ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

53 / 89
ぼっち、お守りをする3

ゼンベルの案内で、俺たちは雪深い山道を登りきり、ついにドワーフの国へと続く坑道の入り口にたどり着いた。 巨大な岩盤にぽっかりと開いたその穴は、まるで地獄の釜の蓋が開いたかのような、底知れぬ闇を湛えている。

 

「ここが入り口だ。この先は迷路みたいになってるから、俺から離れねえようにな」

 

ゼンベルが松明を掲げるが、アインズ様は片手を軽く振った。

 

「必要ない。……《集団全種族視覚強化(マス・フライ・ウィズ・オール・スピーシーズ)》」

 

アインズ様が魔法を唱えると、俺の視界が一変した。暗闇が晴れ、昼間のように周囲が見渡せるようになる。

 

(……便利だな、魔法って)

 

俺のローグ系スキルでも暗視は可能だが、こうしてパーティー全体にバフをかけられるのは、さすが魔法職の頂点だ。

 

「行くぞ。アウラ、警戒を怠るな」

「了解です、アインズ様!」

 

坑道の中は、静まり返っていた。 かつてはドワーフたちが掘り進め、活気に満ちていたであろう道も、今はただの冷たい石の廊下だ。 足音が反響するだけの空間。

 

「……静かすぎやしませんか?」

 

俺が呟くと、隣を歩くシャルティアが鼻を鳴らした。

 

「フン。ドワーフなどという種族は、土遊びがお似合いの下等生物。既に滅んでいるのではないかしら?」

「……シャルティア様。油断は禁物です。静寂こそが、最大の罠である場合もあります」

「分かっているわよ。あなたに言われなくとも、わらわの感知網に引っかかるものはまだいないわ」

 

口では悪態をついているが、シャルティアの目は真剣だ。彼女もまた、先程の会話を経て、少しは冷静さを取り戻しているらしい。ただ、その手には、いつでも武装を展開できるよう、力が込められているのが分かる。

 

(……やる気満々なのはいいが、フライングだけは勘弁してくれよ)

 

しばらく進むと、視界が開けた。 巨大な地下空洞。そして、そこに広がるドワーフの都市――『フェオ・ライゾ』。

 

だが、そこにはアインズ様が期待していた「生きた都市」の喧騒はなかった。 あるのは、圧倒的な静寂と、荒廃の気配だけ。 家屋は崩れ、通りには誰一人歩いていない。

 

「……無人の、廃墟か?」

 

アインズ様が、残念そうに呟いた。

 

「ゼンベル。ここは本当にお前の知っている都市か?」

「あ、ああ……。間違いねえ。だが、様子がおかしい。俺がいた頃は、もっとドワーフたちがいて、酒の匂いが充満してたんだが……」

 

ゼンベルも戸惑いを隠せない様子だ。

 

アインズ様は立ち止まり、周囲を見回した。

 

「八幡。お前の『目』で、ここをどう見る?」

 

ご指名だ。 俺は一歩前に出ると、都市の様子を観察した。腐った目(スキル)を凝らし、通常の視界では見えない痕跡を探る。 建物の壊れ方、地面に残る古い足跡、そして空気中に漂う微かな魔力の残滓。

 

「……単なる放棄された廃墟ではありませんね」

 

俺は冷静に分析結果を口にした。

 

「建物が内側からではなく、外側からの暴力的な力で破壊されています。それも、かなり最近……数ヶ月から数年以内でしょうか。火災の跡はありませんが、壁に残る爪痕のような傷……ドワーフの道具によるものではない。別の種族による侵略の可能性があります」

 

「侵略、か」

 

アインズ様が頷く。

 

「つまり、ドワーフたちはここを捨てて逃げたか、あるいは……」

 

「皆殺しにされたか、でありんすね」

 

シャルティアが、凶悪な笑みを浮かべて言葉を継いだ。

 

「アインズ様。もし侵略者がいるのであれば、このわらわが――」

 

シャルティアが殺気を放ちかけた瞬間、俺はすかさず一歩踏み出し、彼女の言葉を遮った。

 

「シャルティア様。敵の正体も規模も不明な段階での戦闘行為は、情報収集の機会を損ないます。まずは、生存者の捜索と、現状の把握が先決かと」

 

俺は、あくまで「副官としての進言」という体を崩さずに言った。 シャルティアは一瞬ムッとしたが、すぐにアインズ様の視線を気にして、コクリと頷いた。

 

「……ええ、そうね。八幡の言う通りだわ。わらわとしたことが、少し気が早かったようでありんす」

 

(……よし、止まった)

 

俺は内心で安堵の息を吐く。

 

「アウラ。何か気配はあるか?」

 

アインズ様が問うと、アウラは長い耳をピクリと動かした。

 

「うん、アインズ様。この都市には誰もいないみたい。でも……あっちの奥の方から、微かに音がするよ。何かを掘ってるような、叩いてるような音」

 

「掘っている音、か。生存者か、あるいは侵略者か」

 

アインズ様は少し思案した後、決断を下した。

 

「よし。音のする方へ向かう。だが、警戒レベルは最大だ。我々は交渉に来たが、相手が敵対するなら容赦はしない。……シャルティア、八幡」

 

「はっ!」

 

俺とシャルティアは同時に応える。

 

「シャルティアは、即座に戦闘に入れるよう準備しつつ、八幡の合図を待て。八幡は、前方の状況を解析し、敵か味方か、あるいは第三者かを見極めろ。……頼んだぞ」

 

アインズ様は、俺たちに「連携」を求めている。 暴走しがちな最強の矛と、それを制御する目。

 

「行きましょうか、シャルティア様」

 

俺は小声で囁いた。

 

「見せ場は、アインズ様がゴーサインを出してからですよ。それまでは、牙を研いでおいてください」

「フン。分かっているわよ。……貴様こそ、わらわの射線上に立ったら、背中から串刺しにしてあげるから気をつけなさい」

 

シャルティアは軽口を叩きながらも、その瞳には冷静な光が戻っていた。 どうやら、最悪のスタートだけは回避できたらしい。

 

俺たちは、音のする都市の奥深くへと、足を踏み入れた。 そこで待っているのが、ドワーフの生き残りか、それともこの廃墟を生み出した元凶か。 どちらにせよ、俺の『仕事』は増える一方だ。

挿絵のリクエストです。

  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
  • 八幡+コキュートス
  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
  • 八幡+メイド達
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。