緊急時の重い話が終わり、アウラが保存食の一覧を取り上げて空気を戻した。
「じゃあ、全員で生きて帰ってきたら、美味しいものを食べよう」
「死亡フラグみたいな言い方をするな」
マーレも柔らかな表情に戻る。
「そう言うことなら、ボ、ボクは、エルフの国のお料理を食べてみたいです」
「わざわざ現地で食べる意味あるの?」と首を傾げるアウラに、俺は旅の食事の意味を説いた。
「その土地で採れた物を、その土地のやり方で食う。美味いか不味いかだけじゃなく、そこでしか食えない理由を楽しむんだ。自分の知ってる味だけが一番だと思わなくなったら、少しは大人なんじゃないか」
「それが大人なの? じゃあ、珍しい果物があったらアインズ様へのお土産にしようよ」
「毒がないと確認できればな」
「最初の毒味は八幡ね。お兄ちゃんだから」
「その設定、都合がいい時しか使ってないだろ」
最後に俺は釘を刺した。
「現地の料理を食べても、絶対に本人の前でナザリックと比べるなよ」
マーレが真剣にメモを取る。
「美味しくなくても、作った人には感謝する……。それでも食べられないほどだった場合は……料理した人を地面に――」
「沈めない」
「ま、まだ最後まで言ってません……」
マーレが書き上げた「遠征計画書(旅行のしおり)」を確認し、二人が部屋を出ていく。
アウラが扉の前で振り返った。
「じゃあ、おやすみ。出発の日に寝坊したら置いていくからね、お兄ちゃん」
「睡眠不足にした張本人が言う台詞じゃないだろ」
マーレも小さく頭を下げる。
「お、おやすみなさい……八幡お兄ちゃん」
俺は固まり、アウラは腹を抱えて笑って走り去った。
自室に戻り、一人になったベッドで、俺は遠征計画書を見直した。
最後の項目に、マーレの丁寧な字で一文が付け足されている。
『アインズ様、アウラ、マーレ、八幡さん。全員で無事に帰ること!』
その横には、アウラの字で力強く追記されている。
『勝手に残るのは禁止!』
俺はしばらくその二つの文章を見つめ、小さく息を吐いた。
「……分かったよ」
机の端には、エ・ランテルで得たエルフ国の資料と、奴隷狩りから回収した法国関係の記録。
今回の遠征が、穏やかな交流と食べ歩きだけでは終わらない可能性を、俺は理解している。
それでも、計画書を閉じる俺の表情は、少しだけ柔らかくなっていた。
「まあ、全員で帰るのも任務のうちか」
第六階層の偽りの夜空の下。
狂王の待つエルフ国への遠征準備が、静かに整っていくのだった。
挿絵のリクエストです。
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おまかせ
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八幡+シャルティア
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八幡+デミウルゴス
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八幡+アインズ様
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八幡+メイド達