清弦負傷の報告からおよそ1週間が経った。
清弦も本土から帰還したがあったはずの右手の袖が風に揺れなんとも言えない気持ちになるが、そんな璃弦を見てかグリグリと強めに頭を撫でた。
十二天将4人を派遣した石鏡悠斗討伐の任務は十二天将と石鏡悠斗が相対する前に石鏡悠斗の逃亡という形で終わった。
本土にいる双星の陰陽師が十二天将到着前に戦闘を行い両者戦闘続行不能という幕引きだったようだ。
右手を失ったにせよ元気そうな清弦を見て璃弦も修行にこれまで以上に力を入れていた。
だが陰陽連本部の上の者たちからは懸念の声が上がっていた。幾ら利き腕をなくそうとも並の上位陰陽師よりも強いが十二天将として考えると力不足は否めない。
そのため早急な後継者の確保を求められた。
そして今日___
夜の涼しい風が吹く中、璃弦は屋敷の離れにいた。
身を清め清潔な服に着替えた璃弦の前には一枚の呪符が置いてある。
《獣爪顕符・白蓮虎砲》(じゅうそうげんぶ・びゃくれんこほう)十二天将白虎に選ばれた者が白虎の力を借りるために使用される符。
それを前に緊張の面持ちで見つめ、手に取る。
集中を高め符の中に潜む白虎と意思疎通を図ろうとするが、
「…? …何も反応しない?」
もう一度試してみる。だが、反応は先ほどと同じようにない
今まで何度も白虎との意思疎通を行ってきた会話は今までできたことがないが、姿をみること数回もあり最低でも符から流れてくる白虎からの返事のような呪力が流れてくることがあった。
それがない。どういうことだ!?
混乱の中頭を回し原因が何かを考える。
清潔が怪我を負ったことに責任を感じておとなしくしているのか?
いやその可能性は低い。歴代白虎継承者の記録などを読んだことがあるがそのような記録はなかった。
白虎自身も傷を負い回復に専念しているのか?
いやその可能性も無い。白虎や式神十二天将は呪装として纏う時のみに力を引き出すことができる。そのため傷を負うことはない
では何か、何か…
そこで今まで考えないようにしていた考えが頭をよぎる。本土には血のつながった姉がいる。清弦は姉と会ったと言う話を聞いた。白虎が何らかの形で存在を知ることは不可能ではないだろう
つまり…
「…俺は、見限られた…?」
動悸が激しくなり世界が揺れているような錯覚を受ける。
「璃弦様?」
部屋の外に待機していた夕弦が璃弦の異変に気づき声をかけてくるがそれに構う余裕は今の璃弦にはない。
「うぅ…ぐぅぅ゙…っ」
「璃弦様?入りますよ?」
歯を食いしばり四つん這いになる。溢れ出てくる涙と嗚咽を必死に押し殺す。10年近くの時間を尊敬する父の後を継ぐという目的を持って努力を続けてきた。
入ってきた夕弦はそんな璃弦に急いで近づく。
「大丈夫ですか!? 璃弦様何が!?」
「ゆづるさん…おれ…おれ…選ばれなかった…」
「え…?」
今日璃弦が白虎との意思疎通を行うことを知っている夕弦は璃弦がこぼしたその言葉に衝撃を受ける。
小さい頃から清弦を目指し修行に明け暮れる姿を知っている夕弦は唇を噛み締め目元に涙を溜める璃弦に何も言えなかった。
夕弦は、ただ黙って璃弦のそばに膝をついた。
震える肩にそっと手を置き背中をさする。
何も言葉はいらない。慰めの言葉も、今の璃弦には届かないと分かっていた。
夜の静かな空気が二人を包むように開けられた障子から流れてくる。 涙を流す璃弦は、ただ夕弦にすがるように抱きつく。
白虎の沈黙が拒絶なのか、それとも試練なのかは夕弦には分からない。
けれど――今は、考えることすらできない。
璃弦の心の中で何かが音もなく崩れ落ちていくのを、夕弦は感じた
やがて、嗚咽が止まり、静かにしゃくり上げる音が聞こえる。その中で、夕弦は小さく息をつき、璃弦の髪をいたわるように撫でる
「……少し、休みましょう。璃弦様。」
その声に璃弦は顔を上げず、ただ小さく頷いた。
障子の隙間から差し込む月光が、彼の頬を淡く照らす。
白く、静かな光だった。
夜は深く――
やがて、遠く本土の方向から虎が吠えるような微かな音が聞こえるようだった。
今回文章多め会話文少なめにしてみました。
次回も18時の毎日投稿を目指して頑張っていきたいと思います。
オリ主がハーレムを作るとしたら誰を入れる? 婆娑羅を入れて欲しいとの声がありアンケートを作り直しました1人は決めているので今回の結果でハーレムのメンバーを決めます
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