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「――アインズ様! 周囲に多数の反応あり!」
アウラの鋭い警告が坑道に響く。
「囲まれたよ! 数は……五十、いやもっと!」
その言葉と同時に、暗闇の奥から無数の影が現れた。 灰色の体毛、鋭い爪、鉱石をも噛み砕く顎を持つ亜人種――クアゴアだ。 彼らはドワーフの天敵であり、殺意を剥き出しにして雪崩れ込んでくる。
「キシャアアアアッ!」
「殺せ! ドワーフを殺せ! 奪え!」
シャルティアが、その紅い瞳を輝かせ、迎撃態勢に入ろうとした、その瞬間。 俺は素早く彼女の前に立ち、小声で制止した。
「――シャルティア様、待ってください」
「……何でありんすか? 邪魔をするなら、貴様ごと突き刺すわよ」
殺気立ったシャルティアが俺を睨むが、俺は冷静に囁き返した。
「作戦会議です。……今の装備、まさか『スポイトランス』を使うつもりじゃないですよね?」
「は? 当然でしょう。我が主の敵を殲滅するのに、全力を出さない理由がなくて?」
「ありますよ」
俺は周囲の気配を警戒しながら早口で告げる。
「情報の隠蔽です。どこで誰が見ているか分からない。あえて装備のグレードを落とし、貴女の実力を誤認させるんです。それに、彼らを殺しては情報が引き出せません」
「……なるほど。能ある鷹は爪を隠す、でありんすか」
シャルティアは瞬時に理解し、獰猛な笑みを浮かべた。
「で? どうするの?」
「俺が全員、一箇所にまとめます。貴女は中心で待機し、俺が合図したら『全種族魅了(チャーム・スピーシーズ)』で一網打尽にしてください」
「ほう……全員をまとめる? この数を?」
「ええ。見ていてください」
俺は短剣を抜き放つと、戦場全体を『目』でスキャンした。
(数は……52。前後左右の坑道から包囲しようとしているな)
「行きます!」
俺は《疾風走》を発動し、姿をかき消した。
まずは、逃げ道を塞ぐ。 俺は残像を残すほどの速度で、クアゴアの展開しようとする外周を駆け抜けた。
「グアッ!?」
「な、何だ!?」
斬り殺しはしない。 すれ違いざまに、アキレス腱をミネウチで叩き、あるいは目の前にクナイを突き立てて威嚇する。 恐怖による誘導だ。
「こっちは通さん」
「死にたくなければ下がれ!」
俺の放つ殺気に怯え、外周へ広がろうとしていたクアゴアたちが、本能的に中心へ――シャルティアのいる場所へと後退していく。 まるで牧羊犬に追われる羊の群れのように。
「な、なんだこの人間は! 速すぎる!」
「こっちもダメだ! 戻れ、戻れ!」
ものの数十秒で、散開していた50体以上のクアゴアは、坑道の中央、シャルティアの目の前に密集させられた。
「き、貴様ら! 何をしている! 固まるな!」
指揮官らしきクアゴアが叫ぶが、もう遅い。
「今だ……!」
俺は群れの背後に着地すると、素早く印を結んだ。 これは、ナザリックに来てからひっそりと修行した、忍者クラスのスキル。
「――《忍法・影縫いの術(シャドウ・バインド)》!!」
俺の影が、まるで生き物のように爆発的に伸び、枝分かれして地面を疾走する。 漆黒の影は、密集したクアゴアたちの足元の影と次々に繋がり、その動きを強制的に封じ込めた。
「なっ!? 動け、ない……!?」
「影が……足に……!」
50体のクアゴアたちが、一斉に金縛りにあったように硬直する。 もがけばもがくほど、影は強固に彼らを締め上げる。
「シャルティア様! どうぞ!」
俺は叫んだ。
「フフフ……。見事なお膳立てでありんすね、八幡」
クアゴアの群れの目の前で、シャルティアが優雅に扇子を開いた。 逃げることも、反撃することもできない哀れな獲物たちを見下ろし、彼女はその瞳を妖しく輝かせた。
「さあ、可愛い家畜たち。わらわの愛を受け入れなさい」
「――《全種族魅了(チャーム・スピーシーズ)》」
広範囲に展開された精神操作魔法が、抵抗できないクアゴアたちを包み込む。 影縫いで身体の自由を奪われ、恐怖で精神が摩耗していた彼らに、抵抗する術はなかった。
「……あ……ああ……」
「美しい……お方……」
一瞬にして、殺気立っていた群れの空気が変わる。 彼らの瞳から敵意が消え、代わりに虚ろな陶酔の色が宿っていく。
俺は印を解き、影縫いを解除した。 だが、拘束が解かれても、誰一人として襲いかかってくる者はいなかった。 全員がその場に平伏し、シャルティアを崇めるようにひれ伏している。
「我らが……主よ……」
完全制圧。 一滴の血も流さず、50以上の戦力を無力化し、かつ支配下に置いた。
「……ふぅ」
俺は額の汗を拭い、息を吐いた。
(数が多いと、さすがにチャクラ……MPを持ってかれるな)
「どう? 八幡。わたしの魔法は」
シャルティアが、魅了されたクアゴアたちを侍らせながら、得意げに振り返る。
「最高です。タイミングも範囲も完璧でした」
「貴方こそ、あれだけの数を一瞬で縫い止めるなんて……。忍者というのは、厄介な技を使うのね」
互いに軽口を叩き合いながらも、そこには確かな連携の手応えがあった。
パチパチパチ、と乾いた拍手が響く。
「素晴らしい!」
アインズ様が、両手を広げて歩み寄ってきた。
「八幡の状況判断と盤面操作(クラウド・コントロール)。そしてシャルティアの広域制圧魔法。互いの長所を活かし、欠点を補い合った、芸術的な連携だ! まさに、私が求めていた『組織的な戦い』だ!」
「あ、ありがとうございます! アインズ様!」
シャルティアが感極まったように叫ぶ。
アインズ様は満足げに頷き、そして俺を見た。
「八幡。お前がクアゴアを殺さず、一箇所に集めた判断……あれでシャルティアの魔法が最大限に活きた。見事だ」
「……恐縮です。俺一人では止めきれませんでしたから、シャルティア様頼みでしたよ」
俺は肩をすくめて、手柄をシャルティアの方へ流す。 シャルティアは嬉しそうに、けれど少し照れくさそうに俺を見た。
ゴンドは、口をあんぐりと開けたまま、固まっていた。
「に、人間が影を使って軍団を縛り上げ……お嬢ちゃんが睨んだだけで全員従わせた……? ど、どうなってんだ、あんたらの国は……」
「……ただの、福利厚生がしっかりしたホワイト国家ですよ」
俺は適当に答え、魅了されたクアゴアの指揮官を顎でしゃくった。
「さて、色々と詳しく聞かせてもらいましょうか」
こうして、俺とシャルティアのコンビネーションは、最初にしては上出来すぎる成果を上げたのだった。
挿絵のリクエストです。
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おまかせ
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八幡+シャルティア
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八幡+アルベド
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八幡+デミウルゴス
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八幡+コキュートス
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八幡+アウラ
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八幡+マーレ
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八幡+アインズ様
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八幡+メイド達