V・チューバー宮が配信するアマス   作:・V・

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Vivi

「今日はいよいよ明日に開催が迫った世界会議の準備を取材するアマス!」

 

配信電伝虫のカメラに向かって、私はいつもの笑顔を浮かべる。

 

『いつも見ています!』

『アラバスタから見ています!』

『北の海から応援してます!』

 

コメントが途切れない。

 

(ベガパンク、想像以上のものを作ってくれた)

 

ほんの数ヶ月前まで、視聴者は数十人だったのに今では千人を超えている。電伝虫の目玉が、興奮で少し震えている気がした。

 

(でもまだ足りない。真実を暴露するには、もっと影響力が必要だ)

 

翌日、私はパンゲア城の社交の広場にいた。

 

空は近く、噴水の音が金の椅子を照らす。ここが、王たちの集う場所。

 

(いつものようにナス寿郎を説得して、レヴェリーの取材許可は得た)

 

社交の広場のみ、生放送でなく録画形式という条件付き。それでも構わない。ここには世界中から集まった王族がいる。

 

(影響力を拡大する絶好の機会……!)

 

王たちの笑い声。宝石のようなカップ。

 

眩しさに目を細めたその時、青い髪の少女が恐る恐る近づいてきた。

 

「あの……もしかしてチューバー宮様ですか?配信、見てます!」

 

声が少し震えている。

 

「本当アマス?嬉しいアマス!」

 

「私、ネフェルタリ・ビビって言います。アラバスタ王国から来ました」

 

青い髪が、光をはじいて揺れた。

 

「外の世界のことがもっと知りたくて。配信、いつも楽しみにしてるんです」

 

「ありがとうアマス!ビビさんは初めてのレヴェリーアマス?」

 

「はい!父上と一緒に来ました。でも、知ってる人がいなくて……」

 

「じゃあ、一緒に回るアマス!」

 

「ほんと!?」

 

ビビの顔が輝く。

 

二人は並んで広場を歩く。

 

王族たちが、その背中に微笑みを向けた。

 

「こちら、アラバスタ王国のビビ様アマス!」

 

「初めまして。ネフェルタリ・ビビと申します」

 

ビビが丁寧にお辞儀をする。私はその横で笑顔を向ける。

 

「私の配信を通じて、もっと多くの方に各国の素晴らしさをお届けしたいアマス」

 

次々と王族に声をかけ、取材を進めていく。配信技術の普及を提案すると、多くの国が興味を示してくれる。

 

「コメント電伝虫もございますので、皆様との双方向の対話も可能アマス」

 

営業トークを続けながら、私はふと気づく。

 

(魚人島……リュウグウ王国の姿が見えない。そうか。まだ参加すら認められていないんだ)

 

華やかな場には、見えない差別が影を落としていた。

 

========================================

 

取材を終え、ビビと二人で休憩していた時だった。

 

「ねえ、チューバー宮様って何歳なんですか?」

 

「10歳アマス!ビビさんは?」

 

「私も10歳です!同い年なんですね!」

 

二人で嬉しそうに笑い合う。

 

「じゃあ、敬語じゃなくて友達みたいに話していいですか?」

 

「もちろんアマス!」

 

ビビが少し照れながら言う。

 

「あ、でも天竜人様だから……」

 

「気にしないアマス!」

 

「ありがとう。じゃあ……チューバーちゃんって呼んでもいい?」

 

「いいアマス!」

 

「チューバーちゃんは、お父様やお母様も一緒に来てるの?」

 

一瞬、表情が固まる。

 

「……私には、おじ様がいるアマス」

 

「あ……ごめんなさい!」

 

「大丈夫アマス!」

 

すぐに笑顔を作る。でも、気まずい空気が流れた。

 

その時だった。

 

「おおっと!手が滑ったわ!!」

 

風を切る音がした。

 

振り向いた瞬間、ドラム王国国王、ワポルの太い腕がビビの頬を弾いた。

 

「あっ!!」

 

少女の体が崩れ落ちる。

 

「ビビ!」

 

「まっはっはっはこりゃ失礼。確かアラバスタの姫君でしたかな?あのダメ国王の娘とは不憫ですなー」

 

ビビの護衛、イガラムが飛び出してくる。

 

「貴様何のつもりだ!!」

 

「やめてイガラムッ!!!……いいの」

 

ビビは立ち上がり、穏やかに微笑んだ。

 

「こちらこそぶつかってごめんなさい」

 

「ケェッ!!ムナクソ悪いガキだぜ!!」

 

ワポルが背を向ける。

 

「待つアマス、ワポル王」

 

「あ?」

 

「ビビは私の大切な友達アマス。もう少し優しくしてくださると嬉しいアマス」

 

振り返ったワポルの顔色が変わった。

 

「これはこれはチューバー宮様!大変失礼いたしました!」

 

揉み手をしながら、ワポルは続ける。

 

「お詫びと言っては何ですがぜひドラム王国に来てくだされ!わが国自慢のイッシー20をぜひ世界に発信していただきたい!」

 

「そうアマスね……桜が咲くころに取材しに行くアマス」

 

ワポルの表情がハッと変わり、苦々しげな顔になる。

 

「わ、わかりました。帰るぞドルトン!!」

 

足早に去っていくワポルの後ろで、護衛の一人——ドルトンが振り返った。

 

「……すまん」

 

========================================

 

二人で広場の端に移動する。噴水の水音だけが静かに響いていた。

 

「大丈夫アマス?」

 

ビビは頬を押さえながらも笑顔を作っている。

 

「うん、平気。チューバーちゃんが助けてくれたから……それに、あそこで怒ったら、戦争になっちゃうかもしれないから」

 

(10歳で……そこまで……)

 

「だから、我慢するのは当たり前で——」

 

言葉の途中で、ぽとりと涙が落ちた。

 

「あれ……?なんで……」

 

そして堰を切ったように泣き出す。

 

「うわあああああん!」

 

「ビビ……」

 

「ご、ごめん……我慢しなきゃいけないのに……でも……怖かった……痛かった……」

 

私は、そっとビビを抱きしめた。

 

「いいアマス。ここでは泣いてもいいアマス」

 

ビビが私の胸で泣き続ける。

 

「チューバーちゃんは……すごいね」

 

「え?」

 

「私を守ってくれた。怒らずに、笑顔で」

 

(違う)

 

私には前世の記憶がある。大人としての経験がある。

 

でも、ビビは本物の10歳だ。それなのに、国のために我慢して、涙を堪えて、謝罪までした。

 

「ビビは、私なんかより……ずっと立派だよ」

 

思わず、本音がこぼれた。

 

ビビの涙が止まり、顔を上げる。

 

「チューバーちゃん……」

 

空気が静まり、噴水の音すら止まった気がした。

 

その時、その沈黙を裂くように冷たい笑い声が響いた。

 

「フッフッフ……噂のチューバー宮様か」

 

サングラス。ピンクのフェザーコート。

 

一瞬で、空気の温度が下がった。

 

ゲルニカがその男を遮るように立ち塞がる。

 

「おやおや、護衛か?ご苦労なこった」

 

「……ドフラミンゴ」

 

「フッフッフ……今は邪魔すんな」

 

ゲルニカを押しのけ、ドフラミンゴが歩みを進める。

 

私は立ち上がり、ビビを背にかばう。

 

「ドンキホーテ・ドフラミンゴ王、初めましてアマス」

 

「面白ェことをしてるらしいな。配信……か」

 

「はいアマス。世界中の人に、素晴らしいものを届けたいアマス」

 

サングラス越しの視線が、私を射抜く。

 

「ドレスローザに来い」

 

「!?」

 

「俺の国で配信をしてみろ。見せてやるよ。『本物の娯楽』をな」

 

心臓が早鐘を打つ。

 

「……いつかぜひお邪魔させてもらうアマス」

 

「フッフッフ……いつかと言わずすぐにでも。期待してるぜ」

 

ドフラミンゴがすれ違いざまに、耳元でそっと囁く。

 

「お前、本当に天竜人か?」

 

背筋が凍りついた。

 

「こいつは視聴者からのプレゼントだ。『いつも見ています!』ってな。待っているぜ。フッフッフッフッフ……」

 

笑い声が遠ざかる。

 

手渡されたのはヴァイオレットの花束。

 

「チューバーちゃん?大丈夫?」

 

ビビの心配そうな声で、我に返る。

 

「大丈夫アマス……」

 

「チューバーちゃん、本当に大丈夫?顔が青いよ」

 

「ちょっと緊張しただけアマス!」

 

笑顔を作る。ビビは不安そうに私を見ていたが、やがて小さく微笑んだ。

 

遠くからコブラ王がビビを呼ぶ声がする。

 

「配信、これからも楽しみにしてるね」

 

「ありがとうアマス」

 

「また会えるかな?」

 

「きっと会えるアマス」

 

「うん!じゃあ、またね!」

 

ビビが手を振りながら、父のもとへ駆けていく。

 

私は花束を手に、マリージョアの空を見上げた。

 

香りが甘すぎて、息が詰まる。

 

ふと、花の奥で何かが光った。

 

一枚のカードが、はらりと落ちる。

 

『今夜、迎賓室で』

 

笑う髑髏が、こちらを見ていた。

 

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