ウチのバンドはお騒がせ者 作:にわかバソドマソ
ということで。
「集合ーッ!名付けの儀、開☆催!!」
「わーい!」
『……』
︎︎乗ってくれたのは瀬奈だけ、と。おいおいテンションが低いなァ。こんなんじゃ社会に出てからやって行けねぇぞ?
「ちょいちょいちょい!お前らテンション低くね?名前決めだぞ?軽音部としての初の公式ネーミングだぞ!?世界が変わるぞ!?朝波の音楽シーンに革命が起きるぞ!?」
「革命のわりにはローカルだ」
ぶった斬るなよ大瀬良。もうちょい夢見せろや。
「拓斗的にはどんなのがいいの? 名前」
と、瀬奈から来た。
俺は腕を組み、うんうん唸ったふりをしながら、だいぶ前から考えていた最高にバカでエモいネーミング案を出す。
「"学校一の問題児だと罵られていたが実は天才バンドマンだった件〜理不尽に怒鳴られたり周りから近寄り難いと避けられていた俺がバンドを結成したら大活躍で人気者!?今更俺に媚びてきてももう遅い!!〜"、どうよ?」
「なろうか」
東から一瞬でツッコミが飛んできた。
今日の東は低テンションの極みで、さっきからずっと爪を整えている。いつものハツラツメガネくんはどうしたんだよ!ツッコミに疲れてやさぐれてんのか?
「それはマジで無理かな。ダサすぎて唯一性がありそうだけど、本当にセンスなくて売れなそう」
「じゃあ"Laugh Tale"は?」
「ワンピースじゃん!パクリに逃げるなぁ!」
瀬奈が怒った。えーいいじゃん
そして黙って腕を組んでいた仙洞が静かに呟く。
「……うむ」
お前、肯定なのか否定なのかぐらい言ってくれ。つーか筆談とかしろってなったろテメェ。
「じゃあ!じゃあね!僕が用意してきた案も見てよ!」
と、待ってましたとばかりに瀬奈がキラキラの手帳をバンと開いて、アイドル候補生ばりの声量で読み上げ始めた。
「"シュガーナイト"!"エターナルチョコレート"! "闇に踊るラズベリー"!"シンデレラ症候群"!」
「うーん流石瀬奈!可愛い!ヴィレヴァンでネーミング講座でも受けたんか?」
今日の瀬奈はとても元気があってよろしい。だがネーミングは女を搾取してるホストみたいな野郎のバンドっぽくなりそうだから却下!
「あー俺は"シンデレラ症候群"はギリ有りだと思ったけど、全員男だし」
「え?僕、男扱い……なの……?」
「君の性自認は普通に男でしょ。何言ってんの今更」
どうやら東は俺たちの扱いに慣れてきたらしい。ツッコミが冴えてる。
「そういう東先輩は何かあるの?」
「ん、俺かい?そうだな……"ブルードラゴニックヘルフレイムジャッジメント"とかどう?」
「……」
︎︎東、お前……患ってたのか。いきなりのゲキダサネーミングに全員驚愕してる。大瀬良ですら目ェかっぴらいてあんぐりしてんぞ。
「とりあえず却下」
「うん、そうだね」
「ヤバすぎる」
「うむ」
「変かな?良いと思ったんだけど」
︎︎こいつは真性だ!病院いけ。治るかしらんけど。
「俺も案がある」
「お、珍しい。大瀬良が自ら案を出すなんてな」
「"混沌フールズ"」
「真顔で出す案か?」
︎︎いったいコイツが何を思ってこの案を出したかしらんけど絶対ロクな理由じゃない。
「仙洞は何かあるか?」
「うーむ」
︎︎仙洞に尋ねるとどっから取り出したのか分からんホワイトボードに書き始める。が、悩んでいるのか書いては消してを繰り返してなかなか発表されない。
︎︎全員無言のまま5分経過。大瀬良、スマホいじんな。長いのは分かるけど。
︎︎そしてついに仙洞が自分の意見に納得が出来たのか大きく頷く。これは期待ができそうだ。そうしてホワイトボードを見ると、
『すまない、思い浮かばなかった』
「ざけんなぁ!!この5分返せゴリラァ!!」
「すごい色々考えてたのに」
「仙洞のアイデアはちょっと気になったのに」
「まぁまぁ落ち着けってお前ら」
『すまない。俺にはセンスがなかった。誠に陳謝』
「ほんとに謝意あんのかコイツ……」
︎︎筆談とはいえ仙洞と初めてマトモに会話したが、思ったよりふざけてんなコイツ。なんだよ『誠に陳謝』って。ぶっ飛ばすぞ。
︎︎まぁそんなことより、
「ってかお前らさあ!」
思わず机ドンしてしまう俺氏。
「そんなふざけてやっていいの!?もっとこう、真剣な会議するヤツじゃねぇの!?名前ってそのバンドの魂じゃねえの!?もっと厨二を出せ!全開でイケ!!頭フル回転させて廃人になるくらいのやつ出せよ!!」
「……鳴海が一番最初に大喜利始めたせいだけど」
大瀬良の呟きは完全にスルーして、俺は椅子を蹴って立ち上がる。
すると、部室が妙に静かになる。
舞った埃が日光でキラキラ踊るその中で、俺はポツリと言った。
「俺さ。たぶん、こういうのすぐ終わると思ってるんだよ」
全員が、少しだけこっちを見る。
「飽きるかも。壊れるかも。文化祭なんて出られないかもしれない……けどさ。だからこそ今、燃やすしかねーじゃん」
沈黙。
「吸殻みたいなもんでいい。吸い殻の灰。火がついてたことすら忘れられるくらい。でも、俺らは、そこに確かに火をつけたってこと。それを名前にしようぜ」
「……」
「“Cigarette Ash”。どうよ?」
まず、瀬奈がパァッと顔を明るくする。
「それ、超イイ!すごいオシャレ!なんかエモいし!さっき拓斗が言ってたことにも繋がるし!略して“シガアシュ”……はちょっと語呂悪いかな?まぁいいや!はい採用ーー!!」
瀬奈さん、あんた今ちょっとディスっただろ。
「うん。しっくりくる。俺も文句ない」
大瀬良が意外にもすんなり受け入れた。
「いいと思う。意味も音もいい。……最初から大喜利じゃなくてこれを言えば良かったのに」
東が苦笑する。
「うむ」
仙洞は満足げな表情で頷く。
俺は笑って、ガッと手を挙げる。
「よし!じゃあ、決まりだな。俺たちの名前は——」
俺の声に全員の視線が集中する。
「Cigarette Ashだ!吸い殻だが何だ!?焼き尽くすぞコラァ!!」
「いぇーい!」
「名前負けしないようにしないと」
「俺も気合いを入れ直そう」
「うむ!」
︎︎メンバーの意思が一つになる。俺たちはここから本当の意味で5人でスタートする。
「"Cigarette Ash"結成記念の集合写真撮ろうよ!」
「おーいいぞ」
「はいじゃあ皆集まって!」
ガチャ。
スマホのシャッター音が響いた。
「はいっ、記念撮影完了♡ インスタに載せときまーす!」
判断が早い。
「オレはSNSに顔を載せるの苦手なんだけどな」
「じゃあ東先輩はここでプレッシャーをひとつ越えよう!まぁもう載せたし、逃げるのは無理なんだけど」
「強ぇ」
「かわいいは正義なの!つまり僕が正義!褒めて、ねえ褒めて?」
そんなアホみたいなやりとりをしながら、俺らは笑った。
吸殻でも、灰でも、燃えカスでもいい。
それでも俺たちは——
確かにここで、火を灯した。
鳴海
吸殻の語りは咄嗟に思い浮かんだのが顧問の佐伯の喫煙だったから。
案外スタイリッシュなネーミングに自画自賛してる。
早川
大喜利が始まったことが分かっていたが出した案は全部ガチだった。
鳴海の案をとても気に入った。
大瀬良
メンバーも周辺もカオスだしバカばっかりだから自身の案ほど的を得たものはないと思っている。
鳴海が出した案は素直に認めた。
東
厨二全開で周りからドン引きされた。
ツッコミ役が板についてきたが割とグッタリしている。
仙洞
筆談とはいえ初のまともなセリフだった。
本人は至ってマジメである。
こっからが本当のスタートということで、過去15話と完全に文体を変えてみた。文体は違うけど過去話を書き直したりはしないです。
どっちの方がいいとかあったら意見お願いします。