ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、新人を迎えにいく 3

狩猟小屋を調べると、案の定、複数の書類と帳簿が見つかった。

エルフの売買記録、旧法国方面への輸送経路、魔導国内に住む亜人の情報、エ・ランテル周辺の監視記録。こいつらは偶然森にいたのではなく、魔導国へ逃げ込んだエルフを組織的に調査していたのだ。

 

(……ミーシャと親父さんの店も、監視対象に入ってるな)

 

さらに、古い記録の一部に俺は目を留めた。

ミーシャの母親と思われる女エルフについて。

 

『夫と幼子を逃がすため追手を引きつける』

『身柄確保後、法国方面へ移送』

 

名前は消えているし、生存している保証もない。

 

「……期待させるには、情報が足りなさすぎるな」

 

俺は記録を回収し、インベントリに放り込んだ。俺一人で秘密裏に動くつもりはない。三人へ「報告」の重要性を教える以上、俺自身も組織(ナザリック)へ正しく報告する。

 

夜明け前。

 

俺は捕縛した奴隷狩りたちをロープで数珠繋ぎにし、新人三人を連れてエ・ランテルへの帰路についた。

ゼクスの肩は応急処置を済ませている。アリアは魔力枯渇による疲労が激しく、ミーシャに支えられながら歩いていた。

 

「勘違いするなよ。まだ依頼は終わってない」

 

俺の言葉に、三人が不思議そうに首を傾げる。

 

「依頼の結果を組合に報告して、初めて終了だ。帰るまでが仕事、報告するまでが依頼だ」

 

城門へ到着すると、俺は門番へ状況を簡潔に説明した。

冒険者組合への先触れと、衛兵による捕虜の引き渡し。そして同時に、ミーシャの親父さんへ「三人とも生存している」という伝言を頼む。

 

三人は、俺が最初に「誰に何を伝えているか」を黙って見ていた。

俺は振り返り、短く告げた。

 

「これが連絡だ。……覚えておけ」

 

冒険者組合のロビーでは、アインザックと治療担当者が待機していた。

三人が治療を受けていると、連絡を受けたミーシャの親父さんが血相を変えて駆け込んできた。

 

「ミーシャ!!」

 

「お父様……! ごめんなさい、ごめんなさい……!」

 

親父さんは娘を強く抱きしめ、ミーシャは父親の胸で泣きじゃくった。親父さんも叱ることなどできず、ただ無事を喜んで涙を流している。

俺はその光景を少し離れた場所から眺めていた。安堵したのは確かだが、そんな甘い顔は見せない。

 

治療と家族への連絡が終わった後、三人は小会議室へ呼ばれた。アインザックも同席している。

俺は回収した帳簿や証拠の品を机へ並べ、深い深いため息を吐いた。

 

「……さて。説教の時間だ」

 

俺は最初に、三人に質問を投げかけた。

 

「お前らが受けた依頼は?」

 

「薬草採取と……ゴブリン残党の定期討伐です」アリアが答える。

 

「人間の武装集団を追跡することは、依頼に含まれていたか?」

 

誰も答えられない。

 

「人間の足跡を発見した時点で、誰か組合へ報告したか?」

 

「予定された行動範囲を外れると、誰かに連絡したか?」

 

「自分たちだけで対処できるか、経験者に相談したか?」

 

すべて、答えは「いいえ」だ。

俺は机を叩いたり、大声を上げたりはしない。ただ、底冷えするような呆れた目で三人を見た。

 

「助けようとしたことを責めてるんじゃない。お前らだけで助けられると、勝手に判断したことを責めてるんだ」

 

ゼクスが唇を噛み、「でも、誰かが襲われてるかもしれなかったんだ!」と反論する。

俺はその気持ちは否定しない。

 

「緊急だった。それは分かる。だが、緊急なら何をしてもいいわけじゃない。お前らは状況も敵の数も知らず、助けを呼ぶ手段まで捨てて、全員で突っ込んだ」

 

三人全員が危険地帯へ入ったため、組合へ情報を届ける者がいなくなった。結果として、何が起きたのか誰にも分からず、救援を出すことすらできなかったのだ。

 

「お前らは、好き勝手に旅してるただの傭兵じゃない。魔導国に認められ、冒険者組合から依頼を受けた『冒険者』だ」

 

三人の行動は、個人だけの問題ではない。

 

「相手がただの盗賊なら、まだ単純な話で済む。だが、もし他国の正規兵だったらどうする? 貴族や商人の私兵だったら? お前らが勝手に殺せば、魔導国が他国から説明を求められることもある」

 

俺は回収した法国系の帳簿を指差した。

 

「実際、こいつらは法国につながる情報を持ってた。お前らが思っていたより、ずっと大きな話だったんだよ。自分で責任を取れない行動を、『現場判断』なんて便利な言葉で誤魔化すな。まして、お前らは昨日今日合格した新人三人組だ」

 

俺は三人を順番に指差した。

 

「全員新人。経験者なし。自分たちが何を知らないのかすら、まだ分かってない」

 

才能があることと、正しい判断ができることは別だ。

 

「能力のない新人なら、最初から逃げる。少し出来る新人が、一番危ない。自分の実力を、実際より少しだけ高く見積もるからな」

 

ゼクスが露骨に視線を落とす。アリアも、自分だけは冷静だったと思っていた己を恥じているようだった。ミーシャは、情報を持ちながら戻らなかった自分の判断を悔やんでいる。

 

「この言葉を教えてやる。『報告』『連絡』『相談』。三つ合わせて、ホウレンソウだ」

 

「ほうれん草……?」

 

ゼクスが間の抜けた顔を上げる。

 

俺は一瞬黙った。

 

「……そっちじゃない。お前の頭の中は畑か」

 

空気が少しだけ緩むが、すぐに真面目な口調へ戻す。

 

「異常を発見したら、まず報告。予定を変更するなら、関係者へ連絡。自分たちで判断できないなら、上の奴に相談。今回であれば、一人が組合へ戻る。残り二人は安全な位置から監視する。それだけでも、今回よりはるかに状況は良くなっていた」

 

俺は三人の顔を見据える。

 

「報告した結果、助けが間に合わないこともある。それでも、自分たちまで捕まって情報を途切れさせるよりはマシだ」

挿絵のリクエストです。

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