悪魔と契約しただけなのに(仮)〜とある転移者の公安生活〜 作:マクロソラックス-03(旧っっt)
それでは、始まり始まり〜!
野調板から転げ落ちる色鉛筆、拾おうとした拍子にポーチから溢れるスマホ、体のバランスと共に崩れる崖の斜面。崖を転がりながらズルズルと滑り落ちていく身体。目の前のチラチラしたカラフルな光景はぶちまけられた色鉛筆なのだろうか、それとも……
全身に走った激痛で目を覚ますと、堀谷コウイチは土砂に半分埋まっていた。抜け出そうと体を動かすが腕も脚もピクリとも動かない。自分は死んだのか、半身不随になったのか、それとも単なる痛みで動けないのか。ふと、自分が落ちた崖の上を見る。だが…
誰もいない!!
本当に引率教員も学友たちも誰もいなかった。見えないどころか声や気配すらないのだ!
「んおおおおおーい!藤本先生!宮田先輩!下田ぁ!小春!助けてくれよぉ!俺は…ゴホッゴホッ!」
コウイチは試しに叫んでみたが誰かが助けに来る様子も返事をする様子も見られない。悪戯に痛めた身体を悪化させただけだった。そもそも今更気づいたのだが、あたり一帯から何の音も聞こえない。鳥どころか虫1匹も鳴いていない。それに、誰かに見られているような……
目を覚ましてから随分と時間が経った。空も赤く染まり始めている。だが、コウイチはいまだ土砂の中だった。この数時間のうちにコウイチにも分かったことがいくつかある。一つ目は、少なくとも首と右腕だけ動かせること。二つ目は自分が滑落地点よりもかなり遠くに流されたことだ。要するに…
もう助からないゾ♡
ということだ。コウイチの腹が「ギュ〜」と鳴る。朝ごはんを食べて以降何も口にしていない。リュックの中に弁当があるが、当のリュックは土砂の中。リュックを取ろうにも1番近くにある左腕はデカい石に押しつぶされて動かない。
「仮に生還しても左腕は切断だな。」
そう、コウイチが思わず呟いた時だった。突然、宙に浮かんだドアが現れて開いた。何かが落ちてきた。一瞬、某ネコ型ロボットが助けに来たのかと期待した。だが、現れたのはぼんやり光るヒトガタだった。
「あ、あんたなのか、その…さっきから俺をずっとみてたのは。(唐突)」
「••••••」
コウイチが謎のヒトガタに問いかけると、それは黙って頷いた。
「だったら、俺の命を助けてくれ。ついでに人里まで連れてってくれると助かる。もちろんタダでとは言わん。欲しいもん持っている範囲で何でもやるからさ。な、頼むよ。」
「••••••」
コウイチは得体の知れない存在に図々しく助命を頼み込む。彼は小さい頃から精神の図太さで有名だった。
ふわ〜ん•••
ヒトガタは頷くとコウイチの頭に手を翳してシン•ウルトラマンのザラブのようにゆっくりと回転し始めた。
「キミ、面白いね。契約してあげる。対価はキミのリュックに入っている弁当。とても美味しそうな匂いがする。」
コウイチの周りを回転するのをやめたヒトガタは、少女のような声でそう言うと、コウイチの額に手を当てた。そしてコウイチの意識は再び闇に沈んだ……
ーキミの頭の中を見させてもらったよ。ー
ー私たちがいるこの世界って、あのチェンソーが主人公の漫画の世界なんだね。ー
ーあんなヤツを主人公にするなんて良い趣味してるよー
ーところで、キミは力が欲しい?ー
ーこの世界はキミが思っているよりも簡単に命が奪われる世界ー
ーでも、私はあなたが死ぬことを望んでいないー
ーだってキミが面白いからー
ーまあ、違う世界からきた人間に興味があるっていうのもあるけどねー
ーだから契約しよう。私の力をキミに使わせてあげる。ー
ー前金としてキミは潰れた左手と〇〇を差し出すー
ーその代わりにキミの脊髄に埋め込んだ私の肉片を通して私の力の一部を使わせてあげるー
ーだけど、力を使うたびに私の肉片はキミの血液と体力を消費するから1日の使用回数に制限があるねー
ーもしも、私の残りの力が使いたかったら〇〇〇〇を差し出して欲しいー
ーこんな感じの契約でいいかな?うん?同意したってことでいいんだよね?ー
ーそれじゃあ契約成立。今後ともよろしくね、コウイチくんー
ーあ、そうだ。私の名前を教えていなかったね。
私の名前は『水の悪魔』。一応『超越者』をやらせてもらっているよー
全身を包む温もりでコウイチが目を覚ますとあたりは真っ暗だった。どうやらお湯の玉に包まれてどこかに運んでもらっているらしい。しっかり契約が履行されていて何よりだ。そういえば、コウイチは夢の中でヒトガタと何か追加で契約したような気がする。しかし『悪魔』も『超越者』もどこかで聞いたことあるような気がするけどパッと思い出せない。そんなことを考えているうちにお湯の塊が方向転換を始めた。上下感覚がわからなくないが、おそらく地上に向かっているのだろう。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ•••!ドッppパァぁん!
どうやら地表に到達したらしい。周囲が揺れた後、前から光が差し込んできたかと思うと空高く打ち上げられる。コウイチを包んだ水の塊は地面に落ちて2回バウンドすると、彼を解放して消滅した。地面に転がったコウイチは起き上がって辺りを見回す。潰れた左手は無くなっていたが治療されて傷口は閉じている。そして下半身はしっかり動く。リュックの中身もヒトガタに食べられた弁当以外みんな無事。現在地はどこかの河川敷、遠くに八王子市役所が見えるから多分多摩川。実家の近くまで帰って来れた。
「くぅぅぅぅ!やったぜぇあ!」
コウイチは思わず叫びながら飛び跳ねる。一時は山の草花の肥やしになるを覚悟していたのに生還することができた。その上、自分がよく知っている地域まで運んでもらえた。本当にヒトガタ様様だ…なんて考えいたが冷や水を浴びせられたかのように急に思考が冴えて不安が首をもたげてきた。
「やべえよ、親と学校にどう説明したらいいんだ!?」
よくよく考えたら自分の身にかなり取り返しのつかないことが起こっているし、誤魔化しようがないのだ!授業中に遭難した挙句、腕を失った状態で帰省しただなんて言えるわけがない。その上、記憶がすごく朧げだが、よく分からないナニカと更なる契約をして何か重い代償を支払ってしまったような気がする。いや、よく分からない契約よりも大学と親が怖い!
そんな時だった。
「おい、待てぃ!動くなぁ!両手を上げてゆっくり膝をつけぃ!」
急に後ろから冷たいものを頭に押し付けられる。その正体を察したコウイチはゆっくり両手を上げて膝をつく。その途端、背後から腕を捻りあげられて取り押さえられる。
「こちら、対魔特異一課。違法な悪魔契約者を発見。14時50分、現時刻を待って公務執行妨害で逮捕。」
「あのー、多分人違いじゃないですか?つーか、悪魔って何です?」
「「あ”あ”ん?」」
自分を取り押さえる男と、トランシーバーで話す黒いスーツの男に抗議するも、綺麗にハモったドスの効いた声で黙らせられる。親の顔より見たわけでもないが、すっごく既視感のある黒いスーツと聞き覚えのある対魔課と悪魔という言葉。まさか••••••!
「隊長〜!岸辺隊長ぉぉ!おきてくださいよ!死なないでぇ〜!こんなの最強のデビルハンターがしていい死に方じゃありませんよぉ!」
「「「?!」」」
男の野太い慟哭が聞こえる方を振り向くと黒いコートを着た男が倒れていた。コウイチを包んでいた水の塊に跳ね飛ばされたのか、そのコートはびしょ濡れで、ズボンの尻が下のパンツごと抉り取られていた。呼ばれた名前にまさかと思い、恐る恐るその顔を見る。口もとの大きな縫い目、表情筋が死んだ顔面、光の宿らない見開かれた目。その男はコウイチが元の世界でよく読んでいた漫画の登場人物、最強のデビルハンター岸辺だった。
どうやら俺は最強のデビルハンターの尻を掘って倒してしまったらしい。
そう思いながら、コウイチは本日三度目の失神をした。
こうやって書いたら読みやすい、とかあれば教えてください。次から反映させます。
しかし、水の悪魔を根源的恐怖の悪魔として扱って良かったんですかね?
第5話〜第7話あたりのイノシシの悪魔戦を修正したいんだけどなんか良い案ある?
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ある(感想欄に記入願います。)
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ない