V・チューバー宮が配信するアマス 作:・V・
アラバスタへの訪問から1年が過ぎた。
私の配信はどんどんと影響力を増している。
だが、まだ——足りない。
今度行うのは「ワールド・バラエティ・ツアー」と銘打った長期取材企画だ。
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「今日は題して、『海上レストランを食べ尽くしてみた』アマス!」
東の海。海上レストラン「バラティエ」。
最初は緊張が走った従業員たちも、私が料理一つ一つに素直に感動し、前世の知識を活かした食レポを披露するうちに、次第に笑顔を見せるようになった。
「この『エレファント・ホンマグロのカルパッチョ』!!口に入れた瞬間、海の宝石が弾けるような……まさに至福の逸品アマス!」
「彩り豊かな『4つの海の幸のテリーヌ』!見た目も美しい芸術品アマス!それぞれの海の幸が織りなすハーモニーが、オールブルーの夢を思わせるアマス!」
「これは……!巨大な骨付き肉!!海賊たちの宴を思わせる豪快さアマス!噛みしめるほどに溢れる肉汁が、冒険の疲れを吹き飛ばしてくれるアマス!」
コメント欄も大盛り上がりだ。
『美味しそう!!!』
『行ってみたーい!!』
『まて、この小さな体にどうやってあの量の料理が!?』
オーナーシェフのゼフは、私の食レポを腕組みしながら聞いていた。
「ではゼフさん!最後に一言お願いしますアマス!!」
「……食いたいやつにゃ食わせてやる!!」
ゼフは、カメラに慣れないのか、少しだけ照れながらもそう宣言する。
「さすがアマス!と言うことでみなさま、次の放送でまたお会いするアマスー!!」
配信が終わった、その時。
「お疲れ様でした、お姫様。食後にこちらはいかがでしょうか」
すっと、美しい彩りのデザートが私の前に差し出された。
そこに立つのは、黒いスーツを着こなした、金髪の青年。
「おい!!ひっこんでろチビナス!」
ゼフが、その青年を追い払うように怒鳴りつける。
「ゼフさん、気にしないアマス。これは?」
「フルーツのマチェドニアでございます。どうぞ、お姫様」
青年は恭しくお辞儀をすると、嬉しそうに口元を緩ませた。
「いただきますアマス!!」
マリージョアで食べたどんなものよりも、それは本当に美味しかった。
高価な食材でも秘伝のレシピでもない。ただ、目の前の相手を喜ばせたいという純粋な気持ち。その一皿には、そんな温かい魔法がかかっているようだった。
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「ンマー!!ようこそ!」
ウォーターセブンの水面は、朝日を受けて、宝石みたいにきらめいていた。
就任したばかりの若き市長アイスバーグ自らが案内役を務める。
島の中には無数の水路が張り巡らされ、人々はヤガラと呼ばれる馬面の海の生き物の背に取り付けたゴンドラで行き交っている。
私も配信用の電伝虫を抱えて、ゴンドラに乗りながら街を案内してもらった。
潮風と鉄の匂いが混じったこの街の空気は、どこか懐かしくてあたたかい。
「ここは1年ほど前に競い合っていた7つの造船会社が統合されて出来たアマス!」
訪れたガレーラカンパニーのドックは、活気に満ち溢れていた。
「そして、その立役者こそ、このアイスバーグさんアマス!」
船底を叩く音、金槌のリズム。流れる汗。
その一つひとつが夢を形にしていた。
「職人さんたち、みんなキラキラしてるアマス!」
職人たちの高い技術力に圧倒されながら、私は配信でそのすごさを視聴者に分かりやすく解説する。
鳩を肩に乗せた職人がチラリとこちらに視線を向けるが、それには気がつかないふりをしておいた。
アイスバーグは、師トムの「造った船に男はドンと胸を張れ」という言葉や、この街を愛し、守るという強い意志を語ってくれた。
「ん~~~~~~スーーーーパーーーー!! 」
突然映り込んできた露出度の高い解体屋には、検閲でモザイクがかかったけれど、配信は大成功。
「一部映像が乱れて失礼したアマス!では次の放送でまたお会いするアマスー!!」
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次に訪れたのは、海軍本部マリンフォード。
配信の準備をする私に、ふと、背後から間延びした声がかけられる。
「おやぁ〜……その電伝虫、見ない形だねェ〜。ベガパンクの所の新作かい?」
振り返ると、黄色いストライプのスーツに身を包んだ、背の高い男が立っていた。
海軍大将、"黄猿"ボルサリーノ。
私が抱える配信用の電伝虫を、興味深そうに眺めている。
「私のための特注品アマス!」
内心の動揺を悟られぬよう、私は胸を張って答える。
ボルサリーノは口元を歪め、私の顔をのぞき込んできた。
「あぁ〜、君がチューバー宮か。科学の力はすごいねェ〜。世界中に届く声ってのは、ある意味じゃァ……武器よりよっぽど恐ろしいかもねェ〜」
その言葉に、隣に控えるゲルニカの空気がピリッと変わる。
「ボルサリーノ様、そのようなことは不用心に仰られないよう……」
「おっと、こわいこわい」
ボルサリーノは飄々と両手を上げる。
圧倒的な規模を誇る要塞のような本部で、私は彼の案内のもと、配信を開始した。
「こうして見ると、壮観だよねェ〜」
彼の言葉と共に、精鋭たちの統率の取れた訓練風景や、最新の軍事技術が紹介されていく。
偶然居合わせた伝説の海兵、ガープ中将にインタビューを試みるも、「知らん!」と一蹴され、鼻をほじられてしまう。
しかし、その豪快な人柄に触れ、私は思わず笑みがこぼれた。
一通りの配信を終えた私は、海兵たちの噂話を耳にする。
「ソルベ王国はまずいな、今に何が起こるか……」
「……アラバスタは"英雄"クロコダイルが来てから治安が良くて助かる」
「ああ。だが、最近は原因不明の干ばつが問題になり始めてるって話だが……」
その言葉に、私の心臓が小さく跳ねた。
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自室に戻り、一人、私は世界地図を広げた。
指先が、ソルベ王国とアラバスタ王国をなぞる。
頭の中で、海兵たちの言葉がこだまする。
"英雄"クロコダイル。そして、原因不明の干ばつ。
間違いない、バロックワークスが動き出している。
どうすればいい。
ビビに聞いて、いや、それはダメだ。
今後彼女が潜入する可能性が捨てきれない以上、下手に頼るわけには行かない。
しかし、私の心を苛むのはアラバスタの問題だけではなかった。
南の海のソルベ王国。
そこには、まだ見ぬ革命の同志バーソロミュー・くま、そして……ボニーがいる。
どちらにも救うべき民がいる。どちらにも見過ごせない現実がある。
理性は告げる。より喫緊の課題は、より大きなうねりを生む可能性があるのは、国家の圧政に立ち向かうソルベの方かもしれない、と。
だが、私の脳裏に浮かぶのは、健気な王女が放ったあの一言。
『久しぶりの雨……!』
意を決して、電伝虫を手に取る。
間髪も入れずに、声が返ってきた。
『フッフッフ、久しぶりだな。最近の配信は楽しそうじゃねェか』
「お願いがあるの。クロコダイルへの伝手を頂戴」
『ほう……いいのか?大きな『貸し』になるぞ?』
電伝虫越しに伝わる、ドフラミンゴの冷たい笑みとわずかな含み。
「かまわないわ」
私は息を整え、声に迷いを混ぜずに答えた。
一瞬の沈黙。
そして、低く含み笑いが響く。
『……フッフッフッフッフ』
私は電伝虫をそっと置き、深く息を吐いた。
この選択の先に何が待っていようと——もう、目を逸らすことはできない。
【Variety】
名詞:
1. 多様性、種類の豊富さ
2. (芸能・配信などの)バラエティ、娯楽の多彩な企画