使うモンスター達(の見た目)が邪悪過ぎて敵だと思われてる件について 作:仮面
「やっぱりお前か深堂……!」
「……何のことだ?」
「とぼけるな! お前がこの町のみんなに闇の力を振り撒いてた元凶なんだろ!」
「……」
「何か言えよ!」
「知らん。と言っても聞く耳を持たんのだろう? だったら問答するだけ時間の無駄だ」
「っ……お前は、ここで俺が止める……!
「ハァ……無駄だってのに」
「行くぞ、リウム!」
『ああ、ここで彼を止めよう』
「程々に蹴散らすぞ、アルベル」
『くっく……! 相も変わらず、主殿は厄介ごとに恵まれているな?』
「誰のおかげだと思ってる。つべこべ言う前に働けよ」
ほんとにさぁ……誰か助けてくれ? どうしてこうなったんだ。
俺の名前は
竜と書いてトオル、と読むのは中々珍しいのだが、両親的には「難しい読み方の名前ってかっこいい!」というイメージらしく、竜という字自体もかっこよかったから、らしい。ネット文化の悪いところではないだろうか。
「見ろよ、ドラゴンだ」
「ひえ、朝からとんでもねぇの見ちまったよ。くわばらくわばら……」
「あの人が何かしたんですか?」
「聞いて驚くなよ……あいつの使うモンスターって、実際に人を食ったことがあるらしいんだ」
「へー」
食うかよ所詮は紙切れだぞ。
『紙切れとは、中々に酷い評価だな? 主殿』
「うるせぇよアルベル。お前らのおかげで広まった悪評だ、報いを受けろ」
『ははは! 我ら程度の見た目に怖気付く者たちの評価だ、気にすることはない。他の
「
『ん……? ああ、そう言えばそんな奴がいたな?』
「
『……まぁ、そうではあるのだが……』
ふむ……と考え始める
「ほら見てみろよ、今も虚空に向かってブツブツと一人で喋ってやがる」
「噂だとドラゴンって二重人格らしいですぜ? その裏の人格が人を食ってるとかなんとかで」
「え? 俺が聞いたのは、あいつに逆らった人間が使役するドラゴンに夜な夜な食い消されてるって噂なんだけど……」
「ふーん……」
風評被害ここに極まれり。これもう裁判したら勝てるだろマジで。
『くっくっく……』
「喜ぶなよさっきから……そんなに恐れられるのが嬉しいか?」
『無論だとも。我らの脅威は主殿の強さと同義だ、
「ありがた迷惑だ……そろそろ引っ込んでろ。学校に着く」
仕方あるまい、とどこかに消え行くあいつを横目に、学校の門をくぐる……ここはずっと昔のお偉いさんが、デュエリストの育成の為に創設したデュエリスト専門学校……の一つ、世界各地に沢山あるんだとさ。
「あの、先輩!」
そして、と言うほどでもないんだが。この学校独自の風習として『主殿、忍者見習いに呼ばれているぞ』……ん?
「……すまん、考えごとをしてた」
「いえ、気にしないでくださいっス、いきなり話しかけたのは私の方なので」
「助かるよ……んで、何の用だ」
「用事っていうか……その、先輩って
「ん?」
何だ今更。
「
「いえ、どうこうしたいんじゃなくて……ただの確認っス。先輩と私以外に、そういう人を見かけないので」
「……全くいない訳じゃない」
「え、そうなんですか?」
「大体の奴は聞かれても正直には話さないがな。見える奴同士じゃないとそもそも話にならんってのもあるが」
見えない奴に見えるもののことをどうこう言ったって、そいつにとっては信憑性のない作り話だしな。無意味とは言わんが。
「ふーん……毎回思うっスけど、先輩は噂されまくりですよね、いいんですか?」
「唐突だな……さっきの噂が関係でもしてるのか」
「やっぱり聞こえてたんスね、さっきの」
「朝からあんな声で、聞こえないって言う方が白々しいっての」
「じゃあ何で否定しないんです?」
「そいつを否定したって噂は広がる。だったら好き放題言わせてた方が平和だろ」
見える奴に、噂に感化された奴、どいつもこいつも面倒ごとの種でしかない。何せ見える奴って大体強いし、何かしらの事案に巻き込まれてたりするんだわ。
「へー、そんなもんなんスね」
「お前も見えるんだとしても、学校じゃあんまり広めないでいた方がいいぞ。安全に過ごしたいんならな」
「はいっス、先輩」
「ま、それでも最近は変なのに絡まれてるが」
「って、それじゃダメじゃないですか?」
「噂も行き過ぎたら悪影響なんだと、最近気付いた」
「先輩が遠い目をしてるっス……どんだけ絡まれたんですか」
「この一ヶ月で三回だな。どれもこれも全く見に覚えのない案件だった」
「うわぁ……」
この世界、カードの悪意かなんだか知らないがとんでもない量の"悪の組織"がある。どいつもこいつも闇だの光だのうるさいもんでな……。
「先輩のカードたちって……」
「微妙に光も闇も関係あるな、しかも見た目が凶悪だ」
「……どんまいっス、先輩」
後輩の憐れむ様な目が心に刺さる……うぐぐ、俺は負けんぞ。
「……まぁ、俺の不幸話は置いといて、今日はそのまま部活に行くか?」
「え、そのつもりでしたけど。何かあるんスか?」
「いや、昨日の部活会議で、転入生の話を総括顧問から聞かされてな。そいつを見に行くのもありかと思ってたんだよ」
この学校の方針として、「一般人の心得」と言うものがある。専門学校とは言えども、その他の趣味を忘るるべからず……らしい。変な校風である。
この学校は最初の一年だけ基礎を教える。その後の授業は基本、自由履修だ。その代わりに生徒は全員何かしらの"部活"に入ることが義務付けられている。
「何でも、前の学校じゃ無敗で手がつけられなくなったからこっちに来たとかでな。他の部長どもが……」
「あー……」
詳しくは割愛するが、この学校において部活は派閥だ。上澄みにであればある程、学校内での権力は高まるし、その逆もまた然り。
だから部活争いのデュエルはどうしても盛んになる訳だ。デュエリストが血に飢えてるのも否定しきれない要素だが。
「珍しいっスね。先輩ってそういうのに関わらないと思ってましたよ」
「俺だって関わりたくないよ。でもそいつが部長どもと同類だったらと思うとな……俺のところにまで来るかもしれん、それを見極めときたい」
「確かに、噂だけ聞くとすごく強そうですもんね」
転校生もまた、珍しい大した要素ではない。強者を求めてだとか、さっきも言った悪の組織の手がかりを求めてだとかで、世界中のデュエリスト生徒がぐるぐると巡り巡っている。
片田舎と都会を比べたとしても、デュエリストには大して差がなかったりもする。そのせいで学校間の諍いも多いこと多いこと……血に飢え過ぎでは? デュエリスト。
「まぁ、うちの部長は噂だけじゃなくてちゃんと強いんスけどね?」
「そんな時だけ部長呼びすんなっての。大したことでもない」
「部員二人で上から37番目は大したことだと思うっス」
そりゃまぁ……うん、絡んでくる奴全員相手にしてたらそうなったよな、何でだよ。
「……ねぇ」
「ん?」
「はい?」
後ろから急に声が……って誰だこいつ。
「あなたは、強い?」
「……さぁな、カードの相性にも寄るだろ」
「ん、わかった」
いやほんとなんなんだこいつ……それだけ聞いて歩いて行きやがったが。
「先輩先輩、あの子誰っスか?」
「知らん」
「え、知らない人に話しかけられたんスか?」
「珍しいことじゃねぇだろ」
「……それもそっスね」
悲しいかな。この世界は知らない奴に話しかけられることの方が多いんだ、デュエリストだからな。
「……じゃあ噂の転入生見に行こうっス、早く部活動したいっスから!」
「お前はいっつも楽しそうだなぁ後輩」
「もちろんスよ、先輩との部活は楽しいっスからね!」
今はお前の明るさが心の底から羨ましい。
どうせ面倒ごとに巻き込まれるからなぁ。