ドラゴン娘とハリー・ポッター   作:ゴールドルナ

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第4話 ドラゴン娘とキモい帽子

えー、どうも、ぴちぴちのスリザリン生となりました、ラシアンナです。

 

あー、ありがとうございます。いやー、伝統ある寮に入れていただき大変ありがたいですね。ほんとに。

なにしろ寮の紋章が蛇でしてね。蛇って、手とか脚とか生えたら大体ドラゴンですからね。私にピッタリということでねえ。

うちの両親もスリザリン出身ということで、やっぱり思い入れも違うというか、ほんとに名誉なことで

 

 

…………そろそろこの自己紹介やめていいですか。こういうのって、あんまり長く続けると自分でも恥ずかしくなってくるんですよね。

 

――で、ですよ。思い出すだけで腹が立ってくるんです。

聞いてくださいよ皆さん。ほんとに。

 

そう、お分かりの通り文句を言いたいのは寮の組分けですよ。いろいろ言われてた分け方なんだったと思います?

 

それがですね。なんかキモい帽子、しかもしゃべる帽子によって決められるんです。わかります?サイコロやコインの裏表で決めるよりもよっぽどひどいやり口だと思いませんか?そう思うって言ってください!!

 

いやいや、あれを伝統って呼ぶのは無理がありますって。

 

 

順番に説明しますとですね。まず、私たち新入生は小舟に乗ってのんびり湖を渡り、でっかいお城の大広間に連れていかれるわけです。そこにはすでに先生方から先輩方まで、ずらりと並んでいるんですよ。

目の前には長いテーブル、頭上には無数のろうそくがふわふわ浮かび、天井は魔法で夜空に変えられていて……とまあ、見た目は確かに壮大なんです。

で、あの雰囲気の中で突然名前を呼ばれて、あのボロボロの帽子をかぶせられるんですよ。しかも衆目の前で。帽子が「なんちゃら寮!」って叫んだ瞬間に拍手が起きる――らしいんです。

 

で、呼び出しは苗字のアルファベット順。私は“F”なのでまあまあ早めです。ちなみに、ハリー・ポッターは“P”、ハーマイオニー・グレンジャーは“G”で私より後ですし、ロン論外の“W”ですね。

 

それで、割と早めに私の番が回ってきたときですよ。帽子をかぶった瞬間、あの帽子、私の頭にひそひそと話しかけてくるんです。

 

私はね、別にロンみたいに「スリザリンは悪でグリフィンドールが善」なんて単純には思ってなかったんです。だってうちの両親はスリザリン出身だけど、ふつうにいい人たちですし。でも、一応念のために「どこでも大丈夫」ぐらいの気持ちでいたんです。そしたらあの帽子、やたらと早口でまくしたててきましてね。

 

「ふむ、なるほどなるほど……お前は野心も力も持っているな。スリザリンなら真の友を得られるぞ。真の友だ、わかるか? イマジナリーじゃないぞ」

 

――って言われたんですよ!? え、なにその“真の”ってつけてくる妙な営業トーク。さすがにそこまで言われたらちょっと期待しちゃうじゃないですか。皆さん嘘だって思ってます? いやまあ、多少...結構脚色はいってますけど大体こんな感じです。少なくとも真の友とかいう激アツワードは言ってました。本当です!!

 

最終的に私は一応、「まあ、いいか」ぐらいの感じでうなずきました。お腹すいててちょっとムカついてたし、グリフィンドールに行ったところで真の友達ができるのか怪しいし、帽子もやたらスリザリン推しだし。半分押し切られた感じです。

 

……今思えば、あれは押し売りでしたね。完全に。

 

よくあるじゃないですか、選択の自由があるように見せかけて、実は時間を奪って追い詰めてくるタイプの押し売り。まさにあれですあれ。こちらが少しでも考え込むと、周りの空気が「早くしろ」って圧をかけてくるやつ。

 

帽子も、なんだか迷惑そうにため息をつく気配がしましたし。大広間の人たちも、こっちをちらっと見て目が合った瞬間に視線をそらすんですよ。あれ、完全に「早く決めろよ遅延行為すんな」って雰囲気。……そりゃ焦りますよね。

 

でも、私だって一応粘ったんです。

 

「寮じゃなくて、家から通うってダメですか?私結構飛ぶの得意なんで、寮とかなくてもいけないかなって思うんですけど?」

 

「シークレット枠の寮とかないんですか? ボッチ専用とかドラゴン専用とか!」

 

……みたいなことを聞いてみたんですよ。

 

けどね。私のコミュニケーション能力ってほんとカスなんですよ。うまく言葉が出てこないし、帽子の押しの強さが尋常じゃないんです。あいつ、完全にプロのセールスマンですよ。論理じゃなく勢いと雰囲気でねじ込んでくるタイプ。

私、気づいたら「う、うん……」って頷かされてました。

そしたら、「スリザリン!」って大声で叫ばれていて。

 

あ、あれ? 私、今、選んだ? 選ばされた? って感じでした。

 

 

で、決まったわけですよ。スリザリンに。

私が席から出てきたとき、空気がね、妙に重かったんです。

あれ、流石の私でも気づきましたよ。たぶん、うちの一族の悪評とか、ドラゴンに変身できちゃうこととか、いろいろと噂になってたんでしょうね。

実際、入学前から学校側にも何度か「変身を制御できるのか」って確認されましたから。

まあ、ドラゴンに変わっちゃうのって珍しいし、怖いもの扱いなんでしょう。仕方ないんだけど……でもね、嫌な空気ってわかるじゃないですか。

 

 

拍手?

 

ええ、ありましたよ。ありましたけどね、他の子のときの拍手と比べたら明らかに弱い。なんかこう「一応しとくか」ぐらいの、気まずい感じの拍手。歓声なんて当然なし。

 

一方、ハリーがグリフィンドールに決まったときはそりゃもう大喝采ですよ。英雄様は違いますね、ええ。

ロンもハーマイオニーもネビルもグリフィンドール。えっ、そんなことある? 振り分けってもっとバラけるんじゃないの? って疑いましたよ。ハーマイオニーなんて、絶対レイブンクロー向きだと思うんですけど。ネビル? ノーコメントで。

 

 

はあ、もういっそのことボッチ専用の寮とかないんですかね。もしドラゴンが紋章の寮があったら、喜んでそっちに行ったのに。

 

そして現実は、陰湿な蛇の集まり――というよりは、距離を置かれがちな空気でした。大広間でも、私は微妙にぽつんと一人。席に座ったら、周りの子たちはなんとなく離れて座っていきました。おかげで、料理を独り占めできたのは救いでしたけど。

 

いや、待ってる間にお腹すいて大変だったんです。私、空腹になるとドラゴンになって森で狩りしてしまう癖があるので、なるべく我慢するようにしてるんですけど、あれ本当にしんどいんですよ。

しかもお母さんからは「学校では絶対に狩りしちゃダメ」って厳しく言われてますし。少しでもお腹が減ると殺気が漏れるってお母さんが言ってましたけど、まあ、噂になってたらそりゃ怖がられるかもですね。

 

――でも言っときますけど、人間は食べませんからね!美味しくないって聞きましたし。

 

そういえば、明日からの食事ってバイキング方式だと嬉しいなあ。私、ちょっとだけなんですけど、食事量多めなんです。おかわりできると助かるんですけど。皆さん、食べ物が無限に湧き出る場所とか知らないですかね……。

 

 

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