ぼっち、ナザリックに飛ばされる   作:NewSankin

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ぼっち、お守りをする5

「――アインズ様! 周囲に多数の反応あり!」

 

アウラの鋭い警告が坑道に響く。

 

「囲まれたよ! 数は……五十、いやもっと!」

 

その言葉と同時に、暗闇の奥から無数の影が現れた。 灰色の体毛、鋭い爪、鉱石をも噛み砕く顎を持つ亜人種――クアゴアだ。 彼らはドワーフの天敵であり、殺意を剥き出しにして雪崩れ込んでくる。

 

「キシャアアアアッ!」

「殺せ! ドワーフを殺せ! 奪え!」

 

シャルティアが、その紅い瞳を輝かせ、迎撃態勢に入ろうとした、その瞬間。 俺は素早く彼女の前に立ち、小声で制止した。

 

「――シャルティア様、待ってください」

 

「……何でありんすか? 邪魔をするなら、貴様ごと突き刺すわよ」

 

殺気立ったシャルティアが俺を睨むが、俺は冷静に囁き返した。

 

「作戦会議です。……今の装備、まさか『スポイトランス』を使うつもりじゃないですよね?」

「は? 当然でしょう。我が主の敵を殲滅するのに、全力を出さない理由がなくて?」

 

「ありますよ」

 

俺は周囲の気配を警戒しながら早口で告げる。

 

「情報の隠蔽です。どこで誰が見ているか分からない。あえて装備のグレードを落とし、貴女の実力を誤認させるんです。それに、彼らを殺しては情報が引き出せません」

 

「……なるほど。能ある鷹は爪を隠す、でありんすか」

 

シャルティアは瞬時に理解し、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「で? どうするの?」

 

「俺が全員、一箇所にまとめます。貴女は中心で待機し、俺が合図したら『全種族魅了(チャーム・スピーシーズ)』で一網打尽にしてください」

 

「ほう……全員をまとめる? この数を?」

 

「ええ。見ていてください」

 

俺は短剣を抜き放つと、戦場全体を『目』でスキャンした。

 

(数は……52。前後左右の坑道から包囲しようとしているな)

 

「行きます!」

 

俺は《疾風走》を発動し、姿をかき消した。

 

まずは、逃げ道を塞ぐ。 俺は残像を残すほどの速度で、クアゴアの展開しようとする外周を駆け抜けた。

 

「グアッ!?」

「な、何だ!?」

 

斬り殺しはしない。 すれ違いざまに、アキレス腱をミネウチで叩き、あるいは目の前にクナイを突き立てて威嚇する。 恐怖による誘導だ。

 

「こっちは通さん」

 

「死にたくなければ下がれ!」

 

俺の放つ殺気に怯え、外周へ広がろうとしていたクアゴアたちが、本能的に中心へ――シャルティアのいる場所へと後退していく。 まるで牧羊犬に追われる羊の群れのように。

 

「な、なんだこの人間は! 速すぎる!」

「こっちもダメだ! 戻れ、戻れ!」

 

ものの数十秒で、散開していた50体以上のクアゴアは、坑道の中央、シャルティアの目の前に密集させられた。

 

「き、貴様ら! 何をしている! 固まるな!」

 

指揮官らしきクアゴアが叫ぶが、もう遅い。

 

「今だ……!」

 

俺は群れの背後に着地すると、素早く印を結んだ。 これは、ナザリックに来てからひっそりと修行した、忍者クラスのスキル。

 

「――《忍法・影縫いの術(シャドウ・バインド)》!!」

 

俺の影が、まるで生き物のように爆発的に伸び、枝分かれして地面を疾走する。 漆黒の影は、密集したクアゴアたちの足元の影と次々に繋がり、その動きを強制的に封じ込めた。

 

「なっ!? 動け、ない……!?」

「影が……足に……!」

 

50体のクアゴアたちが、一斉に金縛りにあったように硬直する。 もがけばもがくほど、影は強固に彼らを締め上げる。

 

「シャルティア様! どうぞ!」

 

俺は叫んだ。

 

「フフフ……。見事なお膳立てでありんすね、八幡」

 

クアゴアの群れの目の前で、シャルティアが優雅に扇子を開いた。 逃げることも、反撃することもできない哀れな獲物たちを見下ろし、彼女はその瞳を妖しく輝かせた。

 

「さあ、可愛い家畜たち。わらわの愛を受け入れなさい」

 

「――《全種族魅了(チャーム・スピーシーズ)》」

 

広範囲に展開された精神操作魔法が、抵抗できないクアゴアたちを包み込む。 影縫いで身体の自由を奪われ、恐怖で精神が摩耗していた彼らに、抵抗する術はなかった。

 

「……あ……ああ……」

「美しい……お方……」

 

一瞬にして、殺気立っていた群れの空気が変わる。 彼らの瞳から敵意が消え、代わりに虚ろな陶酔の色が宿っていく。

 

俺は印を解き、影縫いを解除した。 だが、拘束が解かれても、誰一人として襲いかかってくる者はいなかった。 全員がその場に平伏し、シャルティアを崇めるようにひれ伏している。

 

「我らが……主よ……」

 

完全制圧。 一滴の血も流さず、50以上の戦力を無力化し、かつ支配下に置いた。

 

「……ふぅ」

 

俺は額の汗を拭い、息を吐いた。

 

(数が多いと、さすがにチャクラ……MPを持ってかれるな)

 

「どう? 八幡。わたしの魔法は」

 

シャルティアが、魅了されたクアゴアたちを侍らせながら、得意げに振り返る。

 

「最高です。タイミングも範囲も完璧でした」

 

「貴方こそ、あれだけの数を一瞬で縫い止めるなんて……。忍者というのは、厄介な技を使うのね」

 

互いに軽口を叩き合いながらも、そこには確かな連携の手応えがあった。

 

パチパチパチ、と乾いた拍手が響く。

 

「素晴らしい!」

 

アインズ様が、両手を広げて歩み寄ってきた。

 

「八幡の状況判断と盤面操作(クラウド・コントロール)。そしてシャルティアの広域制圧魔法。互いの長所を活かし、欠点を補い合った、芸術的な連携だ! まさに、私が求めていた『組織的な戦い』だ!」

 

「あ、ありがとうございます! アインズ様!」

 

シャルティアが感極まったように叫ぶ。

 

アインズ様は満足げに頷き、そして俺を見た。

 

「八幡。お前がクアゴアを殺さず、一箇所に集めた判断……あれでシャルティアの魔法が最大限に活きた。見事だ」

 

「……恐縮です。俺一人では止めきれませんでしたから、シャルティア様頼みでしたよ」

 

俺は肩をすくめて、手柄をシャルティアの方へ流す。 シャルティアは嬉しそうに、けれど少し照れくさそうに俺を見た。

 

ゴンドは、口をあんぐりと開けたまま、固まっていた。

 

「に、人間が影を使って軍団を縛り上げ……お嬢ちゃんが睨んだだけで全員従わせた……? ど、どうなってんだ、あんたらの国は……」

 

「……ただの、福利厚生がしっかりしたホワイト国家ですよ」

 

俺は適当に答え、魅了されたクアゴアの指揮官を顎でしゃくった。

 

「さて、色々と詳しく聞かせてもらいましょうか」

 

こうして、俺とシャルティアのコンビネーションは、最初にしては上出来すぎる成果を上げたのだった。

 

 

 

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  • おまかせ
  • 八幡+シャルティア
  • 八幡+アルベド
  • 八幡+デミウルゴス
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  • 八幡+アウラ
  • 八幡+マーレ
  • 八幡+アインズ様
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