ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、お守りをする

翌朝。 俺は指定された第九階層の転移室へと向かった。既にアインズ様、アウラ、シャルティアが集まっている。アウラは斥候用の軽装、シャルティアはいつもの豪奢なドレス姿だが、どこかソワソワと落ち着かない様子だ。

 

「遅いよハチマン! アインズ様をお待たせするのはいただけないよ!」

「……申し訳ありません」

 

アウラに軽く睨まれつつ、俺はアインズ様に深く頭を下げた。

 

「うむ。全員揃ったな。では、参るぞ」

 

アインズ様が転移の魔法を発動させると、視界が黒一色に染まり、次の瞬間、むわりとした湿気と、泥の匂いが鼻をついた。

俺たちが降り立ったのは、広大な湖のほとり。リザードマンの集落だ。

 

目の前の光景に、俺は一瞬、息を呑んだ。 数百はいるであろうリザードマンたちが、武器を掲げ、完璧な方陣を組んで整列している。まるで、将軍を迎える軍隊のようだ。 その中心で、第五階層守護者コキュートスが、その巨大な氷の体躯を地に伏せ、最敬礼の姿勢をとっていた。

 

「アインズ様! ヨクゾ御越シ下サイマシタ! 我ガ統治スル民、総員ヲ挙ゲテ歓迎イタシマス!」

 

コキュートスの声が、湖畔に響き渡る。

 

「う、うむ。コキュートス、大袈裟だ。面を上げよ」

 

アインズ様がやや引き気味に言うと、コキュートスは立ち上がり、背後のリザードマンたちに厳つい視線を送った。

 

「者共! 畏レ多クモ、我ラガ至高ノ支配者、アインズ・ウール・ゴウン様デアラセラレルゾ! 挨拶ヲセヨ!」

「「「「オオオオオオオオ!!!!」」」」

 

リザードマンたちの一斉の雄叫びが、大地を揺るがす。

 

(……すげえ。これがコキュートスの統治か。完全に戦国武将の出迎えじゃねえか)

 

俺がその異様な光景に圧倒されていると、アインズ様は「ああ、もういい、分かったから静かにしろ」とでも言いたげに手を振り、ゼンベルを呼んだ。 話は既に通っていたらしく、ゼンベルはすぐに案内役として控える。

 

「では、我々はこれよりアゼルリシア山脈へ向かう。コキュートス、後のことは任せた」

「ハッ! 御武運ヲ!」

 

コキュートスとリザードマンたちの、地鳴りのような見送りを背に、俺たちはゼンベルの先導で山脈へと続く道を進み始めた。 アインズ様を中央に、アウラが斥候として先行し、俺とシャルティアが後方支援という陣形だ。

 

「ふふっ……ふふふふふっ」

 

隣を歩くシャルティアから、時折、堪えきれないような奇妙な笑い声が漏れてくる。

 

「……シャルティア様。何か、おかしなことでも?」

 

俺が小声で尋ねると、シャルティアはハッと我に返り、扇子で口元を隠した。

 

「お、おかしくなどないでありんす! ただ、アインズ様と、こうして直々に任務をご一緒できるなんて……! なんという光栄! わたし、嬉しくて……!」

 

頬を染め、うっとりとアインズ様の後ろ姿を見つめるシャルティア。

 

(……あ、こいつ、完全に浮かれてる)

 

彼女の焦りは、失態の挽回というよりも、「アインズ様の役に立ちたい」「アインズ様の側にいたい」という純粋な(そして狂信的な)愛から来ている部分が大きいようだ。

 

「アインズ様は、シャルティア様に期待しておられますよ。ドワーフとの交渉、きっと上手くいくでしょう」

 

俺が当たり障りのない言葉をかけると、シャルティアはカッと目を見開いた。

 

「当然でありんす! わたしが失敗などするはずがないでありんす! 必ずや、かのルーンとかいう技術をアインズ様に献上し、わたしがナザリックで最もお役に立つ守護者であることを証明してみせますわ!」

(……あー、ダメだ。完全に空回りしてる)

 

「シャルティア様」

 

俺は、あえて少し冷たい声で言った。

 

「今回の任務は『交渉』です。アインズ様は、力押しを望んでおられません。貴女がアウラ様と張り合って先走れば、それこそがアインズ様のご迷惑になるのでは?」

「なっ……! 八幡、わらわに指図する気でありんすか!?」

 

シャルティアの目が、一瞬、赤く光った。

 

「いえ。俺は、アインズ様から『シャルティア様の補佐』を命じられた身。貴女の功績が、アインズ様の最大の利益となるよう、サポートするのが俺の『仕事』です」

 

俺は、腐った目で彼女を真っ直ぐに見返した。

 

「……貴女が、本当にアインズ様の役に立ちたいと、そう思うのなら」

 

俺の言葉に、シャルティアは「ぐっ……」と息を詰まらせた。 彼女は、俺の創造主がスーラータンであること、そして俺が他のNPCとは少し違う立ち位置にいることを理解している。そして何より、俺の言葉が『アインズ様のため』という大義名分に基づいている以上、強く反論できないようだった。

 

「……フン。分かっているわよ、そんなこと。わたしは、アインズ様のお望みのままに、完璧に任務をこなすでありんす」

 

シャルティアは、ぷいと顔をそむけた。

 

(……少しは、ガス抜きになったか?)

 

やれやれだ。 最強の吸血鬼のお守り役とは、つくづく割に合わない。 俺は、前方を行くアインズ様の、威厳ある骸骨の後頭部を見つめながら、これから始まる長い道のりに、深いため息をついた。 『嘆きの谷』での戦闘の方が、よほど気楽だったと、この時の俺は本気で思っていた。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
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