ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、新人を迎えにいく 2

「……俺を射るのは後にしてくれ」

 

「ひゃっ!?」

 

狩猟小屋を監視していたミーシャの背後に《隠密》で近づき、肩に触れて声をかけると、彼女は反射的に弓を俺に向けた。

だが、その声の主が俺だと分かると、彼女は極度の緊張から解放され、目からボロボロと涙を溢れさせた。

 

「ハチ、様……! ごめんなさい、私……!」

 

「謝罪も説教も後だ」

 

俺は彼女の言葉を遮り、鋭い声で命じた。

 

「まず報告しろ。敵の人数と、中の状況は?」

 

ミーシャはハッとして涙を拭い、震える声で正確に状況を伝えてきた。

総数十三人。配置。魔法使いの有無。二人の怪我の状況。馬車の数。夜明け前の移動予定。

俺の細かい質問にも、彼女は淀みなく答えた。

 

「……よく見てたな。少なくとも、索敵と情報収集は合格だ」

 

俺がそう言うと、ミーシャは一瞬だけパァッと顔を輝かせた。しかし、俺はすぐに冷水を浴びせる。

 

「評価は帰ってからだ。今は二人を回収する」

 

俺は彼女から得た情報を基に、数秒で作戦を組み立てた。

 

「いいか。俺が見張りを排除した後、お前は建物の裏口から侵入して二人の拘束を解け。絶対に敵と戦うな。二人を解放したら、事前に確認した退路を使って森の外へ移動しろ」

 

「はい……!」

 

「お前の仕事は、敵を倒すことじゃない。二人を連れて、指定した場所まで移動することだ。俺の姿が見えなくても、勝手に動くな。俺の合図を確認してから行動しろ。……分かったなら復唱しろ」

 

ミーシャは真剣な表情になり、俺の指示を最初から最後まで正確に復唱した。

俺が完全に見捨てたわけではないと理解したのだろう、その瞳には強い光が戻っていた。

 

「よし。指示どおりに動け」

 

 

 

――奴隷狩りの見張り視点。

 

「おい、交代はまだかよ……」

 

男が隣の仲間に愚痴をこぼして振り返った瞬間。そこにいるはずの仲間が消えていた。

悲鳴も、足音すらない。地面には、仲間が持っていた弩だけが転がっている。

 

「なっ、なんだ!? おいっ――」

 

別の見張りが小屋の中に異変を知らせようと口を開いた瞬間、背後から音もなく黒い影が伸び、その口を塞ぎ、あっという間に意識を刈り取った。

 

「敵襲だ!」

 

小屋の中にいた魔法使いが杖を構え、探知魔法を詠唱しようとした。

だが、詠唱を始めた瞬間、空を舞った黒い羽根が杖の先端を鋭く切断した。

同時に、室内のランタンの火がフッと消える。

 

完全な闇の中。

気怠げな三白眼だけが、空中に一瞬浮かび上がった。

 

『――営業時間外に騒ぐな。こっちはただでさえ残業中なんだよ』

 

 

 

――八幡視点。

 

俺は無差別に殺さない。抵抗する者は峰打ちや関節技で即座に無力化するが、指揮官格や情報を持っていそうな者はわざと生かして拘束する。逃げて仲間に知らせようとする者も優先的に刈り取った。

 

「ヒィッ……! 化け物……!」

 

次々に仲間が消えていく異常事態に、指揮官らしき男がパニックになり、拘束されていたアリアを立たせてその首元に短剣を突きつけた。

俺は《隠密》を解き、正面の扉からゆっくりと姿を現した。

 

「武器を捨てろ! 近づけば、この女を殺す!」

 

指揮官が叫ぶ。

俺は何も言わず、手にしていた短剣を床へと落とした。カラン、と金属音が響く。

 

「ハハッ! いいぞ、そのまま動く――」

 

指揮官が優位に立ったと確信し、油断した瞬間。

俺の姿は、その場から掻き消えた。

 

床へ落ちた短剣が、月明かりを遮って小さな「影」を作る。俺はその影を経由して《影潜み》を発動し、指揮官の背後へと完全転移した。

 

「え……?」

 

アリアの首から男の刃を弾き飛ばし、腕の骨を折らないように関節だけを外して無力化する。

 

「人質を取るなら、せめて相手の移動手段(スキル)くらい調べておけ」

 

指揮官を床へ叩き伏せ、俺は指で短く合図を出した。

それを確認したミーシャが裏口から音もなく侵入し、ゼクスとアリアの拘束を素早く解く。ミーシャは床に転がる敵に弓を向けたくなる衝動を抑え、俺の命令通りに二人の救出を優先した。

 

「ハチの兄ちゃん……!」

 

拘束から解放されたゼクスが怒りに顔を歪め、床に落ちていた自分の剣を拾い上げて指揮官へ振り下ろそうとした。

 

「邪魔すんな! こいつら、アリアとミーシャを奴隷にしようとしたんだぞ!」

 

ガンッ!

 

俺はゼクスの足を軽く払い、顔面から床へ転倒させた。

 

「だから、その場で殺していいのか?」

 

俺は冷めた目で、痛みに呻くゼクスを見下ろした。

 

「こいつは取引先と、他の拠点の情報を持ってる。ここで怒りに任せて殺せば、残りの仲間は逃げるぞ」

 

ゼクスが言葉に詰まる。

 

「怒った時ほど目的を確認しろ。お前の目的は、こいつを斬ることじゃない。二人を無事に帰すことだったはずだ」

 

ゼクスは剣を強く握りしめたまま、やがてゆっくりと刃を下ろした。

挿絵のリクエストです。

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