ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、ピクニックに参加する

ピクニック当日。 俺は、第九階層の集合場所へと向かった。 指定された『陽光の丘』へは、転移門で直接移動するらしい。 集合場所には、既に数人の守護者が集まっていた。

 

「ハチマン! こっちこっち!」

 

アウラの、元気な声が響いた。 彼女は、いつものワイルドな服装ではなく、なぜか可愛らしい麦わら帽子を被り、肩には大きなバスケットを提げている。隣には、マーレがエプロン姿で、同じくバスケットを抱え、もじもじと立っていた。

 

「アウラ様、マーレ様。おはようございます」

 

俺は、軽く頭を下げた。

 

「うんうん! 準備万端って感じだね!」

 

アウラは、俺の簡素な旅装を見て、何やら感心したように言った。

 

(……準備万端、ねぇ。ただのいつもの服だが)

 

他にも、コキュートスが巨大なクーラーボックスを抱え、デミウルゴスが何やら怪しげな実験道具(?)の入ったケースを運び、そしてシャルティアが日傘を差し、優雅に立っている。

 

「あら、八幡。あなたもピクニックに参加するとは、実に意外でございんすね」

 

シャルティアは、扇子で口元を隠し、クスクスと笑う。その視線には、どこか揶揄するような色があった。

 

「……アインズ様のご命令ですので」

「フフフ、そうでありんすか」

 

守護者たちの、普段の威厳ある姿とのギャップに、俺は軽く眩暈を覚えた。 これぞ、ナザリッククオリティ。何をやっても規格外だ。

 

やがて、アインズ様とアルベドも現れた。 アインズ様は、珍しくフードを脱ぎ、軽装だが上品な服を着ていた。その表情には、どこか浮かれたような、しかしどこか不安げな複雑な感情が入り混じっている。

アルベドは、アインズ様に付き添うように隣に立ち、その表情は完璧な笑みを浮かべていた。

 

「皆、揃ったようだな」

 

アインズ様が、一同を見回した。

 

「では、参ろう! 本日の目的地、『陽光の丘』へ!」

 

アインズ様の号令と共に、一同は転移門をくぐった。 次の瞬間、俺たちの目の前には、眩しいほどの陽光が降り注ぐ、緑豊かな丘が広がっていた。 俺が下見で選んだ『陽光の丘』だ。 空は青く、白い雲がゆっくりと流れている。遠くには森の木々が見え、鳥のさえずりが聞こえてくる。

 

「わー! 気持ちいいー!」

 

アウラが、真っ先に駆け出した。

マーレも、それに続くように、嬉しそうに駆け回る。

その姿は、まるで普通の子供のようだ。

 

「……こんな場所で、本当にピクニックなどできるんでありんすか、アインズ様?」

 

シャルティアが、優雅に日傘を差しながら、懐疑的な視線を周囲に巡らせている。

 

「はっはっは。シャルティアよ、たまにはこういうのも良いものだぞ。皆で、こうして集まって食事をするというのはな」

 

アインズ様は、どこか嬉しそうな、しかしぎこちない笑みを浮かべた。

 

(……無理してるんだな、アインズ様も)

 

俺には、彼の心情が痛いほどよく分かった。

 

デミウルゴスは、早速、持ってきた器具を地面に広げている。

 

「アインズ様。この場所で、最適なレクリエーションを考案すべく、まずはこの土壌と植物のサンプルを……」

「デミウルゴス、それはいらん!大丈夫だから!」

 

アインズ様の慌てながらの鋭いツッコミが飛んだ。

 

「今は、ただ楽しむのだ! 楽しむということを、学ぶのだ、デミウルゴス!」

「は、ははっ! 畏まりました、アインズ様! 楽しむ、ですね!」

 

デミウルゴスは慌てて器具を片付けた。

 

コキュートスは、黙々とクーラーボックスから食材を取り出し、マーレは用意したお弁当を広げ始めている。

 

「これは……」

 

コキュートスが、マーレのお弁当を見て、珍しく唸った。

 

「マーレ、コレハ、ジツニオイシソウダ!料理ケイのスキルをモタナイノに実にスバラシイゾ!アインズ様へノ敬意がコメラレテイルヨウダ」

「え、えへへ……そんな……料理長にも手伝ってもらったんですよ」

 

マーレは、褒められて恥ずかしそうに俯いている。

 

(……コキュートスの褒め方、独特すぎんだろ)

 

アルベドは、アインズ様の隣に座り、まるで普通の恋人のように、甲斐甲斐しくアインズ様のお世話を焼いている。

 

「アインズ様、どうぞ、こちらのサンドイッチを。マーレが一生懸命作ったものですわ」

「うむ、ありがとう、アルベド。マーレも、ありがとうな」

 

アインズ様は、ぎこちない手つきでサンドイッチを受け取った。

 

俺は、そんな彼らの様子を、少し離れた場所から眺めていた。 参加しろ、と言われたので、一応隅の方に座ってはいるが、積極的に輪に入る気はなかった。 俺の役割は、あくまで『観察』だ。 ナザリックの守護者たちが、いかにして『人間的な感情』と向き合い、それを理解しようとしているのか。 それは、俺自身の『実験』にも、通じるものがあるような気がした。

 

だが、彼らの様子を見ていると、少しだけ、心が和むのも事実だった。 この世界の絶対的な支配者たちが、まるで子供のように無邪気に笑い、遊ぶ姿。 それは、ナザリックの、冷徹で狂気に満ちた一面とは、全く異なる顔だった。

 

「八幡」 不意に、アインズ様が俺に声をかけた。

 

「お前も、何か食べるか? マーレが、たくさん作ってくれたぞ」

 

アインズ様は、俺に向けて、サンドイッチの入ったバスケットを差し出した。

 

「……いえ、私は結構です」

 

俺は、そう答えた。 だが、アインズ様は、困ったように首を傾げた。

 

「しかし、せっかくのピクニックだ。楽しまねば意味がないだろう? 貴様も、何か、こう……」

 

アインズ様は、言葉を探すように、宙を彷徨う。

 

その時、アウラが、俺の隣にぴょん、と飛び乗ってきた。

 

「ハチマン、あなたいつも一人でいるんだから、こういう時くらい皆と食べなよ! ほら、マーレの作った卵焼き、めちゃくちゃ美味しいよ!」

 

そう言って、アウラは、無理矢理俺の口に卵焼きを突っ込んできた。

 

「むぐっ!?」

 

予想外の攻撃に、俺は思わずむせる。

 

(……甘い)

 

マーレの作った卵焼きは、素朴な味だが、どこか懐かしい、優しい甘さだった。 それは、俺が遠い昔に、家庭で食べたような、そんな温かい味がした。 俺は、無言で卵焼きを咀嚼した。

 

「ね!美味しいでしょ!」

 

アウラが、俺の顔を覗き込む。

 

「……まあ、悪くはない」

 

俺は、いつものように、素っ気なく答えた。 だが、その言葉に、アウラは満足そうに笑い、マーレは嬉しそうにはにかんだ。

 

アインズ様も、それを見て、ホッとしたような表情を浮かべている。

アルベドは、俺をじっと見つめ、その瞳の奥で、何かが渦巻くのが見えた。

 

(……何だよ、その視線は。まるで、何かを試しているような……)

 

ナザリック式ピクニックは、混乱と、奇妙な平和の中で、過ぎていった。 俺は、この、場違いな空間で、守護者たちの『人間性』を観察し続けた。 それは、俺自身の『実験』と、どこかで繋がっているような気がした。 そして、あの甘い卵焼きの味が、俺の冷え切った心に、ほんの少しだけ、温かいものを残していったのだった。




投稿が遅くなり申し訳ございませんでした。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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