ウチのバンドはお騒がせ者   作:にわかバソドマソ

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挑戦はノリと勢いが大事
そうだ!バンドを作ろう!


 ︎︎俺の名前は鳴海拓斗(なるみたくと)。物足りない日常に刺激を求めるOLが如く、日々の退屈に自らスパイスをトッピングしていくことが趣味の普通の高校1年生。

 

 ︎︎今いる場所は旧校舎、軽音部の旧部室。軽音部は昔は盛んに活動していたらしいが、今はもうない。鍵は古いタイプで簡単に開くから普通に入れる。セキュリティが甘いね。

 ︎︎ここは俺がギターの練習とかする時によく使う。あとはタコパとか。

 

 ︎︎まず窓を全部あける。冷たい風が入って、埃が光に混ざってキラキラ舞っている。うーん、これがエモさ。

 

 ︎︎そんで今日はクラスメイトとセッションをする日。高校入学したばかりですぐにバイトができる訳もなく、金が無いからライブハウスやらスタジオではやらない。いずれはやることになるのだろうが。

 

 ︎︎今日参加するクラスメイトの内の一人は既に機材の準備を黙々としている男、大瀬良貴一(おおせらきいち)。普段は物静かで冷静だが、ギターを持つと豹変するタイプのイケメン(俺には劣る)。イメージはユニスクのギタリスト。

 ︎︎そんでもう一人いるはずなんだが10分待っても来ねぇ。と、噂をすれば——

 

「ぉぉぉおおお待たせぇええええー!!!」

「うるせぇ」

「……遅い」

 

 ︎︎今入ってきた、このやかましいのは早川瀬奈(はやかわせな)。肩に付くくらいの髪で、スカートをひらめかせて登場してきた美少女。だが、なんと正体は男。中身も男。学校から女子の制服を着る許可も取ってない。

 ︎︎つーかなんでクラス一緒なのにコイツだけ遅れんだよ。

 

「さっさとやんぞー」

「曲は何にするの?」

「エルレの『風の日』」

「いいねぇー!!」

「早くやろ」

 

 ︎︎チャチャッと選曲を済ませて各々準備をする。あ?エルレを知らねぇ?神バンドだから是非聴いてくれ。『Red Hot』とかオススメ。

 ︎︎ケーブルを跨いで、立ち位置を決める。左足に重心。ピックを人差し指で弾いて、一回だけ回す。

 

 ︎︎瀬奈がベースを肩に回す。今日は機嫌が良さそうだから途中でどっかに行くことも無さそうだ。以前、セッション中に瀬奈自身が1音ズラしてしまった時に、自分にブチ切れてどこかへ走り去ったことがあった。2日後くらいにきりたんぽを土産に帰ってきた。

 ︎︎……よくよく考えてみるとコイツ、2日で秋田まで行って帰ってきたのか?ヤバ。

 

 ︎︎大瀬良はピックを持ち替え、弦を軽く撫でた。コイツは機嫌なんざ伺う必要もない。演奏が始まればクソほどハイテンションで暴れ回る。飛んだり跳ねたり転がったり回ったりする。過去、コイツが飛び跳ねた時に上がった足が俺の横腹を捉えたことは忘れない。なお、本人はテンションが上がりすぎて記憶にない。ふざけんな。

 

 ︎︎俺が大きく息を吸う。空気が引き締まる。

 

「ほないこかー。はい、わーん、つー、わんつーさんしっ!」

 

 ︎︎3人同時のイントロスタート。音が揃わなきゃやり直し。今回は無問題。風に舞う埃とカーテンだけが観客の寂しさを俺たちの熱量で一気に吹き飛ばす。

 

『こんな顔を見せるのは ほんとは好きじゃないけど

僕だっていつも ピエロみたいに 笑えるわけじゃないから』

 

 ︎︎うーん。なかなかいい感じに入れた。自分たちで沸かした熱量に演奏が走りそうになる。この熱を声に変えろ。

 

『雨の日には濡れて 晴れた日には乾いて

寒い日には震えてるのは当たり前だろ

次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる

そんなもんさ』

 

 ︎︎サビで一気に上がる感覚が気持ちええんじゃあ! 言葉を世界に投げろ! 音で学校を揺らせ! 後で怒られるかもしらんけど今はこの世界で狂っていたい。

 

 ︎︎瀬奈は腰をフリフリ小躍りさせてノっている。あ〜可愛い〜。クラスで"傾国"と呼ばれているだけある。コイツが男じゃなかったら惚れてた。

 ︎︎大瀬良は暴れてる。ギター引きながらコーラスを入れながらグルグル回ってる……っておい!今ヘッドが俺の頬に掠ったんですけど!

 

『It’s OK

Go cry Go smile

It’s something good to do to live as you want

I’m on your side

Your life is all yours

So don’t let other people force you to be good

Be kind to yourself』

 

 ︎︎英語の歌詞だってスラスラ出てくる。英語の歌詞を歌うためだけに英語を勉強してきたといっても過言。ここでその成果を発揮する。

 ︎︎浮きそうな足を地面に張り付けろ。ラスサビの熱気に飛ばされるな。

 

『雨の日には濡れて 晴れた日には乾いて 寒い日には震えてるのは当たり前だろ

次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる だから

雪の日には凍えて 雷には怯えて 月の日には辺りがよく見えたりもしてて

次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる そんなもんさ』

 

 ︎︎ほんとにいい曲。俺が全部考えたって言いたいくらい。いや俺に創作の才能ないけど。

 

『僕らはそんなもんさ』

 

 ︎︎アウトロも完璧に弾け。ラスサビの余韻に甘えんな。

 

 ︎︎完奏。

 

 ︎︎あー楽しかった。

 ︎︎……欲を言えばドラムとかの足りない音を埋められる人材が欲しいけど。音源じゃ味気ないし。

 

「あぁ……最っ高だ」

「めっちゃ凶悪な顔になってるよ、拓斗」

「怖く見えるのは仕様じゃ、メスガキ」

「メスじゃないし!」

「さっさと次いこ」

「お前今更冷静ぶってんじゃねーよ。暴れすぎてヘッドが掠ったわ」

「直撃じゃないなら問題ない。いいから次いくよ」

「次はなんのきょ「おまえらぁあああ!!!」…げ」

 

 ︎︎突然扉を開け、でかい声を放った刈り上げゴリラは生徒指導の真壁。俺たちは幾度となくコイツの拳を食らってきた。

 

「今回で何度目だ! ここは立ち入り禁止だと何度言えば分かる! お前らだけだぞ! 入学して一月も経たないうちにここまで怒られてんの!」

(エクスクラメーション)が多いわ、ゴリラ野郎」

「僕たちの演奏聴こえた? どうだった?」

「俺はそんなに怒られたことない」

「黙れぇえええ!!! 鳴海! 早川! お前らは目上の人には敬語を使え! 大瀬良! 回数が問題じゃないんだよ! 旧校舎に! 立ち入るなぁあああ!!!」

 

「そのうち頭の血管いくんじゃね?」

「せんせー、もー少し落ち着いてー」

「うるさいのも来たしさっさと帰ろう」

 

 ︎︎真壁の中の何かがキレる音がした。三人揃って愛ある拳()を受け、無事解放された。

 

「殴んなくてもいーじゃん別に!」

「まぁそう言うな。殴られるだけで旧部室使い放題と考えてみろよ」

「痛いのは普通にイヤ!」

「……軽音部を作って部室をもらえば?」

 

 ︎︎ふむ。

 

「それは“アリ”だ」

「いいじゃんそれー! 珍しく良いこと言うね大瀬良!」

「それギリ悪口」

 

 ︎︎今まで全く思い浮かばなかったな。確かに部活を俺たちで作っちまった方が怒られないし、旧校舎まで行く必要もない。

 

「よっしゃ、ほな作ってくかー、軽音部」

 

 ︎︎俺の方を見た瀬奈と大瀬良がキョトンとした後、ふっと笑った。

 

「拓斗ー、また顔が凶悪だよー? チャージル・サイフォドン?」

「真月零」

「ぶちのめすぞ貴様ら。絶妙に古い例えしやがって」




出てきた楽曲
風の日/ELLEGARDEN
Red Hot/ELLEGARDEN

出てきたアーティスト
UNISON SQUARE GARDEN

鳴海 拓斗
主人公。思い立ったが吉日がモットーの自由人。
幼い頃に観たロックバンドのボーカルに憧れ、いつか共演することを目指している。

早川 瀬奈
主人公の幼馴染。男の娘。
そこらの女子より可愛いと自負している。
鳴海がギターを弾くからという理由でベースをしている。

大瀬良 貴一
主人公のクラスメイト。顔の良いクール系。
ギター技術は鳴海を上回っている。
鳴海と早川をヤバい奴らだと思っているが、自分も生徒指導から目をつけられている自覚はない。

真壁
生徒指導の教師。
鳴海たちが入学してから怒る数が明らかに増えているため、他の新入生からは体罰教師だと恐れられている。


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