イントロが鳴った 作:バンドものはエエゾ!エエゾ!
名前をつけるそうあるなかれと願いながら
良い名前をつけるのって難しいよねって話
「なぁ、そろそろバンド名とか決めとかないか?」
三度目となったスタジオ練習も無事に終了し、そろそろ帰ろうかという少し緩んだ空気。そんな空気の中に放たれた博幸君からの一言は今更も今更なものだった。
バンド名。それすなわち読んで字のごとくバンドの名前であり、バンド活動をしていくのなら絶対に必要になっていく文字通りバンドの顔のような役割を果たす重要なものだ。
「え?まだ決まってなかったの?」
「逆になんで決まってると思ってるんだよ……そんな話を利博としたことないだろ?」
何を言ってんだこいつとでも言いたげな顔で博幸君は僕を見つめる。
「いやてっきり2人の間でとっくに名前は決まっているものだとばかり思ってたから……」
これは本心だ草野さんと博幸君の付き合いは長い、ベースの僕が合流したことで本格的に活動を始めるきっかけになったのは間違いないだろうが。それでも名前くらいは既に2人の間でつけていると思っていたのだ。
「にしてもバンド名が決まってないなら、文化祭にはなんて名前で登録してるの?」
「草野凜と愉快な仲間達よ!」
「そのまんま過ぎる……!」
「な?流石にこの名前のまま文化祭のライブに出演は嫌だろ?少なくとも俺は嫌だね」
分かりやすいし別にこのままでも良いじゃない!と草野さんが頬を膨らませながら文句をたれているが、これに関しては僕も博幸君に全面的に賛同する。ほぼ巻きこまれたような形とはいえ僕の人生初となるライブには違いないのだ。
『続いて登場するのは草野凜と愉快な仲間達です!』
名前にそれほど拘りがある方ではないが、それにしたって記念すべき初ライブの登場コールがこれはない。うん、ない。ジーッと見つめてくる草野さんの圧力に屈しそうになるが、それでもここだけは譲れない!……嘘です。普通に負けそうになったので、博幸君の後ろに絶賛隠れていたりします。
「……んんっ!とりあえず利博もこの名前はなしってことで良いよな?」
「アッ、ハイ。」
「よっし!これで2対1な」
「しっかたないわねぇ」
僕のこうい行動に一々ツッコミが入らない辺り、2人も僕という人間と付き合うことに慣れてきたなぁと強く思う。……努力はしてるんです。ただ人ってそう簡単には変われないんですよ!
「そんじゃあ適当に名前決めるか」
「ふっふっふ。任せなさいこの草野凜は命名センスも持ち合わせているわ!」
「ほう?それでは回答者の草野さん答えをどうぞ」
「スリーピース!」
「まんまじゃねえか!」
「良いじゃない分かりやすいのは大事よ?」
「にしても分かりやすすぎるわ!というかもし後々にキーボードとか入って4人編成になったらどうすんだよ!それでスリーピースはもはやイジメだぞ!」
「ウッ……」
「なんで想像しただけで吐きそうになってるんだよ!」
今日もキレのある博幸君のツッコミに安心を覚えつつ、もし自分がそんな状態になったらと想像する。……うん……死ぬな!
「その名前、僕は反対します!」
「俺達と出会ってから楽器演奏してる以外で今一番はっきりしゃべったんじゃないか?そこまで嫌って逆にどんな想像したんだよ……」
「えー分かりやすくて良いと思うんだけどなぁ」
駄目です。なんかもう想像してしまった時点で駄目です。仲間外れ駄目絶対。
「んー。それじゃあ青春リサイクル」
「俺達の青春まだ終わってねえよ!」
「そんなら放課後ノイズ」
「なんかそれっぽく聞こえるけどノイズだしちゃ駄目だろ!」
「ええい!こうなりゃこれでどうだメロウ&デストロイ!」
「癒したいのか破壊したいのかどっちなんだよ!」
「これならどうよ3時の逆襲!」
「おやつの時間から何を逆襲するんだよ……」
「もう男の子何だから……Last Fragment!」
「厨二バンドのお手本か?」
「そんじゃあ青とピック!」
「何がそんじゃあ何だよ!文学的な方向性狙いにいったんだろうが、俺達そういうバンドじゃないだろう!」
侃々諤々と言った様相で草野さんが投げて博幸君が返すという構図は続いていく。よくもまあ、あれだけポンポン出てくるものである。会話のリズムが途切れない止めなければこのまま延々と続いていくんじゃないかとさえ感じる。僕はそんな2人の会話にただ相づちを返すだけ、けどなんだそれが心地良い。まだアンプから取り外していなかったベースを弾く。室内に反響した聞き慣れた低い音は僕達にお似合いのBGMだった。
「なにそれっぽい雰囲気作って話し合いから逃げようとしてんのよ」
「お前も手伝え利博このままだとなんか微妙な名前にされかねんぞ!」
「人にそんなこというならあんたもなんか案を出しなさいよ!田村君もね!」
「アッ、ハイ。」
こうして何とか煙に巻こうとした僕の企みは脆くも崩れ、第1回バンド名会議には僕も加わることとなったのでした。
ちなみに第1回という名前から分かるとおりこの会議で名前が可決されることはなく、ただ流石に愉快な仲間達は嫌だという僕らの声もありとりあえずということで名無し(仮)というバンド名に登録され直してはいる。……まあまだこっちの方がバンド名っぽいよな。とは博幸君の談である。次回までにそれっぽいの考えておかないとなぁ……。なんて少し前まででは考えられないようなことに頭を悩ませる僕なのでした。
初投稿かつ初オリジナルというハードモードに挑戦し、案の定大爆死をかましている今作。
ただやり始めた以上は終わらせてあげたいよねと何とか勢いのまま書きたいことだけ書いてここまで来ました。
ほとんどというか全くというか誰にも読まれていませんが、まあそれも仕方のないことでしょう。ただテンションのままに走り出しただけですからね。