ヒーローマンへ光線が命中する。着弾位置で爆発が起きるが、それをものともせずにヒーローマンは果敢に怪人――スクラッグへ殴り掛かる。
体格負けしていない、いやむしろ上回るほどの巨体を持つヒーローマン。そして、そのパワーも極めて高い。殴られたスクラッグの一体はそのまま吹き飛び、地面をバウンドして転がっていった。
「ナッ――コノパワーハイッタイナンダ!?」
「構ワン、所詮ハ下等ナ星ノモノダ、パワーコソアレド、我ラノ体ヲ破壊スル事ハ出来ナイ」
殴られたスクラッグはうめき声こそ上げていたが、起き上がる様子を見せていた。
残る二体はヒーローマンを挟み込むように銃撃を続けており、距離をとって戦っている。
出久の後ろにいるヒーローたちが何とか動こうとするも、その様子を見て牽制で撃ってくるため、出久を含めてその場を動くことができない。
バリアは突破されないが、今戦えるのはヒーローマンのみ。ただ殴っただけでは、決定打にならない。
(もっと威力のある攻撃じゃないとだめだ。こいつらが何なのかはわからない。最初はヴィランかと思ったけど、どうもそんな様子じゃない)
かといって、超能力者というわけでもなさそうだ。
動きはそれほど素早くはない。ヒーローマンに殴られても動けるほど高い防御力を持っている。腕に着けている銃からするに、科学技術を持つほどの知能がある。
(まさかとは思うけど、宇宙人とか? あからさまにUFOだし、どうする? ヴィランとは違うけど、話し合いとかで解決――出来たらいいんだけど)
緑谷出久は人の善性を信じている少年だ。だからこそ、困っている人を助ける。そんなヒーローを目指している。それゆえに
その思考の空白がいけなかった。
事件を聞きつけてきたのだろう。マスコミと思しき人たちが、近くまでやってきていたのだ。どうやら別件で近くにいたらしく、運悪く短時間で現場にやってきてしまったらしい。
通常であれば、ヒーローが事件を解決するし、マスコミたちもヴィランに襲われないようにしっかりと距離をとる。カメラだって超人社会となってから性能が上がり、離れた位置からでも撮影が可能だった。だが、今回は相手が悪かった。ここにいるのはスクラッグ。話の通じない宇宙人なのだ。
「騒ガシイノガ増エタナ」
銃口が、そちらへ向かう。ヒーローマンへのコマンドが遅れた。思考の空白、それが出久の判断を遅らせたのだ。
光が集まり、三本の光線が放たれる。
「――」
間に合わない。誰もがそう思った。
だが、一陣の風が躍り出る。
「ぐ、ううううう!?」
出久が、マスコミたちの前へ飛び出しバリアで彼らを守ったのだ。
「ナッ――小僧、ナントイウスピード!?」
ヒーローマンが生まれてから一カ月近く、出久も体を鍛えるようになった。たった一カ月。されど一カ月。コントローラーを身にまとっている状態は出久の身体能力を強化する、つまりわずかでも強化されたことで、一カ月前よりも出久の動きは良くなったのだ。動画サイトを見て回り、プロヒーローたちの動きを観察し、自分の動きに落とし込む。特に足回りを重点的に鍛えた成果がここに出た。
しかし、さすがに三つの光線を同時に受けるのは負担が大きかったらしく、うめき声をあげてしまっている。
「――迷ってる、暇なんてないッ」
とにかく奴らを行動不能にしなくてはいけない。野次馬が集まってきたりしたら、さすがに守り切れない。
今は出し切れる力を出し切って、この脅威に立ち向かわなければいけなかった。ヒーローたちは個性が使えず、戦えない。そもそもあの甲殻の硬さだ、警察の拳銃程度では傷つかないだろうし、かなり攻撃力の高いヒーローじゃないと相手にするのも厳しいだろう。それこそ、オールマイトやナンバー2ヒーローのエンデヴァーなら倒せるだろうが、そのレベルの攻撃力を持つヒーローがやってくるか運に任せるわけにはいかなかった。
なら――出久とヒーローマンに出せる最高火力を叩きこむ。
「HEROMAN-BLAST!!」
前の戦いで覚醒した力、ヒーローマンのエネルギーを解放し格段に力を高めるBLASTによって光が放出される。
その姿に、その場の誰もが目を奪われた。
スクラッグたちに突撃するヒーローマン。その放出されるエネルギーから、スクラッグたちも自らの身の危険を悟った。慌てて銃撃を行うが、ヒーローマンには通用しない。
スクラッグの一体を殴り飛ばし、地面に叩きつける。今度はかなりのダメージが入り、緑色の液体――彼らの血液――を流しながら、地面に倒れ伏した。
「ナッ――ナンダト!?」
続いて、二体目。光線銃を持つ腕につかみかかり、その光線銃ごとスクラッグの腕を握りつぶす。
「ガァアア!?」
「オノレ――ナラバ、コレデドウダ!」
バチバチと光線銃が紫電を纏う。どうやら、無理やりにエネルギーを放出しているらしい。そのまま殴り掛かるスクラッグ。
だが、そこに出久が割り込んだ。
バリアでその攻撃を防ぎ、逆に過負荷を起こした光線銃が爆破四散してその衝撃によりスクラッグは倒れる。
「HEROMAN-FINISH!」
出久が最後のコマンドを入れる。とどめの一撃、光線銃を破壊されたスクラッグ――いまだ戦う意思があり、ヒーローマンに殴り掛かっていた――をアッパーで吹き飛ばす。
そのまま空中に浮かんでいた謎の浮遊物体にぶつかり、その内部から爆発音が響き始めた。
「――ゴ、ゴール様……調査結果ニナイ、未知ノ力ガ――」
そして、浮遊物体ごと最後のスクラッグは爆発した。
その場の人々はその様子を見ていた。浮遊物体の破片が落ちてくる。幸い、あたりに人はおらず、開けた場所だったので被害も軽微だ。マスコミのカメラがその様子をとらえており、戦いの記録は残された。
一人のヒーローが気が付いた。視線を下に戻すと、倒れたスクラッグの遺体と思しきものが
「あの少年たち、どこ行った?」
◇◇◇
「どうしようどうしよう、カメラもいたし、顔映ってないよな……それに、やっぱりやりすぎだった――というか、現場から持ってきちゃったけど、これどうしよう!?」
出久とヒーローマンは路地裏にいた。ヒーローマンの手の中にはスクラッグが倒れた際に残ったその遺体だったものだ。丸まった状態で、まるで大きいダンゴムシか何かに見える。
「ああもう、どうしようか……というか僕、やっぱり警察に出頭しなくちゃいけないよな、いやでも、あいつらヴィランじゃないっぽいというか、本当に宇宙人だとしたらどこに行かなくちゃいけない? NASA? JAXA? それとも国連とか?」
先ほどまで戦闘していた時とは違い、慌てふためく出久。無理もない。先ほどまではやらなくてはいけないことははっきりしていた。それゆえに難しいことはひとまず置いておいて、戦うことに集中できていた。だが、それも過ぎれば頭を抱えることだらけなのだ。まだ中学一年生の彼にとってキャパシティをオーバーしている。
そのため、逃げる際にテンパってしまい謎の物体を持ってきてしまったのだ。
「……そうだ、鉄毛先生に相談しよう」
宇宙オタクの先生なら、これも調べられるかも。ヒーローマンの秘密を知っている大人だし、現状彼に相談するしかない。ひとまず、問題の先送りだが出久は次の行動を決めるのであった。
◇◇◇
その日、世界各地で謎のヴィラン騒ぎ――スクラッグの襲来が起こった。ヒーローたちは一時的に個性を封じられ、ピンチに陥る状況となる。だが、歴戦のヒーローたちがいる。サポートアイテムと、鍛えられた肉体でカバーするもの、偶然ではあるが、スクラッグの
「――コノ星ノ者モ、中々ヤルヨウダ」
その様子をはるか上空――宇宙空間から見ていたものがいた。
他のスクラッグたちよりも一回り大きく、色も異なる存在――彼らの頂点に立つ者『ゴゴール』である。
今まで秘密裏に地球を調査しており、地球人の持つ
「警戒スルベキハ、コノ星デノ個体名『オールマイト』『エンデヴァー』『スターアンドストライプ』『AFO』……他ニモ特筆スベキ因子ノ持チ主タチガイルガ、共通ノ因子ガアルガ故ノ対抗策ハアル。ダガ……」
モニターと思しきものに、日本で起こった戦闘の一つが映し出される。そこには出久とヒーローマンが映し出されていた。
「未知数ノ要素ガヒトツ――手ヲ打ッテオクカ」
先遣隊が持ち帰ったサンプル――彼ら、スクラッグに近い遺伝子を持つ生命体。昆虫を調べる過程で生まれた強化戦士たち。その調整のためのカプセルが三つ、開いた。
「…………コレハコレハ、ゴゴール様。我ラニ御用デショウカ」
「オ前タチニ任務ヲ与エル……コノ者タチノ調査ヲ命ズル」
「成程、カシコマリマシタ――デスガ、調査ダケデヨロシイノデ?」
「フッ――好キニスルガ良イ」
そして、地球へ向けて三つの光が新たに舞い降りる。否が応でも出久は戦うこととなる。いや、これからが本番なのだ。
これより、無個性の少年だけではない。ヒーローもヴィランも巻き込んで、星の命運をかけた戦いが始まるのだった――
というわけで、戦いはここからが本番となります。
…………登場人物増えるので、各々の時系列調べて落とし込んでいます(´・ω・`)
あと、出身地とかもファンブックとか見直して、無理のない範囲で動きを合わせないといけないなぁって(´・ω・`)
むしろ暗躍させておけばいい金玉おじさんが一番動かしやすいかもしれない。