僕のHEROMANアカデミア   作:アドゥラ

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モンハンキャンパー許さない委員会の者です。通してください。


「power」

 出久は再び街へと繰り出していた。家に帰ったあと汗を流すためシャワーを浴び、勉強をしていたのだが、母から足りない材料があるから買ってきてほしいと頼まれたのだ。どうやら単身赴任中の父から電話があり、何か大事な要件だったらしい。

 家に帰るまで着ていたオールマイトパーカーは洗濯するために籠に入れていたこともあり、別のパーカーを着ている。なお、大手メーカーのオールマイトコラボ品で、ロゴの部分にオールマイトを模したデザインがさりげなく施されているものだ。

 

「すっかり暗くなっているし、早く帰らないとなぁ」

 

 夜は夜で昼間と違ったヒーローの活躍が見れそうだが、態々探して回るようなことはせずにまっすぐ帰ろうとする。流石にこの時間に補導されかねないことは出久もしなかった。とはいえ、何があるかわからないため外出時には必ずヒーローマンを持ち歩くようにしているのだが。アンカードワイヤーも背中のリュックに入れており、何かあればいつでも取り出せるようにしていた。

 買い物も済ませて、荷物をリュックに入れて帰路についていた。大通りに差し掛かった時であろうか。緊急事態を告げるサイレンが鳴り響いたのは。

 

「――ッ」

 

 反射的に、動きだしていた。ヒーローが出動しているだろうし、あまり邪魔になる行動は避けるべきだ。ひとまず確認するだけ。視界の端に赤い光――パトカーのランプが見え、どこか高いところ……歩道橋へと登り、様子をうかがうことにした。

 野次馬も集まっており、その目線の先を見れば何が起きているのかはすぐにわかった。ここしばらく動きが見えないからもしかしたら撤退したのかもしれないなんて、淡い期待も抱いていたが……そんなことはなかったのだ――スクラッグが、現れた。

 

「なんてパワーだ」

 

 暴れているのは、カブトムシとクワガタを混ぜ合わせたような特徴を持つスクラッグだった。頭にはカブトムシの様な角が生えており、肩からはクワガタの顎のような突起物が生えている。今まで戦ったスクラッグよりも巨体で、ヒーローマンよりも大きいかもしれない。

 あたりにはヒーローたちが集まっており、奴を倒そうと立ち向かっているが――そのことごとくを薙ぎ払っている。殴り飛ばされ、地面を転がってそのまま動かなくなり、死屍累々といった様相を呈していた。

 

「あれは――デステゴロ!?」

 

 力自慢のヒーローだ。パワー系の個性を持っており、オールマイトには及ばないものの、単純な力はヒーローの中でもトップクラスのものだったはず――しかし、今回のスクラッグはそのパワーと拮抗するどころか上回っているようで、デステゴロを押し返している。その中で、隙をついて攻撃するヒーローもいるが、簡単にあしらわれてしまっていた。そして、スタミナの差か――デステゴロが膝をつき、スクラッグの凶刃が迫る。

 

「ヌルイ……有象無象ニ……興味、無イ。俺ガ興味アルノハ、白イ奴ダケ」

「クソッ…………なんだ、このヴィランは」

「オ前、殺セバ……出テクルノカ…………真ップタツニナッテ死ネ」

 

 肩の突起物――荒い鋸の様なハサミが伸びて、デステゴロを挟み切ろうとする。人々が悲鳴を上げ、この後に起こる凄惨な光景から目を逸らそうとした――その瞬間だった。

 ガキンという音と共にそのハサミが止まる。

 

「何……?」

「なにが……バリア?」

 

 光り輝くバリアがその刃を食い止めていたのだ。

 フードを目深にかぶり、あたりの暗さもあってその顔は分からないが、一人の少年――緑谷出久が、その凶刃に間に合った。

 

「こ、子供――」

「ナンダ、コノ餓鬼ハ」

「――HEROMAN-ATTACK!」

 

 遅れて、白い影――ヒーローマンがやってくる。飛び出したときに起動は済ませており、先に出久が間に合って攻撃を防いだ。それに続いてヒーローマンの拳が、スクラッグを殴り飛ばした。

 意識外だったからか、防御も取れずにスクラッグは殴り飛ばされる。しかし、その外見にたがわずすさまじいパワーを持っているようで、倒れるまではいかずに数歩後に引いただけであった。そして、今自分を殴り飛ばしたヒーローマンを見て、歓喜の声を上げた。

 

「オオ……待ッテイタゾ、白イ奴…………少シ暴レレバ、出テクルト思ッテイタゾ」

「そんなことのために、これだけの人を巻き込んだのか――ッ」

「餓鬼ニハ興味、ナイ。俺ガ……コノ“パウア”ガ興味アルノハ…………エッズィ、ト、ブリト、倒シタ、白イ奴ダケ!」

 

 その叫びに合わせて、頭の角が伸びる。ヒーローマンはそれを受け止めるが、その埒外のパワーでヒーローマンが持ち上げられた。

 

「ヒーローマン!?」

「俺ガ、オ前ヲ、倒ス!」

 

 このまま叩きつけてやる。言葉にはしなかったが、そう続くことだろう。振り上げた角をそのままおろそうとし、そこに銀色に光るワイヤーが巻き付けられた。

 

「――ナニ?」

「生憎だけど、僕たちは一人で戦っているわけじゃ、ない!」

 

 ヒーローマンすら持ち上げるパワーの持ち主だ。ワイヤーを巻き付けた程度で、その動きを止めることはできない。

 パワー自慢のデステゴロが押されていた時点で分かり切っていた話だ。周囲の人々もあの少年は自殺志願者かと悲鳴を上げるが――ワイヤードアンカーの巻き取り機能を使い、一気にガントレットへと巻き取ることで出久の体が射出される。なんてことはない、強いパワーを持っているのなら、それを利用すればいい。がっしりとした体幹で、急速な巻き取り程度でパウアの体は動きもしなかった――ゆえに、逆に出久の体が持ち上げられたのだ。そして、その勢いのまま角めがけて蹴りつける。

 

「ナンダト!?」

 

 その勢いを利用することで、強化された蹴り。なおかつヒーローマンを持ち上げていたことで重心に影響があったこともあり、パウアがその体のバランスを崩した。ヒーローマンを取り落とし、体勢が崩れかける。それでも足を踏ん張り、パウアは今度は出久をにらみつけた。

 

「――餓鬼ガ……ダガ、少シ…………甘ク見テイタヨウダ」

「今度は、僕たちも油断しないでいく……HEROMAN-ATTACK!」

「フンッ!」

 

 両者が殴り掛かる。お互いの拳がぶつかり合い、力が拮抗した。

 そのまま互いに殴り合いが続き、時折角やハサミが伸びる。そこへ出久が割って入り、バリアで防いでカウンターを狙うが、パウアはそれを簡単にあしらう。

 

(コイツ、強い……単純にパワーが今までのスクラッグとは段違いだ。それに厄介なのは、あの伸びる角とハサミ。リーチがあるし、ヒーローマンが押されかねない。なにか手はないのか――)

 

 その様子を、呆然と人々は眺めていた。

 ヒーローたちが一蹴されるような敵に対して、一人の少年と謎のロボットが立ち向かっているのだ。しかも善戦している。

 応援に幾人かのヒーローが駆けつけたが、その戦いに割って入ることはできなかった。単純に己の力で、立ち向かえるのかということもあるだろう。それ以上に、その戦いに見入ってしまっていたのだ。

 

「なんだよ、これ……」

「……すごい」

 

 出久とヒーローマンは一歩も引かず、パウアと渡り合っている。

 たやすくコンクリートを粉砕するパワーを持った相手に、バリアがあるとはいえ果敢に立ち向かっていく少年と、そのパワーに真っ向から戦えるロボット。普段ならすごい個性だと思うだろう。だが、その特異さからか、人々にも個性とは異なるそれに困惑を抱いたまま、ただただ見入るばかりであった。

 戦いはそのまま拮抗が続いた。状況を動かしたのは――出久だ。

 

(コイツの特徴は、とにかくパワーが高いこと。角やハサミは伸びるけど、あのカマキリみたいなやつみたいに鋭い切れ味があるわけでもない。スピードもダンゴムシのアイツほどじゃない。なら、カウンターを恐れずに強力な一撃を叩きこめばいい。そのチャンスは、僕が作る――!)

 

 近くの電柱にワイヤードアンカーを巻き付け、跳びあがる。

 空中でワイヤーを巻き取り、目論見通りの位置にたどり着いた。

 ちょうど、ヒーローマンと出久がパウアを挟んで一直線に重なる位置である。バリアを展開し、必殺につながるコマンドを打ち込んだ。

 

「HEROMAN-MAGNECT!」

 

 磁力の発生。ヒーローマンの両掌から強力な磁力を放ち、出久の右腕に装着されたガントレットへ照準を合わせた。それにより、バリアを纏ったまま出久が引き寄せられる!

 

「ガッ――!?」

 

 ヒーローマンとバリアにより、プレス機のような一撃が叩き込まれる。流石のパウアもこれにはダメージを受けたようで、苦悶の声を上げた。

 

「コノ……ダガ、コレシキデ…………!」

「それでも、これでとっさの防御は――出来ない!」

 

 あくまでもさらに強い一撃につなげるための布石。

 シンプルに力押しでくるタイプのスクラッグだったため、失敗すれば防御に徹される可能性もあったため、ここまで隙を作るために作戦を練っていたのだ。

 必要なのは、相手の動きを一瞬でも止める方法。自らの持つ手札からその方法を考え、すぐさま実行に移した。そして、それを成功させたのである。

 

「HEROMAN-BLAST!!」

 

 ヒーローマンの頭部と肩からエネルギーが放出され、そのパワーが数段高まった。

 雷撃を纏ったその拳がパウアに突き刺さり、紫電が迸る。

 

「ナッ――フ、フフ! 面白イゾ、人間――ダガ、我々ハ、先兵。我ラハ、動キダシテイル……!」  

 

 直後に爆風が巻き起こる。

 突風が巻き起こり、人々が顔を思わず覆った。そして、顔を向けるとそこには敵の残骸が転がり、少年たちの姿はなくなっていた。

 

 ◇◇◇

 

 近くの路地裏。出久とヒーローマンはとっさにそこへ隠れたのだ。

 ヒーローも含めて人の目が多くあった。犠牲者が出る寸前であったから飛び出したが、自分たちの正体がバレたらどうなるか分かったものではない。

 

「なんとかなったけど……あいつ、最後に気になること言っていたな」

 

 どうにも嫌な予感がする。ひとまずは家に帰ろうと立ち上がろうとして――人の気配が、やってきた。

 

「……ノイズ混じりで、たどり着けるかわからなかった。だが、確かに見つけたぞ――!」

「!?」

 

 眼鏡をかけたサラリーマン風の格好をしたヒーロー……サー・ナイトアイが、出久たちの前に現れた。




パウア
例のごとく元ネタは漫画版HEROMANから。
カブトムシとクワガタの遺伝子を利用したスクラッグ。
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