僕のHEROMANアカデミア   作:アドゥラ

11 / 19
第2章のはじまりはじまり
とりあえず、2章中盤までの細かいプロットが書けたのでぼちぼち形にしていきます。


第2章「彼方より来たるもの」
Roulette


 場所は鉄毛(てつもう)デントの家。慌てながらも、人目を避けながらなんとか出久はそこへたどり着いた。

 その剣幕に最初は驚いていたデントであったが、出久の手に抱えられていた物体を見て、その目を輝かせる。

 

「ワンダフル! こんな興味をそそられるものを持ってきてくれるとは、本当に私が調べちゃっていいのかい!?」

「あ、あはは……ほかに当てもなくて…………というか、倒しちゃったけど、僕大丈夫ですかね……」

「まあ、地球外生命体を倒して捕まるなんて法律はないし、大丈夫じゃないかな」

「か、軽い……っていうか、やっぱり地球の生き物じゃないんですか?」

「まあ間違いなくね。少し調べただけでも、地球上には存在しない物質で作られていることがわかる。個性因子も持っていないみたいだし、個性由来じゃないだろうね」

 

 なんらかの薬品を使って調べるデント。出久の記憶には、個性因子に反応する薬品というと、危険な代物しか浮かばなかった。

 

「ん? ああ、この薬品か――個性因子誘発物質(イディオ・トリガー)って知ってる?」

「それ、禁止されている薬品じゃ……」

「さすがにそのままのそれじゃないさ。これは研究用のもので、個性因子に微弱な反応を示して、個性由来のものかどうか調べるってもの。まあ、ちょっとした伝手があってね。少し分けてもらったのさ。これ自体は警察とかでも使われているものだよ……しかし、これは――」

 

 出久が持ち帰ったサンプルの表面を削り、顕微鏡で調べるデント。本棚の資料を取り出して、何かを見比べている。

 

「ふむ、うーん?」

「先生? 何か気になることが?」

「ああ、うん……なんていうか、残留しているエネルギーに奇妙な反応があるというか、なんというか……」

 

 歯切れが悪いデント。おもむろに自分の毛を一本抜くと、それを試験管の中に入れて、今調べていたものを一緒に入れる。

 

「な、なんで自分の毛を……」

「個性由来の物質を入れて確かめてみたのさ――ああ、やはり。毛が硬質化した」

「あれ、ホントだ……」

「どうやら残留しているエネルギーに個性因子が反応して、強化したらしい」

「強化って……そういえば、あいつらが使っていた光線銃に当たったヒーローたちが個性を使えなくなっていたけど……でも、むしろ弱まるんじゃ?」

「詳しく調べてみないとわからないけど、その宇宙人たちが使うエネルギーが個性因子に何らかの反応を示していることは間違いないね。だが、緑谷君が今言ったように個性を封じる光線なんてものがあるのだとしたら、マズイかもしれないな」

 

 言葉を切り、少し言いづらそうにデントは話を続けた。

 

「その宇宙人たちが言語を操る知能を持ち合わせて、攻撃してきた――そして、個性を封じる術を持っているのなら、大規模な侵略も可能かもしれない。いや、はるばる宇宙からやってきている時点で、相応の科学技術も持ち合わせていることが分かる」

「せ、先生……」

「控えめに言っても、地球の危機だね。これは」

 

 いやぁ、まいったねと笑うデント。まったくもって笑える状況ではないが。

 

 ◇◇◇

 

 東京郊外。この場に現れたスクラッグの浮遊物体は爆発四散した。

 

「SMASH!!」

 

 ほかでもない我らがナンバーワンヒーロー、オールマイトの手によって。

 あっという間のことであった。光線に撃たれて個性が使えなくなっていたヒーローたち。警察も装備が通用せず、防戦一方だったところに彼が現れて形勢は逆転した。落ちてきた瓦礫も振るった腕から放たれた風圧で被害を最小限に食い止め、人的被害もほぼゼロ。

 後は残されたスクラッグの兵士たちだけだ。

 

「さてさてヴィランか、はた迷惑なテロリストか、とにかくこれでお縄についてもらうぜ!」

 

 笑顔を崩さず、スクラッグたちに向かうオールマイト。

 しかしその内心は焦りがあった。

 

(SHIT! あちこちで事件解決しながら事務所に戻ろうとしていた矢先にまたまた厄介なのと出くわすとは! おかげで活動時間が残り僅か、トゥルーフォームに戻るところを見られでもしたらまずいぞッ)

 

 数年前、オールマイトはスーパーヴィラン――オール(A)フォー(F)ワン(O)との戦いに辛くも勝利した。だが、その際に重傷を負ってしまったのだ。内臓摘出、左わき腹には大きな傷跡、今現在も戦える時間は一日に数時間程度しかない。力が落ちつつあり、今の筋肉ムキムキの大男の姿は個性の力を全身に張り巡らせたものだ。

 そして、普段はやせ細った真の姿となって自分の事務所のオールマイトのプライベートに関する事務員に扮している。他にも多く秘密を抱えているため、これらのことはごく一部の限られたものしか知らない。

 

(だがまあ、甲殻の硬さとあの当たったらまずそうな光線銃以外は大したことない。パワーのある個性なら突破可能だ。一気に勝負をつけて――)

 

 活動時間の限界による焦り、戦闘力の分析からくる余裕。なにより、相手をヴィラン(人間)だと思っていたこと。これらの要因が重なったことが、この場の戦いにおける決着を決定づけた。

 

「――――!」

「――!? みんな、伏せるんだ!」

 

 とっさの判断ができたのは流石オールマイトといったところだろう。拳による風圧で、周りへの被害を食い止めた。だが、ヒーローとして捕縛はできなかった。

 スクラッグたちが金切り声を上げた次の瞬間だった。彼らが、爆発したのだ。

 

「…………まさか、自爆するとは」

 

 あたりには、おおよそ人の血液とは思えない緑色の液体がまき散らされている。オールマイトも苦い顔をして、もしかしたらの可能性に思い至る。

 

AFO()の残党か実験体か――いや、私の勘だが違うだろう。いったい、何者なのだこいつらは……)

 

 何か良くないことが起きようとしている。ヒーローとして長年戦ってきた者の勘がそう言っていた。AFO関連ではないようだが、これから大きな事件が起きる。その予兆をオールマイトは確かに感じていた。

 だが、今考えなくてはならないことが一つある。

 

「なにやら厄介なことが起きようとしているね――私も調査に乗り出すため、ひとまずここは警察の皆さんに任せて、お先に失礼させてもらうよ!」

 

 活動時間ギリギリ。オールマイトは急いで事務所の自室へと飛んでいくのであった。

 

(塚内君にも情報を聞いた方がよさそうだ。どうやら各地で似たようなことが起きているようだし、他のヒーローたちが情報を手に入れてくれることを期待しよう――)

 

 世界各地でヒーローたちの奮闘があり、スクラッグたちの最初の侵攻は食い止められた。

 だが、これはあくまで戦力調査だった。兵器の使用が許された国では強力な火力で、ヒーローが事件解決に当たった地区では捕縛でその対応が行われ――スクラッグは自爆した。徹底的に情報を残さない動きをしたのだ。

 それゆえに、スクラッグの遺体というサンプルはほぼほぼ使い物にならない状態となってしまう。数少ない例外が――緑谷出久とヒーローマンが倒した個体である。現場に残されたものは警察によって回収され、研究機関へ引き渡された。この時のオールマイトもさすがにヒーロー免許も持たない少年が重要な情報を手に入れるカギとなったなんて考えもしていなかった。

 そして、その少年がのちに自分と血よりも濃い絆で結ばれることとなることも、まだ知る由もなかった。

 

 ◇◇◇

 

 どこかの病院の地下――そこで、AFOとドクターと呼ばれる人物がスクラッグとの戦闘の様子を見て、苦々しい声を上げた。

 

『この光線、個性因子になんらかの作用を与えるようだね』

「現物を調べてみないことにはなんとも言えんが、表の立場を利用して撃たれたヒーローを調べてみるかの」

『ああ、よろしく頼むよ……だが、実に不愉快だ』

 

 興味深くはある。だが、長く生きたAFOの勘が言っている。これは全く未知の技術体系によるものだと。そして、そのままにしておけばいつか自分の障害となることを。

 

『上がってくる情報によると、捕縛を試みるも彼らは自爆。こちらにできうる限り情報を与えないように立ち回っているみたいだね』

「それに、向こうは個性を封じる術を持っておる……実に忌々しいことじゃ」

『…………さて、僕はどう動くべきか』

 

 案はいくつか浮かんだが、自分たちが表立って動くには時期尚早であった。ドクターの表の立場や、息のかかった政治家などを使ってお人よしたちに動いてもらうのがいいかとAFOはプランを考える。

 

『気に入らないが、こういうのは適材適所だ。君らが解決すべきことだろう? ヒーロー』

 

 いくつものモニターには、スクラッグを食い止めたヒーローたちが映し出されている。その中には、当然宿敵オールマイトの姿もあった。

 

『そのあとで、必要なものは僕が手に入れる。実に簡単なことさ――』

 

 戦闘の様子、その中に一つAFOも知らないヒーロー……ヒーローマンと緑谷出久の姿をちらりと見た。

 

『――?』

 

 なぜ気になったのかはわからない。短い映像であったため、すぐに他の場面に切り替わっていた。フードで顔を隠していたから少年の背格好ぐらいしかわからないし、映像も乱れていた。だが、彼の勘が何かを告げている。

 

『予感に関する個性が働いたか? 未来予知はまだ持っていないし――』

 

 どこか既視感を感じた少年だ。それが何なのか、今の彼にはわからない。AFOは長い時を生きてきた。複数の個性を操り、人の枠を外れたがゆえに、人として持っているはずの感情が希薄になっている面がある。

 もしも強い憎悪を持っていたのなら、分かったかもしれない。あるいは緑谷出久が継承を受けたのなら気が付いていたのかもしれない。

 自分の弟が持っていた、心を持つ少年に。

 

 ◇◇◇

 

「さて、分かったことをまとめるとだ……この推定地球外生命体は虫、まあ節足動物に近い構造を持っていることが分かった」

「見た目から、そういう感じはありましたけど本当にそうだったんですね」

「おそらくそういった生き物から進化した種族なんだろう。我々と同じように音でコミュニケーションをとる能力があるが、普段は特定の高周波を利用しているみたいだ。緑谷君が持ち帰ってくれたこの奴らのコアと思しき物体に、その器官が備わっていた。節足動物に近いだけあって、体内の構造も我々とは大幅に違うのだろう。血液が緑色だったのもそれが理由だ」

「やっぱり、宇宙人なんでしょうか……」

「まあそうだろうね。ほら、テレビでも謎の円盤がってニュースになってるよ」

「……お母さん、大丈夫かな」

 

 母のスマホに電話をかけて、無事は確かめているがそれでもやはり心配なものは心配だった。

 どうやら世界規模で謎の円盤が襲来しており、謎のヴィランと戦闘が行われたことが話題となっている。そして、ほぼすべての現場でヴィランが自爆したとも。

 

「これじゃあヴィランというかテロ組織に見えるけどね。それに、ヴィランともまた違った敵の出現じゃあヒーローといえどもどう対処したらいいのやら」

「……」

「緑谷君、また君、飛び出そうとしていないかい?」

「――うぇ!? な、なんでですか!?」

「確かに君は力を手に入れた。でも、まだ中学生だ。今のところヒーローたちで対処も出来ている。確かに自爆は厄介だが、わざわざ君が戦う必要はない――といっても、君は目の前で困っている人がいたら飛び出してしまうんだろうけどね。とにかく、無茶はしないこと」

「は、はい……」

 

 と、そこで生中継されているニュースに変化があった。

 ――なんと、世界各地で目撃されていた円盤が一斉に上空へと立ち去って行ったのだ。

 

「え――」

「……いきなり攻撃しておいて、すぐに立ち去る…………あまりにも奇妙だ。だが、我々には自由に宇宙空間へ赴く手段はない」

 

 個性発現以来、科学技術は進歩した。それも飛躍的に。だが、その一方で研究がすすめられなかった技術もある。宇宙関連もその一つだ。人工衛星など一部は進歩しているが、もっと進んだこととなるとごく一部の研究者でのみ研究が進められているだけで、それを利用する段階までは来ていない。

 だからこそ、宇宙に逃げられれば追うことはできなかった。

 

 多くの不安を残したまま、事態は静かに進行しようとしていた。




ここにきてオールマイトの口調が割と難しいことに気が付く。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。