ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、ピクニックの準備する

『嘆きの谷』での一件、そしてアルシェの妹たちとの遭遇という、予定外の『仕事』を片付けた俺は、改めてピクニック候補地の選定という、本来の任務に戻った。

正直、あの双子の一件の後では、森の木々を眺めて「うん、ここは日当たりが良いな」とか「虫が少なそうだ」などと評価するのは、馬鹿馬鹿しく感じられた。だが、これもアインズ様直々の命令だ。手を抜くわけにはいかない。

 

俺は、ナザリック周辺の森をいくつか回り、比較的安全で、かつ眺めの良い場所を数カ所ピックアップした。もちろん、事前に低級な魔物や危険な植物などは、《隠密化》と《無音歩行》を駆使して、あらかた『掃除』しておいた。守護者たちがピクニック中に、うっかりスライムを踏んづけて機嫌を損ねる、なんて事態は避けたいからな。これも奉仕活動の一環だと思えば、多少の労力は惜しくない。……いや、嘘だ。めちゃくちゃ面倒くさい。

 

十分な下見を終えたと判断した俺は、ナザリックへと帰還し、アインズ様への報告のため、再び玉座の間へと向かった。

 

玉座の間には、アインズ様と、その傍らに控えるアルベドの姿があった。 俺が到着すると、アインズ様は玉座から軽く身を起こし、俺に視線を向けた。

 

「おお、八幡。戻ったか。して、下見の結果はどうであった?」

「はっ。ご命令通り、ナザリック周辺の森をいくつか調査いたしました」

 

俺は、用意していた地図を広げ、ピックアップした候補地をいくつか指し示しながら、それぞれの場所の特徴、利点、そして潜在的な危険性(俺が既に排除済みだが)について、簡潔に報告した。

 

「私見ではございますが、この『陽光の丘』と呼ばれる小高い丘が、最も適しているかと。見晴らしも良く、周囲に危険な魔物の気配も(今は)ございません。また、比較的平坦な場所も多く、皆様がおくつろぎになるには、最適かと存じます」

 

もちろん、奴隷商との遭遇や、双子を助けた件については、一言も触れない。 あれは、俺個人の『実験』であり、『偽善』だ。ナザリックの、ましてやアインズ様の知るところとなれば、どのような面倒事が降りかかってくるか、想像もしたくない。

 

俺の報告を聞き終えたアインズ様は、満足げに頷いた。

 

「うむ、流石だな、八幡。実に的確な報告だ。よし、ピクニックの場所は、その『陽光の丘』に決定しよう!」

 

その声には、どこか子供のような、純粋な喜びが感じられた。絶対支配者の威厳とのギャップが、少しだけおかしい。

 

「アルベド、デミウルゴス、そして他の守護者たちにも伝えよ。近いうちに、皆でピクニックに行くぞ、と。ああ、もちろん、八幡も参加するように。下見をしてくれた貴様が楽しまねば、意味がないからな」

「は……ははっ……」

 

俺は、曖昧に返事をするしかなかった。

 

(……勘弁してくれ。守護者たちとピクニックとか、拷問以外の何物でもないんだが)

 

隣に立つアルベドが、俺に向けて、意味深な笑みを浮かべているのが見えた。 『存分に、楽しんでいらっしゃい』 彼女の言葉が、脳裏でリフレインする。

 

報告を終え、玉座の間を辞去した俺は、重い足取りで自室へと戻った。 これで、帝国での任務、『嘆きの谷』の調査、そしてピクニックの下見と、立て続けに舞い込んできた面倒事が、ようやく一段落したことになる。

 

ソファに深く沈み込み、目を閉じる。 疲労感が、どっと押し寄せてきた。 だが、それは心地よい疲労ではなかった。 アルベドの計画。レベル100への道。未だ謎の多い『嘆きの谷』の背後関係。そして、あの双子の少女たちのこと。 解決するどころか、新たな問題と、抱えるべき秘密が、雪だるま式に増えていく。

 

(……俺は、一体、どこに向かってるんだ?)

 

自問自答するが、答えは見つからない。 ただ、一つだけ確かなことがある。 俺は、もう、元の世界の、ただの捻くれた高校生ではいられない。 このナザリックという、理不尽と狂気が支配する場所で、俺は、俺自身の『本物』を見つけ出すために、足掻き続けなければならない。たとえ、それがどれほど歪んだ道であろうとも。

 

「……ピクニック、か」

 

俺は、小さく呟いた。 どうせ参加しなければならないのなら、せいぜい、隅の方で人間観察でもして、時間を潰すしかない。 守護者たちが、どんな風に『楽しむ』のか。 あるいは、アインズ様が、どんな『父親』のような顔を見せるのか。 それはそれで、興味深い『実験』になるかもしれない。

 

まずは、この疲労を回復させる必要がある。 次に始まる『仕事』……それが、アルベドからの命令なのか、それとも、また別の面倒事なのかは分からないが、備えておくに越したことはない。

 

(……まあ、なるようになるか)

 

いつもの諦観が、少しだけ、俺の心を軽くした。 俺は、ベッドへと向かい、久しぶりに、深い眠りにつくことにした。 次に目覚めた時、どんな厄介事が待っていようとも、今はただ、この束の間の休息(仮)を、享受するだけだ。 嵐の前の静けさは、まだ、もう少しだけ、続きそうだった。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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