ウチのバンドはお騒がせ者   作:にわかバソドマソ

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全クラス突撃ゲリラ

 ︎︎次の日の朝、俺は軽音部の顧問となる佐伯のところへ来ていた。場所は喫煙所。最初は職員室へ行ったのだが、水城に佐伯は今はいないと言われ、心当たりを訊ねてみたところ、いの一番に言われたのがここだった。

 

「と、まぁそんなわけで無事新入部員は確保できて4人達成。これで部活申請できるだろ?」

「思ったより遅かったねぇ。あの放送ジャック事件や軽音部(仮)のインスタはウケが良かったのに」

「ホントだわ。でも唯一来た東も放送後に俺らんとこ来ようとはしてたらしいべ。俺らが旧部室にいたから見つからんかったらしいけど」

「それは君らというか、君のミスだね。放送で集合場所を告知すればよかったのさ」

「それはそうなんだよな。俺もそこはしくったと思ってる」

 

 ︎︎でも現状、瀬奈のSNS運用や桐生の作ったポスターのお陰で学校内の知名度はかなり高いんよな。まぁ桐生のポスターは3万枚印刷して、学校の至る所にクラスで手分けして貼りまくっただけだけども。今も水城や真壁、生徒会が頑張って剥がし作業に奔走しているらしい。

 

「それで東くんはどうだい?」

「昨日東があがり症ということが判明したから、それの荒療治を行うとこ」

「んーそれはいつからかな?」

「もちろん今日から」

「へぇ、なにすんの?」

「そりゃあエンドレスゲリラライブよ」

 

 ︎︎俺が東の緊張しいを克服するために考えた策は、学校の全クラスに突撃かましてライブするってだけ。過去散々出場していたピアノコンクールですら慣れずに緊張していたらしいが、あれは最初から最後まで自分だけが主役だ。

 ︎︎だかウチのバンドはそれぞれ個性の強さがあるとはいえ俺が主役だ。瀬奈も大瀬良もそれを重々承知しているし、東は最初からそのつもりだろう。主役としての注目じゃなくて引き立て役としての瞬間的な注目に慣れるまでゲリラライブしまくるって策。

 

「あがり症ってのはそんな簡単には治らんよ?」

「東がミスるのはソロとかリードとかの瞬間的に注目をされるときだからな。注目が分散しているときはそうでもないっぽい。それに緊張するなとは言ってないからな、ズレやミスを無くしてくれればそれでいい。だから無理やり数こなして慣らす」

「なーるほどねぇ。うん、いいよ。じゃんじゃんやれ」

 

 ︎︎そういって佐伯はタバコを俺に吹きかけた。その目は「面白い、やってみろ」と語りかけている。挑発してんのかコイツ?つーか制服に臭い着くからやめろや。

 

「……くせぇよ。そんでコレって文化部の活動実績になる?」

「んーどうだろうね。一応こっちでも掛け合ってみるけど、怪しいんじゃない?」

「こんだけ生徒が熱心に活動に取り組んでるのにひでぇ大人たちだ」

「そもそも活動実績っていうのが曖昧なんだよね。大会やイベントに参加すればいいのかって思えば、全くそれらに出場したことなくても存続する部活はあるからね」

「そこら辺は大人の事情ってやつかな?」

「まぁそういうことだね。そんな君らに今から半年間の目標を与えよう」

「まぁ校則にある以上、なんらかの参加が必要か」

「だから君ら、文化祭で演奏して生徒、教師、保護者、その他あらゆる観客を魅了しろ。誰が見ても感情を揺さぶられる演奏をしろ。そうすれば私が誰がなんと言おうとも君らの活動実績にしてやる。出来るだろ?」

 

 ︎︎おもしれぇじゃねぇか。そこまで言われちゃやるしかねぇわな。最っ高に盛り上がるライブにしてやるよ。

 

「期待してろ」

「あぁ、そうするよ。ちなみに文化祭の参加は実行委員があるからそこの許可はとってね」

「アンタは取ってくれないのか、まぁ初めから乗り込むつもりだったからいいけど」

「その方が面白いだろ?」

「まぁな」

 

 ︎︎相変わらずコイツのノリは俺らのノリに近い。

 

「さて、しばらくの目標が決まったことだし、それに向けて特訓しますか」

「頑張ってね〜。私はもう一本吸ってからいくから」

「どんだけ吸うんだよ」

 

 ︎︎俺と会ってから4本は吸ってるぞ。まぁいいけど。とりあえず東の特訓ゲリラライブしますか!

 

 


 

 

 ︎︎そんなこんなで昼休み。軽音部4人は1年A組の教室の前にいた。

 

「おっしゃー、ほなやってくでー」

「クラスに突撃するのは初めてだから楽しみだね!」

「職員室や生徒会室よりハードル低いでしょ」

「……本当にやるのかい?」

 

 ︎︎全クラス突撃ゲリラライブに緊張しているのか、そもそもこんなことやることに忌避感を示しているか(多分前者だが)、東の表情は固い。

 

「ここまできて躊躇ってんのか東ァ。安心しろよ、お前がミスってもカバーする」

「そうだよ東先輩!緊張はするだろうけど楽しんでいこうよ!」

「インスタライブより観客も少ないから大丈夫」

 

 ︎︎俺たちにそう言われ、東は目を閉じて天井を見上げる。そして大きく深呼吸した後、こちらを向く。さっきまでの不安げな表情から一転、まだ固いがそれでもやる気の満ちた表情になった。

 ︎︎……息整えるのは構わんけど、あと23クラスあるぞ?全部で一々励まさねぇからな?

 

「よし!いこう!」

「おーけー!」

 

 ︎︎東の覚悟が決まったところで、さっそく扉を勢いよく開ける。教室内の生徒達が一斉にこちらに視線を向ける。

 

「どうもー!軽音部(真)です!ゲリラライブしに来たんで盛り上がっていってくれよぉ!」

 

 ︎︎生徒たちは「お、おー?」みたいな感じでノリより困惑が勝っている。俺らがから回ってるみたいじゃん。そういってちゃっちゃと機材の設置をし、演奏準備を完了させる。

 

「そんじゃまぁ、いきなりのことで戸惑ってる奴が多いと思うが、ぜひ楽しんでくれ。夜の本気ダンスで『Magical Feelin'』!」

 

 ︎︎さぁ!東の緊張克服の為もあるが、全力で楽しんでいくぜぇ!

 

 


 

 

 ︎︎ということがあって早2週間、やっと全クラス周りきることが出来た。東の調子はというと、

 

「うおぉおお!なんか全く緊張しないよ!今までの緊張が嘘のようだ!」

「やったー!作戦成功だね!」

「…そんな簡単に治る?」

 

 ︎︎と言った感じで、めちゃくちゃ克服できていた。大瀬良も言ったがそんな簡単に治るもんなのか?確かに2年のクラス周ってる時くらいまではまだミスがチラついていたが、3年のクラスを周るときには、ミスらしいミスはなくなっていた。なんで?

 

「うん、俺も決して治ったわけじゃないよ!ただ、俺がミスしようがテンパろうがカバーしてくれつつも君たちが楽しそうに演奏しているのを見て、申し訳なさを捨てて一緒にいる俺も楽しもうと思っただけさ!そしたらなんかミスしなくなった!まだ緊張はするよ!」

「単純だね〜」

「ミスがなくなったのは良いことだしいいんじゃない?」

「……まぁ、東も楽しめてたんなら良かったよ。改めて言うが俺らは仲間だ、ミスなりなんなりしても俺らがカバーする。緊張するのはいいが、それで自己嫌悪に走って負のループを起こしたりはすんなよ?」

「うん!それは20回を超えるミニライブでよーくわかったよ!」

 

 ︎︎そういう東の顔は晴れ晴れとしていた。

 

「というわけで改めまして、緊張しやすいキーボード!東 龍之介だ!これからよろしく!」

「いぇーい!よろしくー!」

 

 ︎︎瀬奈はジャンプしてハイタッチ。大瀬良は無言だが表情は柔らかい。これで東加入騒動は一件落着。

 

 ︎︎しかしあと一つ必要なことがある。今までは音源に頼っていたがいい加減必要だろう。……ドラムのスカウトだ!




Magical Feelin'/夜の本気ダンス

鳴海
24回のゲリラライブを連日こなし終盤喉が張り裂けそうになっても、本気で歌いつつ楽しみ続けた。
タバコの臭いは平気な為なんとも思わなかったが、早川と志水に臭いと言われショックを受けた。

早川
カメラ越しのライブなら割と慣れたが、直接人前でライブするのは久しぶりだったため終始楽しんでいた。
朝からタバコの臭いを纏ってきた鳴海に臭いと言ったら崩れ落ちた。

大瀬良
描写外で最も東のフォローに尽力していた。ライブの数が2週間ぶっ続けだっため、体力温存のために今回もあまり暴れなかった。
自分の姉が喫煙者のため、鳴海からタバコの臭いがしても何も思わなかった。


荒療治と言われてはいたが、毎日ゲリラライブをするとは思わなかった。自分がどれだけミスってもフォローしつつ、嫌そうな顔一つせず楽しんでいるメンバーにめちゃくちゃ感謝した。
崩れ落ちている鳴海をみて何事かと思った。

佐伯
鳴海との会話中、合間合間にずっとスパスパしてた。
軽音部が自分を楽しませてくれると期待している。
なお職員室に戻ったあと、タバコ臭すぎて、水城に殴られた。

水城、真壁、生徒会
鳴海のクラスが至る所に貼った軽音部のポスターを頑張って回収している。唯一、音楽室だけ床、壁、天井全てに隙間なくポスターが貼らているいて、それを水城が目撃して卒倒した。


もっとふざけ倒したいんだけどなぁ
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