ドラゴン娘とハリー・ポッター 作:ゴールドルナ
あー、六年生最後の試験は大変でした。あっ、言っときますけど私はあんまり悪くなくて、こう不幸な事故というか、不可抗力です。
いや、ちゃんと一発だけ撃つつもりだったんですよ。そう、試験で錯乱呪文をスネイプ先生に掛けるってのがあって、そう、無言で。なんですけど、あー、そう、事故がおきまして。
そう、私の錯乱の呪文がなぜか、そうなぜか連射されちゃったんですよね。
あー、そう、スネイプ先生は一発しか来ないって思ってたところに、私が秒速百発で数秒間みたいな感じで打ち込んじゃったんで…………なんというか大変でした。
最初は笑ってたんですよ。こう、先生に呪文がバシバシ当たっていく感じで。
でも四年生終わりからなんか普段の魔法も強くなってるみたいで、めっちゃ威力が上がっている気がします。というか上がっています。そうじゃないと無言呪文なんて使えない気がします。
いや、ちゃんと一発だけ撃つつもりだったんですよ。信じてください。それに高々数百発打ち込まれたくらいでああなったのは先生が悪いです。
それに、ハリーとかもめっちゃ笑ってましたからね。
一応先生も最初は普通に防御しようとしていたんですけど、さすがに無理だったみたいですね。何しろ錯乱呪文を連続で浴び続けているわけですから。
結果として先生はめちゃくちゃに錯乱しました。
そして問題はそこからでした。
最初は意味不明な独り言でした。
そのうち周囲に幻影みたいなものが見え始めました。さらに悪いことに、それがどうやら先生自身の記憶だったみたいなんです。
誰かにパンツを脱がされる記憶とか。
女の人に振られる記憶とか。
学生時代らしい黒歴史とか。
見てはいけない感じのやつが次々と飛び出してきました。
しかも本人は止められません。大変です。
私は見ていません。面白かっ………… 見ていません。
見ていませんけど、周囲の生徒たちがすごい勢いで見ていました。
特にハリー。というか、後から聞いたんですけど、ハリーの両親みたいな人が映ってたらしいです。
ハリーが見ていました。そして先生もハリーを見ていました。
そこから先は最悪です。
錯乱した先生が突然ハリーに攻撃を始めました。
その場は大混乱です。なにしろ、先生がガチで生徒を攻撃し始めたので。
しょうがないので私は慌てて治癒呪文を使いました。
使ったんですけど。下手なんですよね。
しかもこれもそのまま連射になりました。
そして全身に何十発か命中しました。
でも、よく考えたら私って治癒呪文でほとんど成功したことがないんですよね。逆にニキビができたり、禿げたり、足が変なほうに曲がったり。たまに成功するんですけど、気を抜くとだめです。
そういうことで、体中が無茶苦茶に直されたというか変な感じになったみたいです。先生は病院に送られていきました。
そのときはちょっと治療呪文を掛け過ぎたかなくらいにしか思っていなかったんですけど、どうやらそんな生易しい話ではなかったみたいです。
後から聞いたところによると、まず骨が増えていたそうです。
骨って増えるんですね。私も初めて知りました。
しかも一本や二本ではなく、治療班の人たちが見た瞬間に頭を抱えるくらいには増えていたらしいです。
さらに一部は石化していたそうです。
治療呪文なのに。意味が分かりません。意味が分かりませんけど、実際にそうなっていたらしいので仕方ありません。
他にも爪が異常な速度で伸び続けたり、髪が勝手に成長したり、治ったはずの場所がもう一回治ろうとしたり、内臓の一部が必要以上に元気になったりと、いろいろ大変だったみたいです。
私としては善意でやったんですけどね。善意だったんですよ。本当に。
それなのに被害報告を読んでいると、どこか危険な闇の儀式でも行ったみたいな内容になっていました。
おかしいですね。私は治療しただけなんですけど。
しかも問題は肉体だけではありませんでした。
元々、試験中に錯乱呪文を百発近く浴びていたせいで精神状態がかなり危うかったらしいんですよね。そこへ私の治療呪文が何十発も追加で直撃したわけです。
結果として身体も精神も何が正常なのか分からなくなったらしく、しばらくは自分の名前すら怪しかったそうです。
それだけならまだいいんですけど、時々学生時代の話を始めたり、存在しない生徒を叱り始めたり、急に黙り込んだりしているらしく、精神治療専門の人たちまで呼ばれる騒ぎになったとか。
なんというか。申し訳ない気持ちはあります。ありますけど。
善意が時には人を傷つけるってのは本当なんですね。人生は勉強になります。
それで、治療に半年か一年くらいかかるんだとか。
そんなわけで来年度からスネイプ先生は長期療養。スリザリンの寮監も続けられないそうです。代わりにスラグ先生が寮監になると発表されました。
そして、来年度から闇の魔術に対する防衛術には特別講師が来ることになりました。
私のお母さんです。
決定したと聞いたとき、私は正直首を傾げました。お母さんに何かを教えることができるのでしょうか。
いや、人格的な意味ではなく。それもなくはないですけど…………。
純粋に戦闘能力とか魔法の話です。だってお母さんですからね。
まあ魔法は使ってますけど、いろいろダメそうです。魔法より手が出るタイプですし。
なので私は素朴な疑問として、「お母さんに教えられることなんてあるんですかね」って授業前につぶやいたんですよ。
初回の授業で私の頭は全力で叩かれました。
酷い。しかも普通に叩かれたわけではありません。私の杖を取り上げて思いっきりですからね。杖が折れたらどうしてくれるんですかね。
そして、周りのみんなが全力で拍手するのはどうなんですか?救世主みたいな扱いをされるなら私であるべきでしょう。そう思いますよね。
そして、意外に授業はまともでした。そういえば、うちの本棚って結構闇の魔術の本とかあったので、お母さんも闇の魔術を使えるんですね。
ハリーも実践的な内容も多かったのか喜んでいました。
そういえば最近、ウィーズリーの双子がいたずら専門店を開いたらしいんですけど、私をモデルにした新商品を作ったとかで、サンプルを送ってくれました。
その名もドラゴンの咆哮爆弾。説明書によると、私の咆哮を参考にした超大音量の爆弾らしいです。爆発するわけでも、火を噴くわけでもなく、ただものすごく大きな音が鳴るだけ。実に迷惑ですね。ウィーズリーの双子らしい商品だと思います。
試しに一つ使ってみたところ、数分後にお母さんが飛んできて怒られました。理不尽です。商品テストですし、研究協力ですし、私はむしろ真面目に使い方を確認していただけなんですけど。
ただ、そのとき私は気付きました。これ、別の場所で使えばお母さんを呼び寄せられるのではないでしょうか。つまり単なる迷惑グッズではなく、緊急時のお母さん召喚装置です。適当なところに召喚すれば私は好きに動けます。流石です。双子はそこまで考えていたんですね。
そんなことを考えながら、残りの爆弾が入った袋を寮の部屋に持ち帰って机の上に置いたんですけど、少し乱暴だったのか、中の一つが起爆しました。そして隣の爆弾が反応し、その隣も反応し、結局全部まとめて誘爆しました。部屋中に竜の咆哮が響き渡り、窓は震え、棚は倒れ、隣の部屋から悲鳴が聞こえました。うん、大変でした。
もちろん、またお母さんが来ました。今度は前より怒られました。私としては完全に被害者なんですけどね。爆弾が勝手に爆発しただけですし。
とりあえず双子には「もう少し丈夫に作ってください」とお願いしておきました。普通に置いただけで起爆するのは危ないと思います。まあ、返事には「普通の人間は爆弾の袋を投げない」とだけ書いてありましたけど。まるでがさつみたいな言い方ですし、失礼な話です。