みみのこ・アップ・ライジング   作:紅茶オレを

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9 ユウジョウ!

 

 

 開かれたゲートを潜り抜け辿り着いた先は、これまでいた場所が室内とするなら正しく野外と言うにふさわしい所だった。

 太陽灯のようなのっぺりとしている、生活の為まんべんなくその地を照らすような平べったい明るさではない。

 あんなものとは違う。みみのこが……というよりも、生物ならば傍受すべきであろう輝かしい光。

 

「ここが……」

 

 どこまでも続く真っ直ぐな道路。左右には地平線まで続く穴ぼこの荒野。

 あとは真っ黒の天蓋に並ぶ幾つもの光──コシアの遺した資料からすれば()とされるであろうそれらが点々と輝いていた。

 思わず車を止めて窓を開け、身を乗り出して見てしまう。

 

 そうか。これがコシアの恋焦がれた宇宙。

 ここがマイクルの望んだ、人々の住まう地上……?

 

「……何もない、な」

「ですね。そして誰も」

 

 でこぼこの地上には何もない。

 さっき言った通りのものが並んでいるだけで、それ以上の何も存在していない。

 どこまでも真っ直ぐ続くこの道路以外は。

 

「何のための道でしょう」

 

 かつて存在していた文明の痕跡というには作りたてほやほや感あふるる、さっきまで走ってたとこの延長としか思えない。

 道はどこかへ続くために、何らか目的のために造られる。マイクルの出した質問の答えは、確かに分からないな。

 だいたいなんで地上はこんなにすっからかんなんだ。もっとこう、せめて建物のひとつやふたつあってくれていいんじゃないか?

 

「とりま走るか」

「死ぬらしいですけどね」

 

 ああそうだそれだ。あそこまで止まれだの危険だのってのも結局どうなんだ。

 恐れ知らずにも荒野のハイウェイを駆け、だがそれらしい危うさはこれっぽっちもない。

 開けっ放しの窓の外は不気味なほど静かだ。

 

 こんな地上、秘匿するほどの価値があったのか? 価値が無いから俺達を招待したのか?

 あるいは、さらに隠したい何かが──

 

 

「──はじめまして、オンブラーニンジャです!」

 

「なにっ!?」

 

 かなりぶっ飛ばしてる車の横に、ぴったり並走しているみみのこがいる!

 自身の足で走り、追いついている! なんて速度だ! 

 そしてなんて勢いの自己紹介だ! 俺の十八番である「誰だお前はッ!」が潰された! なるほどッ!

 

「えっとドーモ、オンブラーニンジャ=サン! マイクルです!」

 

 悠長に挨拶しとる場合かマイクル!

 ブレーキを踏んでタイヤを滑らせ、オンブラーと名乗るみみのこを轢き飛ばそうかと思ったがそう簡単にも行かないらしい。

 軽々と跳んで屋根(ルーフ)に乗られた。なんちゅう身体能力だ。

 

「イヤーッ!」

「うわっ」

 

 屋根を突き破った突きが側頭部を掠る! 足だけじゃなくて手刀も強い!

 だが幸いにも、こちらの正確な位置までは分からないようでそれっぽい場所へ攻撃を仕掛けているだけっぽい。

 手探りとはいえ上からじゃ一方的に耳をもがれるな。どうにか反撃して状況を打破せねば勝ち目は当然ないか。

 

「マイクルは防御を!」

「はい!」

「振り落としてやる」

「イヤーッ!」

「させない!」

 

 俺の耳根っこを掴みかけたオンブラーの手をマイクルが叩き落とすと同時、ブレーキを踏み込みハンドルを捻じ曲げタイヤに悲鳴を上げさせる。

 しかし起伏もカーブもない真っ直ぐな道だからか、オンブラーを落とせる程のエネルギーにはならなかった。

 ぶっ飛ばして轢き飛ばしたら安上がりでよかったんだけどな。となれば方法は一つ。

 

「ハンドル頼んだ!」

「なにを!?」

「戦うのさ」

 

 雨のように降り注ぐ刺突手によって開けられた穴の隙間から一手読み拳を振り上げ、カウンターでばごんと相手の指を破壊。

 かーらーの!

 

「グワーッ!?」

 

 そのまま手首を掴み、引き込みに便乗して俺の身体を持ち上げてもらうぜ。

 

「うそぉ!?」

 

 マイクルは驚いているけどこうでもしなきゃだろ。

 んじゃハンドルアクセルブレーキサポートよろしく。

 

 車の屋根を突き破り、もう既に穴ぼこだらけで不安定だが足場として着地。

 当然向こうが掴みかかってくるのは読めているので、あえて立ち直らずすぐさま下がってボンネットへ。

 位置関係は一段下という耳もぎバトルにおいて不利な場所だが、相手の癖を利用してやろう。

 

「よう忍者。俺は名無しのみみのこ」

「ドーモ! オンブラーニンジャです」

「おらぁ!」

「ヌゥッ!」

 

 挨拶がため頭を下げた瞬間に踏み込んで手を伸ばし、突き出たその耳一本をもぎとってやる。角度的に両方はキツかった。

 確かに勝負は真剣勝負と行きたいが、もうお前は手を出してたし戦い始めてるからな。

 勝手に挨拶乗って頭下げたんだから文句言うなよ!

 

「ならば!」

「あ、逃げんな!」

 

 折角車の上とかっていうあぶねぇとこまで来たのに降りるなよ!

 

「将を射んと欲すればまず馬を射よ! イヤーッ!」

「うわぁ!」「マイクル!」

 

 ぱぁんと音が弾け、車ががくんと傾き蛇行を始める。

 なんだ、なにをした。オンブラーの手から何かが発射されたっぽいけど、何を出したんだ。

 

「貴様にもくれてやろう!」

「あぶねっ!」

 

 条件反射一本勝負でその投射物を避ける。掠めて髪の毛が数本散った。

 これあれか、手裏剣か? ワオ! 忍者っぽい!

 っとと、うわあんまり揺らすなマイクルさんよぅ! 俺が落っこちたらどうする!

 

「違うんです、タイヤが!」

 

 パンクしたんか。がんばってねー。

 

「急に雑!」

「ハイクを詠め、カイシャクしてやる!」

「意味の分からない事を!」

 

 飛び掛かったオンブラーの手と俺の手が交差したその時、車が大きく揺れてバランスを崩す。

 

「ぐえっ」

 

 仰向けに倒れた俺へのしかかるオンブラー。マウントを取られた!

 

「イヤーッ!」

「……っ」

 

 もはやこれまで。とみた、その時!

 

「ナ」

 

 車中のマイクルと目が合った俺は両手を直上のオンブラーではなく、頭上──すなわち車の側面へと出し、備える。

 立っていれば降参にも思えた姿勢だろうが、当然ここで負けをあっさり認める俺でも耳をもがれる俺でもない。

 マイクルの素晴らしいドライビングデクニックと気合いの乗りよう&俺様ちゃんへの熱い期待信頼愛情真心に味とコクのど越し爽やかさその他色々が加われば!

 

「ニィーッ!」

 

 狙い通り、窓の開いたままの運転席側のドアが開け放たれていた。走行中にも関わらず、マイクルは俺が手を伸ばした瞬間に応えたのだ。

 その窓枠へ片手を掛けた瞬間に車はわざとらしく大きく左右へ揺れ動き、ガードレールへぶつけられ勢いよく閉じるドアに俺は振り回される。

 腕に千切れるような痛みが走るがそれでいい。もう百点満点の解。マイクルは俺のやりたい事ちょー分かってる。

 

「グワーッ!」

 

 異常に発達したみみのこの腕、特に握力によって俺は傷みさえ耐えれば無事だ。

 だが俺へ全体重を預けていたオンブラーは、俺を抑えつけていたあいつはどうなるか。

 

 挨拶中に攻撃されただけで反応できなかったどんくさいやつだ。

 忍者でもないただのみみのこたる者が突然そんなアクロバットを披露すれば、当然理解ができないだろう。

 中途半端に吹っ飛ばされガードレールの向こう側、穴ぼこだらけの荒野に吸い込まれ消えていった。

 

「勝ったと思うなよ……!」

 

 遠くから負け惜しみが聞こえる頃にはもう俺は車内へ滑り降りている。マイクルも終わったと確信して助手席に戻っていて、がこがことシフトレバーを整えてくれていた。

 みみのこファイトは耳をもぐだけが勝利じゃねぇ。

 死因の半数は確かにもがれた事によるものだが、バトルロワイヤルにもトーナメントにも公式で落下死って勝敗が存在するんだぜ。

 

 

「サヨナラ!」

 

 

 後方で爆発四散したであろう叫びと光。どうして爆発するのかは知らんけど、とにかく爆散した。

 確かに身体能力にゃびっくりしたが、ヴェトロやアミーチの猛攻に比べたらあっさりめの勝利だったな。マイクルの助けがあったとはいえ。

 

「両耳無事でよかったです。腕はどうですか?」

「確かに痛むがまぁ上出来だろ。すぐ治る」

「……でも、だいぶダメージ食らっちゃいましたね」

 

 確かに派手な立ち回りはしたけど、疲れただけなら無傷もいいとこだろ。

 

「いや車が」

「あー」

 

 ルーフもボンネットで取っ組み合ってボコボコ、タイヤも片側破裂させられてる。

 まともに走れてるだけでもいいとしようぜ。

 

「であればいいんですけど、うーん」

「んだよ」

「道半ばで車が止まっちゃったら嫌だなぁ……」

 

 だなー。食料持ってきてる訳じゃないし、修理の知識がある訳じゃないし。

 

「嫌な予感がします。勝ったと思うななんて捨て台詞、何も無しに本当に言う耳いるんでしょうか」

「考え過ぎだろ。古今東西どこでも忍者は汚いもんだ。流石忍者汚い」

「それ、忍者の名を冠する正統派なみみのこいたら訴えられますよ」

 

 ヴェトロもアミーチも、なんならテスタ・フレッチャも。

 全員みんな潔い引き際だったってのにオンブラーったら負け惜しみよなー。

 

「勝手に地上行きを許可して襲い掛かってきて、向こうは何がしたいんでしょうね」

 

 そういやそうだな。

 

「道が長くてダレるから来たんじゃね?」

「ロード中のミニゲーム感覚にしては重いですねぇ」

 

 例えはよく分からんが──

 

「──待って」

 

 どした。

 

「右、あっち、砂埃立ってません?」

「んー?」

 

 左ハンドルなので助手席越しに目を凝らす。オンブラーが爆散したのは反対方向なので無関係だし、なんだぁ?

 確かに遠くの方、何もないがゆえそれは目立っていた。

 

「ああもう、看板が邪魔だ」

「急に来ましたね」

 

 さっきまでガードレールだけだったのに、急に広告看板やら標識やらの目隠し来るじゃん。

 

「んん?」

「あれぇ?」

 

 砂埃の向こうに見える黒い影が、でかくなった?

 そりゃもう、マイクルと顔合わせてしまうくらいに。

 

「あ、また」

「気のせいだとは思うけど」

 

 長い看板の裏にその姿が隠れる。

 新しい髪形や服の宣伝をなんでこんなとこで?

 

「いや気のせいじゃないですって」

「明らかにでけえよな!? な!?」

 

 だよなだよなと盛り上がる。最初に見かけた時の倍はデカくなってる!

 砂埃もそれを隠すように広くなってる!

 

「でもあのシルエット、見覚えが……」

「奇遇だな、俺も」

 

 それは俺も思った。

 でもありえないじゃん。絶対に。

 あれがこんなところで、俺達が全力で走ってる横をついてくるなんてさ。

 

「気のせいであって欲しい……!」

 

 看板の裏に再び隠れ、マイクルが祈る。

 

「俺だってそうあって欲しかった」

 

 だが次に見た時。

 それは目の前まで到達していた。

 

 圧倒的な質量、圧倒的な大きさ。

 ちょっとずつ姿を見せるなんてわくわくドキドキなんてなく。

 俺達が察しをつけた瞬間にさも答え合わせかのように、そいつは真隣を走っていた。

 

「ウソでしょ!?」

「……向こうから来てくれるなら嬉しいぢゃん」

「言ってる場合ですか!?」

 

 俺達の真横を、道なきそこを走行している。

 みみのこ数匹分(耳含む)の直径を誇る巨大なタイヤを幾つも装着し、さも当然と言った風貌でそいつはいた。

 

 

「みみのこファイトクラブ……」

 

 

 街、というよりみみのこ世界の中心、みみのこ闘技場。

 そう。あの闘技場が、闘技場の建物そのものが、俺達を押しつぶさんとする質量と化して走行していた。

 どういうことだよ。

 

「速度落として! 突っ込んでくる!」

「遠近感くるうなぁもう!」

 

 闘技場カーがガードレールを粉砕し同じ直線へ並んだ。

 マイクルの言葉にはっと持ち直し、ブレーキを踏んで下がっていなければあっさり踏みつぶされていただろう。

 あれは車なんて言葉で片付けていいもんじゃない。目の前に見える闘技場の足元ではミキサーかシュレッターのように大小様々な機械がうごめき、俺達を飲み込まんとしている。

 

 闘技場へ突撃するぞとはしたけどさ、こうなるのは予想外じゃん?

 バケットホイールエスカベーターが高速道路走ってたら誰でもビビるよねって俺の前世くんが言ってる。

 

「つ、突っ込んできます、突っ込んできますよ!」

「俺達が向かってってるんだ!」

 

 追いかける形になっている場合、先頭が速度を緩めればどうなるか。

 

「戻りますか!?」

「いや……」

 

 否定したが、突っ込んだ所でどうなる? この車も耐久力が不安だ。

 あれは明確にぶっ潰す目的で、蹂躙する目的で迫ってきている。

 みみのこファイトなんて茶番だと言わんばかりに、耳をもぐより物理的に捻り潰した方が早いじゃんってメタで迫ってきている。

 気合と根性を見せた所でどうにかなる訳じゃない。どうすれば……。

 

「っ! 後ろから!」

「なにぃ!?」

 

 真っ直ぐ走るのも大変だって言うのに追撃か!

 

「車を捨てて、逃げましょう。地面の隙間に身を潜めれば、あの大きなタイヤからは逃げられます」

「それでどうなる」

「本気で倒しに来てるんだから無茶です! 僕だって逃げたくありません。ですが、手が……!」

 

 どがどがと騒音を立てる闘技場が迫る。

 いいや、もう角度的に建物すら見えない。

 

「もう、間に合いません……」

 

 煌びやかで華やかな闘技場へ挑むという理想に近づいた結果、見えたのは全てを拒む醜悪で無慈悲な現実ってか。

 こんな危機的な状況なのに、これってなんだか詩的だなぁと呑気な感想しか出てこない。

 トンネルのような暗闇をした車輪群の向こうからは、ちらちらと時折光が漏れ出ていた。

 光……?

 

「マイクル」

「……」

「挑むぞ」

「……え?」

 

 逃げたって無駄な現実の暗示だって言うなら、挑む他ないだろ。

 あの光を目指すぞ。

 

「君だってさっき、気合や根性でどうにもならないって!」

「だからさ」

 

 一番必要なのは!

 

「実力と友情だぁあああああああっ!」

「えぇえええええっ!?」

 

 シフトレバーがごがしゃ、アクセルべた踏み! ぎゅっとシートへ背中が押し付けられる。

 信じろ。怯むな。すくんだら終わり。闘技場に立つ耳はいつだって最後はその実力がモノを言っていた。

 マイクル。俺は今まで気合いと根性だけで生き残ってた風に見えるか?

 

「……え、そうじゃないんですか?」

「そうだったかも。まぁ、()()()信じろって」

 

 急速に迫る闘技場の足元へ潜り込むと、当然深い暗闇が車を包む。

 ライトを点けると目の前にはひとつの機械が出現した。農作に使われる収穫機みたいなやつ。

 

「ワォ!」

「うわぁ!?」

 

 ハンドルを切って急旋回、パンクしたタイヤを利用したカーブですらない一回転。

 正面へ戻した瞬間に逆へハンドル切って、アクセルどーん!

 一瞬後には車のケツをプレス機が掠めていった。本当に殺意の塊だなここ!

 

「前! 前!」

「ああ!?」

 

 今度はタイヤ! タイヤにタイヤにタイヤ!

 そりゃこんだけおっきな建物転がすにゃいっぱい必要だよね!

 ぱぁん!

 

「な、何の音!?」

「わり、もう片っぽのタイヤも消し飛んだわ」

「ここで!?」

 

 現在地は闘技場の半ばを過ぎた程くらい。

 アスファルトにタイヤを切りつけられ、ついに前輪二つがお亡くなりになられた。火花がきれー。

 

「次避けられますか!?」

「身を任せるしかないな」

「チープなスリルを楽しんでる場合じゃないですよ!」

「怯えんな!」

 

 穴ぼこの屋根へ飛び出し、この身を外気に晒す。

 下でマイクルが大慌てでハンドルを握りつつ絶望の叫びをあげているが、怖がる必要ないぞ。

 

「いつだって前を向いてる奴が活路を見つけられるんだからな!」

 

 闘技場の果て、トンネルの出口のようなそこがきらりと光って。

 

「キャッチ!」

 

 飛んできたそれを、放たれてきたワイヤーロープを掴んで車体にフックをかける。

 俺が座席へ戻った瞬間に車体が大きく加速し、一瞬でタイヤ群の隙間を突破して救い出してくれた。

 ったく、最高で最高な最高だぜ。

 

「い、いったい何が起きたんですか……?」

「言ったろ。一番必要なのは実力と友情だって」

 

 俺達を間一髪で救い出してくれたウィンチで巻き取ってくれたのは別の車両。

 闘技場を先回りして救い出してくれたのは──

 

「──け、軽トラぁ?」

 

 見覚えないか? この軽トラはさ、俺達も乗った事あるだろ。

 

「え、じゃあ!」

「俺も見つけた時は目を疑ったよ」

 

 軽トラの荷台から徐々に美しい金色の髪が、赤いドレスが姿を現す。

 後光のように機材を背負い、ドットサングラスを装備したその者とは!

 

「おっ嬢! おっ嬢!」

「ういー、どもー」

 

 テスタ・フレッチャ!

 反闘技場を掲げながらも支配下にあり好転に恵まれなかった、イストティートの長!

 

「地下からなら近道できるから、先回りしたんよ」

「“ちか”だけに!?」

「ウィンチ切ったろかな」

 

 マイクルにぶん殴られた。ごめんて。

 

「考えたんよ。できることないかなーって」

「ありがとうお嬢。助かった」

「ん。今こそ再び言うて何もせんかったらマイクルにも悪いからなぁ」

 

 最高。ゥ漢を見せたね。

 

「任せとき」

 

 お嬢が腕を組み仁王立ちすると機材が光り輝き、スピーカーからデンドンデンドンと大爆音でBGMが鳴り出した。

 これは、パリピ砲の一種?

 

「お、お嬢!?」

「道は開いたる」

 

 ばん、と荷台の足元から二本の細長い物体が射出され闘技場へ突き刺さる。それにはワイヤーが付いていた。

 いやただのワイヤーじゃない。これは電線だ。

 発射されたのはアミーチによって真っ二つにされた電信柱だ!

 

「すーぱー……」

 

 お嬢の両手には二つの(のこぎり)が握られている。

 古老アミーチが持っていたあの電鋸(でんのこ)だ。

 

「いなずまぁ……!」

 

 闘技場に突き刺さった電柱が電気を奪い、電線を伝ってお嬢背部の機材へ。そしてその電力は、両手の鋸へと全て注ぎ込まれている!

 アミーチが扱っていた時とは違う。あれとは規模が全く違う。

 あり得ない程のスパークが立ち上り、両腕を掲げたお嬢のそれは、まるで巨大な両耳のように輝いていた。

 

 

耳鋸(みみのこ)ォ!」

 

 

 目も耳もぶっ潰れる大迫力。

 振り下ろされたそれは、全てを白く染めていった──

 

 

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