ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

121 / 121
ぼっち、新人を迎えにいく 1

「……あー、クソ。俺がハンコを押した初回の任務で行方不明とか、冗談だろ」

 

夜の帳が下り始めた空を、高速移動で駆け抜けながら、俺は盛大に悪態をついていた。

俺はただの臨時教官であって、救助隊ではない。本来なら冒険者組合(ギルド)が捜索隊を編成して明日の朝に出発するのが筋だ。

俺には明日、アインズ様から命じられた別の任務(遠征の準備)も控えている。

そもそも、あの三人組が帰還予定時刻をちゃんと守っていれば、こんなことにはなっていないのだ。

 

「新人教育ってのは、アフターサービス(命の保証)まで含まれてるのかよ……。マジでブラックすぎるだろ」

 

愚痴は止まらない。だが、俺の移動速度は一切緩まなかった。

出がけに見た、地面に額を擦りつけて涙を流していたエルフの親父さんの姿が、どうしても頭から離れなかったからだ。

 

南東の森へ降り立つと、入り口付近は一見何の異常もないように見えた。

俺は《千里眼》に《腐った目》、さらに《弱点看破》をパッシブで起動させ、暗殺者としての嗅覚を全開にして痕跡を探る。

 

最初に見つけたのは、茂みに落ちていた薬草籠だった。

その先には、数体のゴブリンの死体が転がっている。俺はしゃがみ込み、死体の傷口を調べた。

ゼクスの剣による強烈な斬撃と、アリアの魔法による火傷の痕。……だが、それに混じって、人間用の小型弩(クロスボウ)で撃たれた跡が残っていた。

 

周囲の地面を見る。三人とは違う、無数の足跡。数は十人以上。

革靴や農民の草鞋ではない。野外活動や戦闘に慣れた者が履く、軍靴に近いものだ。

さらに奥へ進むと、地面に重いものを引きずった跡と、対人用の捕縛罠が作動・解除された形跡が残っていた。

 

「……ゴブリンにやられたわけじゃないな。誰かと接触して、そのまま森の奥に連れて行かれたか」

 

最悪の事態が脳裏をよぎるが、ふと、木の幹に刻まれた『不自然な小さな傷』を発見した。

それは一定の間隔で続き、森の奥へと進行方向を示している。斥候(スカウト)の訓練で教えた、ミーシャの目印だ。

 

「……最低限の仕事はしてるらしいな」

 

三人が即座に殺されたわけではないと判断し、俺は目印を追って影の中へと沈み込んだ。

 

 

 

――ゼクス視点。

 

数時間前。俺たちの初任務は、信じられないくらい順調だった。

 

「ゼクス君、右の茂みに罠があります。避けてください」

 

「おおっ、サンキューミーシャ! アリア、援護頼む!」

 

「言われなくても分かってるわよ! 《火球(ファイアボール)》!」

 

ミーシャが足跡や罠を事前に発見し、俺が前衛としてゴブリンを蹴散らし、アリアが的確な魔法で援護する。初めてのパーティー戦にしては、完璧すぎる連携だった。

予定されたゴブリン討伐を終え、薬草も十分に採取した。本来なら、このままエ・ランテルへ帰還すれば「依頼成功」だった。

 

ところが。

 

ガサガサッ! と森の奥から、傷ついた一体のゴブリンが飛び出してきた。

その背中には、人間の放った弩の矢が深々と刺さっていた。さらに奥から、何かが争うような音と、人間らしき呻き声が聞こえる。

 

アリアが即座に杖を構え、顔を引き締めた。

 

「依頼にはなかったわ。……組合に戻って報告した方がいいんじゃない?」

 

「私も、そう思います。森の奥には、複数の人間がいる気配がします」

 

ミーシャも同意する。新人三人だけで確かめに行くべきではない、正しい判断だ。

 

しかし、俺の頭には「誰かが襲われているかもしれない」という焦りしかなかった。

 

「今戻ったら、間に合わないかもしれないだろ!」

 

「ちょっと、ゼクス!」

 

俺は二人の制止を振り切り、音のした方向へ走ってしまった。

アリアは俺を一人で行かせることができず、舌打ちをしながら後を追う。ミーシャも二人を置いて戻るわけにいかず、同行してしまった。

 

この瞬間、俺たちは「依頼内容」を勝手に変更してしまっていたのだ。

 

森の奥にいたのは、魔物などではなかった。

薄汚れた武装をした人間の集団――旧法国系の『奴隷狩り』たちだ。傷ついたゴブリンは、獲物を誘い込むための餌だった。

 

俺が踏み込んだ瞬間、足元の枯れ葉の下で罠が作動した。

 

「危ないっ!」

 

ミーシャが俺を突き飛ばしたことで最初の罠は回避したが、その行動で俺たちの位置が完全に敵に知られてしまった。

 

「ガキどもだ! 囲め!」

 

十人以上の男たちが包囲を開始する。

俺は剣を抜き、数人を斬り伏せたが、敵は連携が取れており前後からじわじわと攻め立ててくる。アリアも魔法で応戦するが、焦りから無駄撃ちが多く、魔力が底を突きかけていた。

 

その時、敵の一人がミーシャの耳を見て叫んだ。

 

「おい、エルフだぞ! 傷つけるな、生け捕りにしろ! 高く売れる!」

 

敵の目的を悟った俺とアリアは、顔を見合わせた。

 

「ミーシャ! 逃げろ!」

 

「ゼクス君!? アリアちゃん!?」

 

俺は肩に矢を受けながらも前に出て、アリアが残りの魔力を振り絞って敵の足止めをする。二人がかりで、ミーシャが森へ逃げ込むための『道』を作った。

 

「早く行きなさい!!」

 

アリアの叫びに、ミーシャは涙を浮かべながら隠密能力を使って森の奥へと消えた。

直後、俺たちは多勢に無勢で押し潰され、地面に押さえつけられてしまった。

 

――ミーシャ視点。

 

私は、追手を撒くことに成功していた。

本来なら、ここで全速力でエ・ランテルへ戻り、助けを呼ぶべきだった。私自身も、それは分かっている。

でも……私を逃がすために捕まった二人を、どうしても置いていけなかった。

 

それに、頭の片隅で別の感情が囁いていた。

 

『私だけ逃げ帰ったら……ハチ様に失望されるかもしれない』

 

私は古い狩猟小屋の周囲の木の上に潜伏し、息を潜めて敵を観察し続けた。

敵の総数は十三人。見張りが四人、建物内に九人。魔法使いが一人。ゼクス君は右肩を負傷し、アリアちゃんは魔力を使い切っているが、二人とも生きている。馬車は二台。彼らの会話から、夜明け前に移動するつもりらしいことも分かった。

 

でも、情報を集めても……それを伝える相手がいない。私一人で突っ込めば、二人が人質にされて終わる。

 

「私が、もっと強かったら……。ハチ様みたいに、一人でも助けられたら……」

 

私は木の陰で、無力な自分を呪いながら、ただ弓を握りしめ続けることしかできなかった。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

自己加速しすぎてスタープラチナ・ザ・ワールド(作者:常谷 優大)(原作:魔法科高校の劣等生)

‐自己加速術式‐▼術者自身の運動速度を向上させ、移動速度や白兵戦の攻撃速度を爆発的に高める魔法である。▼魔法師の中では初歩的な魔法...▼のはずだった。▼西暦2095年、国立魔法大学付属第一校--通称"第一高校"に入学した一人の少年、▼「比企谷八幡」▼彼の使う自己加速魔法は、世界の理さえ覆す。▼「魔法科高校×やはり俺の青春ラブコメは間違っ…


総合評価:1304/評価:7.16/連載:4話/更新日時:2026年07月18日(土) 10:59 小説情報

櫛田の中学に転校した(作者:スクラップドラゴン)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼よう実の世界に転生したオリ主が櫛田の中学に転校する話


総合評価:3525/評価:7.34/連載:20話/更新日時:2026年06月14日(日) 15:33 小説情報

魔法科高校の熱を愛する者(作者:パクチーダンス)(原作:魔法科高校の劣等生)

呪術廻戦の秤金次っぽいオリ主を登場させました。


総合評価:4303/評価:8.28/連載:17話/更新日時:2026年05月22日(金) 20:30 小説情報

【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 (作者:まだら模様)(原作:僕のヒーローアカデミア)

※【全100話・完結済み】+【掲示板形式、強敵との戦闘などの番外編33話】予約投稿済み▼本編、および後日談編、映画編、八年後の未来を含めた全100話、そして番外編の33話分全ての設計図を引き終えました。▼現在、最終話まで予約投稿を設定済みです。▼37話〜44話は、56話〜59話は日常と積み重ねのパートになります。▼この期間の出来事や関係性は、後半の展開・戦闘…


総合評価:2688/評価:7.65/完結:133話/更新日時:2026年06月28日(日) 19:00 小説情報

争いは他所でやってくれ!最後は平穏無事に過ごしたい(作者:大気圏突破)(原作:ハイスクールD×D)

 サービス残業・休日出勤・パワハラで疲弊していたサラリーマンはデスクワーク勤務中に心臓の鼓動が止まり亡くなってしまった。憐れんだ神は第2の人生として彼を『リリカルなのは』の世界に送るつもりだったが書類の手違いで『ハイスクールD×D』の世界に送ってしまった▼ 神は送る直前に間違いに気付き彼に与えた力の他に原作主人公の能力を奪って付与させた。赤龍帝になってしまっ…


総合評価:2024/評価:6.47/連載:83話/更新日時:2026年08月02日(日) 19:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>