年始はまた忙しいですが、それまでは多少時間あるので頑張りたい所存。
いよいよアニメも終わりますね。431話は別でやるのだろうか。
サー・ナイトアイは自分の見た予知にノイズが走るようになったことで、そのノイズが何の影響を受けてのことなのか調査を進めていた。
短い時間で分かったことは少ないが――世界規模の落雷騒ぎによって発生した超能力者たちが影響していること、確実に未来が変わるわけではなく、特殊な要素が加わることで未来が変わる可能性が生まれるというがわかった。
再度能力を使用した際に虫型ヴィランたち――スクラッグの姿も映し出されたことからまったくあてにならなくなったわけではなく、予知を超える何らかの力が作用した結果であるというのは予測が付いたが……それが何かまでは分からない。
そして、ノイズのもっとも強まる事象を追っていった結果――たどり着いたのが、白いロボットを従える謎のヴィジランテである。
今、スクラッグは動きを見せていない。他の超能力者たちも落雷騒ぎでは動きを見せていたが、一過性のもので今は落ち着いていた。力を得たが潜伏している者たちもいるにはいるが、今表立って動いているものは一人――すなわち、緑谷出久だった。
「動きは速いが、素人に毛が生えた程度」
(この人……サー・ナイトアイだ。個性の詳細は分からないけど、前にオールマイトの
ナイトアイの個性は予知。だが、その特殊性と強力な効果から情報は多く出回っていない。彼がインターン生を受け入れるぐらいの状況になれば、ある程度の情報も出回っていただろうが、今はまだ独立してそう時間は経っていない。ゆえに、ヒーローオタクである出久もその情報は多く持っていなかった。
しかし、まったくもっていないわけではない。
(でも、その捜査能力と的確な仕事、真面目なビジネスマン風の外見にたがわず堅実な動きと確実かつ被害を最小限に食い止める動きから、なんらかの未来予測か事象察知とか概念系の個性って予測はついている――僕たちを探してきたっぽいし、たぶん合ってる――なら、直接戦闘に使うタイプの個性じゃない。そこを突くしかないッ)
緑谷出久は無個性だ。
それゆえに、個性へのあこがれは人一倍強い。そして、そのあこがれは個性への分析と予測という力となった。少ない情報からサー・ナイトアイの個性に近いところまでたどり着き、この場の最適解を導き出す。
「HEROMAN-GO!」
「逃がさん――!」
ナイトアイが印籠型のアイテムを投げつける。サイズこそ手のひらに収まる小さなものだが、その重さはなんと5キロ。最新の圧縮技術を用いて作られたそれは、鍛えられた手首のスナップをもって出久に襲い掛かるが――それが、はじかれた。
「何?」
「なんだ、印鑑!?」
印鑑にしてはバリアに当たった時に鈍い音が響いたが、一体何なのか。出久は少し混乱したが、とにかく投擲型の武器とあたりをつけて壁を駆け上る。すでにヒーローマンは壁の隙間を三角跳びで駆け上がっており、屋上へとたどり着いていた。
「バリアか……相当強力なものだな。それに、垂直の壁を駆け上る身体能力。おそらくは左腕の機械がロボットのコントローラーだろうが……少年、いいことを教えてやろう――ヒーローは、常に数手先を読んで動く」
駆け上った先、そこにはワイヤーが張り巡らされており、出久とヒーローマンの動きを止めるように巻き付いてきた。バリアではじき、ヒーローマンも体を回転させてワイヤーを引きちぎるが――その隙をついて、ナイトアイが迫る。
「少ない情報から、君たちを追うのは苦労した――このトラップを用意するのに、時間がかかったせいで先ほどの騒ぎには手を貸せなかったのも悔やまれる。だが、解決することが分かっているのならば、私は私のやるべきことをする」
「……ッ、僕は、できればヒーローとは戦いたくありません」
「だが、私には戦う理由はあるのだよ……君たちというヴィジランテを捕まえるという、理由が」
結局のところ、今の出久は無免許でヒーロー活動をするヴィジランテでしかない。
そこは変えようのない事実だ。
「フードで顔は見えないが、見たところまだ若い――それこそ、中学生程度だろう。これから先、ヒーロー科を受験するなりヒーローを目指すならわざわざ君が戦う必要もなかっただろうに……なぜこんな危険なことをするのか」
「………………そこに……」
「?」
「そこに、困っている人がいるのなら、理由はそれだけで十分です」
「――――」
あたりが暗く、出久が目深にフードをかぶっていることもあって顔は見えない。だが、少しの明かりが一瞬出久の瞳を光らせた。
そこにある光はかつてナイトアイが見た、彼の敬愛するヒーローと同じものだった。狂気と言ってもいい。心の底から湧き上がる、人を助けたいという強い意志。職業ヒーローのそれとは違う、今の社会が忘れかけてしまった、真にヒーローと呼ぶそれが、この少年にはあった。
(気圧された? いや、こんな子供に何を感じているのだ私は――今はとにかく、捕縛優先だ)
しかし、ナイトアイも場数を踏んだプロヒーロー。それを飲み込み、再び出久に迫る。印鑑を投げつけ、行動する先を誘導する。
彼は今まで様々な人を予知してきた。そして、人の行動パターンというものを人一倍見てきたことによって、予知に頼らない予測能力も鍛えられたのだ。それゆえに、その経験の差は確実に出久を追い詰めていく。
出久が攻勢に出ないことも理由だろう。あくまで、スクラッグやヴィランと戦うために力を振るう彼は、ヒーローに対しては攻撃しない。だからこそ、バリアで攻撃を防ぎながら逃げる隙を伺っていた。
(何か、何か一手あれば……隙をついて逃げられる、何かがあれば――)
「ここまでやってあくまで逃げの一手――私には力を振るわない。君は善性の人間であることはわかった。だが、ルールはルールだ」
いつの間にか、場所は人気のないところまで来ていた。
最初の接触はうまくいった。ワイヤーも悟らせずに用意したところへ誘導できた。だが、ナイトアイとしても今の状況は予想外ではあったのだ。未来にノイズが入るようになった動揺か、それとも出久の動きが予想よりも良くなっていたことか。
(集めた映像や、予知から考えられる能力より上回っている……個性ではないにしろ、人が成長するスピードを上回っている。ロボットのほうは改造すれば性能が上がるかもしれないが、この少年の発揮する力は少年に由来するはずだ。なのに、予想される成長曲線からこうもズレるか?)
この力は一体なんなのか。超能力とはいったいなんなのか。
今のナイトアイには、その底が見えてこない。
そして――ノイズが、一つの出会いをここにもたらす。
「――――ナイトアイ?」
ナイトアイはこの未来を見ることができなかった。
これは不確定になった未来の一つ。緑谷出久が彼と出会うことになったという事象を予知できなかったことによるものだ。
八木俊典が、この場に現れた。
◇◇◇
八木俊典はオールマイトである。
それは、サー・ナイトアイも知っていることで、当然彼の真の姿も承知していた。
だからこそ、その動揺は計り知れない。
「な――」
思わずオールマイトと呼びそうになったが、それをこらえる。いたずらに彼の正体を明かしてはならないという理性が彼を止めたからだ。
だが、それが大きな隙になった。
(――――ここだ)
出久も八木俊典が現れたことで少し動揺はした。だが、やるべきことは変わらない。この場から逃げる。その一点は変わっていなかった。
そして、そのチャンスを掴むという意思が彼らに新たな力をもたらす。
左腕のコントローラーに今、最も必要な力を浮かび上がらせた。
「HEROMAN-」
直感的に、叫ぶ。
相手を倒すための力ではない――この場を切りぬけ、離脱するための力。
「LIGHTNINGFLASH!」
その瞬間、あたりに強烈な閃光がまき散らされた。
◇◇◇
光が晴れると、すでに出久たちの姿はなかった。
どうやら、してやられたらしいとナイトアイは動揺して落してしまった印鑑を拾う。八木俊典――オールマイトもどうやら自分が彼の邪魔をしてしまったらしいと気が付き、気まずそうにしていた。
「なんだ今の強い光は……」
近くから、塚内も現れる。
彼らは調査のため近くにきており、この場には偶然現れた――昼間、出久が少年を助ける現場を目撃していたことで、すこし予定がズレて今までこの町に滞在していたのだ。そして、その出会いこそがナイトアイの予知を超えた事態を引き起こした。
「あーその……久しぶりだね、元気だったかい?」
「……こちらこそ、そのセリフを言いたいところですが…………いつものように無茶をしているのでしょう」
「あ、あはは……」
苦笑いするオールマイト。
大けがをしてもなお、無茶をする自分との意見の食い違いからナイトアイとは半ば喧嘩別れしたような状態であった。気まずいとしか言いようがない。
塚内も少し話を聞いたことがある程度だが、今現在のこの2人の気まずさは実際に目にして、この場にいたくないと思わせるものであった。
「あー、その仕事の邪魔しちゃったみたいでゴメンね! それじゃあ、私はこれで――」
この未来は分からなかった。
前日に、とある人物を対象に予知を使い、緑谷出久の動きを調べていた。ノイズ混じりで、不確定な部分があったが、ある程度は動きを見れた。彼の正体までは分からなかったが、それでも貴重な情報にはなったのだ――しかし、オールマイトがこの町にいることまでは予知できていなかった。目立つ人だ。いればすぐにわかったであろうに、それを知ることができなかった。
ノイズが混じるようになって、未来を変えられる可能性を知った。それは、ナイトアイにとっては希望でもある。
彼は変えたかった――かつて見た、オールマイトがヴィランとの戦いで凄惨な死を迎えるという未来を。
だから、その衝動的な行動は必然だったのかもしれない。
「――ナイトアイ!?」
もともとは出久に対して使うつもりで温存していた。だが、結局彼に触れることはできずに発動条件は満たせなかった。
ナイトアイの予知、その発動条件は二つ。相手に触れること。そして、目線を合わせること。そうすることで一時間の間その人物の取りうる行動を見ることができる。
一度発動すれば一日のインターバルを挟む必要があるが……今、インターバルは解けている。出久に対して使わなかったそれを、ナイトアイはオールマイトに対して使ったのだ。
「こ、これは……」
カメラのフィルムの様な形式で見ることのできるそれ――未来の光景は、以前見たものから変わっていた。
以前見たときは、数年先にオールマイトが白髪の若いヴィランに無残に殺される光景であった。瞳に光を宿していない、莫大な力を持つヴィランであったが――そいつが映らない。
だが、ナイトアイが見たのはより良くなった未来ではない――彼の理解の外を超えるようなものだ。
「なんなのだ、これは!?」
見えるのは、ボロボロになったオールマイト。地面に倒れ伏し、宙に浮く何かを見ている。
その何かは、異形としか言いようがなかった。甲殻におおわれ、巨大なドラゴンの様な姿をした怪物。それに敗北したような様子のオールマイト。絶望的な光景が、映し出されていた。
周囲には、他のプロヒーローたちもいるようで、彼らもまたボロボロになって倒れている。エンデヴァー、ミルコ、ベストジーニスト、エッジショット。他にも幾名かの姿が見える。ナイトアイの見た覚えのない姿の者もいるが、彼の知らないヒーローだろう。
そして、そんな彼らをかばうように、二つの人影が見えた。
一人はまだ子供であった。黄色いフードをかぶった、中学生ぐらいの背丈の少年。後ろ姿で顔は見えないが、その左腕は特徴的だ。白い機械におおわれており、青い光を放っている。
そして、その隣にいるのは白い大きな姿――ヒーローマンであった。
「未来に、いったい何が起こるというのだ……それも、
未来は変わった。
世界は大きく、変動を見せる。
というわけで雄英入学前にどんだけイベント盛り込むんだよってね。