艦隊これくしょん~明かされぬ物語~   作:kokonoSP

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やっと更新出来ました。
最近は天気やら気圧やらがコロコロ変わるので眠れない夜が続いて不眠症が続いてて辛かった。
春眠暁を覚えずっての中学で習いましたが、私の場合は春眠を覚えずって状態でしたよ。

今回は戦闘回(笑)
自分に戦闘シーンはまだ難易度が高かったようです。
ま!いいんですけどね、別に!お、落ち込んでなんかないし!(´;ω;`)

あと自分の作品読んでてすごく思った事が一つ。
『あれ?なんか龍田さん超ヒロイン?』
そんなつもりは無かったはず……はず…なんだ。

そんなこんなで、どうぞ!


弱肉強食

 

~菊月side~

 

 暗い海の上で数多の火花が飛び散る。

 そのうちの一つで私と多摩がコンバットナイフと鍵爪の形をしたクローで激しい攻防を繰り広げていた。

 多摩が右手に付けたクローを上からクロスに振り下ろす。

 それを左に倒れる様に紙一重で避け交差する様に右のコンバットナイフを振り上げ、向かって左の肩口を狙う。

 

「遅い!」

「にゃ!?多摩は……こんな所で負けないにゃ!」

 

 ナイフが多摩の振り上げた左手のクローで弾かれるが、その威力を殺さずに体ごと回転し廻し蹴りを腹部にお見舞いする。

 

「ぐふっ!?」

 

 水面をバウンドしながら多摩が吹っ飛ぶ。

 一時的に戦闘が中止したのでグリップを握り直して警戒を周囲警戒に切り替えながら多摩に話しかける。

 

「多摩、お前では私に勝つことなど到底不可能だ。諦めろ」

「随分な自信だにゃ……菊月。でも、もう通用しないにゃ」

「ふん。完膚なきまでに沈めないと納得できんか」

 

 握り直したナイフを逆手に持ち眼前で両腕をクロスさせて構える。

 多摩もクローを空手の正拳突きに似た形に構えを取った。

 似た…と表現したのは空手の正拳突きは掌を上下に向けて握り拳を作るが、多摩は掌を横にしてクローを構えているからだ。

 

「…いくぞ!」

「来るにゃ!」

 

 姿勢を低くして駆け懐まで入る。

 ナイフの有効範囲(coverage)に入った所でクロスした腕をXを描いて振り下ろし、そこから右手に逆手で握ったナイフを首筋へ向けて振り上げる。

 

「シッ!」

「二度も同じ手は喰らわないの…にゃ!」

 

 後ろに倒れるよう回避され、バク転の要領で顎を蹴り上げてくる。

 

「見通せないと思ったか!」

 

 顔を上に向け顎に当たるはずの足蹴りをギリギリで回避、と同時に振り上げた右腕を曲げ上がってきた足首を曲げた腕で受け止めた。

 

「にゃ!?にゃにゃ~!?」

 

 バランスを崩した多摩は後頭部から水面にダイブし、私は腕で受け止めた多摩の足を軸に反時計回りで180度回転して多摩の足を右の脇に挟む。

 

「くっ…ふん!」

 

 多摩の頭が水に浸かっていたため、少し振り回すのに重かったが何とか勢いをつけてさらに反時計回りへ半回転。 

 遠心力がついた所で足を脇から離す。

 

「にゃぶん?!」

 

 再度後頭部から水面へ多摩がダイブする形になり仰向けに水面へと浮かぶ。

 

「これで終いだ!」

 

 多摩のバク転とは違い、空に高くバック宙返りをしてちょうど真上に来る位置で落下を始めた。

 頭から落ちていく途中、逆手に持っていたナイフを二本とも上に持ち直し正面に構える。

 両肩を狙って自由落下からの刺突を繰り出す。

 ところが……

 

「そこにゃ!」

 

バシュシュシュ!

 

「!!……ぐぅ!?」

 

 水面に浮かんでいた多摩が両腕のクローをこちらに向けた瞬間、鍵爪の部分が片手で3本、両腕で計6本のナイフと化した鍵爪が飛来し私を切り裂いて後方へ飛び去っていった。 

 その衝撃で私もバランスを崩し、左肩から水面へ落ちた。

 

(不味い!躊躇してたら殺られる!)

 

 海水に沈んだ私は、水面へ浮上せずにあえて水中へ潜る。

 ある程度潜った所で上を向き水面へ向けて魚雷を発射する。

 

(お願いだ。発射してくれ!)

 

パシュ!

 

 運良く一門だけ酸素魚雷が射出され海面へ一直線に駆け上ってゆく。

 

どごぉぉぉおおおお!

 

 水面近くで魚雷が爆発し、そこから生まれた水の壁が私を翻弄しながら押し流してゆく。 

 後は水面まで浮上し態勢を整えるだけだ、浮上した先で相手と鉢合わせしない事を祈るだけだ。

 

「ぷはぁ!はぁ…はぁ…」

 

 水面から顔を出して空気を肺へ送り込む。

 息を整えながら海上へ立ち上がり周囲を確かめる。

 

「な……なんて無茶苦茶な奴だにゃ」

 

 少し離れた所で多摩が左腕を抑えながらも立っていた。

 私の狙いは外れた様だがナイフは当たっていたようだな。

 だが、それよりも早く確認しなければいけない事に注意の全てが向いた。

 

「提督!提督大丈夫か!?」

《…うるせぇな。黙って早く片ぁ付けろ》

「…嗚呼。了解した」

 

 私は視線を下ろし、両の脇腹を見た。

 6箇所、皮どころか肉まで抉られ血が流れ出している。

 だが、痛みを感じたのは最初のみ。

 だから水中に沈んでも冷静に対処出来ていたのだがな。

 そんな悲惨な状態で血が流れだしているのにも関わらず、私の頭には血が上り血液が沸騰している様な錯覚を覚えた。

 

「多摩……やってくれたな」

「ただでやられる程、多摩は甘くないにゃ」

「そうだな。正直舐め腐っていたよ貴様の事を」

「にゃ?」

 

 私の口から汚い言葉と侮辱を聞いて怒った様に眉を寄せながらも警戒心を高めていく多摩を冷静に……冷淡に見つめる。

 

「最初は無力化して助けてやろうと思ったが、やめた。貴様は私の大切なモノ(ひと)を傷つけた」

 

 そう告げながら瞼を閉じる。

 

 目を閉じ、光を遮断、耳を閉じ、音を遮断、細胞から神経に届く感触の全てを遮断。

 菊月(わたし)という器が感じる全てを断ち切る。

 そして、残った菊月(わたし)という魂を感じ取る。

 感じ取った菊月(わたし)を徐々に、ゆっくりと大きくしてゆくイメージを作り出す。

 一定の大きさに膨張した所で、今度は一気に圧縮させる。

 最後に手で覆えそうなほどにまで縮めた魂を開放させると爆発的に大きくなった。

 

 

 

ピピピ!

『菊月』マスターアカウント…………起動シマス

 

 

《菊月……使うのか?》

「ああ、提督。もう容赦はしない」

《そうか、なら……》

 

 

 

ピピッ!

『菊月』ノマスターアカウントニ変更ガ適用サレマシタ

コレヨリ『菊月』ノアカウントレベルヲ【シルバー】カラ【コパー】ヘ変更サレマス

 

 

「なに!?提督、どういう事だ!」

《お前がそのままで戦っていたら周りに被害が生きかねねぇだろ。それとも、戦いきった後で深海棲艦に襲われたいドMなら構わねぇがな》

「……了解した。このままでいい」

 

 不承だが、それで提督との通信を終わらせ、多摩の方へ意識を向けた。

 向こうは私が沈黙しているのを見て好機と見たのか、艦に浸水した水を排水したり修復したりしている。

 

「休憩時間は終わりだ多摩。そろそろ本気で決着(けり)をつけるとしよう」

「修復までは時間が無かったかにゃ。だけど排水の方は終わらせたからさっきよりは身軽に動ける様になったにゃ」

「ちょっと身軽になったくらいで私が倒せるとでも?」

「確かにそれだけじゃ多摩に勝ち目は薄いかもしれないにゃ。けれど、菊月は浸水した水を出し切れてないみたいだからこっちの有利にはなってる筈にゃ」

 

 余談ではあるが、艦娘化した艦娘の艤装に海水が浸水した場合の見分け方は服装を見ると分かる。

 浸水している場合は服がびしょ濡れになっており、そうでない場合は服は濡れない。

 まぁ水飛沫が服に付着する事はあるが、それで服が濡れる様な事は起こらん。

 勿論の事だが艤装を外せば服も普通に濡れるぞ?

 

「浸水など大した有利不利には繋がらん」

 

 そういって私はナイフを二本とも太ももに取り付けた鞘に戻してから右腕を軽く持ち上げると袖口から水がジョボジョボと蛇口を捻ったかの様に溢れ出して海へ流れ出してゆく。

 

「っ!?排水の速度がおかしいにゃ!?」

「それこそ、妖精(乗組員)の質が違うさ」

 

 袖口から水が滴る程度にまで収まった所で腕を払い水滴を飛ばす。

 そして決着を着けるべく懐から例の鉛筆モドキを取り出した。

 

「こうなったら、最後まで足掻いて足掻いて足掻きまくるにゃ」

「さて、そんな暇があればいいがな」

 

 鉛筆モドキの先端を折り少々待つと発熱が始まったらしく全体が熱くなってきた。

 このままいけば中の薄いプラスチックが溶け出し、中でリンと発火したリチウムが化学反応を起こせば折った先端部分から煙が噴出されるだろう。

 

「さて、これで終演を飾ろうか」

 

 鉛筆モドキの煙幕弾を私と多摩の中間へ投げ込むと、ちょうど化学反応が起こったらしく一気に煙が広がっていった。

 

「にゃ!?何も見えないにゃ…「どこを見ている。私はここだぞ?」…っ!?」

 

 私は艦娘でも有り得な…くは無いが、恐らくここまでの速度を出せるのは島風くらいのものだろう。

 どう移動したかと言うと単純な話。

 煙で一体が白く覆われると同時に煙を回り込む様に迂回して多摩の後ろに回っただけだ。

 バレないよう水飛沫を上げずに素早く移動するのは"今の私には"難しいが、抑えることは可能である。

 

「いつの間に!」

「これが実力の差…だっ!」

 

 多摩の背中に思いっきり右ストレートで殴り吹き飛ばす。

 

「まだ終わってないぞ」

 

 吹き飛ばした方へ全力で駆け煙の中で多摩を見つけた瞬間上空へ高く飛び上がる。

 今度は頭からではなく足から飛び込んでいって起き上がってきた瞬間、多摩の胸に飛び蹴りをかます。

 

「はぐぅ!?に、にゃぁぁ……」

 

 真面に飛び蹴りを受けた事で肺の空気を押し出したのか息をしようと口をパクパクしている。

 それでも何とか立ち上がり体制を整えてはいるが既に涙を流しまくり、手足はガクガクに震え、手に付けた手甲がカチャカチャと鳴いていた。

 だが、私の大切なモノを傷つけた事に変わりは無いので容赦はしない。

 

「これで本当に終いだ。多摩………あの世で先に待っていろ」

 

 一気に加速を付け、多摩の目前まで飛び込み鳩尾を貫手(ぬきて)で貫く。

 

「かひゅ!球磨……木曽………すまない…多摩は先に…沈むにゃ…お別れにゃ」

 

 それがこの時聞いた多摩の最後の言葉だった。

 

 

~皐月side~

 

 

「姉貴っ!?姉貴ぃぃぃいいいいいい!?くそぉぉぉおおおおおお!!」

 

 菊月と天龍が他で戦っている間にボクは木曽と切り結んでいた。

 木曽は細い長剣を両手で握り、ボクは菊月とお揃いのコンバットナイフを二刀流で木曽の剣技を危なげなく捌ききってる所で菊月が多摩に貫手で胸を刺した場面を目撃した。

 ボクは菊月の風上に居たらしく煙幕が張られる事は無く、煙が晴れていった所で菊月が多摩の胸部に手を伸ばしていて多摩本人は手足をピクリとも動かさずダラリと手足が重力に従って垂れている。

 木曽がそっちに行こうとしたが間にボクが入り進路を立つ。

 

「退けぇ皐月ぃ!退かねぇとぶち殺す!」

「あはは!ボクとやり合う気なの?可愛いね!いいよ通りなよ。その代わりにボクは天龍の方に加勢させて貰うね。球磨を先に倒した方が効率はいいし」

「このっ!外道がっ!」

「外道……外道かぁ。確かにそうだね。でもねぇ、この状況だったらボクでなくても皆同じ行動を取るよ」

 

 そう、カナリアに居た艦娘なら全員ボクと一緒だろう。

 ここで木曽が菊月の所に行っても多摩は戦闘不能、木曽と1体1に持ち込める上に今の菊月なら難無く木曽を倒せる。

 それに比べたら、よっぽど球磨の方が厄介だ。

 武器が鍵爪という特殊な武器からも想像できるけど、その攻撃方法もトリッキーな技が多いから天龍は苦戦するだろうし。

 自分自身の冷めた思考に、染まってるなぁと思いながら木曽に視線を向けると本当に視線だけで人を殺せそうなほどに睨んできていた。

 

「止めてよ。そんな目で見るの」

「出来るわけねぇだろ!目の前で自分の姉がやられたんだぞ!皐月に今の俺の気持ちが分かるか!」

「っ!………そうだね、分かる訳ないね。だったら……さ?」

 

 両手に持ったコンバットナイフを強く握り締める。

 気持ちを爆発させない様に強く……強く。

 

「本気で私を倒してみなよ。愛しい家族を取り戻すために」

「言われなくてもそのつもりだ!」

 

 木曽が初速から爆発的な速度で距離を詰めてきた。

 そして上段から振り下ろされる一閃を紙一重で避ける。

 自分の中で燃え滾っていた気持ちが急激に冷え冷静になるのを感じながら、最終確認の様に先ほどの台詞を再度言い放つ。

 

「ボクとやり合う気なの?可愛いね!でも、戦場で相手の実力を瞬時に見抜けないと…死ぬよ?」

「ほざけ!」

 

 叫びながら今度は下段からの切り上げを放ってくるが、それも紙一重でバックステップを踏み……

 

「そこだっ!」

 

 切り上げの途中、中段まで剣を引き上げた所でタメ無しの突きをボクの心臓を一突きにしようと迫る。

 だけど、そう来る事も読み着地した足で再度バックステップ回避を取った。

 

「ふぁぁー、ボク、マジで死ぬかと思ったぁー…」

「くっ!」

 

 棒読みで木曽を挑発させると顔を真っ赤にして剣を構え直している。

 だが、その反応に嬉々とするどころか落胆を覚えた。

 

「やっぱり君じゃボクには勝てないよ、木曽」

「やってみなけりゃ分かんねぇだろ!」

「わかるよ。多分、何回繰り返しても同じ結果にしかならないさ。万が一、なんてこともなく…ね」

「避けるのが精一杯だった癖に」

 

 そこまで分かって何故その先にまで思考が回らないのだろう。

 不思議に思いながらも、自分も艦娘として生まれ変わった当初は同じ……いや、それ以下だったんだろうなと懐かしい気持ちが僅かながらに現れる。

 

「なら、ボクも攻撃させて貰おうかな」

「っ!」

 

 先ほどの木曽を真似るかのように一気に距離を詰めて懐の一歩手前で急制動をかける。

 その反動で体が前に倒れ込もうとするが、その前に海面を強く蹴る事で体を軸に縦回転廻し蹴りを木曽の脳天目掛けて叩き込む。

 しかし、動作が大きかったらしくギリギリ剣で防御され、剣と脚部装甲が火花を散らす。

 

「ぐ…ぐぐぐぐ……っらぁ!」

「うわっとと」

 

 もう少しで押しきれるかどうかという所で威力を殺されて弾かれたが、着地の瞬間に再加速を掛けて今度は懐に入り込む。

 懐に入り込むまでに双小剣を鞘に収め右手を前に持ってくる。

 

川掌(せんしょう)!」

「がぁ!」

 

 木曽の胸部に手を当て一気に押し出す。

 するとまるで木曽から獣のような声を発しながら2mほど吹き飛び、転びはしなかったモノの膝をつき胸を押さえ込んで空気を取り込もうと荒い息を吐いている。

 

「木曽、もう君は戦えないよ」

「はっ…はっ……な、にをした、んだ」

「川掌を打ち込む時に発勁(はっけい)で内蔵を傷つけたんだ。もう、動こうとするたびに激痛が走るはずだよ。剣を投げ飛ばす事も出来ないと思う」

「何を、言ってるんだ?艦娘がそんな事で……」

「あるよー、艦娘だって人間のような体をしてるんだもん。………もちろん、上級の深海棲艦もね」

 

 途端に木曽が体を硬直させ、こちらを睨んでいた筈の表情も青ざめていた。

 木曽の状況を見た瞬間、ボクの中にあるドス黒い感情を溢れさせていたのを知る。

 

「ごめんごめん。驚かせちゃったね?でも、これで分かったでしょ。ボクとの実力差」

「う、うるさい!」

 

 実力を見せ、ボクの中に潜む力の片鱗を感じてなお、木曽はゆっくりながらも立ち上がりボクに剣を向けてくる。

 

「私は…負けない。負けられないんだ!」

 

 ただ無我夢中に自分の置かれた状況すらも読めず突き走る木曽の姿に可愛くも哀しみが込み上げてくる。

 まるで昔の自分を見ている様で嫌になった。

 だからこそ目の前の過去の自分を映し出す木曽に宣言した。

 

「分かった。木曽がそこまで言うんならさ。ボクも本気で相手してあげるよ」

「はんっ!じゃあ、今までは手を抜いてたと?」

「あれ?気づいてなかったの?ボクは君に一度たりとも"武器を使って攻撃してない"って。あ、最初の狙撃はカウントしないで、だけどね」

「っ!?」

 

 今、気がついたという顔をして驚愕に顔を染めた。

 それほどまでに多摩の事が気掛かりだったのか、単に注意不足なのかまではボクにも分かんない。

 

「驚いてる暇なんてないよ?」

 

 そう呟きながら一気に加速して木曽との距離を詰める。

 なんとかボクの初速に反応して剣を振り下ろしてくるが、紙一重で避けると脇を通り抜けた。

 片足を軸にしてその場で急速回転をし、木曽の背中を取る。

 

「消えた!?」

 

 数瞬の出来事だった為にボクの姿を見失いあらぬ方向にばかり視線を彷徨(さまよ)わせている。

 直にボクが後ろにいる事を見つけられるのだろうけど、今のボクはそのチャンスを逃すほど甘くはない。

 急加速にボイラーが悲鳴をあげる。

 これ以上は危ないと理解はしているが速度を更に上昇させた。

 そして木曽と交差する瞬間……

 

「これで、終わりだぁぁーーーーーー!!」

「っ!」

 

 艤装に目掛けて二刀のナイフを腕を交差させた状態から左右横一文字に一閃させる。

 

ギギィイィイィイィイィイギャギャギャギャギャ

 

 接続部や配線などを力任せに切断していき、再度ボクが木曽の脇を通過した時には木曽の艤装は小爆発を何度も起こし轟沈寸前大破まで追い込んだ。

 今回は悲鳴をあげることは無かったが、海面に倒れ込んで苦悶の喘ぎが後方から聞こえてくる。

 振り返ってみると木曽は白目になって意識を失っていた。

 少ししか本気を出していなかったがそれでも結構興奮していたらしく、冷えた海の潮風が肌に心地よいのを今更ながらに感じる。

 あと一つ、遠くの方で金属がぶつかり合う不快音が聞こえるが、ボクの周りは静寂と海の暗黒が帰ってきていた。

 

「作戦完了……だよ」

《…頑張ったな、皐月。天龍の援護は必要ない。終わるまで休んでいろ》

「えへへ……ありがとう、星影提督」

 

 そんなに時間は経っていなかった筈なのに提督の声を久々に聞いたように思える。

 途中、久しぶりに嫌な記憶が蘇りかけたが結果的には何とか自制する事が出来た。

 帰ったら提督にウンと甘えよう。

 お菓子を作ってもらい、頭を撫でられながら提督のお菓子を食べる……うん、そうしよう。

 あと、久々に髪も()いて貰いたいしお風呂……はちょっと恥ずかしいけど提督なら平気………かな?

 脳内がイケナイ方向にシフトしかけるけど、兎にも角にも今はまだ戦場にいる事を忘れない。

 提督は休んでいていいと言ってくれてたけど、敵は別に木曽達だけじゃない。

 深海棲艦だって何時やってくるか分からないので電探と意識だけは全域に飛ばしておく。

 十中八九菊月も探査機を作動させてはいるんだろうけど、ボクは菊月よりもお姉さんだからね。

 妹ばかりに仕事させるのはボクという人格が許さない。

 視界の隅では未だに火花が散り続けている。

 本当に天龍の援護をしなくてもいいのかなという心配をしながらも提督が平気といったのだ。

 提督の言葉を信じて探査機に注意を向けておく事にする。

 

 

 …………あ!もちろん天龍の事も信じてるからね!本当だからね!

 

 

~天龍side~

 

 

「どうやら残るは俺たちだけ見たいだな、球磨よぉ」

「妹達なら平気だクマ。球磨は球磨のすべき事をするだけクマ」

 

 幾度とない斬り合いを展開し、幾度となく互いに挑発や攻撃にフェイクを混ぜながら隙を作って攻撃の繰り返し。

 確実に龍田なら「面倒ね~」と愚痴るだろうが、俺は楽しくて仕方が無かった。

 

「おい球磨、お前ここまで俺と切り結べるたぁ、やるじゃねーか!」

「いつまでもおシショーにボコられてる球磨じゃないクマ!」

 

 俺が喜々として球磨に語りかけながらも襲いかかってくる鍵爪を捌いてゆく。

 そして左上から振り下ろされた鍵爪を(おもむろ)に弾き返す。

 

「そんな攻撃が当たるか…よ!」

「ぐっ!まだまだぁー」

 

 球磨は弾き返された状態を利用して左右からV字を描くようにクローを放ってくる。

 

「これなら…どうだクマぁーー!!」

「そんな動作のでかい攻撃が当たるか!」

 

 瞬時に剣を逆手に持ち、右手で腰に挿してある鞘をこれも逆手で斜め上に構える。

 字で言えば『ハ』の形に構えて攻撃を真っ向から受け止め、鍔迫(つばぜ)り合いに持ち込んだ。

 

「いいぜ球磨。もっと俺を楽しませろ。もっと死ぬ気でかかってきやがれ」

「い、われなくてもそうするクマ。でも球磨は死ぬ気では行かないクマ!まだ…妹達を置いて先に逝くわけにはいかない。だから、どんなに絶望的な状況でも卑怯だと罵られようと妹達が独り立ちするまで生きて生きて生き抜くんだクマ!」

「はははっ!それでいいぜ球磨!やっぱ俺の目に狂いは無かったな!それが正解だ。もうお前に教えることは(ほとん)どねぇ」

「すでに球磨は一人前だクマ!これ以上おシショーもとい、天龍に教わることは何もないクマ」

 

 果たしてそれはどうだかな。

 確かに戦闘技術に関して俺が知る"オリジナル"の球磨の技術を余す事なく教えたつもりだ。

 だがそれは"技術"に絞っての話だ。

 力の限りを尽くして腕の力だけで球磨の鍵爪を弾き、左足での廻し蹴りを脇腹に叩き込み右方向に吹き飛ばす。

 鞘を腰に挿し直しながら心を落ち着かせる。

 

「提督」

《許可する。やれ》

「へへっ」

 

 とても短いやりとり。

 別に誰かに回線を盗聴されてもいいように…とかいう訳ではなくそれだけで事足りるからだ。

 そしていつもの瞑想に入る。

 他の戦闘が終わっているだけに俺の周りに静寂が戻ってきていたので集中しやすい。

 

 自分という個体を取り除き、魂に意識を繋げる。

 扉を開閉するような、意識と魂を連結するイメージを強く持つ。

 

 

 

ピピピ!

『天龍』マスターアカウント…………起動シマス

 

 

 脳内に暖かく感じるものの、どこか機械的な冷たい声が響く。

 いつもならここで意識を現実に浮上させるのだが、戻れない。

 まるで連結した意識と魂を外側から押さえ付けられて外せないような感覚。

 そして、再度同じ音声が脳内に響き渡る。

 

 

 

ピピッ!

『天龍』ノマスターアカウントニ変更ガ適用サレマシタ

コレヨリ『天龍』ノアカウントレベルヲ【シルバー】カラ【コパー】ヘ変更サレマス

 

 

 アナウンスが終了すると共に意識が解放された。

 

「提督!どういう事だこれは!」

《どういう事だじゃねぇダホが!LOGを確認したがテメェ、乱用しすぎなんだよ!ほぼ毎日1回はやってんじゃねぇか殺すぞ!!》

「うっぐ!?」

 

 言い返せねー。

 

《やっぱガキに持たせといたのは間違いだったか》

《おい天龍!お前のせいで私達にも被害が飛んできたぞ!》

《そうだそうだー》

 

 菊月の抗議に皐月が乗ってくる。

 

「菊月の言い分は分かるが、皐月!お前はどっちでもいいからって適当に乗ってくんな!」

《適当なんかじゃないよ。可愛い妹に便乗してるだけさ》

「なおさら質が悪いわ!!」

 

 もう…どうしてコイツ等はこんなにほのぼのとしてやがるんだ。

 お陰で球磨との殺すか殺されるかの興奮が冷めちまったしよぉ。

 

「何を…独り言を言ってるクマ」

「おぁ?もう立てる程までに回復したか」

「蹴られる直前に本能で左に飛んでいなかったらヤバかったクマ」

「ほんっとお前はモノホンの熊さながらな勘してやがるよな。ちなみに今のは独り言じゃねぇぞ、菊月と皐月に茶々を入れられただけだ」

「っ!という事は!」

「察しがいいな。そうだ、やられたのはチビッ子どもじゃねーぜ。お前の妹達だ」

「くっ!うぅぅ~」

 

 多摩が卑しくも醜くく生き抜こうとする意味も全てを否定してやる。

 口角を釣り上げて侮辱する様な見下した目線で多摩の怒りに拍車をかけたが、当の本人は体を震わせているだけで突撃してくる様子は見られない。

 

「なんだ。かかってこねーのか?」

「…怒りに任せても天龍には勝てない事くらい分かってるクマ。それにまだ妹が沈んだかは分からない。ソース(情報源)が不確定だクマ」

 

 球磨の言動に再度、今度は嬉しさから口角を上げる。

 

「提督の言葉じゃねーが、ほんとに艦娘って奴は時に著しく成長しやがる」

 

 剣を納刀し抜刀の構えを取る。

 

「来いよ球磨。最後の講義を始めてやる」

「終始上から目線……舐めるなクマァァァァあああああああああ」

 

 球磨が腰だめに両方の鍵爪を構え、今まで以上の速さで突撃してくる。

 正直、まだこれほどの力を残していたと感心してしまうくらいに。

 もう少しで俺の間合いに入るか入らないかという距離で、多摩が跳躍し腰だめに溜めた力を前方に開放してきた。

 それは正しく生ける弾丸の様に早く速く疾く俺の心臓めがけて飛び込んでくる。

 普通の艦娘なら軽巡までは一撃で沈むだろう、戦艦ですら真面に喰らったら航行続行すら危ういほどの威力を秘めているのは伝わてくる気迫だけで分かる。

 だが……

 

「その程度……喰らうわけねーだろ!」

 

 一閃。

 軌跡すらも残らない速度で抜刀し互いに交差する。

 そして再度訪れる静寂を知らせる一陣の風が吹いた後、結果も訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あぁ…あ……」

 

 多摩の武器である鍵爪が根元から綺麗に切断されるという形で。

 

「まだまだ弟子に負けるほど落ちぶれるつもりはねーよ」

 

 そう吐き捨てると後ろから水に何かが落ちる音が二つ、続いた。

 見るまでもなく多摩の鍵爪だった武器を手放した音。

 恐らくそれが海面に落ちるのと同じく多摩の戦意も急激に冷えていっただろう。

 

「殺せクマ。球磨は勝負に負けた。……いや、天龍からしてみれば勝負にも成らなかったのかもしれんクマ」

 

 そこで振り返ると、球磨が膝立ちになって両腕を垂れ下げたまま自嘲気味に笑っていた。

 心無しか頭のつんつんアホ毛も力なく垂れ下がっている気がするな。

 戦闘によって酷使した剣を労わるようにゆっくりと鞘に収め多摩に近づいて、俺は………

 

ガツンッ!!!!!!

 

「痛ぁぁああああああああ!!!」

 

 思いっきし力を込めた拳骨を食らわした。

 

「く、クマァァァァァ」

 

 球磨が涙目になって土下座のような姿勢で頭をさする。

 

「馬鹿かオメーは。なぁんで俺が自ら味方の戦力を削る真似をしなきゃいけないんだよバァカ!」

「だ、だって多摩も木曽も沈んで、もう球磨は…私は……何を持って生きていけというんだクマ!」

 

 球磨が興奮のしすぎで一人称が球磨やら私やらと変わってしまっていた。

 さっきまでは素晴らしい成長を俺に見してくれたと思った途端にこれだぜ。

 そしてこの馬鹿をどうしようかと思って黙考していると、離れて相手していた他2組も戻ってきた。

 

「フニャ……勝手に殺すニャ。球磨」

《どうやらそっちも肩がついたようだな、天龍》

「…………」

《おー、皆無事かい?これでボクの出番も終わりだね!》

「多摩!木曽!生きてたのかクマ!?」

「ったり前だろ。だから何で俺らがお前らを殺さにゃいけないんだよ」

《私は殺すつもりだったが、提督に邪魔されてな》

《あ!ボクもちょうど近くに居たから見えてたけど、完璧に貫手が決まってたと思ったんだけど……なんで多摩の服に穴すら空いてないの?》

《当てる直前で提督が体に干渉してきてな。貫手の状態から硬拳に指の形を曲げられた》

 

 貫手に比べればましだが痛ぇ技に変わりない所が提督らしいぜ。

 そして、これは俺も菊月も気になっている"者"に目を向けて、それを倒した張本人に問うた。

 

「なぁ、皐月?どうして木曽は胸を押さえて土下座したまま微動だにしないんだ?」

 

 そうなのである。

 球磨と似たポーズになってはいるが、手で抑えてる部分が頭ではなく胸だけの違いなんだが、本当に微動だにしない所が不気味に見えて仕方がない。

 

《ん?あー、一度は倒したんだけどさ。それでもまだ多摩の所に行こうとしてたから鳩尾に蹴りかましたら動かなくなっちゃってさー》

《「「「鬼か(にゃ)(クマ)!!!!」」」》

 

 俺や菊月だけでなく球磨や多摩までもニコニコと笑ったままの皐月に叫ぶ。

 通りで動かない……いや、動けないはずだぜ。

 死にはしねーだろうが、当分のうちは体に激痛が走って録に声も出せないだろうな、叫ぶだけで痛ぇし。

 

《皆、全て肩がついたようだな。》

 

 そう声を掛けてきたのは長月だった。

 菊月と皐月の代わりに代表して俺が堪える。

 

「ああ、全員の無力化に成功したぜ。これでいいんだろ?」

《ああ、これでやっと私と天龍が必死に逃げてきただけの価値が生まれた》

 

 満足気に長月が口角をあげ、笑う。

 月に照らされた新緑の髪を潮風が揺らす、それはまるで絵画の中にある幻想世界がそのまま飛び出してきたかのような光景にも見えるかもしれねぇ。

 そんな長月の姿に球磨型は口を半開きにして呆けた様にその姿を見る。

 ただ、同じ睦月型の皐月と菊月だけが「また始まった」と言いたげに皐月は乾いた笑いを漏らし、菊月はあからさまに眉根を寄せて指で眉間を揉んでいた。

 俺自身も久々にみるが、作戦が全て上手くいくと長月はある行動に出る癖がある。

 そう昔の記憶を辿ろうとした所で長月が右手をゆっくりと半円を描くように腕を持ち上げ頭上に持ってきた事で"いつもの癖"が始まったのだと思い思考を中断した。。

 右手を頭上に持ち上げた長月は少しの間だけ時間を置き、(おもむろ)に……… 

 

パァン!

 

 静寂という海に波紋を作るように指を鳴らした。

 ただそれだけの動作なんだが、どうしてか長月がやるとその音が浸透する様に響く。

 そしてお決まりの文句。

 

 

 

 

 

 

「MissionComplete 皆の活躍に感謝する」

 

 

 

 

 

 

 

 その台詞に菊月が小さくため息を吐いた所で夜戦が終了した。

 




はい、ということで戦闘回でした。
まじスンマセン。
すごく……謝んなければいけない衝動に駆られた。

ま、まぁそれは置いておこう。

それでは次回!

暁「貴女の覚悟を見してみなさい」
響「それが最良の手。私は…姉妹の為なら躊躇わない」
雷「電のしたい様にすればいいじゃない!彼はきっと許してくれる。何故かそんな気がするの」
星影「俺はここを……カナリアを離れようと思ってる」

次回『そして陽は昇る』

凪風「次回もよろしくよろしくぅ!」









菊月「………なんだ。これは」
皐月「皆ノリノリだねー。まだ次回何を書くかも決まってないのにーあはは」
天龍「俺は知らねーぞ。寝る」
長月「私も知らん。そんな自らハードルを上げおって…助けてなどやらんからな」

以上!
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