ドラゴン娘とハリー・ポッター   作:ゴールドルナ

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ハリー・ポッターと三大魔法学校対抗試合、あとドラゴン

三大魔法学校対抗試合

 

まあそうか…………、ラシアンナがその代表に選ばれたときに思ったのはその程度の感想だった。

 

危険で過酷な試練ならどんな上級生よりも彼女は上手くこなして見せるだろう。それに、何人かがラシアンナが炎のゴブレットに名前を入れているところを見ているし、名前を入れる代わりに夕食を捧げたという話も聞いた。

 

さすがに、炎のゴブレットを杖でボコボコにして言うことを聞かせたというのは想定外だったけど…………。

 

彼女ならやりかねないというのは僕らの中では共通認識だ。ダンブルドア先生はそれでも顔を引きつらせていたし、ダームストラングのカルカロフ校長はそんなことは侮辱だと怒っていた。

 

でもあんな風に怒れるのは勇気があるからじゃなくてラシアンナが暴れているのを見ていないからに違いない。誰だってあんなものに逆らいたいとは思わない。炎のゴブレットですらそうなだけだ。

 

だけど、くそったれなことに、そのゴブレットはなぜか四人目の名前を吐き出した。そう、僕の名前だ。

 

ラシアンナが殴りすぎておかしくなったのかもしれないとのことだった。

 

 

 

 

僕は、自分の運命を呪った。

 

去年、ボガードと対峙してラシアンナが出てきたときとか、二年生の初日に高高度飛行をさせられたときよりも、もっと最悪の気分だった。多分、僕が赤ん坊のころに対峙したはずの闇の帝王よりも恐ろしい気分だったと思う。

 

三大魔法学校対抗試合の具体的な課題は分からない。だけど、間違いなく僕は無事ではいられないはずだった。

 

最初のうちは、グリフィンドールのみんなが興味半分で「どうやったんだ」と聞いてきたり、マルフォイが卑怯者だとののしってきたりするのにも腹が立っていた。ロンですら、最初は「なんで黙ってたんだよ!」とか怒鳴っていた。

 

でも、代われるなら代わってほしい。

 

本気でそう思っていた。だって、僕らは各学校から一人というルールに心底安心していたんだから。

 

そう、ラシアンナと競わなくていい。それが保証されているってことだった。

ホグワーツにいると感覚がおかしくなるけど、ラシアンナは本当に異常だ。

 

ブラッジャーを粉砕するし、秘密の部屋の怪物を食べるし、怒ると悪霊の火を撃とうとする。校舎を新しくするために入学したといっても過言じゃないくらいだ。

 

ロンですら、「ラシアンナとクラムが両方選ばれたらクィディッチ界の損失だ」と真顔で嘆いていたくらいだ。もちろん優秀な選手が死ぬのが損失という意味だ。

 

ラシアンナは楽しそうにしていたし、クラムとフラーもどちらかといえば誇らしげだった。自分が学校代表に選ばれたことを純粋に喜んでいる顔だった。

 

だけど、勇気を試されるという第一の課題が終われば、あんな顔は絶対にできない。

僕はそう確信していた。なにしろ、彼らはまだ何も知らないのだ。

 

 

 

 

第一の課題。それは、最悪の中では最良だった。

 

そう、なんとドラゴンと戦うというものだった。

 

もちろん、普通ならそんな感想にはならない。巨大な火を吹く怪物と戦えと言われて安心する人間なんて、多分世界中探してもほとんどいないだろう。

 

だけど、少なくとも相手はラシアンナじゃない。その一点だけで、僕は本気で安堵していた。つまり、それぞれの選手が一対一でドラゴンと戦う形で、少なくとも直接ラシアンナと競技をする必要はないということだ。 そう、ハグリッドに連れられて見たドラゴンはラシアンナより狂暴で巨大なドラゴンではなかった、だからきっと大丈夫だ。

 

ムーディー先生の助けと、ハーマイオニーやロン、それに何故かドラゴンについて隅から隅まで教えてくれたラシアンナのおかげで、どうにか作戦は立てられた。

 

僕の得意な箒で攪乱する作戦だ。ラシアンナ相手だったら、おいしそうなお肉で交渉することが一番ましだけど、普通のドラゴンには多分通じない。

 

 

 

 

 

 

第一の課題当日。

 

控えテントの中には、張り詰めた空気が漂っていた。クラムは腕を組んだままほとんど喋らず、時折低く息を吐いていたし、フラーも平静を装ってはいたけど、杖を握る指先は少し震えていた。僕だって落ち着いていたわけじゃない。喉は乾いていたし、胃の奥がずっと重かった。

 

そんな中。ラシアンナだけが、何故かものすごく驚いていた。

 

「えっ、ドラゴンなんですか!?」

 

本気の声だった。

 

クラムとフラー、それに僕まで、一瞬そっちに気を取られたくらいだった。でも、よく考えればラシアンナはそういうやつだ。ヒントを探すとか、情報収集するとか、そういう準備をしない。必要になったら、その場でなんとかする。それで本当になんとかしてしまうから質が悪い。

 

 

そして、そのラシアンナから始まった課題は、無茶苦茶だった。

 

まず、僕がびっくりしたのは、改めて近くで見たドラゴンが思ったより遥かに小さかったことだ。もちろん、普通の感覚なら十分巨大だ。目の前に現れたスウェーデン・ショートスナウトというドラゴンは、鎖に繋がれてなお圧倒的な存在感を放っていたし、銀色の鱗は鈍く光っていた。観客席からは悲鳴が上がり、何人かの下級生はそれだけで泣き出していた。

 

だけど、いつもラシアンナの変身した姿ばかり見ていたせいか、そのドラゴンですら半分くらいにしか見えなかった。

 

というか、正直に言えば、「こんなに小さかったっけ、ドラゴンって」と思ってしまった。

 

感覚がおかしくなっている。そして、そんなドラゴンを前にして、ラシアンナは何の躊躇もなく変身した。

 

その瞬間だった。

 

 

咆哮!

 

 

耳が壊れそう、なんてものじゃなかった。空気そのものが震え、衝撃が地面を叩き、風圧だけで控えテントが吹き飛びそうになる。鼓膜じゃない。もっと奥だ。身体の芯、本能、そういう場所を直接揺さぶられるような感覚だった。

 

頭が真っ白になる。心臓が縮み上がる。

 

逃げろ、と。理屈じゃなく、身体そのものが叫び始める。

 

僕ですら膝が震えていた。

 

クラムとフラーはもっと酷かった。さっきまであんなに勇ましそうに見えた二人が、その場に膝をついて座り込み、顔を青ざめさせながら震えていた。免疫がないなら、そうなるのも当然かもしれない。だって、あれは単なる大きな音じゃない。捕食者の声だ。生物として格上の存在に、本能の奥を直接踏みつけられるような感覚だった。

 

観客席のほうでも悲鳴が上がっていた。耳を塞いでしゃがみ込む生徒や、逃げ出そうとして転ぶ下級生まで見えた。それなのに、ラシアンナ本人だけは、ものすごく楽しそうだった。

 

そして、そこからさらに酷くなった。

 

ラシアンナは、まるで見せつけるように炎をまき散らし始めた。熱風が吹き荒れ、岩が溶け、地面が砕ける。観客席の壁が崩れ、破砕された岩片が火を引きながら飛び散っていく。

 

威嚇。

 

当てていないので、本人の中ではそれだけのつもりなんだろう。でも、僕たちから見れば災害だった。

 

しかも、それで終わりじゃない。

 

ラシアンナは、完全に怯えて後退していたショートスナウトの頭をがっしり掴むと、そのまま持ち上げるようにして振り回し始めた。

 

怖すぎる。

 

ドラゴン使いたちが悲鳴みたいな声を上げていたし、審査員席ではカルカロフ校長は逃げ出し、マダムマクシームが立ち上がって何か叫んでいた。でも、その声は咆哮と爆音の中にかき消されてほとんど聞こえなかった。

 

ショートスナウトは完全に怯えきっていた。尻尾を縮め、翼を畳み、逃げようとして鎖を引きちぎりかけながら、それでもラシアンナから目を逸らせずに震えていた。

 

 

 

 

 

その惨劇のせいで、僕たちの前に出てきた他のドラゴンたちは、すっかり観客席にいるラシアンナを怖がっていた。

 

いや、怖がっていたなんてものじゃない。怯え切っていた。

 

僕の番になって出てきたのは、本来なら凶暴で危険なはずのハンガリー・ホーンテールだった。さっきまでドラゴン使いたちが命がけで鎖を固定していたような怪物だ。黒い鱗は鋼みたいに硬そうで、尾には棘が並び、黄色い目は本来なら人間を睨みつけるだけで震え上がらせる迫力がある。

 

……はずだった。

 

だけど実際には、そのドラゴンは僕のほうなんてほとんど見ていなかった。

 

観客席。その一角。そこに人間の姿に戻って座っているラシアンナを、ずっと見ていた。そして、目が合うたびにびくっと身体を震わせて、反対側の壁に身体を押し付けるように後ずさった。

 

僕の課題は幸運なことにあっさり終わった。

 

 

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