それはまるで   作:楼瓶

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相合傘

今日は土砂降りの雨だった。天気予報は曇りだったはずだがこんな日もあるだろう。こんな日は体調が不安定になりやすい。それに引っ張られてなのか分からないが眼の調子もつられて悪くなってしまう。

 

「今日頭痛酷いな…帰ったら琥珀さんに痛み止め出してもらわないと」

 

「私持ってますよ?優しさで出来ている奴です。どうです?お一つ…」

 

「うわぁ!!」

 

「こんなに驚かれるなんて私も驚きました。どうしました遠野君?何か良からぬことでも考えていました?例えば金髪で赤い目をしたとんでも吸血鬼のこととか…」

 

「考えていませんし、考えませんよ」

 

「よろしい!そんな遠野君のためにこれを差し上げましょう!」

 

「傘。ですね」

 

「えぇ!傘です!尊敬する先輩と相合傘して帰る権利です」

 

「なるほど?」

 

眼鏡を少し上に上げて反応する。

 

「とても魅力的な報酬ですね。それでは私が持つので先輩はどうぞ中へ…」

 

「うんうん素直な後輩に恵まれて私は嬉しいです。はい、お薬どうぞ」

 

「ありがとうございます。飲んだら行きましょうか」

 

こんなたわいもない事を言えるようになったのも最近だ。

 

結局アルクェイドが自分の場所に戻ってからも教会の審問や先輩が所属している埋葬機関?の尋問など大変な出来事がいっぱいあった。ただ助かることに先輩以外にもマーリオゥの助けがあり、今も五体満足でいられている。

 

大きな借りを作ってしまっている点は癪に障るのだが。

 

「遠野君?またぼーっとしてますよ?」

 

「すみません。最近まで色んな厄介ごとがあったので、こうやって先輩と過ごせる幸せを噛み締めていたんです」

 

「遠野君…そうですね。貴方が人では無くなってしまった事を教会はよく思っていませんでした。私だけでは貴方の無実を証明するのは困難を極めていたでしょう。」

 

マーリオゥに対しては先輩も思う所があるのだろう。あいつは教会に戻って今回の事件から得た収穫物に興奮している。その熱に巻き込まれないよう注意しなければならないが。

 

「遠野君また考えてますね。大丈夫ですよ。私が貴方を護ります。この命にかけて」

 

「そんな事を言わないでください。俺はそんな物騒な事を考えてないですよ。それに先輩に護られるのは嬉しいですけど、俺も先輩を護りたいです。相互補完ですよ目指すべきは」

 

「何か間違った言葉の使い方だと思いますけど…」

 

「いいじゃないですか細かいことなんて!」

 

そう言って傘を開き先輩を手招く。

 

「そうですね。細かいことですね。それでは帰りましょう。私のお家まで送ってくれるんですよね?そんな優しい後輩には手作り欧風カレーなんてどうですか?」

 

「マジですか」

 

「本気と書いて大マジです!」

 

「早く行きましょう先輩!俺もう居ても立っても居られないです」

 

「やっと元気になりましたね。ちゃんとお家の方に連絡してくださいね?前みたいに妹さんがお家に鬼の形相で来るなんてまっぴらごめんです」

 

これは俺の人生を大きく変えた小さな出来事の後日談だ。

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