制がとられている。

 

 

とにかく、この絶え間なく響き渡っている轟音から今まさに何者かがここを攻めていることは明白だ。

 

 

 

何とかなるでしょ。とりあえず、様子を見に行ってみようっと。

 

 

 

音の発生源の方へと歩みを進める。

 

段々音が大きくなってきて、建物が崩れて砂煙が立ち込めている。

視界が悪くて、誰かさんのちぎれた腕につまずいて、べしゃりと転んだ。イテ。

 

 

 

ぱた、ぱた、と服の汚れを払う。

 

 

砂煙を少し吸い込んでしまい、けほ、けほり、と小さな咳が出る。

 

 

目を細め、手で煙を払い避けながら歩みを進めていると、人影が見えてきた。

 

 

 

あ、生きている人だ。

 

 

 

話が通じるといいな、ボクは無駄な争いは嫌いな平和主義者なんだもの。

 

 

風が強く吹きつける。

グッと目を閉じて砂が目に入らない様にする。

 

 

 

 

 

 

砂煙が晴れてきて、人影がはっきりと見える様になった。

 

 

 

 

 

―――そこに居たのは、兄さんとお姉さまだった。

 

 

兄さんとお姉さまはボクを見て驚いた表情をして固まっていた。

それはそうだ、ボクだって驚いたのだから。

 

兄さんとお姉さま、何でこんなにドンパチやっている危ないところのど真ん中に居るの?

 

色々考えて固まっていたら、先に混乱から回復したらしい、兄さんが口を開いた。

 

 

「驚いた。お前、何でこんな所でふらふらしているのかなぁ?いや、探す手間が省けたのはいいけどさぁ。あの日から急に居なくなるから僕も彼女も心配したんだよ?あのクソみたいな母親は、アレは屋敷勤めになった、なんて言っていたけれど、そんな子供でも分かる馬鹿みたいな嘘をつかれて、クソみたいな生活を、さらに最悪な気分にされていたんだ。それってさぁ、お前のせいで、僕たちは心を砕いて、何かやらなければいけないことの最中でもお前のことを思い出してしまうなんていうことが起きて生活に支障をきたす、心が重くなるなんて本来なら不必要な感情を抱かせる、つまり、言うなれば僕たちの自由な思考と生活を阻害する、権利の侵害だったんじゃないかなぁ?まぁ?お前が見つかったから、寛容な僕と、彼女は赦すよ。お前だって売られたくて売られた訳じゃないからね。僕たちは、村の馬鹿どもを殺して、僕たちの住む貧相な村に目もくれず私腹を肥やし続ける馬鹿どもに、今までお前らがしてきたことを理解させるために国を落とそうと思って、というか今、まさに落としてやっていた途中なんだけれど、その"ついで"にお前を探してやっていた僕と彼女の懐の深さに感謝するといい」

 

 

兄さんの声を聴くだけで安心した。

 

 

「弟くん、見つかってよかったぁ。あのね、レグルスはあんなふうに言っているけれど、レグルスも私も、とっても心配していたのよ」

 

 

お姉さまも無事そうでよかった、安心した。

 

 

 

2人がこちらへ歩み寄って来る中、ボクは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「――あの、兄さん、お姉さま、心配をかけてごめんなさい」

 

 

女とも、男ともとれる、中性的な、子供みたいな、甘く、優しい透き通った美しい声が響く。

 

 

 

レグルスは思い出した。

 

 

あの時――気を失う直前に森で聞いた声とまったく同じ声だった。

 

アレは、弟だったのか!

 

 

 

2人が再び驚きの表情で固まる。あれ?

 

あ、そうか。2人の前で喋るのは、初めてか。

 

兄さんがボコボコにされていた時には意識を失いかけていたから、誰がきて何を喋っていたかなんて記憶も曖昧で分からなかっただろう。

それを除けば初めてだから、びっくりするよね。

 

 

 

 

ん、んっ、と、咳払いをして、ゆっくりと話し始める。

 

「えっと、驚いたでしょう。今まで、ずっと喋らなかったから。ボクには、喋るということが、どうにもめんどうくさくて。そんなことに気を割くなら、本や魔導書を読み漁るか、兄さんとお姉さまと一緒に、のんびり、過ごしていたかったんだ」

 

話すと言うことはやっぱり慣れていないからか、なんだか落ち着かなくて、体の前で組んだ手をにぎにぎと握りながら話す。

 

 

一呼吸おいて、そのまま続ける。

 

 

「村の人たちの言うとおり、確かに"忌み子"なんて、ぴったりな呼び方だと思うよ。現に、ボクは、いくつかの感情が、欠落している。だけど、2人にまた会えてよかったと思う、この気持ちは本物なんだ」

 

ふにゃり、と笑う。

 

 

 

 

2人は静かに聴いていた。

 

喋らなかったこととか、諸々、怒られるかな、と思っていると、気がつかないうちにボクのすぐ目の前まで来ていたお姉さまに、ふいにぎゅっと抱きしめられた。

 

わしゃわしゃと、不器用な手つきで兄さんに頭まで撫でられている。

 

 

 

今度はボクがびっくりする番だった。

 

誰かに抱きしめられる経験や、頭を撫でてもらえる機会なんてなかったから、これは大切に大切に記憶を保管しておこうと思った。

 

 

 

 

心がぽかぽかした。

 

とても安心した。

 

 

 

兄さんとお姉さまと会えて、よかったぁ、よかったぁと繰り返す。

 

兄さんたちはそんなボクを見て一層抱きしめたり、撫でる力を強めた。

 

 

 

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