悪魔と契約しただけなのに(仮)〜とある転移者の公安生活〜 作:マクロソラックス-03(旧っっt)
気がつくとマキマは公安の薄暗い収容施設の廊下を歩いていた。どうしてここにいるかはわからない。ただ、その廊下がいつもより長く、延々と続いていることは確かだった。
「そうだ、コウイチに謝らなきゃ。私は取り返しのつかないことを……」
思い出すや否や、マキマの歩調は早くなっていく。傷つけてしまった、愛しい人に一刻も早く会うために…
「ア、ギギギ…ギギギギ……」
「コウイチ?!」
いきなり背後から呻き声が聞こえて振り返るが誰もいない。いや、薄っすら明かりが漏れているドアがあった。それも見覚えのある…
コンコンコンッ…!
「おとう…武藤長官、失礼します。そちらに堀谷コウイチはいらっしゃいますか?」
返事がない。そして…
「マキマちゃん、開けてはダメだ……」
マキマとの合同訓練が始まって2ヶ月半。未だに岸辺先生を時間内に倒すことはできてないが、交代でやって来た野山先輩と三浦元副隊長(特異三課の隊長に昇進したらしい)に一発入れられるようになってきた。これはマキマとまともなコミュニケーションが取れるようになって連携が成立するようになったのが大きいと思う。
「イケそうか?」
「うん」
マキマに身体の調子を尋ねると、冷静な声で返事が返ってくる。うん、多分大丈夫そうだ。(マキマはラーメンが絡まない限り感情がまだ薄いので正確なことは分からないのだが)俺たちは武器を構えて岸辺先生に向き合うと二手に分かれて飛びかかった。
2 hours later…
「爆ぜろ!」
シーン
酒で満たされているスキットルは内側から破裂するどころか微動だにしなかった。
「残念だが、俺は同じ手を何度も喰うほどボケちゃいねぇ。訓練の前に酒は飲み切っておいた。」
真顔でそう言いながら距離を詰めると岸辺は俺に向かって蹴りを放つ。見事に鳩尾に吸い込まれ、俺は何度も転がる。
「マキマぁ!俺を助けろ!」
「!(ブウウウゥゥゥン!)」
岸辺の更なる追撃が迫る中、俺はみっともなく助けを求めて喚くと同時に岸辺の真上から鎖付きブースター付き鉄球が振り下ろされる。
「ッ!(ササササッ…)」
だが、渾身の一撃も体を僅かに捻って避けられ、鉄球の下敷きになったのはネクタイの切れ端だった。うん、酒が切れて反応が半テンポ遅れてる。だが、うまく行ったのはそこまでだった。
「うわー、鉄球ガー(棒)」
マキマの支配の鎖に取り付けられていたブースター付きの鉄球が暴走を始めたらしい(棒)。マキマの支配を離れた鎖は興奮した犬のように縦横無尽に飛び跳ね、あたり一面無差別かつ無慈悲に位置エネルギーと運動エネルギーを解き放つ。
「鉄球にブースターなんざつけなきゃ良かったよ(棒)……『ズシン!』…ぬわッ!(迫真)」
今更それを作ったことを後悔するがもう遅い。あの特注で作らせた鉄球は中に灼熱の水蒸気が封入されており、マキマの僅かな合図をもとに俺が水の悪魔の力でノズルから水蒸気を噴出させて制御しているのだ。威力は申し分ないがこれ程までに実戦で扱いづらいとは…(棒)
ヒュンッ!(サクッ!)
「今回も無理だったようだな。言っただろう、何があろうと頭は常にクールでいろと。」
鉄球に追い立てられて闇雲に逃げた先は訓練場の隅っこ、塀とよく学校のグラウンドにあるような洗い場に挟まれた角であった。翻ったネクタイがナイフで壁に縫い付けられて身動きが取れず、目の前に迫り来るは岸辺先生と飛び回る鉄球。完全に絶対絶命……というのは嘘だ。
「なぁ、岸辺センセ。どうして俺がアンタのスキットルを毎回爆破していると思う?」
「?」
ブッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
不規則に暴れ回っていたはずのマキマの鉄球が突如、意識を持ったかのように一直線に洗い場に飛び込み、水道管を粉砕する。
「アンタのアル中脳みそを鈍らせるためだッ!くらえッ!半径5mのアクアマリンスプラッシュをーーッ!」
水道から噴き上がった水の粒が鋭利な刃となって飛び交い、アルコールが切れた頭で不用意に侵入した岸辺先生の服を切り刻み、素っ裸にしていく。いや、素っ裸にしかできなかった。
「お前、俺を舐めすぎだ。」
腐ってもアル中でもやっぱり先生は最強のデビルハンターだ。あの水の結界をナイフ2本で捌いて体へのダメージを全て避けたのだ。まぁ、そうくると思ったよ。
「やれ、マキマ!」
「はい!」
ずっぶぅぅぅぅッ!
何処ぞの2010年代に流行ったラグビー選手の真似をしたマキマの手によって、岸辺先生に時間内に一発ダメージを与えるという試練はようやく達成させられたのであった。
「んでー、岸辺先生。俺たちは今何処へ向かっているんで?」
「お前ら、さっきまでの訓練の目的覚えてるな?」
「「?」」
現在、俺たちは普通に中央線に乗っている。方面的に御茶ノ水とか神田だろうか。いや、東京まで行って新幹線か?そんなことを考えている俺を他所に岸辺は話を続ける。
「おい、忘れたのか。お前らを部隊にぶち込むまでに使い物になるようにするためだ。」
「部隊?何処の?」
「お前らは先々月前に新設したばかりの部隊にぶち込む。お前らが使えるかどうかの実験をするための部隊だ。」
「要するにモルモット部隊ってことね。なるほど、連邦の独立機械化混成部隊みたいなもんか〜。」
「ん?」
「あ、ブルーディステニー云々の外伝ってまだ世に出てないのか。独立機械化混成部隊ってのは…」
「未来のアニメの話なんざするな。」
そんな時だった。車両が水道橋駅のホームに滑り込んだ瞬間、けたたましい警報が鳴り響き、車両が緊急停止する。(その時にマキマが衝撃で舌を噛んでたような気がするが気のせいでは無いだろう。)
『ただいま、水道橋駅東口に悪魔が出現しました。乗客の皆様は駅係員の指示に従って非難してください。繰り返します…』
「だそうだ。行くぞ。」
俺たちは避難誘導に従わずに岸辺先生について悪魔が出現した現場に向かった。
瓦礫と駆けつけた民間デビルハンターの死体が散乱する駅前の広場に一人の坊主頭の男が足を踏み入れた。匂いに気づいた巨大な悪魔(蛭とミミズをごちゃ混ぜにしたような見た目の)はその男の姿をチラチラ見るが、新鮮な人の死肉を貪ることに再び没頭する。暫くの沈黙の後、そんな様子を見ていた坊主頭が漸く口を開いた。
「おい、AKM、お前さっき俺のことチラチラ見てただろ。」
「? イヤ、見テナイワヨ。ドウシテ見ル必要ガアルノヨ…『ダウト』…ファッ?!」
『ギルティ…』
漆黒の中で灰色の唇が呟くと同時に空が裂けて斧を持った異形が姿を現す。
『処刑!』
「へヒ?」
ザシュンッ!
斧で首を切り落とされた悪魔が暫くのたうちまわった後完全に沈黙したことを認めた坊主頭のデビルハンター、三浦は改札の影から自分のことをチラチラ見ている人物に声をかける。
「おい、岸辺隊長。どうしたんゾ?」
「久しぶりに見たが相変わらず鮮やかなもんだな、三浦。御幸はどうした?」
「アイツはいつものカフェでカレー鱈腹食ってるゾ。」
「なら今からそこに向かうとするか。連絡が着く他の三課のメンバーもそこに集めろ。お前らの新しい部下を連れてきた。」
大変お待たせしました。課題が多すぎてようやく更新です。次回は年始あたりになりそうです。
次の悪魔との戦闘が終了次第時系列は2年後の1989年に飛びます。
第5話〜第7話あたりのイノシシの悪魔戦を修正したいんだけどなんか良い案ある?
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ある(感想欄に記入願います。)
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ない