ドラゴン娘とハリー・ポッター   作:ゴールドルナ

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第9話 ドラゴン娘には不必要な部屋

どうも皆さん、臭いものはお好きですか?

ホグワーツで密かに臭い探偵をやっている、ラシアンナです。

 

いやー本当にね、ホグワーツって臭いものが多いんですよ。

まあ、それは私の鼻が人より敏感っていうのも大いに関係ありますけどね。正直すぎるほど敏感です。だから普通の子が気にしないレベルでも、私は「うっ」ってなっちゃうんです。

 

でも、臭いトラブルって放っておくと面倒なんですよ。

普通の匂い、例えば誰かが汗かいてるとか、人間として臭ってるとかはまあ許容範囲なんですけど、私が問題にしてるのは根源的に不潔な匂い。説明が難しいんですけど、もう「存在自体が不潔」って感じのやつ。嗅ぐだけでゾッとする匂いです。

 

 

例えば、この前のトロール騒ぎ。あれですよ、あの匂い。

 

ただの汚れじゃない感じで、皮膚の油っぽさと土っぽさと何か腐敗したものが混じってるっていうか。私の鼻はそういうのを異様に拾ってしまうんです。

で、一匹見つけると「あ、これは一匹じゃ済まないな……」って直感が働くんですよ。経験則です。

 

ちなみにここだけの話、まだトロールは潜んでる気がします。

 

多分ホグワーツの地下のどこかに巣があって、時々上に這い出してくるんじゃないかなと。こういう生き物って一度居着くと、群れをなす傾向がありますよね。私の感覚だと、一度わくと30匹単位で増える予感がします。想像しただけで嫌です。

 

で、最近ちょっと変な臭いが漂ってきたので、暇を見つけて調査してみたんです。もちろん「ここに巣があります!」ってはっきり分かるレベルじゃないんですけど、鼻がうっすら「ここから来てるな」って示すんですよ。で、辿った結果、一番怪しいのは4階の廊下でした。

 

そう、あの4階の廊下です。校長が「入ったら爆死するかも」とか散々脅してた、あの一帯。

あの奥の方からかすかな、だけど不快な匂いが常に漂っている。しかも複数の種類の臭いが混じってる感じで、ただのゴミ置き場じゃない雰囲気なんです。

 

校長が封鎖している理由が実は片づけが面倒だからという説、私にはなんとなく説得力がありますよ。要するに「トロールが出るような不潔ゾーン」を放置してると管理が大変だから、近寄れないようにしてるだけなんじゃないかって。

 

一番強烈に感じた匂いは肉食獣っぽい匂いでした。犬やライオン、あるいはもっと古風な魔法生物――そんな獣の匂いが混じっている。校長が学校の一部を私物化してるんじゃないかっていう被害妄想も湧いてきます。だって、学校のどこかでライオンを飼ってるとか訳わかんないでしょ? 校長ズルイ。

 

 

 

正直言うと、私も好き勝手に魔法を撃ったり暴れたりできる部屋が欲しいんですよ。訓練のための飛び道具実験場とか、ちょっと暴れてストレス発散できる“城の隅”とか。

 

 

そう、そんなことを考えながら廊下をぶらぶらしていたときのことですよ。

 

 

ふと、壁に見たことのない扉があったんですよ。いや、正確には「いつの間にか出てきた扉」と言うべきでしょうかね。

 

流石はホグワーツ。部屋が生きてるなんて話は聞いたことがありましたが、まさか自分の目の前で現れるとは。 皆さんもこのくらいじゃ驚かないでくださいね? ここでは、部屋が出てくるのは日常です。そういうもんってことです。

 

で、見つけたら?

当然、入る一択ですよね。倫理的にも。

もうこれは人として、ドラゴンとして入らないなんて選択はあり得ないです。

 

 

これまでも、そういういきなり現れた部屋に入ったことは何度かありました。

でも、大抵は何の変哲もない空き部屋で、机が転がってるだけとか、カビ臭いカーテンがかかってるだけとか、そんなのばっかりだったんですよ。

そういうのは、まあ、外れです。急に出てくるってのが最大の特徴でそれ以外なんて事のない、二流の部屋でした。所詮は出現どまりの部屋です。

 

ところが、今回の部屋は一味違ったんです。

 

いや、一味どころかゲロ味くらい違いました。

中に入ってまず目に飛び込んできたのは――

魔法練習用の人形、標的、魔道具の山。

 

まるで「ここで魔法を撃ちまくれ!」と言わんばかりの配置です。

よくわからない魔道具も破壊の的としては十分でしょうか。

 

床には衝撃吸収用らしきクッション、さらに隅には妙に柔らかい布の山。

寝転がっても怒られなさそうです。なんて居心地のいい部屋。

 

しかもこの部屋、私が一人で入るにはちょっと広いって思えるくらいには大きな部屋なんです。 人間形態ならのびのび魔法の練習ができるくらいのスペースなんですが

ドラゴン形態になると天井がちょっと心配。

いや、ちょっとどころじゃない。

 

あの高さだと、翼を広げた瞬間に梁がバキバキになる未来が見えます。

 

でもまあ、これでもなんとか変身できる部屋が見つかっただけでも儲けものでしょう。

 

 

偶然入った部屋が、こんなに都合いいことあります?

 

いやもう、これは運命ですよね。私、やっぱり幸運の象徴か何かなんだと思います。

もしかして私の鱗、縁起物として売れるんじゃないですか?

あ、でもお母さんが「体の一部を換金するのはやめなさい」って言ってたので、やりませんけど。

 

 

 

で、まあ、そんな素敵な部屋が目の前にあるわけですよ。

 

当然、いろいろ試したくなるわけじゃないですか。私は結構魔法が好きですし。魔法薬学とか変身とか植物とかよりも呪文をボカンと撃つ方が性に合ってます。

 

肝心の呪文の授業ではいつも魔法が暴発するし、繊細な動きなんて苦手だし。

なによりこのクソでかい杖、精密作業には向いてないんですよ。

いや、私自身が細かいこと苦手ってのもありますけどね。皆さんご存じのとおり。

 

 

 

 

 

 

というわけで!

せっかくなんで!ぶっぱなしていきましょう!!!

 

皆さんも拍手で盛り上げてくださいね!!

 

 

まずは定番、「フリペンド!」

杖を肩に担いで反動を受け止めやすくしてから連射でいきます。

おっしゃー、今回は完璧です。

杖をしっかり手で固定してるので、変な方向に乱射することもなし!

しかもこの部屋、ちゃんと頑丈にできてる。的も硬くて、フリペンド数発じゃ壊れません。

まあ、10回くらいで壊れますけど、並べておけば結構なんとかなってます。守護霊ちゃんに頑張って並べてもらって、それをどんどんぶっ壊していきます。

 

 

それから、インセンディオ!!!

うっひょーーー!!炎は最高です。

部屋中に瞬く間に炎が回って暖かくなります。

結構あっちこっち燃えてますけど大丈夫そうです。

……うん、ちょっとクッションとか燃えてるけど、まあ大丈夫でしょ。

魔法の部屋だし。多分。

 

 

 

 

 

いいや、最高の場所を見つけてしまいました。また絶対来ます、この部屋。

次はもうちょっと上手に使ってみせますし、ワンチャンに賭けて同級生を誘ってみようかなと思ってます。

 

だって、こんなに便利で広くて、魔法の練習が思い切りできる場所ですよ?

案内したら「ラシアンナすごい!」ってなるかもしれません。

……そうしたら、友達になってくれるかもしれません。

どうです。この最高の計画は!!!

 

 

 

で、ですね。

せっかくだから、最後に前から練習したかった魔法をやってみようと思ったんですよ。

この部屋なら、さすがに怒られないだろうって。

炎が意志を持って踊るように、優しく包み込んでくれる、そんな、

穏やかな魔法の炎。心の炎のように簡単には消えない炎。お手軽代替チャージブレスにして字面がちょっと不穏な呪文。

 

お母さんには「小さいうちは絶対ダメ!」って言われてましたけど、今の私なら大丈夫でしょう!!

 

というわけで唱えました。

 

 

「悪霊の火!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

……はい。

 

 

 

調子に乗りました。

 

 

すみません。

 

あのですね、

壁が、壁が溶けました。

 

もう、どろどろです。部屋の一面が、まるで熱した飴みたいにゆがんで、一瞬で向こう側が見えるようになっちゃったんですよ。

 

最初は「ああ、まあ壁の一部くらいなら焦げても平気でしょ」って思ったんです。

 

でも違いました。

 

問題はそのあと。壁の穴から、なにかが流れ込んできたんです。それはもう大量に。

 

 

怪しい壺や、よくわからない魔道具、黒い靄の入った瓶、何かの骨みたいなの、果てはトイレの便器まで。

 

いや、なんで!?!?

 

もう部屋の中がカオスです。

一瞬で部屋の半分が魔法のジャンク屋になりました。

 

しかも、壁の穴はまるで異空間そのもの。

そう、異空間って言葉がぴったりなんです。悪霊の火で焼いた部分だけ、壁の構造そのものが変わって、まるで向こう側が現実じゃない世界につながってるみたいに見える。なんか不思議な感じでした。

 

 

で、まあ、当然のことながら。

最初は「やばい!止めなきゃ!」って思って杖で押し返してたんですよ。浮遊魔法とかで頑張ってですよ。でもね、無限に出てくるんですよ。

壊れた棚ごと流れ込んでくる勢いで。押し戻しても、押し戻してもダメ。私の杖操作も下手くそなところもありそうですけど。守護霊ちゃんにも手伝ってもらったけどダメですね。

 

まるで向こうの世界のゴミ屋敷が崩壊して、こっちに雪崩れ込んできてる感じです。

そのうち、魔道具が爆ぜる音が聞こえてきて、焦げ臭い煙まで漂ってきて

 

あ、これもうダメだ、と思いました。

 

「もう無理!!」

次の瞬間、私はドラゴンになってました。

 

反射です。そして、瓦礫の山に向かってチャージブレス、それから火球を三連射。

轟音。爆風。熱波。これですよこれ!!!流石に室内なので全力ってのは無理ですけど、満足満足ってやつです。炎の奔流が異空間の穴を飲み込んで、すべてのゴミも、怪しい壺も、便器も、まとめて灰になりました。

 

 

いやー、すっきりしましたね。

部屋の中に残ったのは、焦げた床と、煙の匂いと、

 

……そして、いつのまにかただの壁になっていた異空間っぽい穴の残骸。

ああ、一応いくつか燃えカスは出たんですけどね。

 

あっ、でも廊下に一部炎が燃え出したみたいで、偶然通りかかった校長先生に見つかっちゃいました。そのあと、なぜか燃えカスを興味深そうに撫でてました。それから特に減点もなく開放してくれました。何なんですかね?あの人?

 





あの変な部屋が何かわかった人は感想でも書いてくださいね。じゃあまた!!
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