ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、追加任務

(……さて。情報は得たし、さっさとナザリックに帰還してこの面倒な状況からおさらばしたいんだが)

 

俺は、未だに俺の右腕にギュッと抱きつき、感動の余韻に浸っているラキュースを見下ろしながら、どうやってこの『蒼の薔薇』から自然に逃げ出そうかと思考を巡らせていた。

 

だがその前に、アズスが言い残した情報について確認しておく必要がある。

 

「……なぁ。さっきアイツが言ってた『リグリッド』って誰だ?」

 

俺が尋ねると、イビルアイが仮面を被り直しながら答えた。

 

「……私たちの前の、『蒼の薔薇』のリーダーだ。十三英雄の一人でもある婆さんだよ」

 

十三英雄。またとんでもないビッグネームが出てきたな。

 

「会えるのか?」

 

「無理だ。いつも世界中をブラブラと旅しているからな。連絡も、向こうの気まぐれでしか来ない」

 

「……そうか、わかった」

 

向こうからの接触待ちか。こちらから探すのは骨が折れそうだな。

俺は小さく息を吐き、腕にくっついているラキュースの両肩を掴み、少し強引に、だが傷つけないようにゆっくりと体を引き離した。

 

「ハチ……?」

 

「お前らは、この後どうするんだ」

 

俺が真っ直ぐに問うと、ラキュースは少しだけ悩む素振りを見せた後、ハッと顔を上げ、悲壮な、しかし強固な決意を込めて宣言した。

 

「私たちは王国に残って、魔導王と戦うわ!」

 

(……だろうな)

 

俺は内心で頭を抱えた。この生真面目なリーダーなら絶対にそう言うと思っていた。

 

俺は頭の中で、現在の情報地図を高速で整理する。

今後、ナザリックにとって重要な情報を持っているのは『アズス』『リグリッド』そして謎の『白いドラゴン』の三点だ。

 

もしここで蒼の薔薇が全滅した場合、どうなるか。

姪を殺されたアズスは確実に俺(や魔導国)を恨み、信用は地に落ちる。今後接触できたとしても、最初から殺し合いになって情報収集どころではない。

リグリッドについても、顔も居場所も分からないが、もし蒼の薔薇が生き延びていれば、かつての仲間を心配して彼女の方から会いに来る可能性が高い。

白いドラゴンに至っては手がかりゼロだ。アズスかリグリッドを頼るしかない。

 

結論。

 

『今ここで、蒼の薔薇に死なれると超絶困る』。

 

だが、ラキュースの意志は固い。正面から説得しても絶対にテコでも動かないだろう。

俺は少し考えた後、ラキュースの後ろにいる他のメンバー――イビルアイ、ガガーラン、ティア、ティナの顔を順番に見つめ、こっそりと《腐った目》を発動した。

 

(……なるほどね)

 

パッシブスキルが読み取った彼女たちの『隠された心理と欺瞞』。

どうやらあの四人は、ラキュースの意思に賛同するフリをして、何とか隙を見てラキュースに《魅了(チャーム・パーソン)》を掛け、強制的に転移魔法で王国から逃げ出そうと企んでいるらしい。

 

(俺が手を下すまでもないか……いや、手伝ってやった方が確実だな)

 

俺は深いため息を吐いた後、ラキュースに静かに近づいた。

 

「ハチ……? 私、間違ってないわよね。貴方なら、分かって……」

 

俺は彼女の言葉を遮るように、ジッとその瞳を見つめた後、俺の方から彼女の体を強く抱きしめた。

 

「え……ハチ……!」

 

ラキュースが驚きに息を呑み、そして俺の背中にそっと腕を回して、強く抱きつき返してきた。彼女の体温と、花のようないい匂いが鼻をくすぐる。

 

数秒の沈黙。

俺は、ラキュースの耳元に顔を寄せ、誰にも聞こえない声で囁いた。

 

「……ごめんな」

 

「え……?」

 

ラキュースが疑問の声を漏らした瞬間。俺は、彼女の意識を刈り取るのに最適な首筋の急所へ、正確無比な手刀を振り下ろした。

 

トンッ、と。

 

「あ……」

 

ラキュースの体がビクンと跳ね、そのまま糸が切れたように全身の力が抜け、俺の胸の中へと崩れ落ちた。

 

「なっ!? お前、いったい何を……!」

 

驚くイビルアイを制し、俺は気絶して寄りかかっているラキュースをひょいと抱え上げ、ガガーランの太い腕の中へと預けた。

 

「イビルアイ。転移できるんだろ。こいつを連れて、とっとと逃がしてやってくれ」

 

俺がそう言うと、イビルアイはハッとして、すぐに俺の意図を察した。

 

「……お前、私たちの作戦に気づいていたのか? まぁいい、助かった。……お前はどうするんだ?」

 

「俺は、まだここでやる事があるからな」

 

ナザリックへの帰還と、残業(事後報告)だ。

 

俺はインベントリを開き、ティアとティナに向かって、黒く鈍い光を放つ最上級のクナイを一本ずつ手渡した。

 

「えっ……これ……!」

 

「すごい……。ただのクナイじゃないわ。恐ろしいほどの切れ味と魔力を感じる……」

 

双子が、その武器の只者ではない価値に気づき、息を呑む。

 

(当然だ。それは俺の忍術で『マーキング(追跡用の印)』を施してある特注品だからな。どこに逃げようが、俺にはお前たちの居場所がいつでも分かる)

 

「良いんですか?」

 

戸惑う双子に、俺は腰の忍刀をトントンと叩いてみせた。

 

「それで、そいつ(ラキュース)を守ってやれ。流石に俺のメインウェポンは渡せないけど、それでも充分役に立つハズだぜ」

 

「はい! 任せてください、先生!」

 

ティアとティナが、力強く頷いた。よし、これで発信機の取り付けは完了だ。

 

俺は再びイビルアイに向き直った。

 

「ちなみに、どこに転移するんだ? 参考までに聞いといてやるよ」

 

イビルアイは少し警戒するように沈黙したが、やがて深いため息を吐いて口を開いた。

 

「……南東にある、かなり昔に滅んだ国だ。そこへ転移する」

 

「それってどこだよ」

 

「……インベリアだ。後は自分で調べるんだな。誰にも言うなよ」

 

彼女は忌々しげに、だが確かに一つの地名を俺に預けた。

 

俺は死んだ魚の目を細め、ニヤリと自嘲気味に笑った。

 

「安心しろ。そもそも、俺にはそんな秘密を喋る相手(友達)なんていねぇよ」

 

イビルアイは呆れたようにフッと笑った。

 

「……自分で言ってて、恥ずかしくないのか、貴様は」

 

「事実だからな。……俺はそろそろ行く。じゃあな、お前ら。また会おうぜ」

 

俺は背を向け、片手をヒラヒラと振りながら、蒼の薔薇の面々と別れた。背後で、転移魔法の光が弾ける気配がした。

 

誰もいなくなった広場の隅で、俺は《伝言(メッセージ)》を発動し、アインズ様へと通信を繋いだ。

 

『――アインズ様。八幡です。標的との接触、および交戦による性能評価を完了しました』

 

『おお、八幡か! 無事だったか。ご苦労だったな。して、結果は?』

 

『はい。パワードスーツの中身は、王国の冒険者アズス・アインドラでした。機体のスピードは相当なもので、複数の魔法をストック・連射する機能も確認しました。しかし、鎧自体の装甲はさほど強固ではなく、守護者の方々なら容易に粉砕できる脆さです』

 

『なるほど……。攻撃力と機動力に特化している分、防御を犠牲にしているのか。貴重な情報だ』

 

『それと、最も重要な事ですが……アズスはあのパワードスーツを、どこかの「白いドラゴン」から借りたと言っていました。背後に竜王(ドラゴンロード)クラスが絡んでいる可能性が高いです』

 

通信の向こうで、アインズ様が息を呑む気配がした。

 

『白い、ドラゴン……。やはり、プレイヤーの遺産を管理している厄介な存在がいるという事か。よくやったぞ、八幡! これは極めて重大な情報だ!』

 

『恐縮です。……それで、俺はこの後、どう動けばよろしいでしょうか?』

 

少しの沈黙の後、アインズ様が今後の作戦を告げた。

 

『実は、そのパワードスーツを釣り出すため、アルベドに囮として前線に出てもらっている。アルベドには、適当に時間を稼いだ後、奴をわざと逃がすように命じてある』

 

(……なるほど。流石はアインズ様、二段、三段構えの罠を張っていたか)

 

『八幡。お前にはそのまま潜伏を継続し、アルベドから逃げ延びたアズスを「追跡」してほしい。奴がどこへ逃げ込み、誰と接触するのか。……その白いドラゴンへの道標となるかもしれない』

 

『承知いたしました。引き続き、影から監視を継続します』

 

通信を切り、俺は王都の空を見上げた。

どうやら、俺の有給明けの残業(ブラック労働)は、まだまだ終わる気配がないらしい。

 

俺は深くため息を吐き、再び《隠密》と《不可視化》を重ね掛けして、王都の影の中へと溶け込んでいった。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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