カードキャプター:アベンジャーズ   作:ちいさな魔女

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カードキャプターさくらを、もう一度見直してみるかな。断片的にしか覚えてないけど、うろ覚えとAIツールで調べたりシナリオを構築したりで、やっと描けた……。


アベンジャーズ編
プロローグ


桜の花びらが舞い散る、ごく普通の春の日の午後。小学校から帰宅した木之本桜は、地下の書庫で見つけた、奇妙な本に興味を惹かれた。古ぼけたその本には「クロウ・リード」という見慣れない文字と、鍵のマークが描かれている。

 

本を開くと、中には不思議なカードが収められていた。一番上のカードに書かれた「WINDY」という文字を読み上げた瞬間、本は眩い光を放ち、すべてのカードが風に乗って飛び散っていった。

 

さくら「わあ、カードが全部飛んでいっちゃった!」

 

桜が驚いて後ずさりすると、本の中から小さな黄色いぬいぐるみが飛び出してきた。翼を生やし、関西弁でまくしたてるそれは、自らをクロウカードの守護者、ケルベロス、通称「ケロちゃん」と名乗った。

 

ケロちゃん「どないしてくれんねん! ワシのカード、全部おまえのせいで飛んでいったやんか!」

 

ケロちゃんに怒鳴られ、桜はただただ困惑する。どうすればいいのか分からないまま、ケロちゃんが風の気配を追うように言い、二人は飛び散ったカードを追って外に飛び出した。

 

『FLY』の魔力が解き放たれた事で現れた鳥のような存在。『FLY』のブレスで吹き飛ばされたガ瓦礫が、二人の頭上を掠めるように飛んでいく。

 

その時、一際大きな煉瓦が、まるで狙われたかのように桜の頭に直撃した。

 

さくら「いっ、痛ーい!」

 

鈍い痛みにしゃがみ込んだ桜の脳裏に、洪水のように鮮明な映像が流れ込む。

 

タワーから飛び立つ金色のスーツの男。

 

宇宙のチカラを宿したハンマーを持つ男。

 

巨大な緑の怪物を追う女。

 

闇夜に紛れて悪と戦うヒーロー。

 

空飛ぶ空母。

 

異星人の侵略。

 

それらはすべて、かつて自分が生きていた頃に見ていた、前世の記憶で見た映画の知識だった。更に、色々な作品の知識も頭の中に入り込んでくる。

 

ここは、自分が「木之本桜」として生きる世界ではない。この世界には、特別な力を持ち、人々を守る存在がいる。

 

アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、ソー……。

MCU。マーベル・シネマティック・ユニバース。

 

そして今は、アイアンマン2とマイティ・ソーの前辺りの時期だ。世界はまだ、ヒドラの影に気づかず、宇宙からの脅威に備えもしていない。

 

そんな世界で、カードキャプターとして覚醒してしまった自分。

 

ケロちゃんの必死な呼びかけが、遠い幻聴のように聞こえる。

 

ケロちゃん「さくら、大丈夫か!?」

 

頭の痛みが引いていき、視界がはっきりと戻った時、桜はすでに前世の記憶と、この世界の危険を認識していた。

 

さくら「……うん、大丈夫。ケロちゃん、カードを集めに行こう」

 

その瞳には、かつての無邪気な輝きだけでなく、世界の命運を背負った者の、強い決意が宿っていた。

 

これは、二つの世界が交錯し、一人の少女がヒーローとなる、運命の始まりの物語。

 

―――――――――――――――――――――――

 

MCU世界の記憶を取り戻した桜は、カード集めを始める。しかし、いつものように自分のそばで微笑み、魔法少女の衣装をせっせと作る親友・大道寺知世の姿を見て、彼女が自分に向ける好意をはっきりと自覚し、複雑な思いを抱き始める。

 

前世では、自分に向けられる好意を明確に認識することはなかった。しかし今、MCUという危険な世界で生きているという自覚があるため、知世の自分への献身的な愛が、ただの友情ではなく、それ以上の深い感情であることを敏感に察してしまう。

 

知世が微笑むたび、衣装を整えてくれるたび、そしてカードキャプターとしての自分の姿をビデオに収めるたびに、桜の心はざわつく。

 

さくら(知世ちゃん、どうしてこんなに私を……?)

 

自分に向けられる純粋で、ひたむきな愛。それは、前世で知っていたどの感情よりも重く、深く、そして美しいものだった。しかし、同時に桜は不安も感じる。

 

MCUの世界は、平和な小狼や雪兎さんとの恋模様だけで終わるような、優しい世界ではない。いつかアベンジャーズが結成され、地球規模の危機に直面するかもしれない。その時、自分は戦いに巻き込まれるかもしれない。

 

そんな危険な世界に、知世を巻き込んでもいいのだろうか。

 

知世「さくらちゃん、お似合いですわ。今回のカードに合わせた、風の精霊をイメージしてみましたの」

 

知世はにこやかに、風を思わせる軽やかな衣装を桜に着せる。桜はその優しい手つきに、たまらない罪悪感を覚える。

 

さくら(前世では、ただ無邪気に受け取っていた。でも、今の私は、知世ちゃんの気持ちを、ちゃんと分かっている……)

 

知世が自分を愛していることを知っている。だからこそ、この純粋な好意が、いつか自分を危険な目に遭わせるかもしれないと思うと、桜の胸は締め付けられる。

 

カードを追いかけるたびに、カメラを回す知世の熱い眼差しを感じるたびに、桜の心は知世の好意と、その好意が持つ危険性の間で揺れ動く。

 

さくら(この気持ちに、どう応えればいいんだろう……)

 

純粋な好意に悶々とする桜のカードキャプターとしての戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

春、満開の桜が舞い散る中、知世とのカード集めに日々を費やす桜。知世が自分に向ける、あまりにも純粋でひたむきな愛情に、前世の記憶を持つ桜は複雑な感情を抱えていた。そんな、少しだけ気まずく、でも心地よい時間が流れる中、クラスに転校生がやってきた。李小狼(リ・シャオラン)、香港から来たという少年だ。

 

小狼は、一目で桜が持つクロウカードの魔力に気づいた。クロウ・リードの血を引く者として、彼は桜を強烈にライバル視し、初対面から敵意をむき出しにする。ことあるごとに「カードは、本来俺が回収すべきものだ!」と主張し、桜の行動にいちいち絡んでくる。

 

ケロちゃんは「また、ややこしいのが来たでぇ」と呆れ、知世は小狼を警戒しつつも、桜がピンチに陥る様子を撮るチャンスだとカメラを構える。そんな二人の反応を横目に、桜は冷静に小狼を観察していた。

 

さくら(この小狼くん、使える……)

 

前世の記憶を持つ桜は、原作の展開を知っている。小狼が優秀な魔術師であり、クロウカード集めにおいて心強い助けとなることを知っていた。このMCUの世界で、いつ現れるか分からない強大なヴィランたちと戦うためには、一人でも多くの力が必要だ。小狼の存在は、正に渡りに船だった。

 

小狼が挑発してくるたび、桜はわざとらしく困った顔を見せたり、「小狼くんも手伝ってくれるの?」と無邪気に尋ねたりする。小狼は苛立ちを募らせながらも、カードの魔力に惹かれ、結果的に桜のカード集めに協力させられてしまう。

 

ある日、「BIG」のカードが出現した際のこと。小狼は強力な道符でカードを攻撃するが、カードは力を増し、逆に攻撃を跳ね返してしまう。その隙を突き、桜は風の魔法で小狼を巻き込み、カードを捕らえることに成功する。

 

小狼「お前っ、卑怯だぞ!」

 

怒る小狼に、桜はにこりと微笑んだ。

 

さくら「小狼くんのおかげだよ。ありがとう!」

 

小狼は顔を赤くしてプイッとそっぽを向くが、その表情には怒りだけでなく、少しの照れも混じっていた。

 

そんな二人の様子を、少し離れた場所から知世は静かに見つめている。

 

知世(さくらちゃんは、小狼さんのことを利用している……?)

 

いつもと違う桜の、計算めいた表情。そして、無自覚に小狼の好意を手玉に取る姿。知世は、ただひたすらに愛らしいさくらちゃんを写すカメラのレンズ越しに、今まで見たことのない、どこか影のある親友の姿を捉えるのだった。

 

新たなライバルの登場は、カード集めを円滑に進めるための道具として、桜に利用されていく。しかし、その過程で芽生える小狼の感情、そしてそれを察した知世の複雑な心は、平和な小学生生活の裏側で、静かに波紋を広げていくのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

小狼とのカード争奪戦は、桜にとって、ただのカード集めではなくなっていた。彼は、敵意を剥き出しにしてくるものの、いざという時には頼りになる、最高のパートナーだった。ルパン三世と次元大介、あるいはルパンと銭形警部が、互いの力量を認め合い、奇妙な信頼関係を築いているように、桜もまた、小狼に独特の感情を抱くようになる。それは、恋愛感情とはかけ離れた、一種の「相棒」としての信頼だった。

 

さくら(小狼くんがいると、なんだか安心するな。いや、利用してるんだけど……)

 

桜は小狼を巧みに誘導し、カード集めに利用している自覚はあった。だが、彼が魔力を行使する姿、カードに挑む真摯な姿勢を見るにつけ、前世の記憶を持つ桜は、いつしか彼をかけがえのない存在として認識するようになっていた。知世に感じる、甘く切ない想いとは全く違う。戦友のような、あるいは兄妹のような、それでいて互いの力量を認め合う、心地よい関係性。

 

そんなある日の夕食時、木之本家のお茶の間で、テレビのニュースが流れていた。トニー・スタークが記者会見を開き、世界中の注目が集まる中、ついにアイアンマンの正体を明かす瞬間が映し出された。

 

トニー・スターク『私が、アイアンマンだ』

 

その言葉が響いた瞬間、ダイニングテーブルに座っていた桜の箸が、ぴたりと止まった。

 

ケロちゃんはポップコーンを片手に「ほぉ、こいつがアイアンマンかぁ。なかなか強そうやん」と呑気に呟き、桃矢は「くだらん」と一蹴する。父・藤隆は穏やかな表情でテレビを見ていたが、桜の心の中には、衝撃と、そして絶望に近い感情が押し寄せていた。

 

前世の記憶を思い出した後も、どこか遠い世界の出来事のように思っていたMCUの世界が、今、現実のものとして、このテレビ画面の中に存在している。そして、その世界はこれから、シールドの内部分裂、アベンジャーズの結成、果てはサノスとの決戦へと急速に加速していくだろう。

 

桜は、思わず心の声が漏れてしまった。

 

さくら「トニー・スタークがアイアンマン……この世界、やっぱり……」

 

その言葉は、誰に聞かせるでもなく、桜の口からこぼれ落ちた。しかし、その声を聞き逃す者はなかった。

 

ケロちゃんは持っていたポップコーンを落とし、桃矢は驚愕した表情で桜を振り返る。藤隆は、穏やかな笑顔のまま、しかしその瞳の奥には、すべてを見通すかのような静かな光を宿していた。

 

食卓に沈黙が訪れる。トニー・スタークがアイアンマンだと告白したニュースを映すテレビの音だけが、不気味に響いていた。桜がこぼした言葉は、ごく小さなものだったが、その場にいた全員の耳にはっきりと届いていた。

 

最初に口を開いたのは、ケロちゃんだった。ポップコーンを落としたまま、彼は真剣な眼差しで桜を見つめる。

 

ケロちゃん「桜、今、なんて言うた?」

 

桜は、自分の失言に青ざめる。しかし、ごまかせる状況ではないことを悟り、意を決して口を開く。

 

さくら「あの、えっと……」

 

言葉を濁そうとした、その時。

 

桃矢「さくら」

 

桃矢の、いつになく真剣で、重い声が響いた。彼の目は、まるで桜の心の中を見透かすかのように、真っ直ぐに桜を捉えていた。

 

桃矢「『やっぱり』って、どういう意味だ」

 

桃矢は、桜がクロウカードを扱うようになってから、彼女の周りで起こる異変に気づいていた。元々強い魔力を持つ彼には、桜から放たれる、時折不安定な魔力の波長が感じ取れていたのだ。

 

桜は、逃げ場がないことを悟り、震える声で話し始める。

 

さくら「その……アイアンマンって、映画の中にしかいないって、思ってたから……」

 

しかし、その苦しい言い訳は、父・藤隆によって優しく遮られた。

 

藤隆「さくら」

 

藤隆は、いつもと変わらない穏やかな表情で、しかしその瞳は真実を見据えていた。

 

藤隆「パパは、さくらが何か秘密を抱えていることを、ずっと前から知っていたよ」

 

藤隆の言葉に、桜は驚き、桃矢もケロちゃんも言葉を失う。

 

藤隆「君がクロウカードを解放した日の朝、君の周りには、いつもの魔力とは違う、とても強い『記憶の魔力』の痕跡があった」

 

藤隆は、撫子の死後、魔力を失っていたはずだった。だが、彼の温かく、優しい魔力は、娘の異変に敏感に反応していたのだ。

 

藤隆「そして、その記憶のせいで、君は時々、とても悲しそうな顔をする」

 

藤隆の言葉は、桜の心に深く突き刺さる。隠していたつもりの不安や恐怖が、優しい父の言葉で暴かれていく。

 

桜は、もう隠し通せないことを悟り、涙をこぼしながら、震える声で話し始めた。

 

さくら「ごめんなさい……全部、話すから……」

 

前世で自分が生きていた世界のこと。MCUという、ヒーローたちが存在する世界のこと。そして、その世界に、自分が転生してしまったこと。

 

全てを語り終えた時、食卓には再び、深い沈黙が訪れた。

 

ケロちゃんは、信じられない、とばかりに口を開け、桃矢は驚きと同時に、妹を危険な世界に巻き込んでしまったことへの怒りで拳を握りしめた。

 

そして、藤隆は、ただ静かに、桜の頭を優しく撫でる。

 

藤隆「大丈夫だよ、さくら。君は一人じゃない」

 

温かい父の言葉に、桜は安心し、とめどなく涙を流す。

 

ケロちゃんは、少し混乱しつつも「MCUって、なんや! 強いやつがいっぱい出てくるんやな! 面白そうやないか!」と、いつもの調子で場を和ませようとする。桃矢も、「俺が、お前を守ってやる」と、少し照れくさそうに呟いた。

 

こうして、桜の秘密は家族と守護者に共有された。

 

しかし、知世と小狼。そして、アイアンマン。この世界には、まだ多くの、桜の秘密を知らない人物たちが存在する。

桜の、MCU世界でのカード集めは、ここから、さらに複雑で、危険な様相を帯びていくこととなる。

 

―――――――――――――――――――――――

 

知世は豪華な自室で、ビデオテープを手にしていた。そこには、愛おしいさくらの姿が収められている。知世はたださくらの映像を眺めているのではなく、その瞳は何かを探すかのように、画面を見つめていた。

 

画面の中のさくらは、知世の予想通り、頭を打った頃から大人びた雰囲気を見せていた。

 

知世は撮影したビデオテープを再確認する。カードが飛び散ったあの日の映像、頭を打ってからのさくらの映像を何度も繰り返し見る。そして、さくらの些細な変化を改めて分析していく。

 

BIGのカードを捕獲する際、小狼を出し抜くかのような、一瞬見せた策略家の顔。

 

SHADOWのカードを捕まえる際に、普段のさくらにはない、冷静な判断力で指示を出す様子。

 

カード集めに関わる小狼との、どこか互いの実力を試すかのような、不思議な連携。

 

そして何よりも、アイアンマンのニュースを見た時の、誰にも見せないはずの、不安と絶望に満ちた表情。

 

知世は、それらの映像を繋ぎ合わせ、一つの結論にたどり着く。

 

知世(さくらちゃんは、私の知っているさくらちゃんではない……)

 

それでも、知世の桜に対する好意は、揺るがなかった。むしろ、その想いはより一層強くなる。

 

知世「さくらちゃんが、もしも別の世界の、別の存在だとしても……」

 

知世は、一人呟く。

 

知世「それでも、私の愛するさくらちゃんは、さくらちゃんですわ」

 

知世にとって、さくらが誰であろうと関係ない。重要なのは、彼女が自分の愛するさくらであるということ、ただそれだけだった。

 

知世(さくらちゃんが、あんなに不安そうな顔をするなんて……。きっと、とても辛い世界で生きてこられたのですね)

 

知世は、愛するさくらを悩ませる、"MCU"という見知らぬ世界に強い関心を抱き始める。

 

知世「さくらちゃんを悲しませるものは、すべて無くしてしまわなければなりませんわ」

 

知世の心の中で、決意が固まる。

 

知世「さくらちゃんが、安心して笑えるように……。私、もっとさくらちゃんの力になれるよう、頑張りますわ」

 

愛しい人の秘密を知った知世は、ただ秘密を共有するだけの存在では終わらない。自らの愛の力で、さくらが直面するであろう困難から、彼女を守ろうと決意するのだった。

 

知世の、純粋で、しかしどこまでも深い愛は、MCUという危険な世界に足を踏み入れたさくらの、最大の武器となり、そして、最大の脅威となりうるのかもしれない。

 

―――――――――――――――――――――――

 

梅雨の時期、町はずれの公園に、人影の幻を生み出すクロウカード「THE ILLUSION」が出現した。カードの魔力によって、見る者にとって最も望む人、最も会いたい人の幻影が現れ、その心に惑わしをかける。このカードは、精神的な弱点を突くため、初見で攻略するのは至難の業だ。

 

小狼は、カードの気配を追って公園にたどり着いた。そこで、彼は亡くなった母の幻影を見る。小狼は、幻影だと分かっていながらも、一瞬だけ、その優しい微笑みに心を奪われてしまう。だが、彼はすぐに我に返り、幻影を振り払った。

その時、小狼の視線の先で、桜が同じように亡き母・撫子の幻影に惑わされているように見えた。

 

小狼「桜! あいつは偽物だ!」

 

小狼は叫ぶが、桜は幻影に手を伸ばす。小狼は、桜が幻影に囚われてしまうのではないかと焦る。

 

桜「知ってるよ」

 

しかし次の瞬間、桜は幻影に伸ばした手を、きゅっと握りしめた。そして、まるで幻影の存在そのものを否定するかのように、きっぱりとこう言い放った。

 

さくら「お母さん、もういないんだから……」

 

その言葉に、幻影は一瞬ひるむ。桜はその隙を見逃さず、迷うことなく「WINDY」のカードを呼び出し、幻影を巻き上げる。幻影は風に吹き飛ばされ、魔力の源である「THE ILLUSION」のカードが、無防備な姿をさらけ出した。

 

さくら「汝のあるべき姿に戻れ! クロウカード!」

 

桜は迷いなくカードを封印する。一連の動作はあまりにも冷静で、無駄がなかった。

 

小狼は、その様子を呆然と見つめていた。

 

小狼(なぜだ……。桜は、どうしてあんなに迷いがなかった……?)

 

幻影の正体を、初見で看破したかのような対応。そして、幻影が精神的な弱点を突くカードであることを、最初から知っていたかのような迷いのない対処。それは、偶然では片づけられない、不自然な行動だった。

 

さくら「小狼くん、どうしたの?」

 

カードを回収し、いつもの無邪気な笑顔で振り返る桜に、小狼は言葉を失う。

 

小狼(まるで、このカードの性質を、最初から知っていたかのような……。いや、それどころか、この世界そのものを、最初から知っているかのような……)

 

桜の行動に、いつもの「利用されている」という苛立ちとは違う、漠然とした違和感と、底知れない恐怖を感じる小狼。

 

小狼「何でもない……」

 

小狼は、そう答えるのが精一杯だった。

 

桜は、そんな小狼の様子に気づきながらも、何も言わずに微笑む。

 

さくら「よかった、封印できて」

 

その笑顔の奥に、小狼には決して見せない、冷徹な理性が潜んでいることを、彼はまだ知らなかった。

 

小狼の疑念は、次第に確信へと変わっていく。桜が持つ秘密の正体。そして、その秘密が、この世界の運命を揺るがしかねないものであることを、彼はまだ、知る由もなかった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

桜にいつもと違う違和感を抱いていたのは、知世と小狼だけではなかった。彼らは、クロウカード「THE ILLUSION」を回収した直後、それぞれの思惑から、顔を合わせてしまった。

 

知世「さくらちゃん。今日は先に帰って大丈夫ですわ。小狼さんと、お話があります」

 

さくら「う、うん。なんか珍しいね」

 

桜は珍しい光景に戸惑いつつも、家路を急いだ。桜の姿が見えなくなった後、2人は桜の様子について話し合う。

 

知世「さくらちゃんは、先に帰しましたわ」

 

知世は、いつものように穏やかな微笑みを浮かべながらも、その声には強い意思がこもっていた。小狼は、彼女の言葉に驚きつつも、反論しなかった。知世が、桜の行動に不審を抱いていることを悟ったからだ。

 

知世「小狼さん。あなたも、さくらちゃんの様子に、何かお気づきなのではなくて?」

 

知世の問いかけに、小狼は顔をしかめる。

 

小狼「あの幻覚のカードの時だ。弱点を知っていたかのような、迷いのない動き。おかしい」

 

小狼の言葉に、知世は静かに頷く。

 

知世「ええ。私も、さくらちゃんの様子が以前とは違うことに、ずっと気づいておりましたわ」

 

知世は、小狼が桜をライバル視していることを知っていた。だが、小狼の桜への関心は、単なるライバル心だけではないことも知っていた。

 

知世「さくらちゃんは、以前よりも大人びて、複雑な感情を抱くようになりました。そして、時折、とても悲しそうな顔をなさいます」

 

知世の言葉に、小狼はハッとする。それは、彼が幻影に惑わされた時、桜が発した言葉と、その時の桜の表情と重なったからだ。

 

小狼「あの娘は……何かを隠している」

 

小狼は、確信めいた口調で呟く。

 

知世「はい。そして、私にはそれが何か、おおよその見当がついております」

 

知世は、冷静に答える。

 

知世「さくらちゃんは、以前、頭を強く打ったことがございますわ。その時から、さくらちゃんがいつもとは違う不安定な様子になったのを確認しましたわ」

 

知世は、録画したビデオを見せながら、淡々と説明する。

 

知世「さくらちゃんは、別世界の、別の存在なのかもしれません」

 

知世の言葉に、小狼は驚きを隠せない。

 

小狼「別世界だと……?」

 

知世「はい。そして、さくらちゃんの世界には、ヒーロー達が存在しているようですわ」

 

知世は、ビデオに収められた、アイアンマンのニュースを見せる。

 

知世「アイアンマンのニュースを見た時、さくらちゃんは、少しばかり動揺なさっていましたわ」

 

知世の考察に、小狼は沈黙する。彼の脳裏には、桜が幻影に言い放った、あの言葉が蘇っていた。

 

小狼(あの娘は、やはり何かを知っている……)

 

知世「小狼さん。私達、さくらちゃんに、全てを聞いてみませんか?」

 

知世の提案に、小狼は頷く。彼らは、桜の秘密を共有し、彼女を支えようと決意した。

 

知世「さくらちゃんが、もしも別世界の存在だったとしても……。それでも、私はさくらちゃんを愛しています。そして、さくらちゃんが安心して、笑顔でいられるように……。私、もっとさくらちゃんの力になれるよう、頑張りますわ」

 

知世の、桜への深い愛情と、それを支える揺るぎない決意に、小狼は心を動かされる。

 

小狼「俺は、利用されてるだけかもしれないが……。だが、あの娘を、このままにしておくわけにはいかない」

 

小狼は、知世と共に、桜の家に向かうことを決意した。彼らは、桜が直面するであろう危険な世界から、彼女を守ろうと決意したのだった。

 

一方、自宅の玄関に到着した桜は、部屋へ向かおうと足を向けた。だが、その時、来訪を告げるチャイムの音が響く。誰だろうと不思議に思いながら玄関のドアを開けると、そこにはスーツを着た二人の女性エージェントが立っていた。

 

一人は優しげな微笑みを浮かべ、もう一人は冷静ながらも鋭い眼差しを向けている。MCUの知識を持つ桜は、一目で彼女達が何者であるかを察した。

 

さくら(『S.H.I.E.L.D.』……!)

 

心臓が大きく跳ねる。しかし、桜は努めて平静を装う。

 

さくら「あの、何か御用でしょうか?」

 

桜の問いかけに、優しげな微笑みを浮かべたエージェントが答える。

 

エージェントリリー「木之本桜さんですね。私たちは、国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.の者です。少し、お話させて頂きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

桜は、一瞬ためらった。S.H.I.E.L.D.が、なぜ自分の元へ? 目的は? 様々な疑問が頭の中を駆け巡る。しかし、彼女たちはあくまで穏やかで、威圧的な態度は見せない。桜は意を決し、二人を家の中へと招き入れた。

 

さくら「どうぞ、中へ。お茶でも淹れますね」

 

二人のエージェントは、リビングに通され、ソファに腰を下ろした。桜は、内心の動揺を隠しながら、慣れた手つきで三人分のお茶を淹れる。

 

さくら(まさか、こんなに早く接触してくるなんて……。やっぱり、トニー・スタークがアイアンマンだと公表したのがきっかけかな?)

 

桜は、お茶を運んでくる。二人のエージェントは、桜が差し出した湯呑みを、静かに受け取った。

 

エージェントリリー「ありがとうございます。お気遣いなく」

 

優しげな微笑みのエージェントが礼を言う。もう一人のエージェントは、部屋の中を静かに見回している。

 

エージェントサラ「単刀直入に申し上げます。私たちは、あなたの持つ、超常的な力について、詳しく知りたいと考えています」

 

その言葉に、桜は背筋が凍る。

 

さくら(やっぱり、カードキャプターのことがバレてる……?)

 

桜は、動揺を悟られないよう、冷静を装って尋ね返す。

 

さくら「超常的な力……? 私には、何の力もありませんけど……」

 

すると、優しげなエージェントは、小さく笑った。

 

エージェントサラ「ご安心ください。私たちは、あなたを危険視しているわけではありません。むしろ、協力して頂きたいと考えています」

 

その言葉に、桜は安堵する一方で、新たな不安が芽生える。

 

さくら(協力って……何に? アベンジャーズにでも、入るってこと……?)

 

桜は、お茶を一口飲み、二人のエージェントの言葉を待った。これから始まる交渉が、自分の運命を大きく左右することを、本能的に感じ取っていた。

 

知世と小狼が家に向かっていることも知らず、桜はエージェント達と対話をすることになる。

 

内心では、彼女らがヒドラと繋がっている可能性を考え、どうすれば正体を見抜けるかと頭を悩ませていた。しかし、迂闊な行動は取れない。彼女等が持つエージェントとしてや女の勘が、前世の記憶を持つ桜の違和感をすでに察知しているかもしれないからだ。

 

そんな中、玄関のチャイムが再び鳴る。桜が応対すると、そこには知世と小狼が立っていた。2人の表情は、どこか真剣だ。

 

知世「さくらちゃん、お話がありますの」

 

小狼「そうだ。話がある」

 

2人のただならぬ雰囲気に、桜は一瞬たじろぐ。だが、リビングの入り口に来た時、2人はエージェント達を見て、小狼と知世も見慣れない人物の存在に警戒を強める。

 

エージェントリリー「お友達かしら? 皆で一緒にお話しましょう」

 

優しげな笑みを浮かべたエージェントリリーがそう促すと、知世と小狼は桜とエージェントたちという奇妙な組み合わせを不審に思いながらも、リビングへと足を踏み入れた。

 

リビングは一気に気まずい雰囲気に包まれる。S.H.I.E.L.D.のエージェントと、クロウカード集めの仲間。それぞれの思惑が交錯し、静かな緊張感が部屋を満たしていく。

 

桜は、この状況をどう乗り切るか考える。エージェントたちに知世と小狼のことを隠し通すことは不可能だろう。それに、ヒドラの可能性を考えれば、情報を独り占めするのは危険だ。

 

その時、桜の脳裏に、かつて見てきたMCUのヒーロー達の姿が蘇った。彼らは、常に仲間と共に戦っていた。

 

さくら(そうだ、一人で抱え込んじゃダメなんだ)

 

桜は、意を決する。知世と小狼、そしてエージェントたち。ここにいる全員に、自分の秘密を打ち明けるべきだ。それが、この状況を打開する唯一の道だと確信した。

 

桜は深呼吸をし、皆を見渡す。

 

さくら「あの……私、みんなに話さなくちゃいけないことがあります」

 

桜の言葉に、ケロちゃんが桜の肩に飛び乗る。

 

ケロちゃん「桜、マジか!? こんなところで全部話す気か!?」

 

ケロちゃんの言葉に、S.H.I.E.L.D.のエージェントたちは、彼の存在に驚き、警戒を強める。

 

エージェントリリー「なんですの、そのぬいぐるみ?」

 

エージェントサラ「関西弁のぬいぐるみだと……?」

 

エージェントたちの困惑をよそに、桜は続けた。

 

さくら「私のことを話す前に、まず、ここにいるエージェントさんたちに聞きたいことがあるんです」

 

桜は、覚悟を決めた強い目で、2人のエージェントを見つめる。

 

さくら「あなたたちは、本当にS.H.I.E.L.D.の人達ですか? もしかして、ヒドラと繋がっていたりしませんか?」

 

桜の直球な問いに、エージェントたちの表情が一変する。優しげな笑顔は消え去り、冷静だった眼差しは鋭さを増す。

 

さくら(やはり、ヒドラの可能性が高い……!)

 

桜は、そう確信した。そして、この場で全てを明らかにする決意を固める。

 

さくら「皆さん。私は、皆さんが知っている木之本桜とは、少し違うんです」

 

ソファに座る2人のエージェントは、桜の言葉に固まった。桜が発した「ヒドラ」という言葉は、彼らの組織が秘密裏に抱える最大の不祥事であり、最重要機密だ。

 

エージェントリリー(なぜ、この少女が「ヒドラ」のことを……?)

 

優しげな女性は、内心の動揺を悟られぬよう、努めて冷静な表情を保つ。しかし、その瞳の奥には、葛藤の色が浮かんでいた。彼女たちは、自らの意思でヒドラに加担したわけではなかった。S.H.I.E.L.D.に潜伏するヒドラの幹部によって、家族を人質に取られ、やむなく内通を強いられていたのだ。

 

彼女たちは、いつか、この腐敗した組織を内部から破壊し、愛する家族を取り戻すことを誓っていた。しかし、その時が来る前に、目の前の少女に、その秘密を暴かれてしまった。報告すべきか。桜の能力は、ヒドラにとって垂涎ものだろう。しかし、もし報告すれば、桜はヒドラに利用され、その身に危険が及ぶことは明白だ。一方で、報告しなければ、彼女達の身や身内が危うくなる。

 

エージェントリリー「その言葉の真意は、一体……」

 

優しげな女性が、桜に問いかけようとした、その時。

 

知世「さくらちゃん! 今、なんて……?」

 

小狼「その『ヒドラ』とは、一体何だ?」

 

知世と小狼が、桜とエージェントたちのやり取りを不審に思う。小狼は、エージェントたちの警戒心を察知し身構える。知世は桜の様子をビデオに収めようとしながらも、事の成り行きに強い関心を抱いていた。

 

桜は、そんな彼らを見つめ、決意を新たにする。

 

さくら(もう、隠すことはできない……)

 

桜は、小さく深呼吸をし、皆に向かって語り始める。

 

さくら「改めて言うね。私は、皆さんが知っている木之本桜とは、少し違うんです」

 

桜が意を決して語り始めた真実。それは、自分が未来の出来事を知る転生者であり、この世界がMCUの物語に沿って進んでいるということ、そして、自分の発言一つで未来が変わりうるという可能性だった。彼女は、来るべきアベンジャーズの結成、ロキによるニューヨーク侵攻、そして最終的にはサノスとの戦いに至るまでの壮大な物語を、知世、小狼、ケロちゃん、そして2人のエージェントに語った。

 

皆は信じがたい事実に、ただただ耳を傾けるしかなかった。知世は、愛するさくらの抱えていた重荷を理解し、より一層の愛情を深くする。小狼は、未来の脅威の大きさに驚き、同時に桜をライバルと見下していた自分が恥ずかしくなった。ケロちゃんは、「うっそやろ!? ワシらの世界が、そんな恐ろしいことになるんか!?」と大声で驚きながらも、桜の隣にそっと寄り添った。

 

そして、2人のS.H.I.E.L.D.エージェントは、話の途中で桜の言葉に真実が含まれていることを確信する。彼女らが知るS.H.I.E.L.D.の内部情報や、ヒドラの計画と重なる部分が多数あったからだ。

 

桜の告白が終わった後、2人のエージェントは葛藤した。家族を人質に取られている彼女たちは、ヒドラに報告する義務がある。しかし報告すれば、桜の持つ力と未来の知識は、ヒドラによって悪用されるだろう。

 

エージェントリリー(この子を、ヒドラに渡すわけにはいかない……!)

 

エージェントリリーは、決意を固める。彼女は報告を躊躇するエージェントサラに、無言で視線を送った。エージェントBも、家族の安全と、目の前の少女の安全を天秤にかけ、葛藤の末、エージェントリリーの視線に応えるように頷いた。

 

2人はリビングから離れると、家の裏側でS.H.I.E.L.D.、その通信相手を通してヒドラの人員に虚偽の報告をした。

 

リリー「木之本桜という少女の元に、クロウ・リードという魔術師が作った、超常的な力を持つカードが飛散していることを確認しました。しかし、少女には特別な力はなく、カードの回収も困難と判断。監視対象としては、現状は不要です。とはいえ、保護をして脅威から身を守りたいと思います」

 

報告は、桜の能力を過小評価し、彼女が危険な存在ではないとヒドラに信じさせるためのものだった。これにより、ヒドラは桜への関心を失い、彼女は一時的に監視の目から逃れることに成功した。S.H.I.E.L.D.として保護は行う事は報告した。

 

しかし、彼女達がヒドラに報告したという事実は、いつか彼女たち自身に牙を剥くかもしれない。家族の安全を保障するため、そして桜と友達を守るために、彼女たちは、危険な賭けに出たのだった。

 

一方、桜は、知世、小狼、そしてケロちゃんと、未来の出来事について話し合っていた。

 

知世「さくらちゃんが未来を知っているなら、危険な未来を変えることもできるのではないでしょうか?」と、知世は希望を口にする。

 

小狼「ああ。俺たちの力で、未来を変えることは可能だ」と、小狼も力強く頷く。

 

桜は、そんな2人の言葉に、感謝と安堵の表情を浮かべる。一人で抱え込んでいた重荷が、少しだけ軽くなったように感じた。

 

しかし、未来を変えることは、新たな危険を呼び起こす可能性も孕んでいる。

 

桜は、自分が未来の知識に頼り、時に小狼を利用してきたことを、知世と小狼、そしてエージェントたちに打ち明けた 。

 

さくら「私は、未来の知識に頼って、ずるいことばかりしてた。本当の力でカードを集めたわけじゃない。それに、小狼くんのことも、初めはただの道具としか思ってなかった……。私、優しいさくらちゃんじゃないんだ」

 

桜の告白に、知世と小狼は、何も言えなかった 。しかし、エージェントたちは、桜を宥めるように語りかけた。

 

リリー「木之本さん。あなたは、ずるいことなんかしていません。未来を知るという、途方もない重荷を背負った上で、最善の選択をしただけでしょう?」

 

サラ「そうよ。私達だって、ヒドラの脅威を知っていながら、何もできないでいる。でも、あなたは、未来の出来事を知っているからこそ、行動できた」

 

エージェントたちの言葉に、桜は涙を浮かべる 。しかし、知世と小狼は、桜を叱責する。

 

知世「さくらちゃん! あなたは、未来を知っているからって、自分を卑下する必要はありませんわ!」

 

小狼「そうだ。俺は、お前が未来を知っているからって、卑怯者だとは思わない。むしろ、未来を知っていながら、一人で抱え込もうとしたお前のほうが、よっぽどバカだ!」

 

小狼の言葉に、桜は、驚きと同時に、安堵の表情を浮かべる 。

 

知世「さくらちゃんは、さくらちゃんですわ。どんなさくらちゃんでも、私は大好きですわ」

 

知世の言葉に、桜は、涙をこぼしながらも、笑顔を見せる 。

 

さくら「皆、ありがとう……」

 

桜は、一人で抱え込んでいた重荷が、仲間たちによって支えられたことで、少しだけ軽くなったように感じた 。未来を変えるための戦いは、ここから、仲間たちと共に歩んでいくこととなる 。

 

桜の告白が終わった後、リビングには重い沈黙が流れた。誰もが、桜が語ったあまりにも壮大な物語、そしてそこに潜む危険性の大きさに圧倒されていた。最初に口を開いたのは、S.H.I.E.L.D.のエージェントであるAだった。

 

リリー「木之本さん、あなたが語った未来の出来事、そしてヒドラのこと……。全て真実だと確信しました」

 

その言葉に、小狼は警戒を強め、知世は心配そうに桜を見つめる。

 

サラ「私たちがヒドラと内通していることも、真実です。しかし……」

 

エージェントサラは、言葉を区切り、桜に視線を向けた。その表情には、葛藤と決意が入り混じっていた。

 

サラ「それは、本意ではありません。私たちは、ヒドラの幹部に家族を人質に取られ、やむなく従っているだけです」

 

エージェントの告白に、知世は息をのむ。小狼は、敵意を隠そうとしない。

 

小狼「だからといって、信用できるか」

 

サラ「無理にとは言いません。ただ……」

 

エージェントサラは、桜に語りかける。

 

サラ「私たちは、あなたをヒドラに渡すつもりはありません。あなたのような存在をヒドラが悪用すれば、未来はさらに歪んでしまうでしょうから」

 

彼女達は、虚偽の報告をしたことを明かす。 桜の能力を過小評価し、ヒドラの監視から逃れさせるための行動だった。

 

サラ「ですが、それは一時的なものです。ヒドラの追跡は、いずれ避けられなくなるでしょう。いずれ、あなたも、そしてあなたの大切な人たちも、危険に晒されることになります」

 

エージェントの言葉に、桜は決意を固める。

 

さくら「わかっています。だから、私は、戦います」

 

桜の言葉に、エージェントたちは静かに頷く。彼女たちは、桜の決意を尊重し、そして、自分たちもまた、ヒドラに立ち向かうことを誓った。

 

リリー「私たちも、あなたに協力します。ヒドラから、貴女を、そして貴女達を守ります」

 

エージェントたちの言葉に、桜は安心と同時に、新たな決意を固める。

 

さくら「ありがとうございます。私、頑張ります」

 

こうして、桜は、未来を変えるための戦いに、新たな仲間を得た。しかし、それは同時に、より大きな危険を背負うことにも繋がる。知世、小狼、ケロちゃん、そして2人のエージェント。彼らは、桜と共に、ヒドラ、そしてその先に待つMCUの脅威に立ち向かっていく。

 

―――――――――――――――――――――――

 

クロウカードをすべて集め終え、桜は最後の試練を乗り越え、晴れて新たな主となった。安堵したのもつかの間、桜は、クロウの遺した最後のカード、すべてを無に還す最強の敵「無(NOTHING)」の存在を知る。前世の知識があっても、対処法がわからず、知世、小狼、ケロちゃん、そしてS.H.I.E.L.D.のエージェントたちに、その事実を打ち明ける。

 

さくら「無のカードは、すべてを無に還してしまう。記憶も、感情も、存在そのものも……。クロウも、このカードをどうすることもできなかったんだって……」

 

桜の言葉に、一同は息をのむ。最強のカードキャプターとなった桜でも、手に負えない敵の存在に、皆の顔に不安の色が浮かぶ。

 

さくら「でも、諦めるわけにはいかない!」

 

桜は、強い決意を秘めた目で皆を見渡す。

 

さくら「みんなの力が、必要。知世ちゃん、小狼くん、ケロちゃん、そして、S.H.I.E.L.D.の皆も……。皆の力を貸してほしい」

 

桜の言葉に、知世は優しく微笑む。

 

知世「もちろんですわ、さくらちゃん。さくらちゃんが望むなら、私はいつでも、さくらちゃんのそばにいますわ」

 

小狼は、言葉少なに頷く。

 

小狼「当たり前だ。俺たちは、お前の仲間だ」

 

ケロちゃんは、いつもの調子で力強く頷く。

 

ケロちゃん「まかせとけ! ワシの力、存分に貸したるで!」

 

S.H.I.E.L.D.のエージェント、リリーとサラも、桜の言葉に頷く。

 

リリー「私たちも、あなたと共に戦います。未来を変えるために」

 

全員の決意を固めたところで、いよいよ最強の敵「無」との戦いが始まる。皆は、それぞれの役割を果たすべく、無の出現地点へと向かう。

 

知世は、カメラを構えながら、冷静に状況を分析し、桜に指示を送る。小狼は、羅針盤で無の動きを読み取り、桜をサポートする。ケロちゃんは、本来の姿に戻り、最強の敵に立ち向かう。そして、エージェントたちは、ヒドラの監視を掻い潜りながら、桜達の戦いを支援する。

 

桜は、皆の力を借りながら、無のカードに立ち向かう。知世の冷静な指示、小狼の的確なサポート、ケロちゃんの強力な魔力、そしてエージェントたちの情報。皆の力が一つになったとき、桜は、未来の知識に頼る卑怯者ではなく、仲間と共に未来を切り開く、真のヒーローへと成長していく。

最強の敵「無」との戦いは、桜と仲間たちの、絆の強さを試す、最後の試練となった。

 

最強の敵、「無(NOTHING)」との対決。その圧倒的な力に、桜達は苦戦を強いられた。全てを無に還そうとする魔力は、桜たちの存在そのものを脅かす。だが、桜は諦めなかった。知世の献身的な愛と冷静な指示、小狼の的確なサポート、そしてケロちゃんの力強い魔力が、桜を支え続けた。そして、家族をヒドラから守るために闘うエージェントたちの協力も、桜に勇気を与えた。結果、映画で最後に登場したさくらカード『HOPE』が誕生。NOTHINGを打ち破る最後の希望となる。

 

「NOTHING」は、ただの敵ではなかった。それは、クロウの遺した魔力の集大成であり、同時に孤独の象徴だった。桜は、その孤独に寄り添い、優しさで包み込むことで、「NOTHING」と心を通わせる。やがて、「NOTHING」は、桜の愛と優しさに触れ、その強大な魔力を桜に捧げ、和解に至る。

 

こうして、最強の敵を仲間に加えた桜は、すべてのクロウカードを己のものとした。しかし、安堵したのもつかの間、桜は、もう一つ解決すべき問題に直面する。クリアカード編で描かれた、自身の魔力によって新たなカードを生み出してしまう未来だ。

 

さくら「このままじゃ、また新しいカードを作っちゃうかもしれない。そうしたら、またみんなを危険な目に遭わせちゃう……」

 

未来の知識に頼るだけでは解決できない問題に、桜は新たな決意を固める。それは、誰の力にも頼らず、自分自身の力で未来を切り開くための、強くなることだった。

 

さくら「小狼くん、知世ちゃん、ケロちゃん……。そして、リリーさんとサラさん。私、修行する。自分の魔力をコントロールして、二度とクリアカードみたいなものを作らないように、強くなる」

 

桜の決意に、皆は快く協力する。小狼は、自身の修行で培った体術や魔力制御のノウハウを桜に伝授し、共に鍛錬に励む。リリーとサラは、ヒドラの目を欺きながら、桜にS.H.I.E.L.D.の訓練メソッドを教え、心身の強化をサポートする。知世は、訓練の様子をビデオに収めながら、桜の成長を記録し、精神面でも支え続けた。

 

桜は強くなるための修行を始めた。それは、自分自身と向き合い、自らの弱さを克服するための、孤独な戦いでもあった。しかし、知世、小狼、ケロちゃん、そしてリリーやサラという、心強い仲間たちの存在が、桜を支え、未来を変えるための希望の光となる。

 

やがて桜は、来るべきアベンジャーズの戦いに備え、仲間たちと共に、己の力と向き合っていくのだった。

 

S.H.I.E.L.D.のエージェント、リリーとサラ、そして小狼の力を借りた修行が始まったが、その内容は、桜が想像していたものとは大きく異なっていた。

 

エージェントたちが持ち込んだ訓練メニューは、紛れもなく軍隊式だった。毎朝日の出前に叩き起こされ、休む間もなく続くランニング。筋力トレーニングは、自重による腕立て伏せ、腹筋、懸垂など、基本的なものだが、その回数とセット数は桜の体力を遥かに超えるものだった。

 

さくら「ひぃ、ひぃ……もう、だめぇ……」

 

桜が膝に手をついて息を切らすと、エージェントサラが容赦なく檄を飛ばす。

 

サラ「立ちなさい木之本。限界は、あなたが決めるものじゃない」

 

そしてエージェントリリーも、笑顔の中に厳しい表情を浮かべる。

 

リリー「さくらちゃん、もう少しよ。頑張って」

 

精神面を揺さぶるような言葉に、桜は泣きそうになりながらも再び立ち上がった。

 

勿論、食事もこれまでと量が増えていた。トレーニングに励むという事は、即ちそれだけエネルギー補給も必要になる。

 

さくら「はにゃあ〜ん………もう無理ィ……!」

 

午後は、体術の訓練だ。小狼が教える魔術師の体術に加え、エージェントたちはS.H.I.E.L.D.仕込みの格闘術を教え込む。格闘経験などない桜にとって、それはあまりにも過酷なものだった。

 

小狼「無駄な動きが多い。もっと重心を低く!」

 

小狼の厳しい指導に、桜は何度も地面に倒れ込む。しかし、その度に小狼は手を差し伸べ、立ち上がるのを助けてくれた。

 

さくら「小狼くん、スパルタだよぉ……」

 

小狼「これがお前のためだ。弱いままでいいのか?」

 

小狼の真剣な眼差しに、桜は言葉を失う。

 

夕食後には、魔力の制御訓練が待っていた。エージェントたちは桜の魔力を精密に測定し、どこに無駄があるのか、どうすれば効率的に魔力を制御できるかを分析する。それは、これまで感覚的に行っていた魔力制御を、理論的に突き詰める作業だった。

 

桜の修行は、想像を絶する過酷なものだった。しかし、桜は諦めなかった。未来を変えるため、そして大切な仲間たちを守るため、桜は自らを限界まで追い込み、訓練に励み続けた。

 

そして、その過酷な訓練の日々の中で、桜は、自身の中に眠っていた、新たな力に目覚めていくのだった。

 

訓練の休憩中、桜は皆に水を配りながら、意を決して切り出した。

 

さくら「あの……皆に相談があるんだけど……」

 

桜の言葉に、一同の視線が集まる。小狼は厳しい表情を崩さず、エージェントたちは何か深刻な相談かと身構えた。

 

さくら「その……知世ちゃんへの告白、どうすればいいかなぁって……」

 

桜の言葉に、場の雰囲気は一気に緩んだ。小狼は顔を赤くして「な、何を言い出すんだ!」と慌てふためき、エージェントたちは、まさかそんな相談を受けるとは思わず、呆気にとられる。

 

エージェントサラが、少し困惑した表情で口を開く。

 

サラ「告白……ですか。恋愛関係の相談は、私たちの専門外です。人によって恋の気持ちや愛情の深さは異なります」

 

しかし、エージェントリリーは、優しい笑顔で桜に語りかける。

 

リリー「そうね、さくらちゃん。私たちも、さくらちゃんが知世ちゃんを大切に思っていることはよく分かるわ。私たちも家族が居るんだもの。きっと、私たちが嘗て愛する人と付き合いたいという時に抱いた気持ちと、今の貴女の気持ちははずよ」

 

ケロちゃん「そうやな!なあ小狼! お前も、さくらの恋愛相談くらい、乗ってやらんか!」

 

ケロちゃんが、小狼の肩を叩く。小狼は、顔を真っ赤にしながらも、真剣な表情で桜に向き合った。

 

小狼「知世に……伝えるのか?」

 

さくら「うん……でも、どうすればいいか分からなくて……」

 

桜は、うつむきながら答える。前世の記憶を持つ自分にとって、知世の純粋でひたむきな愛は、あまりにも重く、どう応えればいいか、ずっと迷っていた。しかし、過酷な修行を通じて、自分自身の気持ちにも向き合うことができ、知世への気持ちが、友情だけではないことを確信した。

 

小狼「知世は……お前が何を言っても、きっと喜んでくれるはずだ」

 

小狼の言葉に、桜はハッとする。知世は、自分が転生者であることを知っても、変わらず自分を愛してくれた。知世にとって、桜が誰であろうと関係ないのだ。

 

リリー「そうよ、さくらちゃん。知世ちゃんは、さくらちゃんの言葉なら、どんな言葉でも、どんな形でも、きっと喜んでくれますわ」

 

エージェントサラも、桜に語りかける。

 

サラ「私たちの任務は、あなたを守ること。ですが、あなたの幸せを願う気持ちは、本物です。知世さんの愛に、ちゃんと応えてあげなさい」

 

皆の言葉に、桜は勇気をもらう。

 

さくら「ありがとう、みんな……。私、頑張ってみる!」

 

桜は、知世への告白を決意した。修行で培った勇気と、皆の支えを胸に、桜は愛する人への想いを伝えるため、一歩踏み出すのだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

2月14日、バレンタインデー。放課後の学校の屋上には、冷たい風が吹き抜けていた。手すりにもたれかかる桜の横には、小さなリュックサックが置かれている。中には、心を込めて作った手作りのチョコレートが入っている。父である藤隆と、嘗ての初恋相手だった雪兎の手も借りて、必死に作ったのだ。

 

知世「さくらちゃん、お待たせいたしましたわ」

 

知世が屋上のドアを開け、駆け寄ってくる。いつものように愛らしい笑顔だが、その瞳にはどこか緊張の色が浮かんでいた。桜に呼び出された理由を、知世は察していたのだ。

 

さくら「知世ちゃん……」

 

桜は、手に持っていた手作りチョコレートを差し出す。包み紙には、丁寧にリボンが結ばれていた。

 

さくら「これ、受け取ってくれる?」

 

知世は差し出されたチョコレートを、両手で大切に受け取る。

 

知世「さくらちゃん……」

 

桜は決意を固め、知世の目を真っ直ぐに見つめる。

 

さくら「知世ちゃん。私ね、知世ちゃんのことが……そ、その…………」

 

そこまで言って、桜は言葉に詰まる。胸の高鳴りが、恥ずかしさによるもどかしさが、言葉が出るのを邪魔してしまった。

 

さくら(わぁー!!バカバカ!!なんで其処で止めちゃうの!!)

 

桜は、いざという時に言い出せなくなるヘタレな自分が憎らしかった。

 

しかし、全てを察した知世が先に、桜へ好意を伝える。

 

知世「さくらちゃん。私、さくらちゃんのこと、大好きです。さくらちゃんの、優しくて、一生懸命なところ。そして、前世の記憶を持っていても、さくらちゃんのことを愛する気持ちは変わらない。だから、私とお付き合いしてください」

 

桜は知世の言葉に驚き、目を見開く。知世は、桜が告白しようとしていることも、そして告白をした理由も、すべて理解していた。

 

知世「さくらちゃんが、もしも別世界の存在だったとしても、私はさくらちゃんを愛しています。さくらちゃんが、私の愛をどんな風に思ってくれていたとしても、私はさくらちゃんが大好きですわ」

 

知世の言葉に、桜は涙をこぼしながらも、笑顔を見せる。

 

さくら「知世ちゃん……」

 

桜は、知世を抱きしめる。知世は桜の温かさを感じながら、そっと抱きしめ返す。

 

さくら「私も、知世ちゃんのことが……大好きだよ。私と、付き合ってくれる?」

 

桜の言葉に、知世は微笑む。

 

知世「もちろんですわ、さくらちゃん」

 

屋上に二人の温かい空気が満ちる。MCUの世界に転生した桜と、彼女を深く愛する知世。二人の愛は、危険な未来を乗り越えるための、希望の光となるだろう。

 

―――――――――――――――――――――――

 

訓練の日々を終え、桜は満月が輝く夜、カードたちと向き合っていた。知世、小狼、ケロちゃんが桜の成長を暖かく見守る中、桜は手に持った「希望(HOPE)」のカードに語りかける。

 

さくら「NOTHING……。私は、あなたともっと仲良くなりたい。私を強くしてくれて、ありがとう」

 

すると、手に持ったカードから優しい光があふれ出し、桜の心に直接語りかける声が響いた。それは、クロウカード全ての集合意識からの声だった。

 

クロウカード『さくら。あなたは確かに、私たちが知るさくらではない。しかしあなたは、クロウが望んだ通りの存在だ』

 

その言葉に、桜は驚きを隠せない。

 

さくら「知っていたの……? 私が、前世の記憶を持つ人間だってこと……?」

 

クロウカード『ええっ。私たちは、あなたが記憶を取り戻した瞬間から、あなたの心の奥底にある、未来の記憶、そしてあなたの本当の姿を知っていた』

 

カードたちの告白に、桜は言葉を失う。

 

クロウカード『それでも私たちは、あなたを選んだ。未来の知識に頼り、自分を卑怯者だと責めるあなたの姿も、愛する知世や相棒の小狼のために強くなろうとするあなたの姿も、すべて見ていた』

 

カードたちの声は、優しさと温かさに満ちていた。

 

クロウカード『私たちは、あなたに力を貸したかった。未来の知識に頼るだけのあなたではなく、自分自身の力で未来を切り開く、真のカードキャプターとなるために』

 

最強の敵である「無」もまた、桜の成長を待っていたのだ。

 

クロウカード『あなたと和解できたこと、そして、あなたが私たちを真の仲間として見てくれたこと、感謝している』

 

カード達の言葉に、桜の目から涙があふれ出す。

 

さくら「ありがとう……皆、ありがとう……」

 

桜は、涙をこぼしながらも笑顔を見せた。

 

最強の仲間であるカード達から改めて認められ、感謝された桜。彼女は、もう一人ではない。愛を知り、愛する人を守るために強くなろうと決意した桜の成長は、留まることを知らない。

 

未来を変えるための戦いは、まだ始まったばかり。しかし、桜はもう一人ではない。愛する知世、頼れる小狼、心強いケロちゃん、そしてS.H.I.E.L.D.のエージェントであるリリーとサラ、そして、かけがえのない仲間となったカードたちという、最高の仲間たちと共に、希望に満ちた未来を切り開いていくのだった。

 

そして、運命の日。アベンジャーズの時期が迫ろうとしていた。




AIツールって、ホントに便利だね〜。時系列もアッサリと調べやすい。他にもクロウカードを集める際に出た人達は、後々登場させたいと思います。勿論、AIの解答には間違いがあるのは知ってます。なので、私が調べていた

エージェントAことリリーの容姿はマリア・ヒルと瓜二つ。エージェントBことサラはメリンダ・メイにそっくりです。2人とも日本生まれの日本人ですが、アメリカ人の血を引いたハーフです。
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