どけ!!俺は(ヒミコの)お兄ちゃんだぞ!!   作:俺はお兄ちゃんだぞ!!

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感想、高評価ありがとうございました!
誤字脱字報告も助かっています。

今回も面白いと思ってくれた方、続きが気になる方は感想高評価を下さると次話へのモチベーションになります。






五話

『これより、雄英高校一般入試実技試験を行います』

 

私の耳に試験の開始を告げる合図が鳴り響く。

それと同時に私の横にいた人たちを含む全員が一斉に動き出す。

 

私も一緒になって動きながらふと過去のことを思い返す。

 

あの時から季節が移り、年が変わった。

 

禪院先生はあの日から来なくなった。

聞いた話では先生は偽物で、その経歴から全てが架空の人だったらしい。

 

お兄ちゃんの報告からヒーロー事務所が調べたことで発覚、私達の学校はしばらく休校になった。

 

それからは何もなく、ただただ平和な時間が過ぎ今に至る。

 

・・・・その間も私の欲求は今も大きくなり続けている。

この我慢がいつまで続くのかはわからない。

 

それでも、今は。

 

「お兄ちゃん、私も頑張るね」

 

私の目の前にはたくさんのロボット。

かぁいくない、これを壊せばポイントになるらしい。

 

雄英高校に受かるにはこのロボットをたくさん壊していかないとダメ。

 

だったらやることは一つ。

 

「――――お兄ちゃん」

 

個性を使用する。

私の個性は血を摂取することで血の持ち主に変身できる。

逆に言うと相手の血を飲まないと変身できない。

 

お兄ちゃんを除いて。

 

「・・・・ふふ、きました。これ大好きです」

 

個性の使用によってお兄ちゃんと私が一緒になっていく感覚が始まる。

それが心地よくて、つい笑っちゃう。

 

お兄ちゃんへの変身は特別、血も吸わなくていい。

 

その代わり見かけは私のままだ。

 

だけど、今の私はお兄ちゃんと一緒になっている。

 

ずっとお兄ちゃんの血を飲んできた。

子供の頃から今までずっと。

 

お兄ちゃんは怪我も吸った血もすぐに治るから死なないけど、本当なら何百回死んでいるかわからない。

それだけの量の血を私は飲んできた。

 

私の中の血が全部お兄ちゃんの血に置き換わっても不思議ではないほどの量。

 

お兄ちゃんになれた、そう心から思えた時から個性が変化した。

 

血を飲まなくてもお兄ちゃんになれる、見かけは私だけど確かになっているんだ。

 

その証拠に私の中にさっきまでなかった力が流れ出すのを感じた。

 

「ロボットさん、壊すね」

 

脚に力を込めればさっきまでとは明らかに違う速度が出る。

その速度のまま蹴りを入れればロボットは何の抵抗もなく吹き飛んでいった。

 

「あは!!」

 

力が流れる度にお兄ちゃんと一体になれる感じがして気分が高揚する。

お兄ちゃんはこの力を呪力って言ってた。

 

私がお兄ちゃんになった時だけ生まれる力。

ちゃんと使えるようになるまで時間がかかっちゃった、お兄ちゃん教えるの下手だから。

 

でもギリギリ間に合った。

 

「ロボットは血が出ないからあまり興味ないです。なのでさっさと終わらせます」

 

この力は私の気分に合わせるように力が変わる。

私が高揚したり、怒ったりすると呪力がたくさん出て私の身体を強化してくれる。

 

けれどその分呪力をたくさん使うから、すぐにガス欠になっちゃう。

 

試験がロボットでよかった、もし人が相手だったらどうなっていたかわからないから。

 

 

 

 

 

「・・・・今頃ヒミコは試験中か」

 

頑張っているであろう妹のことを考える。

ヒミコが身に着けた個性の力。

 

妹は個性で俺へとなった場合にのみ呪力を宿すことができるようになった。

 

その理由について考える。

 

きっかけは俺の血を飲んだこと、そして俺の術式も関係しているだろう。

 

俺の術式は自身の血を操る関係上、()()()()()()()()

そんな呪力を込められた俺の血をヒミコは飲み続けた。

 

悠仁は宿儺の指を食べたことで呪力を身体に宿した、さらに呪物状態の他の弟たちを食べ一体になったことで赤血操術にも目覚めさらに力を得た。

 

呪力を宿したものを身体に取り込み、適合することで呪力を得ることができるのは弟が証明してくれている。

 

この時代の人間には個性因子というものが身体にありそれが個性を使用可能にしている。

 

俺の身体にもそれは流れ、そして()()()()()()()()()()()()()()

 

俺の個性である呪力を血液に変える。それが適合していることへの証明。

 

そして俺とヒミコの血が繋がっていることも関係しているのだろう。

 

呪力の入った俺の血がヒミコの血と拒絶することなく混ざり合い、彼女の個性因子が呪力に適合した。

 

そう考えれば妹が呪力を使えるようになった理由も納得がいく。

今のところ術式は使えないが、もしかしたら使えるようになる日も来るかもしれない。

 

一つ言えることは、今の妹は試験を突破するだけの力があるということ。

 

「ヒミコ、お兄ちゃんが応援しているからな」

 

本当は直接この目で見て応援したかった。

だが、それは雄英教師たちに止められてしまった。

 

「脹相、ずっとソワソワしてるじゃん!」

 

「当たり前だ!妹が今まさに頑張っているんだぞ!!」

 

俺の様子を見た通形が笑いながらそう言ってくるので叫ぶ。

今すぐ妹のところに駆け出したいのを必死に抑えているんだ、ソワソワくらいするに決まっている。

 

「いやーついに脹相の妹ちゃんと会えるのかー。脹相は絶対会わせてくれなかったもんね」

 

「お前はふざけるから会わせたくないんだ」

 

妹の前で全裸にでもなってみろ、超新星を500発は受けてもらうことになるぞ。

 

「ブラド先生なんて今から警戒してるよ。ブラコンでもなんでも来い、どうせ俺が担任になるんだって」

 

「ヒミコは俺と違って優等生だ、勉強もできるからな」

 

そんな話をしていると携帯から着信音が鳴る。

一瞬で携帯を開き確認すればヒミコからのメッセージだった。

 

どうやら実技試験も上手くいったらしい。

 

「行ってくる」

 

「え、どこに?」

 

俺が椅子から立ち上がると通形が首を傾げてくる。

そんなもの妹の元に決まっている。

 

受験を無事終えた妹を褒めるのもお兄ちゃんの大事な役割だ。

 

「みんな!フォーメーションB!!」

 

俺が教室を出ていこうとした時、通形がいきなり訳の分からないことを叫ぶ。

 

だが次の瞬間にはクラスにいた全員が一斉に教室の扉の前、そして俺を囲むように移動し始める。

 

まるで俺を教室から出さないようにするために。

 

「ブラド先生から脹相は確実に試験の邪魔をするから教室から出すなって言われてるんだよね!これはそのために考えた陣形さ!!」

 

「・・・・もう試験は終わった。だったら俺が出て行っても別にいいだろう」

 

「いや、せっかくみんなで考えた作戦だし実行したいじゃん」

 

「・・・・」

 

俺が無言で目を細めるとクラスの連中は汗を流しながら一歩下がる。

だが通形だけは表情を笑みから変えず俺を止める気のようだ。

 

わかった、妹へ会いに行く邪魔をするなら容赦はしない。

 

「水部隊!ファイヤー!!水だけど!!」

 

通形の掛け声で水関係の個性を持つクラスの連中が一斉に俺に向かって水を飛ばしてくる。

 

もう一年近く一緒にいるからな、弱点はバレている。

だがそれは以前の話だ。

 

「それはもう対策済みだ」

 

飛んできた水を体外に出した血で弾く。

周囲を見れば誰かの個性で作り出した空気膜のようなもので机や椅子を守っていた。

 

以前に悠仁と戦った時はなぜ体外での赤血操術が使えなくなったのか理解できなかった。

 

今は違う、小難しい話をどうにか理解し対策も出来るようになった。

ようは血液中の赤血球の内部に水が入り、耐えきれず破裂してしまう。

 

理屈がわかれば後は今までの応用だ。

 

血液の凝固反応を完全には行わず途中で止め、水に溶けない状態を作り出す。

多少神経を削るが、ブラドキングの手助けもあってなんとかものにした。

 

ブラドキングのように完全に凝固させるのは俺の場合は血栓症のリスクがある。

 

先生にはそのリスクはないが俺と先生では似た力でも扱い方が違うのだろう。

 

「だったら直接止めるまでさ!!」

 

そう言って通形とクラスの連中が一斉に飛び掛かってくる。

飛び掛かってくる奴らを見ながら俺は内心でため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「では!被身子の雄英合格を祝って!かんぱーい!!」

 

「「かんぱーい!!」」

 

香ちゃんの言葉に合わせて私達はグラスを掲げる。

場所は学生御用達の飲食店、学校終わりに私達はそこに集まっていた。

 

「いやでも本当に合格しちゃうんだもん、すごいね被身子」

 

「二人が協力してくれたおかげです」

 

私がそう言えば二人は嬉しそうに笑う。

そして私が頑張った成果だと頭を撫でてくれた。

 

「えへへ」

 

「兄妹揃って雄英かー両親も鼻高々なんじゃない?」

 

「はい、お母さんもお父さんも嬉しそうでした」

 

合格祝いにかぁいいけど高くて買えなかった服を何着も買ってくれたしおっきなケーキも買ってくれた。

お母さんもお父さんも私が嘘の自分を演じてから優しくなった。

 

優しい、それは嬉しいけどどうしても複雑な気持ちになってしまう。

 

「もうすぐ卒業かー。高校からは私達バラバラだね」

 

「だね」

 

「・・・・ですね」

 

香ちゃんと恵ちゃんもそれぞれ違う高校に行く。

二人とは一年の時からずっと一緒だからすごく寂しい気持ちでいっぱいになる。

 

香ちゃんと恵ちゃんがいたからお兄ちゃんのいない中学校も寂しくなかった。

私がそう言えば二人は苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、私らが仲良くなったきっかけってお兄ちゃんだよね」

 

「だねー、最初の頃のお兄ちゃんってかなり暴走してたから被身子もみんなに距離置かれてたけど、逆に私らは興味が出たって感じだった」

 

「あはは」

 

小学校と違って中学になるとみんな大人に変わってくるから、先に入学したお兄ちゃんがすごい警戒してた。

私が入学した頃には中学で騒いでいた不良みたいな人達をみんな倒して怯えられてたし。

 

そのおかげで二人と友達になれたんだからお兄ちゃんには感謝しないといけない。

 

「もうすぐ卒業だけど、やり残したことはない?」

 

「・・・・やり残したこと」

 

そう言われて思うことはいっぱいある。

その中で一番心に残っていることは。

 

「・・・・」

 

こっそりと二人に視線を送る。

 

心残り、それは二人に本当の私を伝えること。

 

中学三年間ずっと一緒だったお友達。

二人のことが好き、斎藤くんや他の人達よりも、一番好き。

 

だから、二人には本当の私を知ってほしい。

 

血が好きで、吸いたくて、好きな人になりたくなる私を。

 

・・・・・知ってほしい。けど怖い。

 

血をちょうだいって言ったら何て言われるかな。

傷だらけの姿をかぁいいって言ったらどう思われるかな。

 

二人になりたいって言ったらどんな顔されるかな。

 

・・・・それを知るのが、怖い。

 

「・・・・」

 

記憶にあるお父さんとお母さんの表情が蘇る。

まるで化け物を見るみたいな、あの表情と視線が頭から離れない。

 

怖くて聞けない。

けど、二人ならもしかしたらって期待してる気持ちもある。

 

「やり残したことあります。けど、今はまだできません」

 

「へーなになに?」

 

「・・・・それは、まだ秘密です」

 

勇気がないから。

 

嫌われたくないから、かぁいくないって思われたくないから。

 

けど、卒業までに二人に伝えたい。

 

そして、本当のお友達になりたい。

 

二人なら、きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

私、なにしてたんだっけ?

 

たしか、卒業式がおわって、香ちゃんと恵ちゃんと一緒に写真を撮って、それから。

 

あ、そうだ、二人に本当の私を知ってもらおうと思って。

 

ドキドキしながら二人に教室に来てくれるように言って。

 

私達以外誰もいない教室で震えながら二人に向かって、本当の私を伝えようとして。

 

 

それから・・・・

 

どうなったんだっけ。

 

ボーっとした頭、視界も少しぼやけて見えにくい。

 

ぼやける視界で周囲を見る。

 

ここは教室だ。香ちゃんと恵ちゃんは?

 

目を左右に振りながら、ふと自分の身体に視線を向ける。

 

――――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

・・・・きれい。

 

服も、手も真っ赤でかぁいい。

 

けど、なんで血が出てるんだろう。

 

自分の身体についた血に高揚していると、私の手が何かを持っていることに気が付いた。

 

カッター、あれ?なんで私こんなもの。

 

だんだんと視界のぼやけがとれてクリアになっていく。

そして元に戻った視界で前を向いた瞬間

 

「――――あ」

 

私の口から言葉にもならない小さな声が漏れた。

その光景を見てぼんやりとしていた頭も急速に目覚めていく。

 

静かな教室、その床に香ちゃんと恵ちゃんが倒れていた。

 

――――その身体から真っ赤な血を流して。

 

「か、香ちゃん?恵ちゃん?」

 

それを認識した途端、私の身体は震えだす。

 

なんで、二人が倒れてるの?

私は本当の自分を知ってもらおうと、緊張しながら伝えようとして、それで。

 

・・・・なんで、そこからの記憶がないの?

 

『かぁいいねぇ、かぁいいねぇ』

 

「・・・・え?」

 

横から声が響く。

 

その声に反応して横を向けば、そこには私がいた。

 

『香ちゃんと恵ちゃん、二人とも真っ赤な血が流れてかぁいいねぇ』

 

頬を高揚させ二人を見る私、その顔には笑顔が張り付いていた。

なんで、私がもう一人いるの?

 

固まる私をよそにもう一人の自分は彼女たちに近づく。

 

『もっと傷が増えたら、もっとかぁいくなるよ』

 

そう言って二人に近づく私の手にはカッターが握られている。

それに気づいた私は咄嗟に口を開いた。

 

「だ、だめ!!」

 

『どうして?』

 

私の声にもう一人の自分が振り返る。

本当にわからないように、首を傾げながら。

 

「だ、だって」

 

『もっと二人のかぁいい姿を見たくないの?もっと二人の血を見たくないの?』

 

私が次の言葉を言えないでいる間に彼女は私に近づいてくる。

そして本来の笑顔を浮かべながら私をじっと見つめてきた。

 

『二人の血をちゅーちゅーしたいよねぇ、二人になりたいよねぇ、我慢できないよねぇ』

 

「・・・・だめ、我慢しなきゃ、だめ」

 

自分に言い聞かせるようにそう口にし目の前の自分を睨みつける。

それに対しもう一人の自分はさらに笑顔を深めた。

 

『もう無理だよ。二人のことが好きだから、好きになっていけばいくほど我慢できなくなるんだから』

 

もう一人の私が両手を伸ばしてくる。

伸びてくる手を避けようと身体を動かそうとして震えて動けないことに気が付いた。

 

そうしている間に伸びた手は私の顔に触れ、何かを外した。

 

『この仮面があるから辛いんだよ。こんなものはもう、いらない』

 

伸ばされていた手が戻り、彼女の手には仮面が握られていた。

 

笑顔のマークが彫られた仮面を。

 

『やっぱり、笑ってた。()()()()

 

もう一人の自分が私の顔を見て笑う。

その外された仮面を見て、私の頭が真っ白になる。

 

「っ、ぁ、はぁ!」

 

まるで頭の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような感覚に襲われる。

理性と本能が解けて混ざって頭が回らない。

 

『ね、ちゅーちゅーしよ』

 

もう一人の自分が私の手を握り二人の元に引っ張っていく。

それに抵抗することが出来ず、ゆっくりと倒れる二人に近づく。

 

やがて香ちゃんと恵ちゃんの目の前につき、膝をついた。

 

「っっ、はぁ、はぁ」

 

二人から流れてる血と香りで脳が焼き切れそうになる。

香ちゃんと恵ちゃんの血を吸いたい、二人になりたい。

 

頭の中がそれだけでいっぱいになっていく。

 

っ、でも、それは。

 

お兄ちゃんの姿が頭に浮かぶ。

 

ここでしちゃったら、もう、戻れない。

 

「・・・・わ、たし、は」

 

ドロドロになっていく頭の中で、私は――――

 

 

 

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