どけ!!俺は(ヒミコの)お兄ちゃんだぞ!! 作:俺はお兄ちゃんだぞ!!
警察署で一時間以上の事情聴取を終えた私はようやくお兄ちゃんと一緒に帰路につく。
合宿先から誘拐されて、それからお兄ちゃん達に助けてもらって今。
これだけのことが連続で起こって流石に疲れた。
頭の中は考えることでいっぱいで警察の人が送ってくれる車内の中をただただ無言で過ごす。
お兄ちゃんも察してくれて無言だった。
やがて車が私達の家に到着し止まる。
家の外ではお母さんとお父さんが待ってくれていた。
「・・・・お母さん、お父さん」
「被身子!!」
私が車から降りると同時にお母さんが私に駆け寄って抱きしめる。
お母さんを支えながらお父さんを見れば心配そうな顔をして私を見ていた。
「無事で本当によかったわ。あなたが誘拐されたって学校の先生から聞かされた時から私、もうどうにかなっちゃいそうで」
お母さんが涙を浮かべながら私を心配したことを伝えてくれる。
お父さんも同じように私とお兄ちゃんのことを気遣ってくれた。
「今日は疲れたでしょ。ゆっくり休みなさい」
「・・・・うん、ありがとう。そうする」
「脹相もな、しかしあんな怖いヴィランと戦うなんて、俺は見てるだけで汗が止まらなかったぞ」
私の手を引いて両親が暖かい部屋の中に入れてくれる。
二人の気遣いに嘘の仮面をつけ、微笑んで応える。
きっと色々話したいことがあると思う。
けど私が疲れているのに気づいてすぐに寝るように部屋に連れて行ってくれた。
「・・・・」
自分の部屋に帰り、無言のままベッドに倒れ込む。
疲れてるはずなのに、頭の中ではさっきまでの出来事が何度も思い出され続ける。
「・・・・名前も聞けなかった」
ヴィラン連合って呼ばれてたあの人達。
あの人達は私と同じだって、仲間だって言ってた。
きっとそれは嘘じゃないって思う。
だって本当の私を知っているのに、あの人たちは怯えた顔も拒絶も何もなかったから。
「・・・・」
仲間になれって言われたけど私は断った。
あの人達はヴィランで、私はヒーロー。
・・・・ううん、そうじゃない、そういう分け方じゃない。
あっち側とこっち側、言葉にしなくても確かに存在する境界線で分けられた二つの世界。
もしかしたら私のいるべき場所はあっち側だったのかもしれない。
お兄ちゃんがいたから、香ちゃんと恵ちゃんと友達になれたから私はこっち側にいられる。
こっち側にいたいと思う。
あっち側の方が生きやすいのかもしれない、けど行けない。
今の私はこっち側にいたい理由がたくさんある。
香ちゃんと恵ちゃんだけじゃない、雄英に入ってから本当の私を知ってなお友達になってくれた人たちが出来た。
三年の通形先輩に天喰先輩、ねじれちゃんに有弓ちゃん。
みんなお兄ちゃんの大切な友達で、彼等なら私を受け入れてくれるだろうってお兄ちゃんから紹介してくれた人達。
そして同じ学年だとクラスは違うけど
入試試験で私を見ていたみたいで入学して話しかけてくれた子。
頭が良くてリーダーシップがあって、それでいて砕けた話し方で一緒にいて楽しい子。
恵ちゃんと香ちゃんと一緒にいた時みたいに楽しかった。
だから一年の終わりに勇気を出して本当の私を伝えて、受け入れてもらえた時は本当にうれしかった。
それからは違う学校に行っちゃった香ちゃんと恵ちゃんと一緒に四人で遊ぶことが増えた。
本当に楽しくて、私の中でどんどん大切な思い出が増えていく。
あっち側に行っちゃうと、この大切を捨てないといけない。それは嫌だから、行かない。
・・・・けど。
「もっと話してみたい」
あっち側とこっち側。
ヴィランとヒーロー。
それでも歩み寄ることはできると思うし、私はしたい。
向こうはこっち側にいる私をどう思うかはわからないけど。
『邪魔だ』
『絶対に殺してやる!』
「・・・・」
あの二人のことが頭の中が蘇る。
どっちもお兄ちゃんに対して強烈な感情を見せてた。
間違いなくどっちも良いとは言えないもの。
私が彼らに会うことでお兄ちゃんが危険な目に会うかもしれない。
今日だって私を助けようとして先生に殺されるところだった。
もう二度とあの人達には近づくべきじゃない。
・・・・そんなことはわかってる、けど。
「・・・・ヴィランだったら、もう仲良くなれないの?」
私の言葉に誰も答えない。
自分自身も何も言えず、疲れから私の意識は次第に微睡の中に消えていった。
◇
私、
雄英に入学してから出会った女の子で名前は渡我被身子。
血が好きで、傷だらけの姿がかぁいいと言う少し変わった女の子。
入学式から少し話してはいたけど、ちゃんと友達になったきっかけは雄英体育祭でチームを組んだからだった。
個性も身体能力も、おまけに頭もよくてすごい子だなと最初思ったけど、どこか抜けていて、そのせいかほっとけなかった。
その時から何か抱え込んでるんじゃないかと無意識に気づいていたのかもしれない。
クラスは違ったけど、昼休みとか休日によく集まって話して、文化祭を一緒に回ったりとかもして。
そうして仲良くなった一年の終わりにヒミコは自分の秘密を私に話してくれた。
真剣な顔をして話してくれた内容に、驚くよりもむしろ嬉しさが先に出たのは秘密。
これはヒミコにとってすごい重要なことで誰にも打ち明けるものじゃないとわかったから。
そんなことを私に話してくれたのは光栄とすら思った。
私が彼女を受け入れると、ヒミコは嬉しそうに笑って本当の自分を見せてくれるようになった。
受け入れたんだから、当然彼女の好きなことにだって付き合うよ。
・・・・付き合うんだけど。
「・・・・んぅ」
「っっ!!」
ヒミコの舌が私の首筋を這う。
くすぐったいし、ヒミコが私に密着してきて彼女の良い匂いが私の鼻孔をくすぐる。
「ぁぅ、ヒ、ヒミ」
「ん、真綿ちゃん。チューチューするね?」
そう言った直後、小さな痛みが走る。
ヒミコの八重歯が私の首筋に当たり、噛みついたんだ。
「っっ!!ぁぅぅ」
ヒミコの個性で私の血を操ってるのか、ちょっと噛みついただけで血が吸われていく。
それを感じると同時に私の身体に不思議な感覚が走っていく。
「・・・・はぁ、はぁ」
気付いたら私の口から荒い息が漏れていた。
身体が熱くなって、肌から汗が浮き出る。
な、なんで、私、っぁ、なんか変な気持ちになって。
混乱する、そんな私の近くからヒミコ以外の女の声が耳に届く。
「あれー?真綿ちゃーん。息が荒いぞー」
「可愛い吸血鬼に噛みつかれて興奮しちゃったかなー?」
私の横で香と恵のからかう声が聞こえる。
その声にハッとして歯を食いしばる。
見れば二人は私を見ながらベッドに倒れ込み・・・・ぐったりとしている。
すでに香と恵はヒミコに血を吸われた後だった。
「ぷはぁ・・・・ふふふ、真綿ちゃんかぁいい」
「うぐっ、変なこと言わんで」
ヒミコが笑いながら私にそう言ってくる。
見れば彼女も頬を紅潮させて荒い息を吐いていた。
それを見て私もつられて変な感じになる。
見慣れた私の部屋のはずなのに、なんかピンク色の空気が舞っているようにすら見えてきた。
あれ?もしかして私・・・・いやいや私は別にそんな。
「ごめんね、私の個性と赤血操術の影響で私と真綿ちゃんの血が一緒になってるの。いま私の血液中にアドレナリンとか色々出ちゃってて、それに真綿ちゃんの血も影響しちゃって」
「よ、よくわからないや」
反転術式の影響とか、いろいろ教えてくれるけどフワフワした頭じゃ入ってこない。
血を吸われてから痛みはとっくに薄れて、逆になんか気持ちよく。
「早くこっち側に来なよ真綿ー」
「一緒に堕ちよう
すでにヒミコに堕とされた二人が私を誘ってきやがる。
ちなみに女の子がしていい顔じゃない。
「わ、私はヒミコには負けんから」
◇
「・・・・ヒミコには勝てなかったっちゃん」
なぜか落ち込んでいる真綿ちゃん。
やっぱり話し方かぁいい。
個性で真綿ちゃんに変身して彼女の個性の耳元にある綿を触る。
真綿ちゃんの個性は耳元のこの綿を操る個性。
ふわふわでかぁいいの。
綿を触ると大きくなった。
なるほど、こうやって操るんだ。
「すごいよねー血を吸った相手の個性も使えるんでしょ」
「えへへ、誰でも使えるわけじゃなくて好きな人限定なんだけど」
香ちゃんの言葉に照れながら答える。
彼女の個性はお肌から良い匂いがする香りを出せる。
嗅いだらちょっと眠くなったり、落ち着いたりする。ミッドナイト先生と似た個性。
恵ちゃんは自分の影を黒いワンコに変身させられる。ちっちゃい柴犬でかぁいい。
あと使えるのは、三年のみんな。通形先輩の難しくてまだうまく使えないけど。
透過は発動すると全裸になっちゃうからみんなから禁止されてる。
「はぁーそれにしてもヒミコが無事でよかったぁ」
「ね、テレビでヒミコとお兄ちゃんがバトってるのを見た時は心臓止まりかけたよ」
今はこうして笑ってくれる二人だったけど、さっき会った時は泣きながら抱き着いてきて大変だった。
それだけ心配してくれたってことで嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちの両方が出る。
「・・・・でも、ほんと心配したんやけんね」
真綿ちゃんが私を抱きしめる。
彼女も同じように最初会った時は泣いていた。けど今もまた目に涙を浮かべている。
真綿ちゃんとは合宿でずっと一緒だった・・・・だから私が攫われた時も傍にいた。
彼女の話を聞くと気づいたら私がいなくなってたみたいで真綿ちゃんに怪我はなかったらしい。
それを聞いて本当に安心した。
・・・・もしあの人達が真綿ちゃんを、私の大切な人を傷つけていたら。
「・・・・」
抱き着く彼女に腕を回しながら考えるのはあの人達のこと。
家に帰った時は考えがうまくまとめることができなかった。
けどこうして好きな人と触れ合ってお話して、頭の中をクリアにして考えることが出来た。
――――私はあの人達と。
◇
「いやーごめんね脹相いきなり」
隣を歩く通形が笑いながらそう言ってくる。
そういうならもう少し申し訳なさそうにしたらどうだ。
まぁ、ヒミコは友達を遊んでいて用事もなかったら別にいいが。
「サーが脹相と話がしたいんだってさ。たぶん俺らが戦ったオールフォーワンについて聞きたいんじゃないかな」
「だろうな」
それ以外に呼び出される理由がない。
それはつまり、向こうもあの男の情報を持っているということ。
奴はあの後オールマイトにやられ捕まったが、あいつがあれで終わったとはどうしても思えない。
情報が手に入るなら手に入れておくべきだ。
通形のインターン先、プロヒ―ローのサーナイトアイ。
通形の話ではあのオールマイトの元サイドキックだった男だ、何か情報を掴んでいたとしても不思議ではない。
「ここだよ。あ、ちなみにサーはユーモアを大切にしてるんだ。だから気に入られたかったらサーを笑わせるといい」
「興味ない」
「まぁ脹相ならいつも通りでいいよ!だっていつも面白いし」
ふざけたことをいう通形を無視しながら事務所の中に入る。
俺が行っているエンデヴァーの事務所に比べると手狭だな。
「ミリオ案内ありがとう。そしてよく来てくれた渡我くん、いやヒーロー名のユウジと呼んだ方がいいか」
「脹相でいい、どちらも妹と弟とかぶる」
「じゃあなんでそのヒーロー名にしたの?」
「悠仁は俺のヒーローの在り方そのものだからだ」
俺のヒーロー名には弟の名前を使わせてもらっている。
それは弟の進んだ道こそが今の俺が進むべき道だからだ。
ヒミコを助けるため、その手段として悠仁のように人を助けられるヒーローになるための名前だ。
「けっこう、では脹相。今回君に来てもらったのはいくつか君に聞きたいこと、場合によっては頼み事があってここに呼ばせてもらった」
「・・・・聞きたいことはわかるが頼みたいことか」
「そうだ。ミリオ、悪いが少し席を外してくれ」
ナイトアイの指示に従った通形が部屋を出ていく。
そうして二人だけになった空間を無言が支配する。
じっと俺を見つめていたナイトアイだったが、やがて口を開いた。
「単刀直入に聞こう。
「俺はお兄ちゃんだ」
奴の言葉に俺は即答する。
何者か、その質問への答えは常にこれだけだ。
「予想外の答えだ、ユーモラス。だが今ほしい答えはそうじゃない」
「お兄ちゃん以外の答えなんてないが」
「では先ほどの質問をする前に私の個性について話そう」
そう言って自身の個性の詳細を明かしだす。
この男の力は『予知』
対象者近くの視点かまるでカメラのフィルムのように対象の未来の行動を見ることができ、その気になれば数分先から数年先の未来までいけるという。
凄まじい力だ、未来の情報を知るのは他者と比べ圧倒的なアドバンテージになる。
「そうだ。予知で知った情報を元に私は行動し、大勢の人を助けることが出来た」
「理解はできる。だが未来というのは些細なことで分岐するものではないのか」
強い個性だ、未来を掌握することすらできると思う。
だがそれはその未来が確定したものだったならばの話だ。
未来を知って動けば、自分自身が本来動いていたであろう行動からずれる。
湖に本来落ちるはずのない小石が落ちれば、それは波紋のように周りに伝わり、水の中にいた魚を動かす。
そうなればもはや自身の知った未来は別だ。
「ああ、未来とは枝分かれした小枝のようなものだ、小さな行動は分岐しいくつもの未来をつくる。だが太い枝は別だ、いくら枝分かれしようと最終的に一本の枝へとたどり着く」
「変えられない未来があるということか」
「ああ、
「・・・・さっきから何が言いたい」
突然自分の個性を俺に話した。
これに何のメリットがある、通形に聞かれないようにしてまで話す内容か。
「・・・・私が以前にオールマイトの未来を見たことがある。その予知には先日のオールフォーワンとの戦いもあった」
俺の言葉には答えず話を続けるナイトアイ。
眉を潜めながら口を閉じ話を聞く。
ようやくオールフォーワンの話になりそうだ。
「私が見たその予知では、
「・・・・死闘の末?」
その言葉に違和感を覚えた。
オールマイトが来た時点で奴はすでに瀕死、オールマイトが奴に拳を振るったのもたったの三回だけ。
その三回目で奴は気絶し倒れた、オールマイトは無傷。時間にして三十秒もない戦闘。
あれを死闘と呼ぶにはあまりにも誇張が過ぎる。
「ああ、そうだ。実際に死闘を演じたのは君とミリオ。オールマイトはとどめを刺したに過ぎない」
「・・・・ずいぶんと予知と違うな。これも変化可能な小さな未来分岐の範疇なのか」
「いやあまりにも予知と逸脱している。本来二人の死闘は変えられない未来、
「・・・・なのに変わった」
ここまで話が進めば、この男が何を言いたいのかの察しがついた。
変えられないはずの未来が変わった。
それは本来ありえないこと、だが事実として予知と現実は乖離している。
この男はその原因を。
「もう一度聞く。
「・・・・」
「未来が変わったのはミリオが原因ではない。君が理由だ」
「・・・・その根拠はなんだ」
そうは言ったが俺も通形が原因だとは思ってはいない。
この男に言われて、頭に浮かんだ原因に心当たりがあったからだ。
「随分前から違和感はあった。ミリオの行動が予知とずれる時がある、最初はミリオに未来を変える力があると思っていたが・・・・検証を進めるうちに違うとわかった」
そう言ってナイトアイは根拠を話し出す。
通形と出会った職場体験の時から戦闘訓練や何でもない日常のひと時であいつに予知を使っていたらしい。
そしてその際、たまに予知で見た行動と現実が違うことがあった。
先ほど言った死闘の差異と同じように。
「予知通りに進むときと異なる時、そのパターンを調べ、私の知る未来と異なる行動をミリオがする時は
「・・・・」
ナイトアイは確信を持っている。
俺が変えられない未来を変えた原因だと。
・・・・俺の心当たり、それは当然だが『呪力』
この時代には本来ない力、俺が思いつく原因といえばそれしかない。
変えられない未来、その言葉を聞いた時に思い出すことがあった。
それは喋る親指、ではなく天元が言っていたこと。
天元と
因果、運命、変えられない未来。
加茂憲紀もこの因果をどうにかするために六眼を封印に動いた。その結果があの
あの男すらも諦めた、本来なら変えられない未来のはずだったそれは、
呪力を捨て、因果の外に出た人間なら決まった未来すらも破壊できる。
おそらく、今回は
呪力が消え、全員が完全に呪力から脱却した時代。
そこに消えたはずの呪力を持つ、呪縛をその身に刻んだ存在が現れた。
この時代の人間が持つ因果とは異なる呪縛を持つ俺が介入したことによって
つまり呪力を持つ俺、そしてヒミコならこの世界の運命を捻じ曲げられる、そんな可能性があるということ。
「何か心当たりがありそうだな」
「・・・・ああ、だが教えない」
呪力の存在は俺とヒミコにとって重要な力だ。
知る人間は少ない方がいい。
「かまわない。君なら
そう言った直後、ナイトアイが俺の前までやってくる。
そして――――その頭を俺へと下げた。
「・・・・どうして頭を下げているんだ」
「君にお願いがある。オールマイトを、助けてくれないか!」
急に頭を下げたと思ったら、まったく予想していない言葉が出て来た。
オールマイトを助ける?あのヒーローに助けが必要とは思えないが。
「私が彼の未来を見たと言っただろう。その先の未来で彼は殺される、それも言い表せないほど凄惨な死に方でだ」
「・・・・」
歯を食いしばり述べたその内容。
オールマイトの死、それはこの男にとって許容できるものではないだろう。
部屋の至る所に張られたオールマイトの絵。それを見ればこの男がどれだけ好きなのか容易に想像できた。
「私がこのことを伝えても彼は止まらなかった・・・・止められなかった。運命は変えられない、私がいれば彼は変わらず無理を続けてしまう、だから私は彼の元を離れた」
頭を下げたままそう語るナイトアイ、その拳は強く握られ震えているのが見える。
いや、拳だけじゃなく身体全体が震えていた。
「彼を死なせたくなくて運命を変える方法を探していた。だが・・・・・心の底では諦めていた。そんな時にこの現象が起き、君のことを知った。渡我脹相!君ならオールマイトが死ぬ運命を変えられる!!捻じ曲げられるかもしれないんだ!!」
室内に響くナイトアイの大声。
それは必死の想いを乗せられているのを感じ取れた。
・・・・オールマイトが死ぬ未来か、それは俺も困るが、だからといって変えられるものなのかはわからない。
今回のオールフォーワンとの死闘、確かに内容は変わったが、変わっていない部分もある。
二人が戦い、オールマイトが勝つ。
過程が歪んだだけだ。それを考えればナイトアイの望み通りの結果が得られるとは限らない。
俺がそう言うが、ナイトアイは落ち込むことなく依然頭を下げたまま口を開く。
「十分だ、可能性があるのならそれを高めればいい。今回よりもさらに介入する機会を増やし運命を捻じれさせれば結果もおのずと変わる」
「・・・・協力しよう。ただし条件が一つある」
「言ってみてくれ」
本当に運命が変わった原因が俺かはわからない。
俺だとして変えられると自信があるわけでもない。
だが俺がこれを成功させればオールマイトに借りを作ることができる。
それは俺の目的にとても重要な意味を持つ。
「ヒミコが生きやすい世界を作るために協力してくれ」
俺はナイトアイにヒミコの事情を説明することにした。
これはチャンスだ、本来俺がナンバーワンになってからしようとしたことをオールマイトにしてもらえる可能性が出て来た。
俺がヒーローになった理由、それはヒミコがヒミコのまま生きていける社会。
妹の普通を受け入れてくれる社会を作ることだ。
ナンバーワンヒーローの影響力さえあれば、それも可能。
「・・・・そうか。それが君がヒーローになった理由か」
「ああ、それでどうする」
「無論その条件で構わない。オールマイトもその話を聞けば断ることはないだろう、私も全力で協力することを誓う」
「わかった。なら俺も協力しよう」
頭を上げたナイトアイと頷き合う。
差し出された手を握り、互いの目的のため協力することを決める。
「だが俺はどうすればいい。運命を変えるといっても何をすればいいかわからない」
「ひとまず我々と行動を共にしてくれ。インターン先をこちらに移し私の指示に従ってほしい」
「わかった」
何か考えがあるのだろう、協力する以上その指示に従うことにする。
しかしインターン先の変更か・・・・あの加齢臭がうるさそうだ。
「場合によってはインターン先を私のところとエンデヴァー事務所の二つにするというのも考えよう」
「ああ、あの加齢臭に伝えてくる」
どっちを優先するかだ。
俺自身がナンバーワンになるのを優先するか、オールマイトを助け、今のナンバーワンに助けてもらうか。
現状、オールマイトの方が時間を短縮できそうだ。
◇
「インターン先の変更だと?そんなものはゆるさん!!」
そう言って炎を吹き出し俺を睨む加齢臭。
予想通りの反応にため息を吐く。
これは面倒なことになりそうだ。
次話は脹相のエンデヴァーとの関係性とか、ヒミコがヴィラン連合に会いに行くとかになると思われます、たぶん。
ちなみにヒミコは仮免を一年の時に取ってます(脹相や通形と同じタイミング、二年はヒミコだけ参加)なので緑谷やお茶子の仮免の話はさらっと触れるだけになるかな?
あとヒミコの両親について。
ヒミコは小学低学年の時点で両親の前では本来の自分を見せなくなったので、親はヒミコの本来の性格を知りません(もう普通になったと思ってる)
なので、自慢の娘(雄英主席入学、体育祭、試験でもトップなので)だと思い愛してます。
ヒミコ的にはかなり複雑。
そして脹相。
ヒーロー名は『ユウジ』
コスチュームは原作の衣装に悠仁の学生服を少し取り入れた感じ。
両親は脹相についてはもう諦めてる。
その分ヒミコが可愛いと思ってる。