レゼ「愛の力だあああああ!」   作:ガテル

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第2話

 

―――私はずっと心を殺して生きてきて、そして武器人間となり心だけでなく体すらも当たり前から外れてしまった。もう感情が揺れ動く事はなく、ただ淡々と下された命令に対し忠実に任務をこなしてきたのに。

 

 

「めちゃくちゃツラのいい女にすごくカッコいいって言われちまったなァ~!これも心があるおかげ……ってちげぇ!?オレには心に決めた相手がいるから誰かになびいたりしねぇんだ!」

 

「もしもーし、ちょっといいですか~?」

 

「―――もっとデンジ君カッコいいって言ってくれて構わないぜ!!」

 

 

単純だなぁ……さっきは冷静さを欠いたせいで変な事言っちゃったと思ったけど、相手の反応を見れば逆にこれで良かったのかもしれない。元より彼に近づき心臓を奪い取るのが目的なんだから、変に回りくどいプランを立ててたけどこの勢いで押していけばあっという間に―――

 

 

「……キミの事カッコいいって言ったのは単なる冗談だよ」

 

「ええ~!?冗談なのオ!?」

 

 

彼は私の発言に大きなショックを受けたようで、ガクンとその肩を落としている―――ホント何してんだろ。ここはもっと褒めるのが正解なのに、でも何故か私は彼をカッコいいと思ったのをどうしても受け入れられない。

 

いや受け入れないというより……受け入れてしまったらきっと何かが変わってしまうという方が正しい、それを私の本能が怯えてるんだ。でも。

 

 

「マジか、マジかぁ……」

 

 

……やっぱりこの状況はちょっと失敗かな、初手から崩れて更におかしくなっちゃった。でも全然立て直せる、彼は単純でチョロいから上手く会話を運びつつその流れで「デンジ君みたいな面白い人、はじめて」とでも私が頬を赤らめながら言えば問題ないはず。

 

 

「軽いジョークのつもりだったんだけど、気分悪くさせちゃったならごめんね」

 

「まぁ別にいいけどよ……女関係なんてこれよりひでぇ事沢山あったしな?」

 

「いやいや本当に悪かったなって思ってるよ、こういうのって安易に人に言っちゃダメなのに。でもそっか、許してくれるんだぁ……キミは優しいね」

 

「ふ、ふーん?」

 

 

ホント単純……まぁこれで大丈夫かな。

 

後は私がこの先のカフェでバイトしている事を伝えれば完了。ちょっと事前の想定とは違っちゃったけど、この反応なら間違いなく来てくれる。

 

―――結局、口に出てしまったあの言葉は何だったんだろ?誰かをカッコいいと思うだなんて。それも凄く……危うくこの場で考え込んでしまいそうになったのでそこら辺を悟られないためにも電話ボックスの外で出る事に決めた、降っていた雨は既に止んでいる。

 

 

「あ~!雨止んだよ!とりあえず出よっか!」

 

「なぁ」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

彼は不思議そうにこちらを見てきていて、その表情はまるで私に対して何か引っかかっているように思える。まさか気づいた?正体がバレる言動は微塵もしてないけど、同じ武器人間同士だからもし察知できたりしたら……違和感がないよう自然に髪に触れる形で自分の首に手を近づけていると。

 

 

「さっきから顔真っ赤だぜ、雨に打たれて風邪でも引いたんじゃねーのか」

 

「―――えっ」

 

「風邪は油断してるとヤベェからな、オレも前にしばらく寝込んだ事あるし。熱ないか確認してやるよ」

 

 

そう言うと、彼は私の頭に手を当てて……

 

 

「何か触れてるともっと熱くなってきてんな、どうなってんだ」

 

 

今まで沢山の人の手を折って切断して爆破してきた、だって戦闘の際に相手の手足なんて邪魔な物でしかないから。彼だって私のターゲット、要は彼らと同じなのに。何で嫌悪感がないの?

 

―――何で触れられて嬉しいと思うの?

 

 

「お前のデコ燃えてるみたいに熱いぜ、大丈夫か?」

 

「……冗談」

 

「あ?」

 

「……キミを優しいって言ったの、冗談だよ!」

 

「ええ~!?それも冗談なのオ!?」

 

 

もう頭が熱くて感情の整理が付かない、この状態が続いたらおかしくなってしまいそうだから私はカフェでバイトしている情報だけ彼に伝えてその場から走り去った。

 

 

 

「すっげぇツラはいいけど……何か変な女だったな」

 

 

 

 

 

「―――ギリギリセーフかな、もし遅刻したら給料から引くから気を付けてね?」

 

「マスターうるさい」

 

「今何か変な事言ったかな!?」

 

 

彼の手の感触が脳裏に焼き付いてさっきから全然熱が引いてくれない、今日だけで2回も私の知らない感情を体験してしまった。でもこれが何なのか全く分からなくて……いやきっと理解してもどうでもいいと思うに決まってる、深く考える必要なんてないんだ。

 

彼の事だから後10分もすればこのカフェに来るはず、そして表向きは好意を示して罠にかけて機を狙い心臓を奪い取る。私はこの感情についての答えを知りたくない、だから早く終らせる―――

 

 

 

 

 

 

「……ねぇレゼ君」

 

「……何ですか~」

 

「君、昨日から様子がおかしいよ。どこか体調でも悪いの?」

 

「だからうるさい」

 

「せめてマスターは付けてね!?」

 

 

そろそろ時刻は昼時、マスターからの視線を無視しながら私は椅子に腰を掛けてテーブルにうなだれていた。その理由は―――昨日デンジ君が来なかったから、ちゃんと二道ってカフェの名前を教えて来たらお礼してあげるとも言ったのに。最も、こんなに嫌気が指しているのは彼に対しての不満ではなく自分への不満。

 

正直に言うと、昨日の自分の言動を思い返せば来ないのも納得が付いてしまう。このままでは始まりすらしない、任務が達成できず成果無しで国に帰ればきっとマズイ事になる。元より自由なんてものは存在しないけど、だからと言ってこれ以上奪われてたまるか。

 

私は勢いよく立ち上がり。

 

 

「お客誰もいないんでちょっと外に呼び込み行ってきまーす!」

 

「そ、それは助かるけどね……いやもういないし」

 

 

 

 

 

 

「悪魔被害を受けた子供達に募金お願いします!!」

 

「心あるから何度でも募金できるぜ」

 

「昨日花を食った人!?」

 

 

デビルハンター東京本部の近く、任務が無い限り昼時になれば彼がこの辺りにいるのは事前に把握している。

 

 

「今日の昼飯どうすっか―――ってお前は」

 

「やや、また会うなんて偶然だね!」

 

「昨日この近くのカフェでバイトしてるつってたもんな、オレも働いてんのはこの辺なんだぜ。今はどこで昼食うか考えてるんだけど全然思いつかねぇんだよなぁ」

 

 

忘れてたわけではなく、私への態度も冷たいわけではないけど昨日のような浮かれた雰囲気はない。昨日来なかった理由はやっぱり私の推測通りなんだ、顔は良いけど急にたちの悪い冗談言うし、最後もいきなり話を切って走り去る女……何か自分が情けなくて嫌になってきちゃった。

 

とにかく、今日は何としても来てもらわないと……大丈夫。彼の心を掴む方法は分かってる。

 

 

「思いつかないなら私がバイトしてる二道はどうかな」

 

「そこって飯美味い?」

 

「めちゃくちゃ美味いよ!食べたらビックリするぜ~?それにこれも何かの縁、今なら君だけに特別大サービス。なんと店員特権で……料理を全部タダにしちゃいまーす!」

 

「―――行く!行きまぁす!!」

 

 

全然美味しくないし、タダに関しては……まぁマスターを上手く言いくるめればいいよね。

 

カフェに向かいながら互いに自己紹介をし、デンジ君は軽い声色で。

 

 

「昨日はよく分かんねー態度だったけど、今日はオレんにめちゃくちゃ優しいんだな」

 

「あ、あはは!私は気まぐれだからね~?」

 

 

それを聞いた彼は何かに納得したようにウンウンと満足気に頷いていて、私に笑顔を向けてきた……何かまた心がザワザワする。

 

 

「レゼのそのめちゃくちゃな感じを見てっとよ―――何かパワーを思い出すぜ~!」

 

 

血の魔人パワー、デンジ君のバディであり早川アキの家で共に暮らしている。私を見て思い出すっていうのはどういう意味なんだろ?魔人とはいえ見た目は一応女の子、それも関係性の近い彼女を思い出すって事は……少なくとも私に悪い印象は抱いてないんだね。

 

色々あったけど、とりあえずこれで軌道修正はできたかな?




デンジからの印象がパワー枠になってしまったレゼ、果たして彼女はデンジを攻略する事ができるのか……普通に無理ゲーでは??

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