どけ!!俺は(ヒミコの)お兄ちゃんだぞ!!   作:俺はお兄ちゃんだぞ!!

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たくさんの感想、評価ありがとうございました。
頑張って書いていきます。


三話

雄英高校に入学してもうすぐ一か月。

 

相変わらず座学は退屈だがヒーローに関する訓練などは俺の目的に役立つ知識だった。

悠仁に習って人を助けヒーローらしく動いていたが、今後はさらに効率のいい動きが要求されていく。

 

トップヒーローになるため、当然ただのヒーローで収まっているようではなるのは不可能。

全ては妹のため、まずは。

 

「脹相!脹相!!」

 

「・・・・」

 

俺の隣でうるさい奴が話しかけてくる。

入学してから毎日だ、いい加減相手にするのも疲れてきた。

 

横目で見れば歯を見せて笑う通形の姿。

なぜこいつは俺に話しかけてくる。

 

入試の時に少し関わった程度だろう。

 

「脹相見て!爆笑必須のギャグ思いついちゃったんだよねー!!これは脹相もお腹抱えて笑っちゃうって!」

 

俺が無言のまま視線を向ければ嬉しそうにそう口にする。

 

何をするつもりかと見ていれば通形は体を丸めた妙な姿勢で床に消えていき、その姿勢のまま途中で停止する。

 

そして一秒の空白。

 

「――――桃がなってるよ!!」

 

俺の目の前で奴は自分の尻を突き出してきた。

 

「・・・・」

 

通形の言葉で教室が一瞬で静まり返る。

全員が黙ったまま俺に視線を向けていた。

 

「桃がなってるよ!!!」

 

聞こえていないと思ったのか同じことをもう一度言ってくる。

その尻に右手を叩きこんだ。

 

「あ゙!!」

 

短くそう発した奴の尻が震える。

やがて個性を解いて元の姿勢に戻った奴が涙目でこっちを見てくる。

 

あの状況で他に俺にどうしろというんだ。

 

「ツッコミが痛すぎるよ脹相!!プロ芸人なら音は大きいけど実は痛くないツッコミを覚えないと!」

 

「俺が目指してるのはプロヒーローだ」

 

本当に慣れない。

こういう人間、いるにはいたが俺は話したことなかった。

 

俺が無言でもこいつは気にすることなく俺に話しかけてくる。

妹のヒミコもよく話すタイプだが、こいつとの話は本当に疲れる。

 

「どうしてお前は俺に話しかけてくる」

 

入学から一か月、こいつは俺達のクラスB組の中心人物のような存在になっているように思う。

まるで悠仁のように、大勢の人間が周りにいて慕われている。

 

俺と話さずとも別の人間といくらでも話せるはずだ。

 

「え、だってこのクラスで一番仲良いの、脹相だもん!環はA組だし、それにもっと仲良くなりたいからね!」

 

「・・・・はぁ、弟たちがいれば」

 

根が明るい悠仁や血塗(けちず)ならこいつとも楽しく話すことができるはずだ。

だが俺は話す方じゃないしこういうのは向いていない。

 

「え、脹相って弟もいるの?」

 

「ああ、いる。全員自慢の弟たちだ」

 

「へぇー!教えてよ脹相の弟のこと!妹さんのことはいつも聞いてるしさ!いやほんと耳にタコができちゃったよ」

 

耳を手で掴みながらそう笑う通形。

聞きたいといったのはこいつだ、それに俺が話せる話題はヒミコのことか弟たちしかない。

 

「お前たち連絡事項を伝える。全員席に戻れ、特にそこのバカ二人」

 

教室に入ってきた俺達の担任の男がそう口にする。

それに従い全員が席に戻るがその視線は俺と通形に固定されていた。

 

「ブラド先生、俺と脹相にだけ厳しくない?他のみんなには優しいのに」

 

「それはお前らが首席による新入生代表挨拶でシスコン宣言したバカと突然校内で全裸になったバカだからだ」

 

そう言いながら俺と通形を睨む。

 

俺は妹のためにここに入った、それを言って何が悪い。

全裸になった男と一緒にされるのは流石に嫌だ。

 

「俺が担当するクラスでよかったな。A組なら今頃お前らイレイザーヘッドに除籍処分をくらっていただろう」

 

「「・・・・」」

 

それを聞いて俺と通形は無言になる。

除籍処分の話は隣のクラスにいる甲矢たちから聞いていたからだ。

 

なんとか甲矢たちは処分を免れたらしいが。

 

「とかいってブラド先生俺らのこと好きなんだから」

 

「はぁ、いいから席につけ。雄英体育祭が迫っているんだ!全員気を引き締めろ!」

 

その言葉で俺を含め全員の顔が引き締まる。

雄英体育祭、少し前にその存在を教えられ、その重要性を知った。

 

ここで活躍した者は今のプロヒーロー達から認められ、スカウトされることも多いと言う。

トップクラスにいるヒーローに見つかれば、それだけ早くトップヒーローになることが出来るらしい。

 

それを聞いて妹のためにトップヒーローを目指す俺が張り切らないはずがない。

 

「体育祭に向けて訓練所の利用が可能になっている!利用するものは俺か他の先生に申請するように」

 

その後、他の連絡事項やA組に負けるななどの小言を口にした後教室を後にする。

ブラドキングがいなくなった後、俺はさっそく訓練所を利用しようと立ち上がる。

 

この学校に入って気づいたことがある。

 

・・・・俺の使う技は殺傷力が高すぎる。

 

あの時代ならそれで正解だったが、この時代それもヒーローになると決めた今殺傷力というのは余計になる。

ヒーローはヴィランを倒すが、それはあくまで捕縛、殺傷ではない。

 

今のところ本来の技の威力から弱めることで対応しているが、これからはヒーロー用の技を開発していく必要があるだろう。

 

―――いや、もっとも対応が必要なのは根本的なところなのかもしれない。

 

この時代の人間には呪力がない。

 

呪術師は呪力の強弱で攻撃を予測するし、敵の呪力に反応して発動する技も多数ある。

 

宿儺戦に備えて行った入れ替え訓練によって得た技術の多くが敵の呪力が関係するもの。

 

・・・・それらがこの時代の人間には使えない。

 

「脹相、訓練所行くの?」

 

通形がそう聞いてくる。

俺が頷けばなぜか通形もついてきた。

 

通形も今時代の例に漏れず呪力がない。

そんな相手と共に訓練すれば、何か対処方法を思いつく可能性がある。

 

この時代に呪力を使えるのは俺だけな以上、対処方法は俺一人で探していくしかない。

 

ブラドキングが行ってしまったから別の教師を探しに教室を後にする。

そうして廊下に出れば知った人間たちがちょうど隣の教室から出てくるのが見えた。

 

「あ、脹相。もしかしてあんたも訓練所使う?」

 

「使うが、それがどうした」

 

「私らも使うつもりだから一緒に訓練しましょ。大勢でやった方が捗るし」

 

甲矢の提案に一瞬考え、まぁいいかと頷く。

この時代の個性に対する慣れには人数が多い方がいい。

 

「ねーねー脹相!なんであなたの顔に模様がついてるのー?入れ墨?どうしてその模様なの?なんでなんで?」

 

「・・・・」

 

「ねーなんでなんでー?」

 

甲矢の隣にいた女が俺の顔をじっと見ながらそう聞いてくる。

この女、波動は最近になって会う頻度が増えた人間の一人。

 

きっかけは甲矢からの紹介だった。

最初はなぜ紹介すると思いながらも軽く対応し終わった。

 

だがその後から通形の友人と甲矢たちが話すようになったらしく、そこから通形と甲矢にひっぱられる形で五人で会うようになっていた。

 

どうして俺をここに入れるのか、それがわからん。

 

「・・・・」

 

「ねじれが聞いてんでしょうが!ちゃんと答えろこのシスコン!!」

 

俺が答えないでいると甲矢から背中に蹴りが入る。

こういう時に通形が話を変えてくれればと、あいつを見れば甲矢と一緒に出て来た男と話していてこっちを見ていなかった。

 

それを見て内心でため息を吐きながらこれが血であること、いざという時の攻撃手段の一つであることを伝えた。

 

だがそれで満足せず、また別の質問をしてくる波動をなんとか躱しながら訓練所の許可をもらいに職員室に入る。

代表で俺と通形が入り先生を探せばプレゼントマイクがいた。

 

「お!一年B組のバカ二人じゃねぇか!!」

 

「・・・・訓練所の許可をもらいにきた」

 

「オーケーオーケー!ていうか脹相なんだその顔うけるぅ!!」

 

俺の不服そうな顔に気づいたプレゼントマイクがただでさえデカい声をさらに大きくして笑う。

・・・・この学校の奴らはどうしてこんなにうるさい奴が多いんだ。

 

「良い呼び名じゃねぇか、俺らが学生の頃もA組の三バカなんて呼ばれてた奴らがいたぜ」

 

「へぇ!楽しそうな呼び方ですね!これは俺と脹相も負けてられないね!!」

 

「興味がない」

 

用事は済んだんだ、早速訓練所に向かう。

 

「よーし!さっそく特訓だ!優勝は俺がもらっちゃうもんね!」

 

通形が調子のいい言葉を口にする。

優勝?させるわけがないだろ。

 

俺はヒミコから体育祭の時は俺を一生懸命応援するという言葉をもらっている。

 

妹のその言葉だけでお兄ちゃんの優勝は確定したようなものだ。

 

「俺が優勝する、これは絶対だ」

 

「なんで?なんで絶対なの?」

 

波動がわかりきったことを聞いてくる。

 

「俺がお兄ちゃんだからだ」

 

ヒミコの声援があれば俺が負けることはありえない。

妹の期待に応えない兄などいないんだから。

 

「どうしてお兄ちゃんだと絶対なの?ふしぎー!」

 

「ねじれ、こいつに関してはどんなこと聞いても半分くらいはお兄ちゃんって返ってくるの」

 

「あ、それ俺も思ってた!」

 

俺の答えに納得がいかなかった波動に甲矢と通形が話に加わる。

このままだと訓練が始まらないと判断し一人で移動する。

 

それに気づいた全員が続く。

結局一度も静かになることはなく騒がしさを訓練所に響かせながら俺達の特訓は続いた。

 

 

 

 

『ヤァァァァ!今年も盛り上げていくぜー!!高校生たちの青春ビックイベント!雄英体育祭が始まるゼィィィィ!!』

 

相変わらずのうるさい声が鼓膜に響く。

だが、今回はそれと同等の声が至る所から響き続ける。

 

雄英体育祭、俺が想像していたよりも騒がしいイベントのようだ。

 

「いいか脹相。俺が渡したこの紙に書いている通りに言うんだ。わかったな」

 

「・・・・」

 

「わかったな!!」

 

至近距離からブラドキングが睨むようにそう口にする。

言われて渡された紙に目を落とした。

 

そこには意味がよくわからない文章が書かれている。

どうやらこれを俺が言う必要があるらしい。

 

「苦肉の策だ。選手宣誓の時はそれを見ながら言うんだ。間違っても入学式の時のようなことはするなよ!」

 

「あはは!あれやったら今回は全国放送でみんなに見られるからね!」

 

ブラドキングの言葉に通形が笑う。

どうでもいいが、従わなければブラドキングがうるさい。

 

「わかった」

 

「・・・・頼むぞ。本当に」

 

俺が頷けばブラドキングは疲れたようにため息を吐いて姿を消す。

そのタイミングで俺達を呼ぶ声が室内に響く。

 

「よし、行こう脹相!体育祭、楽しもう!!」

 

通形が笑いながらそう口にし、俺達のクラス全員が待機室から外に出る。

そうすると他のクラスの人間たちも続々と姿を現し全員が列になり並ぶ。

 

『選手宣誓!選手代表1B渡我脹相!!』

 

「・・・・」

 

その声に従って列から出て前に進む。

入学式の時も思ったが、どうしてこんなことをしなくてはならないんだ。

 

「シスコンだ」

「入学式でお兄ちゃんだとか妹のためにヒーローになったとか言ってた」

「あいつ、なんか紙持ってね?」

「カンペじゃねあれ?」

 

他のクラスの奴らの声が耳に届く。

それを無視して言われた通りの場所に移動し全員が見れる位置に立つ。

 

「・・・・」

 

横を見ればブラドキングがこっちを睨んでいた。

それを確認し内心でため息を吐きながら紙に視線を落とし口を開く。

 

「――――宣誓」

 

さっさと終わらせよう。

紙に目を通し、その時にふと目線をあげれば俺の視界に何かが映る。

 

それは巨大な機械。

・・・・あれは、確かテレビを見るためのものだったはず。

 

まさか、あれを通して今まさにヒミコが俺を見ているのか?

 

「・・・・っ」

 

持っていた紙を握りつぶす。

あの機械の向こうからヒミコの声援が耳に届いた気がした。

 

ヒミコ、俺がお前の立派なお兄ちゃんだというところを見せるからな。

 

「お兄ちゃんが必ず優勝する!!見ていてくれ!ヒミコ!!」

 

「誰かあのバカを取り押さえろ!!」

「カメラも止めろ!」

「雄英の恥を見せるなー!!」

 

俺が大声でヒミコに思いを伝えた瞬間、大人たちと一部の生徒が騒ぎ出す。

それを無視して列に戻ろうとすればブラドキングに頭を殴られた。

 

「紙に書いてる通りに言えって言ったよな!?なんだ今のは!?」

 

「妹が見ている。お兄ちゃんとして思いを伝えた、それだけだ」

 

「~~~~っっ、このバカは本当に!」

 

『さすが我らが一年を代表するバカ二名のうちの一人だ!俺らに出来ねぇことを平然とやりやがる!!まぁ別にそこに痺れねぇし憧れねぇけどなぁ!!』

 

プレゼントマイクの声が会場に響く。

頭を抱えるブラドキングの横を通り過ぎて俺は元の場所に戻った。

 

「絶対やると思った俺!!さすがお兄ちゃんだ!」

 

「当たり前だ」

 

通形の声に答えていると体育祭の最初の種目が発表される。

表示された種目名は『障害物競争』

 

内容がプレゼントマイクから説明されそれを頭の中に叩き込む。

狙うは当然トップ。

 

妹が見ているんだ、情けない姿は見せられない。

 

全力でお兄ちゃんを遂行する!!

 

 

 

「・・・・今年の雄英の一年代表は変な男じゃな」

 

薄暗い部屋の中で映し出される映像を見て儂の口から感想が漏れた。

お兄ちゃんって、まるで意味がわからん。

 

じゃが実力はありよるわい。

 

先ほど始まった障害物競争。

そこで障害物を物ともせず一人独走する男の姿が映る。

 

邪魔をするロボットや障害物を血を操り蹴散らし、肉体強化系並の身体能力で躱し進んでいく。

 

見たところ自身の血液を操る個性、まぁ珍しいものではないの。

気になるのは身体能力の高さか。

 

血液操作によるドーピングか、あるいは何かの身体強化の複合個性か。

 

「のうオールフォーワン。お主はどう思う」

 

我が主、オールフォーワン。

オールマイトに負わされた怪我によって視力を失ったが、代わりに奪った個性たちによってそれを克服している。

 

今や目で見るよりも遥かに多くの情報を彼は得ることができる。

そんな主なら儂よりもこの小僧について詳しい意見をくれるじゃろう。

 

彼について意見を求めるため視線を映像から彼へと向ける。

 

そして、固まった。

 

彼は無言でじっと映像を見つめていた。

 

まるで大好きなアニメの映像を夢中で見る子供のように。

 

「オ、オールフォーワン?」

 

「・・・・」

 

儂の声に反応せずじっと映像に映る小僧を見続ける。

やがて第一種目の一位が決まり、映像が切り替わる。

 

一位は当然あの小僧、圧倒的独走じゃった。

 

『見ているかヒミコ!!お兄ちゃんだぞー!!一位だぞー!!』

 

自らテレビにドアップで映りこんできた小僧が訳の分からんことを叫ぶ。

ヒミコ、聞く感じこやつの妹か。

 

どんだけ妹のことが好きなんじゃ。

 

「・・・・」

 

ドアップで映っていた小僧がすぐに近くにいた雄英教師に取り押さえられ姿を消す。

映像がまだゴールしておらん他の生徒たちに切り替わる。

 

そこでようやくオールフォーワンは映像から目を離し考え込むように視線を下に向ける。

 

「どうしたんじゃ、あの小僧のことで何かわかったのか?」

 

彼の目には様々な情報が入る。

その情報の中に彼が夢中になる情報、あるいは個性があったか。

 

しかし、オールフォーワンの口から出た言葉はそのどれでもなかった。

 

「――――()()()()()

 

「・・・・は?」

 

儂の口から間抜けな声が漏れた。

オールフォーワンはそれに笑うことなく言葉を続ける。

 

「こんなこと初めてだ。『個性を見破る個性』で見ても彼の個性がわからない、正確には情報が理解できない。何かを変換して血を増加する個性、わかったのはこれだけだった」

 

「血の増加?いや、どう見ても小僧はそれ以外の、少なくとも血を操る個性を持っておるぞ」

 

「そうだね、けれど情報が出なかった。異常な身体能力の高さも不明、個性を総動員して筋肉、体温、血液の流れ、赤外線の感知、全てを見ても()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・」

 

オールフォーワンの言葉に息を飲む。

若干いかれておるが、ただの優秀なヒーローの卵と思っておった小僧が途端に得体のしれない何かに変わった。

 

冷や汗をかく儂をおいてオールフォーワンは嗤う。

いつも浮かべている笑顔をさらに醜悪に染めて。

 

「面白い。ここまで全く予想も想像も出来ないことは初めてだよ!まるで次の展開が読めないコミックの次巻を待っているようなワクワク感と苛立ちだぜ!」

 

楽しそうに笑うオールフォーワンを見て、先ほど感じていた焦りが消え代わりに儂の心も踊り出す。

 

「すぐに小僧について調べよう」

 

登録されている個性、どういう人間か、家族構成、通っていた学校、病院、()()()()()()()()

儂が本気になればすぐに奴の過去など丸裸じゃ。

 

大して期待せずに見ていていた体育祭じゃったが思わぬ収穫があった。

 

「第二種目が待ち遠しいよ。今の僕はどこかでこれを見ている大勢の子供達と同じような笑みを浮かべているだろうね」

 

「ほほ、そうじゃな」

 

満面の嗤い顔を見せながらそう言うオールフォーワンに儂も同意する。

さぁ小僧、いや渡我脹相。儂らにお主の力をもっと見せてくれ。

 

 

 

 

「見ていてくれたかヒミコ、お兄ちゃんは一位になったぞ」

 

「~~~~っっお前ってやつは本当に!!」

 

俺の横でブラドキングが凄まじい形相を浮かべている。

なんだ、なぜ俺を睨む。

 

お兄ちゃんなんだ、妹にかっこいいところを見せて何が悪い。

 

「さすが脹相!俺も負けてられないね!!あ、俺も障害物クリアしたよ!ギリだったけど」

 

横を見れば全裸になった通形が現れる。

こいつはいつも裸だな。

 

もはや見慣れてしまったその姿に大した感想も漏れない。

 

「あーー!!お前もいい加減にしろ!!」

 

「まってまって!!暴力反対!しょうがないじゃん!服着てたら間に合わなかったんだって!これでも何回も着なおしてたんだから!」

 

ブラドキングが身体を震わせながら通形の頭をしばく。

そしてなぜか持っていた予備の服を投げつけていた。

 

おそらくこんな時のために服を持っていたんだろう。

そうやってブラドキングが俺達に怒りの声をあげている最中に他のいつもの奴らも集まる。

 

どうやら甲矢たちもなんとかクリアしたみたいだ。

 

そのまま集まって各々の感想を話していると次の種目が表示される。

 

「棒倒し、チーム戦みたいだね」

 

表示された競技を通形が口にする。

そのあとすぐにプレゼントマイクから競技の説明が入る。

 

障害物競争の早かった奴から順番に点数が与えられる。

チームでそれを合計点にした棒が与えられ、相手の棒を倒せば点数が追加される。

 

制限時間は10分、終了時に点数の高い四チームが次にいける。

 

「みんなで組もうよ!俺ら五人だしちょうどいいじゃん!!」

 

通形がちょうど集まっていた俺を含む五人に声をかける。

甲矢たちもその提案に迷いなく頷いていた。

 

俺も他の人間とは関わってない以上、ありがたい提案だった。

 

「ここでチーム作らないと脹相が一人で棒倒ししなきゃいけないからね!!」

 

「あー容易に想像できるわ」

 

「一人でも俺が勝つ」

 

通形と甲矢にからかわれるが真顔で返す。

 

「・・・・俺もここ以外で組める気がしない。棒倒しでボッチ、うぐぅ!想像しただけでお腹が!」

 

「あはは!おもしろーい!」

 

残りも二人会話に加わりいつも騒がしさがやってくる。

・・・・不思議と以前ほど面倒だという気持ちは感じなかった。

 

 

 

 

 

お兄ちゃんが参加していた体育祭から二日が経った。

休み明けの学校登校日、私はすごい人の数に囲まれた。

 

「渡我さん!!見たよ体育祭!!」

「お兄ちゃんちょーすごかったね!!」

「俺鳥肌立っちゃった!!」

「中学の時からすごかったけど、あの雄英でも変わらないね!」

「サインとか頼める!?私ファンになっちゃった!」

「一回戦の独走すごかった!」

「あの宣誓には笑ったけど」

「それな」

「一年のバカ二人って呼ばれてるって本当?」

「ずっとヒミコって叫んでたね!」

「二回戦の棒倒しすごかった!」

「すごい大勢の人が倒しに来たのに吹き飛ばしてたね!」

「一緒のチームだった女の子めちゃ可愛かった」

「裸の人結局ずっと裸だったね」

「三回戦での裸の人とのバトル見て俺ずっと笑ってたよ!」

 

 

「あわわわわ!ちょっと待ってください!」

 

学校の入口に着いた瞬間に知ってる人、知らない人関係なく私を取り囲む。

四方八方からの声にどうしたらいいかわからず目が回る。

 

こ、こんなこと初めてでどうしたらいいか。

 

「はいはいーい!!ステイステイ!!ヒミコが困ってるでしょ!」

 

「一人ずつ順番にね!!」

 

私が困っていると恵ちゃんと香ちゃんが大声で叫ぶ声が聞こえた。

その声を聞いて次々に口を開いていたみんなの声が止む。

 

その隙をついて取り囲まれていた私を引っ張り出して救出してくれる。

そして私の両腕に抱き着いて二人は笑顔を浮かべる。

 

「とりま私達が優先ね!」

 

「質問は私らを通すように」

 

そう言って私を引っ張って学校の中に入っていく。

後ろで騒がしい声が聞こえてきたけど二人は笑って流していた。

 

「ありがとう二人共」

 

「あの体育祭見た時からこうなるって予想してたからね」

 

そういって笑う香ちゃんに私は苦笑いを浮かべる。

そのまま教室の席について三人で話し始める。

 

話題はもちろん体育祭のこと。

 

「にしても相変わらずだねお兄さん。私お兄さんがヒミコォォ!って叫ぶたびに吹き出してたわ」

 

「あはは、私のお父さんとお母さんはその度に頭を抱えてました」

 

帰ってきたお兄ちゃんに両親はおめでとうの言葉の後に注意もしていた。

まぁそれは全無視して私にやったぞと嬉しそうに話しかけてたけど。

 

「体育祭優勝、すごいとは思ってたけどまさか雄英で一位とるなんてね」

 

「うちの学校も有名になるかもね。あの有名ヒーローが通っていた学校だ、とかで」

 

そう言われて私も体育祭の時のことを思い出す。

特に記憶に残っているのは二回戦の棒倒し。

 

ポイントが一番高いお兄ちゃんのチームが全員から一斉に狙われた。

四方八方から飛んでくる攻撃に対しお兄ちゃんのチームは息の合った連携で全てを打ち落とした時はびっくりした。

 

その後も敵を寄せ付けずそれどころか他のチームの棒も倒しちゃってたし。

 

あの息の合った動きはいきなり集まった人達では無理だと思う。

きっとお兄ちゃんと一緒にいた四人は元から知っている人達。

 

小学校から一緒だった有弓ちゃんはもちろんだけど、他の三人もお兄ちゃんと楽しそうに話しているのが印象的だった。

 

「でもお兄ちゃん相変わらず笑わないね。優勝した時も真顔で被身子の名前叫んでたし」

 

「変顔はけっこうしてるけどね」

 

そう言って笑い合う二人の言葉を聞いて確かにと思う。

お兄ちゃん、私の前では笑ってくれるけど他の人の前では基本真顔だ。

 

もっと笑ったらいいのに。

 

けど。

 

「お兄ちゃん、笑ってはなかったけど楽しそうでした」

 

お兄ちゃんは否定するけど私にはわかる。

体育祭を、というより友達と一緒に遊ぶのが楽しかったんだと私は感じた。

 

お兄ちゃんに有弓ちゃん以外の友達が出来た。

 

あの棒倒しでみんなと話すお兄ちゃんを見て私は嬉しくてつい笑ってしまった。

 

お兄ちゃん学校のこと全然話さないから知らなかった。

少し悲しかったので頬を膨らませていっぱいお兄ちゃんに怒りました。

 

「しばらくはこの話題でもちきりだろうね」

 

「うん、被身子もさっきみたいに取り囲まれないように」

 

「あはは」

 

噂をすれば教室にやってきたクラスのみんなが続々と私達のところにやってくる。

話題が落ち着き、私がみんなから解放されるのに一週間がかかった。

 

 

そして、その一週間後。

 

私達、全生徒が体育館に集められる。

 

なんでも社会の先生が急病で倒れてしまったみたいで代わりの先生が来たみたい。

 

壇上で先生たちが集まり事情を説明してくれる。

その説明の後に見たことのない男の人が前に進んだ。

 

あの人が新しい学校の先生なんだろう。

 

「先ほどご紹介にあずかりました非常勤講師の―――」

 

 

 

 

 

 

 

禪院 一為(ぜんいん かずい)です。よろしくお願いいたします」

 

 

 

 

 

優しそうな笑みを浮かべてそう名乗った先生。

 

その真っ白な瞳となぜか()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 







続きが気になった方、面白いと思ってくれた方。
感想、高評価をくださると次話を書くモチベーションになりますので助かります。

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