ドラゴン娘とハリー・ポッター   作:ゴールドルナ

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ドラゴン娘と賢者の石
第1話 ドラゴン娘とクソデカイ杖


大ブリテン島の片隅、とある地方にひっそりと残された一つの廃城がある。

かつては繁栄の中心であったその城は、いまや人々に忘れられ、龍の伝承だけを残したまま数世紀ものあいだ訪れる者を失っていた。

 

この城に暮らしていたのは、代々魔力を受け継ぐ魔法族の一族だった。

彼らは非魔法族――マグルを寄せつけぬよう結界を張り、外界から隠れるようにして生活していたのである。

やがて、その一族のもとに一人の少女が生まれた。

 

少女にとって世界は、城と両親、たまに訪れる少数の親戚、そして城で働くしもべ妖精たちだけだった。

欧州を揺るがした巨悪の嵐も、イギリスを恐怖に陥れた災厄も、この城には近づこうとしなかった。

少女が生まれる頃にはそれらの騒乱はすでに収まっていたが、人が訪れることは依然としてほとんどなかった。

 

――そうしてその少女、ラシアンナは、同世代の子どもと触れ合うことのないまま、今日まで育ってきたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、みなさんこんにちは。

魔法族のはみ出しっ子、ファタルストーン家の一人娘――ラシアンナです。

 

どうやら今日、人生初の「外出」というものをするらしいんです。……はい、怖いです。胸がドキドキして、手のひらが少し汗ばんでます。

 

誰に話しかけてるのかって? それは、私の頭の中にいらっしゃる皆さんですよ。

 

そう、自覚がないかもしれませんけど、皆さんって私が魔法で生み出した仮想友達なんです。ええ、そうですとも。だってそうじゃなきゃ、私がこんなふうにおしゃべりできる相手なんていませんからね。

 

えっ、「そんな魔法は存在しない」って? ……それは皆さんが本をちゃんと読んでいないだけじゃないですか? きっと失われた古代魔法のひとつに違いありません。いやぁ、私ってやっぱり天才なんですね。古代魔法を杖なしで使えるなんて。これで杖を手に入れちゃったら、どうなっちゃうんでしょう? 世界征服とかできちゃったりして。その前に現実の友達の10人くらい出来てほしいものですけど。

 

でも本当のところ、杖の件がなければ絶対にロンドンなんか行きたくありません。

人が多い気がしますし、きっとマグルだらけで、うるさくて、混沌としていて、なんだか爆発でも起きそうな場所でしょう? ……皆さんはどう思いますか?

 

まあでも、ホグワーツに入ったら、嫌でも同年代の子どもたちと話さなきゃいけないんでしょうね。

おしゃべりがうまくなる魔法とか、杖さえあれば使えるんですかね? あれば便利なのになぁ。

 

昔、すごく遠い親戚だっていう男の子が遊びに来たんですけど、緊張と恥ずかしさのあまり、うっかりドラゴンに変身しちゃって……。お母さんにしこたま怒られてしまいました。

 

うちの一族以外って、ドラゴンに変身できる人はほとんどいないって知ってはいたけれど、あそこまで怖がられると、さすがにちょっと悲しいです。

 

まあ、うちの中でも私みたいに“大きなドラゴン”に変身できる子は珍しいらしいから、怖がられるのも仕方ないのかもしれませんけど……。

 

でも、私が変身するドラゴンって髪の色と同じ金色なんですよ。

金色のドラゴンって、幸運の象徴みたいなものじゃないですか? だから、もっとありがたがってほしいというか……ねえ、皆さんはどう思います?

 

そういえば、お母さんが言ってました。ホグワーツには、私みたいに動物へ変身できる魔法を使える先生がいるそうです。こういう動物に変身できるのはアニメーガスって呼ばれているらしくて、生まれつきじゃなくても訓練すればなれるんだとか。

 

私も訓練したら、もう少し小さいドラゴンに変身できるようになるのかな? 小型化できたら便利ですよね。変身魔法って奥が深いし、ホグワーツで学べると聞いて少しワクワクしてます。

 

 

……あ、そういえば。ホグワーツって、どうやって行くんでしょう?

 

ロンドンまで飛んでいくのかと思っていたら、暖炉から移動できるらしいんですよね。

 

うちの城の煙突は昔、私がうっかり火球をぶつけて壊しちゃったので暖炉としては使っていないんですけど、移動手段としてはまだ生きているみたいです。魔法って便利ですね。

 

「ラシアンナ!! 行くわよ!! 準備できたの?!」

 

あっ、お母さんの声だ。

 

どうやら、いよいよ出発みたいです。

 

それじゃあ、皆さん。しばらくお別れですね。

初めての外の世界、頑張ってきます。……ちょっと怖いけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもこんにちは、ドラゴン娘のラシアンナです。

えー……さっきぶり?でしょうか。すみませんね、いきなりまた呼び出しちゃって。

でも今回はちゃんと理由があります。

 

ついに私、杖を手に入れました!!!

 

――はい、拍手! ありがとうございます。ありがとうございます。

 

せっかくなので事のあらましをお話ししますね。

 

皆さん、オリバンダーさんって知ってますか? あれ、オリパンダーだったかな……まあいいや。

 

ロンドンのダイアゴン横丁っていう魔法商店街の片隅にお店を構える、おじいちゃん杖職人さんです。界隈では「高性能杖といえばここ」ってくらい有名らしいです。

 

で、私もそこで杖を買う……いや、正確には「作ってもらう」ことになっていたんですけど。

 

どうやら私の知らないうちに、お母さんが私のドラゴン形態で落とした爪や鱗をオリバンダーさんに渡していたらしいんです。なるほど、うちの一族の伝統とかそういうやつですかね。まあ、そこまでは想定内です。

問題はここからです。

 

私のドラゴン形態って、結構大きいんですよ。ドラゴン界隈では普通サイズかもしれませんが、だいたい15~20mくらいはあるので……爪も鱗も当然ビッグサイズなわけです。

 

そんなものを素材にして杖を作ったら、どうなると思いますか?

――そう。こうなりました。

いま私が手にしているのは……え、杖って羽ペンよりちょっと大きいくらいが相場じゃないんですか?

これ、どう見ても私の身長を超えてます。

 

おじいちゃんやおばあちゃんが足腰をいたわってついて歩くタイプの“杖”じゃないですか。

いくら「君との相性が最高なんだよ」なんて言われても……いやこれ、どうやって持ち歩くの? まさか“杖”で“杖つき歩き”する魔女になるの?

……皆さん、どう思います?

 

もちろん、私は抗議しました。お母さんとオリバンダーさんに。

でもね、語彙力と話術で私を上回る大人たちに勝てるわけがありません。

五秒で論破されました。はい、完敗。

 

「そのうち慣れるから大丈夫」と言われましたけど……みんなも杖の素材を提供する時は気を付けてくださいね。思わぬビッグサイズが届くかもしれませんから。

 

 

――さて、初ロンドンの感想も少し。

 

マグルの街はまだよく分かりませんが、ダイアゴン横丁は思った以上に面白いです。

人間のままなのに巨人みたいに大きいおじさんや、見たことのない不思議なアイテムがごちゃごちゃ並んでいて……世界って広いんだなぁとしみじみ思いました。

 

それから、制服の採寸に寄った洋装店で、以前うちの城に来た遠い親戚の男の子に再会したんです。

ほら、この前、私が恥ずかしさのあまりうっかりドラゴンに変身しちゃって逃げられた子。

今度こそ仲良く話せるかな、と期待して近づいたら……全力で逃げられました。

 

うん……あの時の恐怖がまだ消えてないんでしょうかね。声をかけた瞬間にダッシュで退避。ちょっとしょんぼりです。

 

でも! そのとき偶然一緒にいたハリーくんと、ついに会話ができたんですよ!

 

私が言えたのは「はい」とか「いいえ」とか、うなずき程度でしたけど……それでもハリーくんが色々話してくれて、ちゃんと「会話」というものが成立したんです。

 

――そう、私はついに会話という高度な技術を会得したのです! どうです、すごいでしょう。

 

しかもハリーくん、「ホグワーツでも一緒におしゃべりしよう」って言ってくれたんです。

 

これは……私の勝利ですよね。はい、勝ちました。ありがとうございました。

 





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