ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、隠し財産を見つける

玉座の間での報告を終え、アルベドとの不穏な約束を取り付けた俺は、心身ともに疲れ果てて自室に戻ってきた。 『嘆きの谷』での死闘、そしてナザリック内部の複雑な人間(?)模様。胃がキリキリと痛むようだ。もっとも、この体はそんな繊細な機能は持ち合わせていないだろうが。

 

(……とにかく、少し休みたい)

 

ソファに身を沈め、改めてこの部屋を見回す。

ここは、元々俺の創造主である「スーラータン」という人物の私室だった場所だ。アインズ様の計らいで俺が使わせてもらっているが、その趣味は随所に残っている。 壁にかけられた美少女アニメのポスター(の、ような絵画)、ガラスケースに飾られた精巧なロボットのフィギュア(の、ようなゴーレムの模型)、そして本棚に並ぶ大量の漫画(の、ような絵物語)。

 

(……俺の創造主、絶対にあっち側の人間だろ)

 

同族嫌悪にも似た感情を覚えながら、俺は本棚を眺めていた。その中で、一冊だけ、明らかに不自然に逆さに差し込まれている本があることに気づく。

ミステリー小説のお約束。隠しスイッチだ。

俺がその本をゆっくりと引き抜くと、案の定、ゴゴゴ…と小さな音を立てて本棚の側面がスライドし、黒鉄製の厳重な隠し金庫が現れた。

 

「……見つけるんじゃなかった」

 

面倒事の匂いしかしない。俺の本能が全力で警告を発している。だが、見てしまった以上、確認しないわけにもいかない。それが俺の性分だった。 ため息をつきながら金庫を開けると、中から禍々しいオーラがどっと溢れ出し、俺は思わず後ずさった。

 

「うわっ……なんだこれ……」

 

金庫の中には、およそこの世のものとは思えない武具やアイテムが、無造作に詰め込まれていた。 血を吸ったかのように赤黒く脈打つ大剣、触れるもの全てを凍てつかせそうな蒼いランス、所有者の精神を蝕みそうな呪われた兜……。そのどれもが、一目でわかるほどのレアアイテム。

俺が恐る恐る一つの篭手に触れ、《鑑定》スキルを発動させてみると、とんでもない情報が表示された。

 

【“絶氷の篭手” (遺物級)】 効果:氷結系魔法の効果を150%増幅。常時冷気ダメージオーラ発生。 ※元所有者:<氷竜王>フレイヴァル

 

(……は? これ、PK(プレイヤーキル)の戦利品じゃねえか!)

 

他のアイテムも次々に鑑定していくと、出るわ出るわ、プレイヤー名やギルドの名前が刻まれた曰く付きのアイテムばかり。中には、ギルドのギルド武器まである。

 

(俺の創造主、とんでもないPK(DQN)だったのか……!?)

 

その事実に、俺は頭を抱えた。こんなもの、どうしろと言うんだ。売るに売れない、使うに使えない、まさに曰く付きの負の遺産。アインズ様に見つかったら、どう説明すればいい?

 

「いやー、俺の創造主がヒャッハーしてたみたいですスミマセン」で済む話じゃないだろう。

 

俺が絶望に打ちひしがれていると、金庫の底に、一枚の羊皮紙が落ちているのに気づいた。 こんな物騒なアイテム群の底にあった紙切れだ。きっとろくなものじゃない。そう思いながらも拾い上げてみると、そこには優雅な字体でこう書かれていた。

 

 

『婚姻届』

 

 

「……は?」

 

思わず素っ頓狂な声が出た。婚姻届? ユグドラシルにはそんなシステムまであったのか? 呆れながらも中身を確認した俺は、次の瞬間、完全に絶叫した。

 

夫:比企谷 八幡

 

妻:____________

 

「はああああああああああああああああ!?」

 

俺の名前が! なぜか俺の名前が、既に署名されている! しかもご丁寧に『夫』の欄に! 待て待て待て! 落ち着け俺! なんだこれは!? いつの間に俺は結婚する予定になってたんだ!? 俺の知らないところで俺の人生(NPC生?)の重要なイベントがセッティングされてるんですけど!?

 

というか、妻の欄が空欄なのが、逆に怖い! 誰だよ!? 誰と結婚させるつもりだったんだよ、あの変態創造主は!

 

俺は、目の前にある、いわくつきの武具の山と、自分の名前が書かれた婚姻届を交互に見た。 どちらも、俺一人では到底処理しきれない、超弩級の面倒事だ。

 

 

……よし。

 

 

俺は、そっと婚姻届を元の場所に戻した。 そして、禍々しいオーラを放つ武具の山に背を向け、静かに金庫の扉を閉めた。 本棚を元に戻し、何事もなかったかのように、ソファに再び腰を下ろす。

 

「……俺は何も見ていない。いいね?」

 

俺は、部屋の誰かにともなく、そう呟いた。 ここには隠し金庫などなく、俺の創造主はPKなどではなく、そして、俺の婚姻届など、断じて存在しない。 それでいい。それがいい。

 

だが、一度知ってしまった事実は、そう簡単には消えてくれない。 アルベドとの密会という、超巨大な面倒事が控えているというのに、さらに特大の面倒事の在庫を抱え込んでしまった。

 

 

「……もう、帰りたい。千葉に帰りたい……」

 

 

休息のはずが、さらなる心労を抱え込む羽目になった俺は、もはや笑う気力もなく、ただただ、遠い故郷の空を思うのだった。





連続投稿すいません。


次は2025/10/22あたりになると思います。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
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  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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