ウチのバンドはお騒がせ者   作:にわかバソドマソ

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続・高梨の乱

 うちのクラスでは定期的に大事件が起きる。

 

 羽鳥が"爆弾魔(ボマー)"と呼ばれるようになった『化学実験室爆破事件』。

 クラスの担任である水城が志水ちゃんとのバストの差を目の当たりにして泣き出した『胸囲の侵略者事件』。

 佐久間が他校に彼女がいると判明し、嫉妬に駆られた倉科を筆頭とした非モテどもが起こした『佐久間(リア充)火刑パーティー未遂事件』。

 

 などなど例を挙げればキリがない。

 

 え、お前も毎日の様に色々やってるだろだって?……黙れこz

 

 水城がひとりでに泣き出したのは例外としても、俺たちのクラスだけが朝波高校に入学してから約三ヶ月で数々の問題を引き起こしているため、校内では"犯罪者予備軍矯正施設"やら"朝波のスラム街"やらと色々言われている。

 

 そんなやりたい放題な我らが一年C組だが、一つだけタブーが存在する。

 

 それは、学級委員長である高梨を絶対に怒らせてはいけないということである。

 

 一年C組の事件を話題にすれば、必ず挙がってくる『高梨の乱』。その名で分かる通り、高梨が主犯として引き起こした事件である。

 経緯としては、病欠した教師の代わりに授業をしに来た他学年の教師がめちゃくちゃ嫌味な奴で、ソイツが高梨の地雷をガッツリ踏んだことから事件が起きてしまったのである。

 後に、件の教師はその事件のショックで性格が反転し、今では"菩薩先生"と呼ばれ親しまれているらしい。

 

 高梨は、朝6時に家凸されて叩き起されようが、服をひん剥かれようが、まず怒ることはない。

 そんな高梨を怒らせるような奴をクラスメイトが許すはずもなく、ことは起きてしまった。

 

 まぁ、俺は嬉々としてそれに参戦して事を大きくしたから高梨と並ぶ主犯格とか言われてんだけどな!

 

 さて、なぜ今こんな話をしたと思う?……そりゃ勿論、『続・高梨の乱』が発生しそうだからです。

 

「舐め腐ったあの〇〇〇(ピー)野郎に目にモン見せてやんぞ!!」

 

『うぉぉぉおおお!!!』

 

「みんなやる気がスゴいね!」

「これ定期的なイベントになりそうだな」

「ソシャゲ?」

 

 俺、瀬奈、大瀬良の軽音部の3人は、今回は傍観者として事を見守るようにしている。

 そこに騒いでいた倉科が寄ってきて、

 

「あれ、早川と大瀬良はともかく、お前は参加しないのか?鳴海」

「いや、こんな楽しいイベント本来なら前線張って参加するんだけどな」

「参加すればいいじゃねぇか。なにかあんのか?」

「この間の部活謹慎が解けてから一ヶ月経つまでになにかやらかしたら、水城と結婚させられる」

「は?」

 

 そう、以前謹慎中にやらかしたら婚姻届を書かせると脅してきた水城だが、謹慎が解ける直前に、

 

「鳴海くん、この謹慎が終わったあと一ヶ月は大人しくしててくれる?その間、ちょっと私忙しくなりそうなんだよね。私のお願い聞けるよね?」

 

 と、自分の名前を書いた婚姻届を机の上に出された。自分の半分しか生きてないガキをマジで伴侶にする気かよ、と戦々恐々とした。

 今後同じような脅しはしないと確約をとってから了承した。何度も被るとネタ的に面白くないからな。

 

 というわけで、今回のシーズンイベントには参加できない。

 

「お、おうそうか。お前も大変だな……」

「情緒不安定泣き虫貧乳アラサー女教師と結婚はちょっとな……」

「は、早川と大瀬良も同じような感じなのか?」

「んーん、僕たちはなにも課されてないよ」

「やった責任が鳴海に全部いくケドね」

「そりゃお前らも無理かー。今回は厳しい戦いになりそうだな」

 

 やる気満々で草。

 

 今回、高梨の地雷を踏んだ相手は三年のバスケ部の主将をしている奴らしい。名前知らんし仮称『A先輩』とする。

 昨日の昼休み中、高梨たちが校庭でドッジボールをしているときに、突如A先輩が乱入してきて何かイチャモンをつけられたらしい。そこから高梨とA先輩とのレスバが巻き起こり、負けたA先輩が去り際に高梨の地雷を踏んだのが事の発端である。

 ……小学生かな?全体的に。

 

「その先輩もご愁傷さまだな」

「高梨くんに喧嘩を売った相手がどうなるかなんて分かってるのにね」

「相手は年下だからってタカくくってるんじゃない?」

「俺はその現場にいたが、レスバに負けた悔しさについ言っちまったって感じだったな」

 

 後輩が校庭でドッジボールやってるとこに乱入して、レスバ負けて逃げるとか、地雷踏んでなくともとんでもねぇな。18歳のすることか?

 

「お前らァ!準備は出来ているか!これは戦争だ!あの〇〇〇(ピー)〇〇〇(ピー)〇〇(ピー)して〇〇〇(ピー)してやんぞォ!」

 

『うぉぉぉおおおおおお!!!』

 

 もうピーの効果音しか聞こえねぇよ。銀魂かよ。

 

 でもコレ止めとかないと、あとで水城が怖いなぁ。「なんで止めなかったの?」とか婚姻届片手に迫られそう。

 

「面倒だが止めるかぁ……」

「どうやってアレ止めるの?前回は僕たちも参加したとはいえ、教師総出でも止められなかったのに」

「桐生の絵は?それか志水」

「あれはある程度の感性がないと無理だし、志水ちゃんというか女子は全員アホらしくて帰った」

 

 桐生の絵や志水ちゃんの存在は普通の奴には効果的だが、俺たちのクラスに限ってはそれも微妙。

 となると、俺の手札を一つ切るしかない。

 

 あーこれはまだ時期的に使いたくなかったんだけどなぁ。ま、しゃーなしか。

 

俺は先導する高梨の前に立ち塞がった。

 

「……鳴海、お前が俺の邪魔をするとはな」

「許せ高梨、こっちにも事情があるんだ」

「二度は言わないぞ鳴海、そこをどいてくれ」

「二度は言わないぞ高梨、今回は諦めてくれ」

 

「「……」」

 

 俺と高梨の一触即発の雰囲気に野郎どもが固唾を呑んで見守る。

 

 先に動いたのは俺だった。

 

「倉科!小6のときに好きだった女子の誕プレに何を血迷ったのかハイニーソミニスカナースのコスプレ衣装を渡す!その子は倉科のことが好きだったのにその一件で好感度がマイナスになり、女子たちから裏で"救急患者"と呼ばれるようになる!」

 

「な、なにを急に」

 

「ぐぅうああああああ!!!」

 

「く、倉科っ!」

 

「佐久間!他校にいる彼女とまだ付き合う前、デート中にその子に放った衝撃の一言!『君の瞳に恋しちゃったんだ(キメ顔)』!そのセリフを受けた彼女から2ヶ月の間キモすぎて距離を置かれた!」

 

「グハァッ!!!」

 

「ま、まさか……」

 

 これでクラスの核になりやすい倉科、佐久間は殺した。

 二人の黒歴史暴露に今回のイベント参加者の顔が引き攣る。高梨も俺がなにをしようとしているか察したようだ。

 

「中原!中学のとき席替えで学年一可愛い女子がお前の隣になったときに興奮のあまり〇〇(ピー)!さらに家に帰ってからその子と自分の恋愛小説を書きネットに投稿したところあまりの気色悪さに袋叩きにあい母親に慰めてもらう!」

 

「グフゥッ!!!」

 

「や、やめろ!」

 

「高梨、俺はお前が引くまで絶対に止めない!」

 

 この情報たちは俺VSクラスメイトになったとき用のとっておきだった。各々の家族やSNSのフォロワー、当時の友人たちと仲良くなって片っ端から聞き出したまさしく兵器である。

 

「まだまだいくぜぇ!!佐藤!田中!山田!小林!」

 

「やめろォオオオオオオ!!!」

 

 


 

 

「……これは酷い」

「鳴海に着いててよかった」

 

 周囲は死体の山と化していた。

 うーんスッキリ!ここまで大人しくしていて溜まったフラストレーションが一気に解放された気がする。

 

「クソッ!すまない、皆……」

「分かったか高梨、俺は本気だぜ?」

 

 高梨は悔しそうな顔をする。それもそのはず、共に戦うはずだった仲間が全員黒歴史を暴露されて死んだんだ。

 しかしまだ高梨の眼は諦めていなかった。

 

「……だが俺は!ここで止まるワケには行かないんだ!」

「ほう……」

「……俺は、俺は!どうしても奴が許せないんだ!アイツだけは必ず俺が葬ると決めたんだ!」

「まだ進むのか、高梨」

「ああ!ここで散っていった皆の無念と共に、俺は進むぞ!鳴海ィ!!」

 

 ちなみに『高梨の乱』の起爆トリガーとなる高梨の地雷だが、"高梨の顔がパッとしない"と言われることである。微妙な顔、芋顔でも良し。

 四月の終わりに起きた大事件、今回の件はともに高梨が自分の顔をバカにされたと認識したから起きたのである。

 

 クラスメイトがバカにされたとか、大事なものが傷ついたとかでは全くないのである。

 

 皆の予想は当たったかな?

 

「そこをどけぇ!なぁあるぅみぃいいい!!!」

「フッ、流石は俺と同格と言われた男だ」

 

 ここまで高梨が漢見せたんだ。俺も腹括らなきゃな。

 

「じゃ、暴露トーク2週目いくでぇ〜」

 

『絶対止めろ!?』

 

 俺の発言を聞き死体から復活した野郎どもが速攻高梨を押さえつけた。

 

「くっ、離せっ!俺は…まだ……!」

 

「ここまでだ、高梨。今回は諦めろ。俺の大人しくしましょう月間に事を起こそうとしたことが間違いだったんだよ」

 

 そう言うと、高梨は諦めたようで項垂れた。

 

「一件落着、だな」

「終始酷かったよ?」

「流石に高梨以外が可哀想だと思った」

 

 勝てばよかろうなのだァァァァッ!!

 

 と、その時俺の肩に手が置かれた。

 

「鳴海くん?大人しくしててねって、言ったヨネ?」

 

 振り向くとそこにはガンギマリおめめの水城がいた。

 どうやら今回、俺的には大人しくしていたつもりだったが、水城的にはアウトだったようだ。

 瀬奈はいつの間にそこに居たのかと驚いた顔をしているし、心霊系に弱い大瀬良は気絶した。

 

「約束したよね?書く?結婚する?」

 

 そして婚姻届を俺の顔に押し付けられた。

 

 俺は全力で教室の窓から飛び降りた。

 

 

 ───勝者、なし。




鳴海
水城が普通の教師だったら、今回の件はしっかり参加していた。
なお、一年C組は四階にあるものとする。


早川・大瀬良
鳴海の為に大人しくしていたのに、結局水城が降臨するなら今回の件に参加しておけば良かったと若干思っている。
クラスメイトの黒歴史にドン引きした。

高梨
『続・高梨の乱』を引き起こそうとした、視点が違えばパッと見主人公な奴。
普段は全く怒らないが、微妙顔、芋顔、パッとしない顔などと言われると有り得ないくらいキレる。
鳴海を仲間にしなかったのが敗因。

倉科・佐久間・中原
黒歴史を暴露されて一度死んだが、二週目だけは阻止すべく復活した。

桐生・羽鳥
二人もこの場にいたが、黒歴史と言えるものがないため、免除された。
もしあったとしても桐生は必ずやり返すし、羽鳥には全く効かなかった。

その他クラスの野郎ども
だいたい倉科たちと一緒。

クラスの女子たち
高梨のブチ切れ案件がしょうもないため、普通に帰った。

水城
顔の良い鳴海ならイけるため、割と本気であった。
四階から飛び降りるほど嫌だったのかと、鳴海の去った教室で泣いた。


初期から温めていた設定をやっと出せた。
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