ナザリック地下大墳墓、最下層――玉座の間。
重厚な空気が満ちる中、俺はアインズ様の前に跪き、今回の遠征で得た情報をすべて報告した。
アズス・アインドラが纏っていたパワードスーツの性能。その背後に潜む、世界最強の竜王「ツアー」ことリク・アガネイア。そして、ワールドアイテムに匹敵するという「始原魔法」の存在。
「……実に見事だ、八幡。これほど短期間に、世界の根幹に関わる情報を持ち帰るとはな」
玉座に座る絶対の主から賜った、心からの労いと言葉。
周囲の守護者たちの視線も、以前のような疑念ではなく、確かな実力を認めるものへと変わっていた。
報告を終え、ようやく解放された俺は、ふらつく足取りで自分の居場所――第九階層の個室へと辿り着いた。
扉に鍵をかける気力すら残っていない。
(……あー、疲れた。情報の整理は明日でいい。今はもう、一歩も動きたくない)
精神的な疲労が限界だった。俺は装備を一つずつ剥ぎ取り、適当に床へ放り出した。
最後には下着(パンイチ)一丁という、ナザリックの副官としてはあまりに締まらない姿になったが、ここには俺一人だ。誰に見られるわけでもない。
俺はそのまま、吸い込まれるようにベッドへとダイブした。
最高級の羽毛の感触が全身を包み込む。意識は一瞬で闇へと沈んでいった。
――メイドのフォア視点
その日、一般メイドの一人であるフォアは非番だった。
明日は至高の御方、アインズ様の当番を控えている。そんな彼女に、メイド長のペストーニャが優しく声をかけてきた。
「フォア。八幡様が戻られたようですよ。以前いただいたお土産のお返しに、温かいお茶とお菓子でも持っていってはどうですか、ワン」
ペストーニャの気の利いた提案に、フォアは内心で「ナイス、メイド長!」と快哉を叫んだ。
厨房から八幡様が好まれている「菊芋桑茶」と、甘さ控えめなお茶菓子を用意し、トレイを手に第九階層へと急ぐ。
八幡様の部屋の前で立ち止まり、手鏡で自分の髪型と服装に乱れがないか念入りにチェックする。
(よし……変じゃないわね)
ドキドキと高鳴る鼓動を抑えながら、そっとドアをノックした。
「……八幡様? フォアです。お差し入れを持って参りました」
返事がない。もう一度ノックしても、室内は静まり返ったままだ。
(あれ? お留守かしら……。でも、お戻りになったとは聞いたし……もしや、お疲れで倒れていらしたり!?)
心配が募り、フォアは意を決してドアノブに手をかけた。鍵はかかっておらず、扉は静かに開いた。
室内はカーテンが引かれ、薄暗い。
だが、その奥から規則正しい、安らかな寝息が聞こえてきた。
(……お休み中なのね)
フォアは音を立てないように机の上にお盆を置くと、そのまま部屋を出よう……として、止まった。
今、この部屋には自分と八幡様しかいない。
一度火がついた好奇心と欲求は、もはや抑えきれなかった。
「……寝顔……少しだけなら……」
忍び足でベッドに近づく。目が薄暗さに慣れてくると、横たわる彼の姿がはっきりと浮かび上がってきた。
いつもは「死んだ魚の目」などと揶揄される八幡だが、目を閉じているその顔立ちは、驚くほど整っていて格好いい。
(……ああ、やっぱり素敵。起きてる時のあのひねくれた目も好きだけど、寝顔はこんなに優しそう……)
うっとりと見惚れていたフォアだったが、視線を下へ向けて、息を呑んだ。
八幡はほぼ裸だった。引き締まった胸板、無駄な脂肪のない腹筋。実戦で鍛え上げられたその肉体が、惜しげもなく晒されている。
(……っ! ほぼ裸、だわ……!)
フォアの顔が爆発しそうなほど赤くなる。だが、視線は釘付けになった。
欲望に抗えず、彼女の手が震えながら伸びる。
「……ほんの少しだけ……」
指先が八幡の熱を帯びた胸板に触れる。硬く、それでいて弾力のある筋肉の感触。
鼻をくすぐる、彼独特の男らしい匂い。
フォアはクラクラと目眩を感じた。一度触れてしまえば、もう歯止めが効かない。
サワサワと腹筋をなぞり、ついには我慢できずにその逞しい胸板に自分の顔を埋めてみた。
トクン、トクン、と八幡の心臓の鼓動が、自分の頬に伝わってくる。
「……はぁ……八幡様……」
フォアは幸せの絶頂にいた。そのまま、吸い寄せられるように彼の隣に潜り込み、添い寝の形をとる。
八幡は深い眠りの中にいるのか、全く起きる気配がない。
フォアの心臓はバックバクだ。ついに、視線が彼の唇へと吸い寄せられた。
(今なら……寝ている今なら、キスができるかも……!)
荒くなる息。顔を近づけ、八幡の吐息が自分の唇にかかる距離まで迫った、その時だった。
「ん……」
八幡が寝返りを打った。
それと同時に、まるで抱き枕でも探り当てるかのように、無意識の腕がフォアの体をガシッと抱き寄せた。
「!?!?!?」
フォアは心の中で断末魔の叫びを上げた。
至近距離で抱きしめられる八幡の肉体。彼の腕の中。気絶寸前、いや、魂が口から出かかっているが、根性で意識を繋ぎ止める。
(死ぬ……私、今日死ぬのかしら……! でも、最高……最高だわ……!)
八幡の腕の中でその温もりを堪能しているうちに、フォアもまた、極上の幸福感と緊張からの反動で、深い眠りへと落ちていった。
――八幡視点
「……ん」
どれくらい眠っただろうか。
久々の戦闘の後だったせいか、泥のように眠ってしまった感覚がある。
だが、目を開けるより先に、微かな「違和感」を感じた。
まず、部屋の中に微かに甘い匂いが漂っている。
それに、なんだか体が妙に温かいというか、ついさっきまで誰かが隣にいたような……。
俺はゆっくりと上体を起こし、周囲を見回した。
ベッドには俺一人だ。
だが、机の上を見ると、お盆に乗った温かいお茶とお菓子が置かれている。
(……誰か入ったな。まぁ、鍵をかけずに寝た俺が悪いんだけどさ。……でも、この匂い、なんだ……?)
首を傾げながらも、俺はとりあえずパンイチ姿から着替えを済ませた。
すると、タイミングを見計らったようにドアがノックされた。
「八幡様。お目覚めでしょうか、ワン」
ペストーニャだった。彼女は扉越しに「アインズ様がお呼び出しです」と告げてきた。
(今度はなんだ? まだ報告書も書いてないぞ)
俺が溜息をつきながら部屋を出ると、ペストーニャが俺の顔をジッと見つめ、どこか意味深な笑みを浮かべた。
「八幡様。昨夜は随分と『お楽しみ』でしたね。あ、ワン」
「…………は?」
某有名RPGの宿屋の主人のようなセリフを吐かれ、俺は困惑の極致に立たされた。
お楽しみ? 寝てただけだぞ?
「いや、何の話……」
「さあ、お急ぎください。アインズ様がお待ちですよ、ワン」
答えをはぐらかされ、俺は釈然としないまま、アインズ様の執務室へと足を向けた。
挿絵のリクエストです。
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おまかせ
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八幡+シャルティア
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八幡+アルベド
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八幡+デミウルゴス
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八幡+コキュートス
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八幡+アウラ
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八幡+マーレ
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八幡+アインズ様
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八幡+メイド達