ヒロアカ×エアギア 炎の英雄(更新停止) 作:ken4005
ヒロアカ小説第2話
第2話 入試前夜──走り出す翼たち(改訂版)
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ヘドロヴィラン事件から月日はたち、雄英入試前夜。
薄い月が街を照らしていた。
ベランダに立つ緑谷出久は、
師匠からの言葉を思いだしていた。
『走る理由を忘れるな。勝つためじゃない。支えるために、だ。』
その言葉を、出久は胸の奥で何度も繰り返していた。
「……明日、必ず合格してみせる」
A.Tは机の上。磨き上げたウィールが、部屋の光を反射する。
スマホが震えた。表示は——「麗日さん」。
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『もしもし、デクくん?』
「あ、麗日さん! どうしたの?何かあった?」
『んー、寝ようと思っても全然寝つけへん! 明日が試験や思うと心臓ばくばくで!』
出久は思わず笑った。
「ぼくもだよ。……でも、楽しみでもあるんだ」
『楽しみ?』
「うん。ヒーローを“見る側”じゃなくて、“並んで走る側”になれるんだ」
電話の向こうで、小さく息をのむ気配。
『……やっぱり、デクくんはすごいなぁ。私、ちょっと安心した』
「安心?」
『うん。デクくんらしいって。頑張れって感じで……そういうの、やっぱし好きだなって思って』
震えていた声は、笑い声に変わった。
『じゃあ、明日はお互い頑張ろうね、デクくん!』
「うん。2人とも絶対に合格しよう」
通話が切れたあとも、胸の奥が少し熱い。
出久は机に置かれた赤いA.Tに視線をやり、
「……必ず合格してみせる」
そう呟いて灯りを消した。
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朝、雄英高校前にて。
受験生のざわめきが広がる中、
「はぁ~、緊張でお腹痛い~!」
「アメ、食べる?」
「もらうっ!」
出久とお茶子が二人で笑っていると、勝己からの蹴りが出久に炸裂する。
「朝からイチャイチャしてんじゃねーぞ、クソナード!緊張感ぐらい持てやボケが」
出久が転倒する前にお茶子が個性で浮かす
「私ら転び慣れとるけど、今日は縁起悪いって。爆豪くん、緊張しとるん?」
「しとるわボケが!適度な緊張感でベストパフォーマンス発揮したるわ!」
「「おーーー(パチパチ)」」
試験前らしからぬ空気が繰り広げられいた。
マイクの音が響く。
『試験開始十分前だゼ、ヤーハー!!』
試験会場は“市街地型フィールド”。
瓦礫と建物が入り組み、まるで本物の災害現場のようだった。
(……ここが、ヒーローの舞台。)
爆豪の姿はない。彼は別会場。
“絶対に合格する”その誓いを胸に緑谷出久が動き始める。
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「はい、スタート!」急な試験開始に慌てる受験生たちを尻目に、同会場であった出久とお茶子は息を合わせる。
「麗日さん、左から行こう!」
「了解っ!」
最初の敵は二ポイントロボ。
突進してくる金属の巨体。
出久は地を蹴り、
「シッ!」
脚を振り抜くと、空気が裂かれ、強烈な衝撃がロボを襲う。
動きが止まったロボにすかさずお茶子が右手を伸ばし、
「ゼログラビティ!」
ロボがふわりと浮き、
出久の追撃の回し蹴りが火花と共に炸裂。
地に落ちたロボが爆散した。
「ナイス連携っ!」
「うん、完璧!」
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次の通りに進むと、瓦礫の下敷きになった受験生がいた。
他の受験生は無視して先に進むが、
「麗日さん!」
「分かってる!」
麗日が浮かせ、出久が瓦礫を押しのける。
「大丈夫、足は動く?」
「う、うん……ありがとう……!」
救助に時間を使う二人を、後ろから何人も追い越していく。
だが出久は焦らない。
「点数より、大事なものがあるはずだ」
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遅れを取り戻すため、連携でロボを着実に倒していく二人。
残り時間は二分。
そのとき、地面が揺れた。
「……あれは——!」
ビルを突き崩しながら、**巨大な無得点ロボ(ゼロポイント)**が現れた。
周囲の声が悲鳴に変わる。逃げ惑う受験生たち。
出久の足が自然に前に出る。
「麗日さん、避難を!」
「無理や! あそこ——!」
瓦礫の向こうに、逃げ遅れた受験生。
逃げられない。
出久は迷わず走った。
(自分の力だけで合格するために、使わないって決めた。でも——!)
足元に赤い光。
A.Tを起動させ、風を纏い、炎が尾を引く。
「翼よ——!」
炎の羽が広がり、
風と炎の混合衝撃幕がゼロポイントロボの腕の軌道を逸らす。
「麗日さんっ!」
「はいっ!」
崩れた瓦礫の隙間へお茶子が滑り込み、個性を使って女の子を抱き上げる。
二人の体がふわりと浮き、離れていく。
出久は足のバランスを取って回転、より強い炎を生み出していく。
炎の翼が波へと変わり、強烈な技が繰り出された。
「フェニックススマッシュ!」
熱風を浴びたゼロポイントロボが背後に倒れ込む。
地響きが止み、サイレンが鳴った。
試験——終了。
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瓦礫の中で、二人は息を整えた。
麗日は空を見上げて笑う。
「やったね……! デクくん!」
出久も笑った。
「麗日さんが素早く救助してくれたからだよ」
「いやいや、あの炎の翼、かっこよすぎて惚れ、、、、ホームランだよ!」
「ホームラン? いや、その……!」
お茶子の誤魔化し戸惑う出久だが、最後はお互い満足げに笑い合った。
風が吹き抜けた。
焦げた鉄の匂いに、春の匂いが混じる。
その風の中で、出久は思った。
(やれることはやった、あとは信じて待つだけだ)
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同じ頃、別の試験フィールド。
物間寧人と心操人使は、背中合わせに立っていた。
「おい心操、もう少し“注意線”を切れないのか?」
「切りすぎると、お前まで見えなくなる。……バランスが大事だ」
物間は小さく笑った。
「理屈ばかりだな。だが——嫌いじゃないね」
彼らの周囲には、機能停止したロボが大量に転がっていた。
心操が洗脳をA.Tの技術と合わせ、機械すらも惑わし、物間が正確に破壊していった。
冷静で、無駄がない。
(理性の炎は、感情より速い)
二人は視線を交わし、最後のロボを沈めた。
サイレンが鳴る。
結果を見ずとも分かる。
この二人もまた、“王”に近づきつつあるのだ。
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数日後。
自宅のポストに届いた封筒。
震える手で開くと、ホログラムが浮かぶ。
「——緑谷少年! 君は、合格だ!」
オールマイトの声が部屋に響く。
隣で母が泣き、出久は言葉にならなかった。
(ぼく、合格した……)
映像の中でオールマイトは笑っていた。
「君は通常のポイント以外にも、救助行動による特別評価が与えられた。
“誰かを助けるお節介”——それこそが、真のヒーローだ!」
涙が頬を伝う。
外の風が、炎のように温かかった。
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同じ夕暮れ、別の場所。
同様に合格通知を受けた者たちが思いを馳せる。
物間は静かに笑い、心操は淡々とノートを閉じた。
「次、競い合う場所は雄英か」
「入試では負けたが、最後は必ず勝つ」
お茶子は地元から空を見上げて呟く。
「次は、みんなでヒーロー活動」
風が吹く。
それは、新しい物語の始まりだった。