ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、仕事を報告する

自室に戻った俺は、ソファに深く沈み込み、目を閉じた。 だが、休息は訪れない。脳裏に、セバスとツアレの姿が焼き付いて離れないのだ。

 

『守るべきものができたことで、私の忠誠心は、より強固なものとなりました』

『『愛』は、決して弱さではありません。時に、人を超えた力を……与えてくれるものだと、私は信じています』

 

馬鹿馬鹿しい。 あまりにも青臭い、理想論だ。俺が、高校時代に何度も論破し、切り捨ててきた感傷。

『フォーサイト』の最期が、それを証明したはずだ。彼らの絆は、アインズ様の絶対的な力の前に、何の意味もなさなかった。ただ無慈悲に、等しく蹂躙されただけだ。 力こそが全て。それが、この世界で俺が導き出した、唯一の答えのはずだった。

 

なのに、なぜだ。 なぜ、セバスとツアレの姿が、あの『フォーサイト』の四人よりも、遥かに『本物』に見えてしまう?

なぜ、彼らの言葉が、俺の築き上げたはずの冷徹な理屈を、こうも容易く揺さぶる?

 

 

(……分からん)

 

 

この世界に来てから、俺はずっと分かりやすい理不尽の中にいた。 強者が弱者を支配する。単純な法則だ。 だが、セバスの行動は、その法則から逸脱している。彼は、弱者である人間を、リスクを冒してまで守り、その行為を『正義』であり『奉仕』だと言い切った。 ナザリックの利益という観点から見れば、非合理的極まりない。 だが、アインズ様は、それを許している。

 

俺は、自分の思考が、泥沼にはまっていくのを感じていた。

 

 

『本物』とは、一体なんなんだ。 力か? 絆か? それとも、愛か?

 

 

(……考えるだけ、無駄だ)

 

 

俺は、混乱した思考を振り払うように、立ち上がった。 感傷に浸っている暇はない。俺には、やるべきことがある。 『嘆きの谷』での一件を、正式に報告しなければならない。 俺は、アインズ様への謁見を、改めて要請した。

 

再び、玉座の間。 俺は、玉座に座すアインズ様の御前で、事の顛末を、冷静に、そして客観的に報告していた。 『嘆きの谷』の発見、そこに巣食う魔物たちの特性、そして、帝国転覆を企むネクロマンサーの存在と、その撃破。 最後に、証拠として持ち帰った、あの不気味な紋様が刻まれた石片を、アインズ様の前に差し出した。

 

アインズ様は、その石片を、《鑑定(アイテム・アプレイザル)》の魔法だろうか、赤い光で検分すると、興味深げに頷いた。

 

「……うむ。見事な働きだ、八幡。ただのレベル上げに赴き、これほどの情報を持ち帰るとは、褒めて遣わす」

 

その隣に控えていたデミウルゴスが、一歩前に進み出た。

 

「アインズ様。この紋様、そして『主の復活』というキーワード……。我々の計画外に、帝国を狙う勢力が存在するという事実は、看過できませぬな。ですが、同時に、これは好機でもあります」

 

その目は、新たな玩具を見つけた子供のように、愉悦に輝いている。

 

「彼らの計画を逆用し、帝国の支配を、さらに盤石なものとするための、新たな布石とすることも可能かと」

 

「フム……」

 

アインズ様は、顎に手を当て、思案する。 そのやり取りを見ながら、俺は改めて実感していた。 この支配者たちにとって、帝国の陰謀も、邪神の復活も、全ては自分たちの壮大な計画を彩るための、駒の一つに過ぎないのだと。

 

俺の報告は、彼らにとって、新たなゲームの始まりを告げるゴングに過ぎなかった。

 

「……八幡」

 

アインズ様が、再び俺に視線を向けた。

 

「この功績は、大きい。褒賞を授けよう。何か望むものはあるか?」

 

「……恐れながら、アインズ様」

 

俺は、一瞬、逡巡した。 そして、口を開いた。

 

「望むものは、ございません。ただ、今回の任務を通し、己の力不足を痛感いたしました。さらなる研鑽を積むことこそが、アインズ様への、最大の奉仕と心得ます」

 

それは、本心だった。 セバスとツアレの姿を見て、俺の心は揺らいだ。だが、それでも、この世界で生き抜くために『力』が必要だという結論は、揺るがない。 セバスがツアレを守れるのも、彼が強いからだ。 力がなければ、正義も愛も、守ることなどできはしない。 ならば、俺も、力を求める。 それが、俺が『本物』に近づくための、唯一の道なのかもしれない。

 

俺の答えに、アインズ様は、満足げに頷いた。

 

「良かろう。その心意気や、よし。今後も、ナザリックのために、その力を振るうがいい」

「はっ」

 

俺が、玉座の間を辞去しようとした、その時。 それまで黙って控えていたアルベドが、静かに俺の名を呼んだ。

 

「八幡」

 

その声に、俺は足を止める。 彼女は、完璧な微笑みを浮かべ、俺の元へと歩み寄ってきた。

 

「帝国での一連の任務、そして今回の探索、実にご苦労様でした。貴方の働きは、ナザリックにとって、計り知れない価値があります」

 

その言葉は、労いの響きを持ちながらも、どこか、俺の覚悟を試すような色を帯びていた。

 

「つきましては、以前お話しした件……。そろそろ、ゆっくりとお話をする時間を、設けてもよろしいですわね?」

 

アルベドの金色の瞳が、俺の腐った目を、真っ直ぐに射抜く。 逃げ場は、ない。 俺は、セバスとツアレの『本物』に心を揺さぶられ、レベルを上げることで己の道を見出そうとした。 だが、その先で待っていたのは、ナザリックの、より深く、そして、より危険な『闇』への誘いだった。

 

俺は、ゆっくりと、そして、確かな声で答えた。

 

「……ああ。いつでも、いい」

 

その返事を聞いて、アルベドの笑みが、さらに深くなる。 それは、獲物が罠にかかったのを確信した、捕食者の笑みだった。

 

俺の『休暇』は、終わった。 そして、本当の『仕事』が、今、始まろうとしていた。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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