ディルムット・オディナ視点
困惑する自身を押さえつつ現状を把握する事に努めた。
エインフェリアとして登録されている他の魂と外の様子を見ていたのだが、驚愕の事実が次々とあきらかになっていく中、とある神に狂わされ息子を殺すはめになった大英雄は自身と重ね合わせて同情し、とある薔薇の皇帝は隠し事をしていた主に対して憤慨を隠す事が出来ず、とある猛犬は転生者との戦いを夢想するなどして各々がいつも通りに過ごしていたのだが、眷属にする為の駒の説明に入るとほとんどの者が食い入るように駒の説明を聞いていた。
そして、主が騎士の駒を持った途端に自分こそがあの駒に選ばれる存在だ多くの者が言い出し始めた。
薔薇の皇帝は主と自身の絆ゆえに選ばれると主張し、とある戦争で名をはせた腱が弱点の大英雄は実力が高い英雄である自分が選ばれると主張し、とある猛犬は常に一番槍をしている自分だろうと予想するなどして、これまた、各々が勝手な自分の主張を言っているのを黙って見ていた。
自分が選ばれないであろうことは予想していたからだ。
自身は不忠を持って英雄となったからだ。
ギアスで縛られていたとはいえ、己が主からグラーニア姫を奪い、その逃避行こそ伝説に相応しく、その事を許された身の上である事こそが伝説に相応しいと。
実際は主と仰いだフィン様は自分に与えられた屈辱を忘れておらず、魔猪に致命傷を与えられた際に見捨てられてしまったのだが。
駒を与えられる場面を夢想しなかった訳ではない。
今までただ忠義を尽くす事が出来るこの立場に満足していたはずなのに、それがあの玉藻御前の様に常にそばで主に付き従い騎士として新しい人生を歩む事を。
自分はまつろわぬ神として今の主である神樂神薙様と殺し合った。
その戦いは苛烈であり、自分は自身の全てを行使して戦い、彼も全ての力を行使して戦ってくれた。
敗北はしたが満足のいく戦いをしてまつろわぬ神としての生を終えた。
次に覚醒したのは彼のエインフェリアとしてだった。
自分をエインフェリアとして登録した事に主の正気を疑ったほどだが、同時にこれで忠義を貫く事が出来るのではと淡い希望を持った。
未練がましい事だが、一切の穢れの無い忠義を尽くしたいと思っていたからだ。
今の立場はその事に適していた。
ほぼ戦闘にしか呼び出されないために女性を惑わす呪いの黒子の事を気にせずに行動でき、エインフェリアでしかない自分は顕現しているにも時間制限がある。
そして、彼が戦うのは自分と同じまつろわぬ神か、非道を行う彼と同じカンピオーネである事も自分の騎士としての部分を大いに満足させた。
彼は自身を偽善者であり、両親を見捨てた親不孝者のであり、他のカンピオーネと同じ暴君でしかない最悪な人間だと考えていた様だが、常に苦悩している彼を見ている自分としては少なくとも暴君ではないと思っており、自身の忠義を捧げるには十分な人間だった。
彼は強い存在であったが、同時に他のカンピオーネと違い揺るがぬ意志を持っていなかった。
そのために、その心を傷つけながら、心の底で迷いながらも戦うさまは守らなければならないとも思った。
全てが忠義を尽くす騎士を体現しているようで自身に充足を与えた。
その事で満足していたはずなのに次を求めてしまう己の厚かましさに嫌気がさしながらも自分が選ばれない事はわかっていた。
女性を惑わす呪いの黒子がある自分を眷属にするなど考えるまでもなくするはずはないと。
そして、自分以上に名の売れた英雄もいる事もその考えに拍車を掛けた。
そんな事を考えていると主が『勇敢なる選ばれし魂』を行使しようとしているのに気がついた。そして、主の前に顕現した。
神樂神薙視点
私はブリュンヒルデより簒奪した権能『勇敢なる選ばれし魂』を使用して登録されているディルムット・オディナを呼び出します。
『勇敢なる選ばれし魂』は私が倒し、権能を簒奪したまつろわぬ神の中で人という要素を持つ者をエインフェリアとして使役する事が出来るというモノです。
最大3人まで同時展開する事が出来るのですが、一度でもエインフェリアとして登録された者から簒奪した権能は失ってしまい、二度と手に入れる事が出来なくなります。
そして、この権能を手に入れた際に倒したブリュンヒルデは戦乙女として神話で語られているのでこの権能になったのでしょうが、外見はヴァルキリー・プロファイルのレナス・ヴァルキュリアでヴァルキリー・プロファイルに登場したエインフェリアを顕現させて襲いかかってきました。
多くて4人だったのですが、連携が執れており一人一人の技量も高いのでかなり苦労して倒しました。
そして、ディルムット・オディナはFate/Zeroに登場した時の姿だったのですが、接触している物の魔力を打ち消す長槍ゲイ・ジャルグと決して治癒のできない傷を与える呪いの短槍ゲイ・ボウの二槍だけでなく、神話で語られているモラルタという
一太刀で全てを倒し、一撃で人間を両断する威力があると言われる剣で接近戦においては防御不可能な一撃となり、軍に対しては横に振るう事により一振りで全てを切り払う斬撃になりました。
そして、もう一振りベガルタという剣も所有しており、この剣は相打ちとなった魔猪との戦いで刀身は砕けましたが、柄の部分で魔猪の頭蓋骨へ撃ちつけ、その頭蓋を砕いた語られている為にベガルタを犠牲にする事に強力な一撃を相手にみまう事ができ、その威力は10体ほどの蛇神の力を込めた『蛇遣い座の運命』を正面から相殺するほどでした。
その上にこのディルムットはランスロットの宝具であるはずの『騎士は徒手にて死せず』を所持しており、覇王剣を奪われるという失態を犯したために敗北寸前に追い詰められて、『復讐の絶対攻撃』を何とか心臓に撃ちこむ事により勝利をもぎ取る事が出来ました。
後で知ったのですがランスロットの原型がディルムットだという説があり、それ故に所持していたようでした。
その事を知った瞬間、そんな弱い理由でつけるなと叫んでしまいました。
そして、苦労して手に入れた権能だったのですが、愛する者の為に戦う場合のみディルムットが使用していた武器を使用する事が出来るというモノでした。
愛の逃避行をした彼から簒奪した権能らしい発動条件だと思いましたが、前世の私は神のおもちゃである事を自覚しており、自身の運命に他者を巻き込む気は無かったので愛する者を作る気はないと思いのでエインフェリアとして登録しました。
責任を転換するつもりはありませんが、あのクソ女神も前世の私の死に方には責任があると思っています。
この話は愚痴になりますし、私自身にも責任がある事は確かなのでやめますが、エインフェリアとして登録したディルムットは問題を起こす事なく騎士として忠義を尽くしてくれました。
さすが、Fate/Zeroのディルムットをベースにしている事もあり使い勝手がとても良かった。
相性と婚約者を奪われそうなっている状況の所為でしょうが、彼との信頼関係を結べなかったケイネス・エルメロイ・アーチボルトに対して首をひねる思いを強く感じました。
まぁ、彼の性格を知っていた事も大きいのでしょうが。
エインフェリアは基本的に意志があり、やりたくないと思えば顕現に応じてくれませんし、込めた呪力が尽きるまでこちらから戻す事が出来ません。
Fateでの魔術師とサーヴァントとの関係によく似ています。
まぁ、あちらは令呪という絶対命令権があり、こちらは実力で鎮圧する事が出来るのですが信頼関係を結ぶことはどちらにとっても必要になると私は考えています。
私は一応、エインフェリア達と信頼関係を結べていると思いますが、英雄である彼らは自分の意志を優先します。
そのために、戦場ではこちらの命令を聞いてくれない事が多々ありますし、戦闘が終了しても大人しく戻ってはくれません。
とある腱に弱点のある英雄は玉藻御前との戦闘の際、顕現と同時に大将首を狙い突撃して尾獣に袋叩きにあって呪力を無駄にしてくれました。
事前に捨て駒にした猛犬がいたにもかかわらず、見事にやってくれました。
とある薔薇の皇帝は呪力が尽きるまで必ず顕現しますし、他のほとんどのエインフェリアにも言えるのですが、この薔薇の皇帝は特に定期的に呼び出さないと機嫌が悪くなります。
そして、顕現すれば無駄遣いをするのは良いのですが、沙耶宮馨と意気投合して女性をナンパしに行き、連絡先として私の家の電話番号を教えるのはいかがなモノかと思います。
とある大陰陽師はまつろわぬ神として顕現した時はこちらを罵倒してきたというのにエインフェリアとして顕現させれば従順なので寝首をかこうとしているようで安心できません。
まぁ、敵に対する罵倒は私が以前受けたものなので敵対者に対してはしているのかもしれませんが、普段は仲の悪い玉藻と策略を練る姿を見ると安心事が出来ない私が居ます。
一癖も二癖もあるエインフェリアの中でディルムットは呪いの黒子があり、騎士という事にこだわる事はありますが、それでも、他の連中の使い勝手の悪さに比べたら問題にもなりません。
それに、今の私にとってはその呪いの黒子こそ必要になります。
やはり、翠蓮に背中から刺されて殺された事が堪えた為か、女性とはしばらくそういう関係になりたくないと思っている自分がおり、女性関係には消極的に成っています。
しかし、今では顔も思い出す事が出来ない友人が言っていた言葉にこの作品が主人公のハーレムモノだという話が合ったような気がする為です。
姿は6歳児で原作まで何年あるかもわかりませんが、注意する必要を感じました。
彼ならば女性除けとして適任です。
もちろん、それだけではありません。
私は6歳児でしかない以上、どうしても保護者は必要になりますし、その役目を玉藻に任せるととんでもない事になりそうで避けたかったのです。無駄なことかもしれませんが。
そうなってくると誰が適任かという話になりますが、先ほど話したように寝首をかきそうなものや自分勝手な行動をしそうなヤツ、そもそも、その役目を放棄しそうなヤツばかりで困ります。
もう1人ほど真面目に果たしてくれそうなモノはいますが、外見が強面で女性除けにはなりそうにありません。
熟慮した結果、消去法で彼になりました。
そんな事を考えているとディルムットが語り掛けてきました。
「主よ、いかなるご用でしょうか?」
「あなたに頼みがあります」
「いかなる頼みでしょうか?私に出来る事なら何なりとお申し付けください」
「先ほどまでの話は聞いていましたね」
そう言うと物腰を崩すことなく応えてくれました。
「多少の混乱はいたしましたが、内容は把握いたしました」
「驚いた事でしょう」
「確かに驚きは致しましたが、我が忠誠を曇らす事はありませんでした。何なりとお申し付けください」
そう言って、私に対してこれまでと変わらぬ忠義を尽くしてくれることを誓ってくれました。
やはり、彼以外は考えられませんね。
そう誓ってくれたディルムットに騎士に駒を授ける様に差し出します。
「受け取ってください。これからはエインフェリアとしてではなく、我が眷属の騎士として忠義を尽くし、私を支えてください」
その言葉にどこからか複数の疑問の声が聞こえてきましたが、空耳であると否定する事にしてディルムット様子をうかがいます。後が怖そうです。
ディルムットは何かを押し殺したように体は小刻みに震えており、目を閉じて考えているようでした。
もしかして、私に仕える事が嫌なのではと考えた直前に答えが返ってきました。
「大変名誉なことなのですが、辞退させていただきます」
出てきた言葉は拒否の言葉なので内心慌てますが、それを外に出さずに理由を聞きます。
「それはなぜですか?」
「私などがその様な立場に立つことが恐れ多いからです。私を超える偉業を達成された方はエインフェリアの中に多数おられます。その方を差し置いて自分が選ばれる事などあってはなりません。その方の中からお選びください」
本当に彼は謙虚な人物なんでしょう。どこかの自信過剰な薔薇の皇帝に爪の垢を煎じて飲ませたいですね。
確かに偉業ならあなたを超える者はいますが、性格的に考えるとどいつもこいつも私のいう事を聞いてくれそうにありません。
まぁ、元一般人の転生者では威厳もないのでしょうが。
ですが、今は目の前の男を説得しないと。
「そうでしょうか、あなたの語られている話は十分な偉業だと私は思うのですが」
「その偉業に問題があるのです。私は主君から婚約者を奪った事による逃避行こそが、偉業だと言われています。そのような者の首輪を外すなど愚かな事です」
どうやら、彼の本音はそこらへんにあるのでしょう。
確かに彼は主君から婚約者を奪う事になりましたが、それはグラーニア姫によりゲッ
シュに縛られてしまった結果ではないかと思ています。
彼の本心は裏切りを良しとしなかったはずですから。
ですから、彼に聞いてみる事にしました。
「ディルムット、あなたは主君であるフィン・マックールから婚約者であるグラーニア姫を初めから奪いたかったのですか?」
「その様な問答は意味がありません。自分は事実としてグラーニア姫を奪いました。そこにどのような事実があったとしても意味の無い事です」
「ですが、あなたはグラーニア姫のゲッシュによって皆の起き出す前に、自分を連れて逃げなければ破滅が訪れるとされてしまい始めは仕方なく逃げたのではないのでしょうか?」
ケルト神話の英雄はゲッシュによって縛られている事が多く、その事が死因に繋がら事が多くあると感じています。
ディルムットもこの事が後の死因に繋がっていますし、どこかの猛犬もゲッシュによって力を奪われて死亡しました。
本当にケルト神話でゲッシュを持っているのは致命的ですね。
「その通りですが、その後私はグラーニア姫と情を交わしました。その時点で私は騎士として有るまじき行いをしてしまいました。騎士として失格でしょう。そのような者を騎士とするなど主の品性が疑われてしまいます」
私はそのような事を気にするほどの格を持っていないのですが、どうやら、彼にとっては気になるようです。
しかし、どうしたものでしょうか。説得するのが難しいですね。
このままでは彼を女性除けにする事が出来ません。
説得の為に考えているとふと気になる事に気がつきました。
私は翠蓮に背中から刺された経験の為に女性問題を避けるために彼を女性除けにしたいと考えています。
そうなると彼もここまで拒否するのは生前の様に私から女性を虜にしてしまう黒子によって婚約者などを奪ってしまう事になる事を恐れているからではないでしょうか。
どうやら説得のための糸口が見えてきたようです。
「ディルムット。もしかして、あなたは再び主から恋人などを奪ってしまうかもしれない事を恐れているからではないのですか?」
そう言うとディルムットの肩が震えました。ビンゴの様です。
「どうやら、その事を気にしているのですね。私の事を気遣ってくれてありがとう」
「主よ」
ディルムットは感謝された事に驚いているようですが、その様な事で驚いている暇はありませんよ、ディルムット。直ぐにも説得させて貰います。
「ディルムット。過ちを犯さない存在はいません。ですが、過ちから学び同じ過ちを繰り返す事がないようにする事は出来るはずです」
「しかし、主よ。自分はこの黒子がある限り、同じ失敗を繰り返しそうで怖いのです」
「確かに同じ失敗を犯すモノもいます。ですが、私は信じています。今まで過ごし共に戦った戦場からあなたの忠義を」
そう言うとディルムットの目から涙が流れます。その涙に込められているのは何なのでしょうか。
生を再び与えられて忠義を尽くす事が出来る喜びでしょうか、それとも、自身が忠義を尽くす事が出来なかった主君に対する自戒の念でしょうか。
私にはわかりませんが、現在、私にある良心が痛みで悲鳴を上げています。ですが、引くわけにはいきません。
「それに私はあなたの魅了に負ける様な女性と付き合い訳にはいけません。私の力はこの世界ではどの程度かはわかりませんが、それでも、下から数えた方が早いというわけはないでしょう。この世界に与える影響を考えれば、私はそう簡単に伴侶を選ぶことは出来ないのです」
そう言うとディルムットは沈痛そうな表情になり、私に対して何とも言う事が出来ない自分を恥じているようでした。
私の感情としては翠蓮に刺された事でしばらくは女性との付き合いを減らしたいと思っているのですが、このままではいけない事もわかっています。
「ですので、あまり気にしないでください」
「ハッ!」
そう言ってディルムッドは膝を地面につき、私に対して臣下の礼を取りました。
「もう一度聞きます、ディルムット。この騎士の駒を受け取って騎士として私の事を支えてくれませんか」
「我が主よ!これからはなお一層の忠誠を誓う事を誓います!」
そう言ってディルムットは騎士の駒を受け取ると胸の中に入り呪力で構成されていた体が変化して受肉されました。
ここにフィアナ騎士団随一の騎士と言われたディルムット・オディナが私の騎士として復活しました。
「これからもよろしくお願いします」
「ハッ、お任せ下さい」
次は住居を確保する必要があり、玉藻に戻ってきてもらう必要があります。
しかし、今の彼女には話しかけたくないにですが、仕方ありません。
「玉藻、話は済みました。戻ってきてください」
「ウフ、ウフ、ウフフフフフ。ご主人様。なんておいしいんでしょう。ウフフフフフ」
黒い瘴気を出しながら微笑んでいる玉藻は不気味です。このまま、ほって置きたい所ですが仕方ありません。
「玉藻、あなたにしか頼めない事があります。やってくれませんか」
「ご主人様のお願い!わかりました!この玉藻にお任せ下さい!」
そう言って正気に戻った玉藻はこちらを向き直し答えました。
「拠点になる住居を探す必要があります。お願い出来ますか」
「わかりました。ご主人様との愛の巣を手に入れるのですね!玉藻頑張ります!」
「それなら心配ないよ。既に確保しているから」
どこかずれた事を玉藻は言った玉藻に対する願いを神は既に確保できている事をこちらに伝えてきますが、私にはその理由を理解できているので答えました。
「断ります!」
こちらを甘く見ないでください、神様。
ディルムットに対する説得が強引になってしまったように感じます。
文才が欲しい。