ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、双子を見つける4

俺は、クーデリカとウレイリカを連れ、森の中を慎重に進んだ。 道中、二人は俺に怯えながらも、何度か「あ、あの……」と声をかけてきたが、俺は一切、素顔を見せることなく、ただ黙って歩き続けた。 彼女たちに、俺の正体を知られるわけにはいかない。そして、俺の『実験』は、あくまで俺個人の領域で行われるべきものだ。

 

数時間をかけて森を抜け、俺たちが辿り着いたのは、帝国の領内にある、小さな田舎町だった。 石畳の通りには、農夫や職人らしき人々が忙しなく行き交い、活気に満ちている。森の薄暗い空気とは違い、ここでは、人々の生活の匂いがする。

 

俺は、町外れの不動産屋に、目立たないように立ち寄った。 そして、現金で、小さな家を一つ買い取った。 俺が帝国で稼いだ金貨は、この世界の基準からすれば膨大な額だ。町外れの家一つなど、端金にもならない。 家は、新築ではないが、きちんと手入れされており、二人が暮らすには十分な広さがある。小さな庭もついている。

 

「これだ」

 

俺は、双子を連れて、その家の前に立った。

 

「ここがお前たちの新しい家だ」

 

クーデリカとウレイリカは、呆然とした表情でその家を見上げた。

 

「い、家……ですか?」

 

ウレイリカが、震える声で呟いた。

 

「ああ。これからは、ここで暮らせ。そして、二度と奴隷商なんかに捕まるような真似をするな」

 

俺は、家の鍵を二人に差し出した。 そして、あの金貨の山も、家の玄関先に置いた。

 

「この金で、当面の生活費と、必要なものを買い揃えろ。足りなくなったら、町で仕事を探せ。無理はするな」

 

双子は、鍵と金貨を交互に見て、そして、フードで顔を隠した俺を見た。

 

「あ、あの……あなた様は……」

 

クーデリカが、何かを言いたげに口を開いた。

 

「なぜ、私たちに、ここまで……」

 

その問いに、俺は、再び言葉を詰まらせた。 なぜ、か。 俺自身にも、まだ明確な答えは見つかっていない。 アルシェへの罪悪感か。セバスの言葉に揺さぶられた俺自身の心の迷いか。 それとも、ただの、俺の捻くれた『偽善』か。

 

俺は、静かに、そして、はっきりと答えた。

 

「……言っただろう。俺は、通りすがりの、偽善者だ」

 

そして、続けた。

 

「このことは、誰にも話すな。俺たちのことも、忘れろ。お前たちが、平穏に暮らすことが、俺への最大の『礼』だと思え」

 

それが、俺の、彼女たちへの精一杯の優しさであり、同時に、この『実験』に、俺自身が深く関わりすぎないための、最後の予防線だった。 彼女たちが、俺の存在を覚えていれば、いつか必ず、ナザリックの脅威に晒される日が来る。 それは、俺が望む『実験』の結末ではない。

 

二人は、まだ混乱した様子だったが、俺の言葉に、小さく頷いた。 そして、二人は、ゆっくりと、新しい家の扉を開けた。 中を覗き込み、互いの手を取り合って、小さく歓声を上げた。 その表情には、絶望の影は薄れ、かすかな希望と、未来への期待が宿っているように見えた。

 

俺は、その光景を、ただ見つめていた。 彼女たちの顔に、笑顔が戻る。 その笑顔を見た時、俺の胸の奥で、微かな、しかし確かな『何か』が動いたのを感じた。

 

(……これが、守るべきものが、できた、ということなのか?)

 

セバスの言葉が、再び脳裏に蘇る。 守るべきものがあるからこそ、強くなる。 その言葉の意味が、ほんの少しだけ、理解できたような気がした。

 

だが、この『実験』は、まだ始まったばかりだ。 この行動が、俺自身に何をもたらすのか。 そして、俺は、本当に強くなれるのか。 偽善者の介入は、これで終わりだ。あとは、彼女たち自身の問題だ。

 

俺は、双子の後姿に背を向け、静かにその場を去った。 町の人々に紛れ、俺は、誰にも気づかれることなく、森へと戻っていく。 ピクニックの下見という、本来の『仕事』を終えるために。

 

(……こんな、遠回りな下見、アインズ様に報告できるわけねえだろ)

 

俺は、森の奥へと続く道を歩きながら、再び、深い溜息をついた。 俺の『偽善者』としての道は、この世界でも、相変わらず複雑で、そして、とてつもなく面倒なものになりそうだ。 だが、その面倒さの中に、ほんの少しだけ、これまでとは違う、かすかな『希望』が見えた気がした。 それは、俺が、この世界で、『比企谷八幡』として生きる、新たな意味なのかもしれない。

挿絵のリクエストです。

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