ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、旅支度 2

装備と魔獣の候補が固まったところで、俺は地図の上へ、エルフの集落を示す駒を置いた。

 

「次は、こいつらとどう接するかだ。お前らにとっての『軽い威圧』が、相手には『死の宣告』になる。力を見せれば従わせることはできるだろうが、それでできるのは友達じゃない。怯えて命令を聞く奴隷だ」

 

アウラは真面目に受け止めた。

 

「私も、怖がられて終わるのは嫌かな。アインズ様のご命令にも合わないし」

 

マーレも小さく頷く。

 

「お、お話をする前に、全員を蔦で動けなくするのは……」

 

「駄目だ」

 

「まだ最後まで言ってません……」

 

「最後まで聞かなくても駄目だ」

 

アウラが笑う。

 

「友達を作るのに、最初に地面へ縫い付けたら怖がられるでしょ?」

 

「け、怪我はさせないつもりだったんですが……」

 

三人で、現地人と接触した場合の行動基準を整理していく。

 

「攻撃されても反撃するなってこと?」

 

「違う。反撃する必要があるかを考えろってことだ。石を投げてきた相手に、ドラゴンをけしかける必要はないだろ」

 

マーレが恐る恐る尋ねる。

 

「で、では……足だけを地面に埋めるくらいなら?」

 

「加減できるなら、状況次第ではありだ」

 

「分かりました。腰までにします」

 

「何で深くなった?」

 

アウラが笑いながら地図へ注意事項を書き込んでいく。

 

「でも、現地の人が誰かに怯えて話せない場合は、私たちの力を少し見せた方がいいこともあるよね?」

 

アウラの言葉に、俺は少し考えてから頷いた。

 

「その通りだ。力を見せること自体が悪いんじゃない。何のために見せるかが問題なんだ」

 

「強さと判断権は別だからな。特に今回、俺たちが勝手に国の形を変えるようなことをすれば、アインズ様の計画を邪魔する可能性がある。迷ったら、アインズ様へ逐一報告する。……報告、連絡、相談だ」

 

アウラがニヤリと笑った。

 

「エ・ランテルで新人を助けて、長い説教をしたって聞いたよ」

 

「誰だ、ナザリックにまで報告した奴は」

 

「ア、アインズ様も、八幡さんらしいと仰っていました……」

 

「やめろ。上司に説教内容まで共有されるの、地味に恥ずかしいから」

 

 

話が一段落したところで、俺は地図を閉じた。

 

「最後に、最悪の場合の話をしておく」

 

俺が警戒しているのは、現地のエルフや法国兵ではない。プレイヤーや世界級アイテム、シャルティアを精神支配した未知の敵のような、『ナザリックが把握していない強力な存在』だ。

 

「アインズ様にも、お前らにも、本気を出してもらう必要はない。俺たちの目的は敵を倒すことじゃない。情報を持って帰ることだからな」

 

緊急時の配置を説明する。アウラが魔獣を使って攪乱、マーレが進路を制限。アインズ様が同行している場合は二人が守りながら撤退する。

 

「追撃が止まらない場合は、俺が残る」

 

俺は淡々と告げた。

 

「隠密と足止めなら、俺が一番向いてる。最悪、俺が犠牲になっても――お前らが絶対に逃げ切れる時間は作る。それが俺の任務だ」

 

マーレの柔らかな表情が消える。アウラも笑っていない。

アウラは感情的に「嫌だ」と叫ぶのではなく、作戦の欠陥を突いてきた。

 

「それ、作戦じゃないよ。……八幡が帰ってくる手順がない」

 

「隙を見て離脱する」

 

「隙がなかったら?」

 

俺は少しだけ黙り、「その時は、その時だ」と答えた。

 

アウラは即座に切り返す。

 

「それは計画じゃなくて、諦めでしょ。……新人には、勝手に判断するなって言ったんだよね? 八幡が勝手に自分を使い捨てにすることを、アインズ様は許可してるの?」

 

「……してない」

 

「じゃあ命令違反じゃん」

 

痛いところを突かれ、俺は顔をしかめる。

 

「お前、本当に妙なところで頭が回るな」

 

「最初から死ぬことを前提にするのは駄目」

 

マーレも俯きながら口を開いた。

 

「ボ、ボクも……八幡さんを置いて帰るのは嫌です」

 

「好き嫌いで決める話じゃない。アインズ様の安全が最優先だ」

 

「八幡さんを置いていかないと逃げられないなら……逃げなくていい状態にすればいいと思います。敵の周囲を地面ごと沈めて……動けなくします。八幡さんが戻ってくるまで、何度でも沈めます」

 

マーレは、無自覚な残虐性を含んだ柔らかな声で恐ろしいことを言った。

 

俺の案を土台に、アウラが現実的な撤退計画へ修正していく。

 

「八幡は足止め役。でも、捨て駒じゃない。時間になったら必ず離脱する。戻れない時は私が迎えに行く」

 

俺は反対しようとしたが、アウラはいつものからかうような笑顔で言った。

 

「お兄ちゃんなんでしょ? 妹と弟を置いて、勝手にいなくなるのは禁止」

 

「八幡さんなら……ちゃんと戻ってきてくれますよね?」

 

二人の真っ直ぐな視線から逃げるように頭を掻き、俺は諦めたように答えた。

 

「……分かった。お前らとアインズ様が逃げ切る時間は、俺が絶対に作る。そのうえで、俺も必ず後を追う」

 

「約束だよ?」

 

「約束する」

 

俺は、自分も生還することまで含めて約束させられてしまった。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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