エイリアンに侵略される異世界に呼び出された仮面ライダーサーベラが、圧倒的な力でエイリアンを蹂躙して世界を救います。
夜空に黒い渦が生まれた。
都市の灯りは遠く、静寂が支配する中、突如として響く女性の声。
『あなたの力を貸して。私の世界を救って、強き戦士よ――』
言葉が耳に届いた瞬間、神代玲花は体を突き上げる衝撃に包まれた。
光に飲まれ、重力の感覚も失せる。
目を開けると、そこは見知らぬ街。
街を覆うように巨大な障壁が立ちはだかっている。
人々はその中で辛うじて身を隠し、兵士たちが防衛線を張っていた。
世界中がエイリアンの侵略に晒され、各地に要塞都市が築かれ、生存権をかろうじて維持しているのだ。
玲花は唇を引き結び、視線を巡らせる。
無数の黒い生物が要塞都市の壁に押し寄せている。
触手を振り、鋭い牙を露わにし、街を蹂躙せんと迫る。
その瞬間、手元に煙とともに聖剣を顕現させた――煙叡剣狼煙。
「…変身」
昆虫大百科を剣にセットし、力強い音声が響く。
「狼煙開戦!
FLYING! SMOG! STING! STEAM! 昆虫CHU大百科!
揺蕩う、切っ先!」
全身を覆う煙の中で、玲花の姿は仮面ライダーサーベラへと変貌を遂げた。
眼光は冷たく光り、威圧を帯びた気配を放つ。
「神代玲花、またの名を…仮面ライダーサーベラ。
この世界の、粛清を――始めます!」
闇を切り裂くようにサーベラは外壁の外側に向かって走り出す。
装甲の継ぎ目から薄く煙が漏れ、刃のきらめきが夜気に瞬く。
目の前のエイリアンが唸り声を上げ、触手を振り回す。
サーベラはその一撃を見切るよりも早く、体を半ば煙に変えた。
黒い触手が確かに彼女の胸元を貫いたかに見えた瞬間、形が霧のようにほどけ、風のようにすり抜ける。
触手は虚空を裂き、壁を砕くのみ。
サーベラは煙の流れの中から再び姿を結び、無防備になった敵の首を一閃で断った。
「そんなもの、通じると思いましたか?」
冷たい声が夜気に混ざる。
エイリアンの群れが咆哮を上げ、一斉に襲いかかる。
だがサーベラはそれらの間を滑るように駆け抜け、敵の攻撃を受けるたびに身体の一部を煙に変えて透過する。
鋭い爪が肩を掠めたと思えば、その瞬間には輪郭が薄れ、指の間を抜けて再び形を成す。
反撃の剣閃は容赦がない。黒い外殻が粉砕され、散っていく。
爆発の衝撃波の中で、サーベラは宙を舞い、敵の頭上から降下。
跳躍と同時に煙の軌跡を描き、地上に着地するやいなや、その軌跡が一斉に爆ぜて周囲の敵を吹き飛ばした。
金属の悲鳴のような音。倒れ伏すエイリアンの山。
「これで、終わりです…!」
蹴りから繋がる連続攻撃。
高速の回転蹴り、背後からの飛び膝蹴り、跳躍からのライダーキック。
煙と閃光が交錯し、敵の群れは視認すらできぬまま粉砕されていく。
都市の壁に張り付いていた触手も、サーベラの剣が一閃すれば即座に切断され、黒光りする身体はひび割れ、もはや反撃の力を残さない。
攻め寄せたエイリアンは全滅した。
サーベラは煙の残滓の中に静かに立ち、剣を下ろす。
兵士たちはサーベラの背後で息を呑む。
人類の戦力を超越した力に、驚嘆と安堵が混ざる。
「…終わったのか?」
防衛隊の隊長が呟く。
サーベラは剣を収め、振り返らずに答える。
「この都市は守られました。でも――これはまだ、序章に過ぎません。」
夜が明けきらぬうちに、彼女は都市の中央塔に案内された。
そこにはこの要塞都市の長がいた。白髪混じりの壮年の男で、戦禍の痕が刻まれた顔をしている。
「あなたが…あの黒い群れを退けてくれたという戦士か。」
「仮面ライダーサーベラです。少し、話を聞かせてください。」
長は重い息をつき、窓の外――南方に広がる灰色の大地を指した。
「〈死の海〉と呼ばれる場所が大地の向こうにある。そこには、どれだけの兵を集めても近づけない。無数のエイリアンが屯し、まるで巣そのものが生きているようだ。
…我々はそこに、“母”がいると考えている。」
サーベラは静かに目を閉じた。
瞳の奥で、狼煙のように決意が燃え上がる。
「なるほど。なら――そこに行けば、すべてが終わるわけですね。」
長は慌てて声を上げた。
「無茶だ! 単身では――」
しかし、サーベラはすでに立ち上がっていた。
その背に纏う煙が揺らぎ、まるで夜そのものが形を成したように見える。
「私は、粛清の剣。闇が蔓延る場所なら、そこへ行きます。」
「…単身で向かうつもりか?」
「ええ。誰かがやらなければ、終わりませんから。」
長は黙って頷き、わずかに頭を垂れた。
サーベラは建物を後にし、朝焼けに染まる空を見上げる。
遠く、灰の大地の向こうで黒い霧が渦を巻いている――その中心こそ、マザーエイリアンが支配する巣だ。
煙が彼女の体を包み、地を滑るようにしてサーベラは消えた。
ただ、残されたのは小さく響く声。
「……粛清、開始。」
荒野の先、空を覆う灰色の霧が揺らめいていた。
その中心には、無数の影が蠢く黒い海。
人はそれを“死の海”と呼ぶ。
仮面ライダーサーベラは静かに足を踏み入れた。
足元の地面は焦げつき、空気さえ淀んでいる。
遠くでエイリアンの群れがざわめき、まるで異形の鼓動が大地に響いているようだった。
「……ここが、巣の入口。」
サーベラは聖剣・煙叡剣狼煙を構える。刃が微かに光を放ち、周囲の霧を押しのける。
次の瞬間、地中から黒い影が弾けるように現れた。
鋭い尾を振り上げ、牙を鳴らして飛びかかる。
しかし、サーベラの姿はもうそこにはなかった。
空気が煙に変わり、敵の攻撃は虚空を裂くだけ。
一拍遅れて背後に実体を戻すと、斬撃の閃光が走る。
敵の体は霧の中に吸い込まれたかのように崩れ落ち、光の粒となって消えた。
「一体や二体で、止まると思いましたか?」
続いて十、二十と迫る群れ。
サーベラはその群れの中心に飛び込み、全身を煙に変えて敵の攻撃を透過しながら、
剣を振るたびに衝撃波が走る。
切り裂かれた霧が光を反射し、周囲の大地を白く染める。
飛びかかる敵の群れを見上げながら、サーベラは聖剣を掲げた。
「狼煙霧虫! 煙幕幻想撃!」剣が輝き、煙が爆ぜる。
煙の奔流が竜巻のように巻き上がり、視界が真白に包まれた。
その中を、光の刃が幾筋も走り抜ける。
敵の咆哮も、衝撃音も、やがて静寂に溶けていった。
気がつけば、黒い群れは一掃されていた。
煙が晴れ、サーベラの立つ場所だけが、戦火の中で変わらず残っている。
「……まだです。」
地平線の向こうで、さらに大きな振動が伝わってくる。
岩山が崩れ、黒い霧が渦を巻く。
その奥から、他の群れとは明らかに異なる、異形の巨影が姿を現した。
それは、巣の守護者――マザーの門番とも呼ぶべき存在。
人の建物を遥かに凌ぐ体躯。
無数の触手が絡み、周囲の霧を吸い上げていた。
サーベラは剣を構える。
「――これを越えなければ、元凶には辿り着けない。」
黒い巨影が咆哮し、大地を揺らす。
だがサーベラは恐れず、一歩、また一歩と前へ進む。
霧が体を包み、装甲の隙間から白煙が立ち上る。
目の奥に宿る光が強くなる。
「昆虫煙舞一閃!」
声が響いた瞬間、彼女の背中に無数の巨大な昆虫の足が生まれた。
それらが一斉に襲いかかり、巨影の脚を斬り裂き、体を貫いていく。
巨体が仰け反り、衝撃波が吹き荒れる。
巨大な爆光が死の海を覆い、地を震わせる。
やがて光が収まると、そこに残っていたのは静寂だけだった。
「粛清完了!」
サーベラは前方――巣の奥に広がる黒い塔を見上げる。
そこに、マザーエイリアンがいる。
この世界を覆う闇の根源。
彼女は静かに息を整え、煙を纏いながら再び歩き出した。
死の海の奥、黒い塔のような構造物が立ち上がっていた。
その根元には、うねる無数の管が地中へと伸び、まるで大地そのものを飲み込んでいるようだった。
そこが、エイリアンたちを統べる母の居場所――マザーエイリアンの巣。
サーベラは静かに剣を構え、足を踏み入れた。
内部は壁が脈打ち、かすかに内臓の鼓動のような低音を発していた。
その奥から、声がした。
言葉ではない。意識に直接届くような低い唸り。
「……来たか、人の戦士。」
空気が裂け、闇の中から巨大な影が姿を現した。
無数の目が赤く光り、頭部からは王冠のように伸びる角。
体を覆う外殻は金属のように硬く、背から伸びる触手が絶え間なく蠢いている。
マザーエイリアン――この世界を覆う恐怖そのもの。
サーベラは一歩、前に進み出た。
「あなたがこの世界を蝕んだ根源。ならば、私が――粛清します。」
煙叡剣狼煙が光を放つ。
「神代玲花、またの名を…仮面ライダーサーベラ。平伏しなさい!」
名乗りをあげ、サーベラが跳ぶ。
マザーの咆哮が空間を震わせ、触手が無数に襲いかかる。
だがその全てを、サーベラは煙となってすり抜ける。
霧の流れの中から再び姿を現し、剣を叩きつける。
衝撃波が走り、外殻に亀裂が入る。
しかしマザーは怯まない。巨大な尾で薙ぎ払うように攻撃を放ち、地面ごと吹き飛ばそうとする。
サーベラは全身を煙にかえて緊急回避し、離れた場所で実体化した。
「……この世界を救うために私は呼ばれた。その願い、無駄にはしません!」
彼女は再び煙と化し、塔の内部を駆け上がる。
まるで風が昇るように、黒い空間を疾走しながら次々と斬撃を叩き込み、
マザーの巨体を切り刻んでいく。
だがマザーは再生する。
切られた部位が黒い粘膜で再び繋がり、「無駄だ……我は無限に再生する……」と低く笑った。
サーベラは剣を構え直す。
「ならば、再生する間も与えません。」
煙が彼女の周囲に渦を巻く。
それは次第に一つの巨大な竜巻となり、
彼女自身を中心にして爆発的な光を放つ。
「超狼煙霧中! 昆虫煙舞一閃!」
その瞬間、塔全体が白光に包まれた。
音も消え、ただ眩い閃光だけが世界を満たす。
やがて光が収まると、サーベラは片膝をついていた。
剣を地に突き、息を整える。
マザーの巨体は崩れ落ち、外殻が砂のように散っていく。
「……粛清完了。」
静寂の中、塔の壁がひとつずつ崩れ落ちる。
黒い霧が晴れ、外の空に光が差し込む。
それは、この地に久しくなかった“朝”の光だった。
外に出たサーベラは、遠くの要塞都市のある方向をみつめた。
サーベラには知ることはできないが、障壁の向こうで人々が歓声を上げている。
生存のための都市ではなく、再び“生きるための街”がそこに戻りつつあった。
風が吹き、女性の声が響く。
『強き戦士よ。わたしの世界を救ってくれて感謝します。』
神代玲花は変身を解き、剣を収めた。
「この世界が再び歩き出すのなら――それでかまいません。」
空に亀裂が走り、光の扉が開く。
元の世界へと帰る時が来た。
玲花は一度だけ振り返り、光の中に消えた。
空は晴れ渡り、風は穏やかに街を撫でた。
そして人々は語り継ぐ――
かつてこの世界を救った、煙の戦士の名を。
仮面ライダーサーベラ。
その名は、永遠に光と共に刻まれた。