更新が空いてしまって本当に申し訳ございません、謝罪として銃の悪魔の肉片を食べさせていただきます…
―――デンジ君が好きだ。
「……っ」
打ち上がった花火が夜空を照らし、本当ならこのタイミングで彼にキスをして舌を噛みちぎり目的である心臓を奪うはずが……私は涙を流しながらその場に崩れ落ちてしまった。 立ち上がろうとしても足腰に力が上手く入らなくて、歪んだ視界は自分が着ている安っぽいレンタルの浴衣の柄さえも見えなくなっている。
「レゼ!?どうしたンだよ!もしかしてさっき食ったわたあめがあたっちまって腹痛てぇのか!?」
「……あはは、わたあめで食あたりになるわけないじゃないですかー……」
「いや砂糖も十分危険なんだぜ、オレ小さい頃に水に砂糖ぶち込んだ料理食って腹壊した事あるからなあ」
「それを料理の括りに入れちゃいけないと思うよ……?」
私の元へ駆け寄ってきたデンジ君はまるで検討違いの馬鹿みたいな事を言ってくる、それに対し思わず呆れたけれど、泣いてる私を心配してか肩に手を置き優しくさすってきた……モルモットとしての凍り付いた心が彼の温かさに溶かされていくようで焦りと動揺が止まらない。
デンジ君……私は君が思ってるような女の子じゃないんだよ。
私はソ連のスパイで目的はチェンソーマンの心臓の奪取、日本へ来る前も来た後もあの公衆電話で実際にデンジ君と会うまで心に存在した感情は任務に対する事だけだった。でも今や……国家の命令も、体に染み付いた殺人技術も、全てがエラーを起こしている。
「―――ごめん、ごめんねデンジ君……!」
抱え込んでいた想いが溢れ出す、心臓を奪うチャンスはそれこそ初対面を含めこれまでいくらでもあった。喫茶店や学校での出来事を積み重ね私を好きにさせるというプランなんて今振り返ってみれば馬鹿らしい……結局ただ私がデンジ君の事を好きになっちゃって、当たり前の人間らしい青春とやらを一度でいいから送ってみたかったんだ。認めてしまえばもうどうしようもない。
「電話ボックスで雨宿りするデンジ君に声を掛けたのも、そこから喫茶店に来るように誘ったのも、一緒に学校へ行って泳いだり何より今日の花火大会だって……全部私の計画なんだ。心臓を奪う為にね……」
「……つまりレゼは今までオレんに襲い掛かってきた悪魔と同じって事か?」
「……流石デンジ君、理解が早いじゃないですか」
デビルハンターとして経験を積んでるだけの事はある、まあハニトラは未経験だったみたいだけどね……それから私は「ソ連のスパイとして国からの命令でチェンソーマンの心臓を奪いに来た事」や「爆弾の悪魔と契約している武器人間」と自らの過去についてはボカして淡々と何者を明かした。こんなのド素人未満の最悪行為だけど、彼への恋を自覚した今戦う気になど到底ならなくて……私の話をデンジ君はただ黙って聞いていた。
そして話も終わり、私は立ち上がろうとするとデンジ君が腕を力強く掴んで止めてきて。
「……どこ行く気だよ」
「うーん、とりあえず身を隠せる場所かな?ターゲットにベラベラと喋って、任務を放棄する以上お国も私の存在を許さないだろうしね」
「オレ馬鹿だから細かい事はよく分かんなくてさ、だからこんなの聞くのは間違ってるんだろうけどよ―――レゼはもう諦めちまうのか?」
「いえーす!だってもう出来ないって分かっちゃったんですよ、ていうかデンジ君的にはこんな嘘つき女さっさと消えた方がいいでしょ?」
私は無理やり作り笑いを浮かべながら、デンジ君に正直な本心を告げた。だって実際にその通りだと思う、好意も何もかも嘘だと言われて傷つかないはずがないんだ。
……それでも何故か、デンジ君は私を掴む手を離してくれない。
「レゼ、自分の事を嘘つき女っつうのは勝手だけどよ。ならどうしてそんな辛そうに泣いてんだ」
「……え」
「さっきみてえにまた涙出てきちまってるぜ……流石のオレでも分かるわ、それは嘘じゃないんだろ?」
「ち、ちがっ」
彼に指摘されて遅れて気が付いた……私は笑顔のつもりがまた泣いていた事に、そんな私を見てデンジ君は自分と違い偽りなど微塵もない純粋な表情で笑いかけてきて。
「レゼは嘘つきなんかじゃねえよ、だって初めて会ったときに何か知らねえけど急に顔赤くして走って逃げたり、自分から出した問題で照れたり、学校に行ったときもずっと変だったしな?あのおもしれーっぷりが逆に演技だったとしたら才能アリだな!」
「―――デ、デンジ君のバーカ!私は決しておもしろ女じゃないよ!?全部演技、演技だから!」
「ギャハハハハ!!」
「……もう、今のは励ます所じゃないのかな……」
真面目な話をしていたはずなのによく分からなくなってしまった、でも私はこの……生まれて初めてであろうデンジ君と二人で形成する緩くてくだらない感じが大好きなんだ。本当に心の底から楽しいと思える。
立ち上がるのをやめてゆっくりと座り込み、彼にもたれかかるように体を預ける。
「……デンジ君、ホントはね私も学校行った事なかったの。人としての当たり前を一度でいいから体験してみたい……君と」
不可能だからと諦めてずっと蓋をし続けてきた私の本心、ただ不思議と言ってしまったと後悔するなんて事はなくてむしろどこか清々しい気持ちだった。夢物語だろうが口にする分には自由のはず、例え叶う事がなかったとしても……
「―――レゼ、オレと一緒に逃げねえ?」
「……え?」
夢物語で終わるかどうかはまだ分からない―――今ここに運命の歯車が動き出そうとしていた。