新エリー都ヤヌス区、バレエツインズ近郊のあるビルの一階に入っている探偵事務所に、とある組織の若頭が訪れていた。
目の前には黒のベストにスラックス姿の男性、この探偵事務所の所長『風雅錬』がコーヒーを啜っていた。机を挟んで向かい合う両者の間には机の上に並べられた資料がある。資料に添付された写真には頑丈そうな箱が写っている。
「話は分かりました、邪兎屋を探せ、と」
「ああ、奴等が盗んだ機密物資を回収してもらいたい」
「失礼ながら、そういった手合いは部外者より身内に任せるか治安局に依頼したほうがいいのでは?」
そう言うと男はふん、と苛立たし気に鼻を鳴らすと写真をトントンと叩きながら言う。
「
(余計なことは考えるな、か。分かりやすいなこいつ)
「承知いたしました。で、箱のサイズはどの程度ですかね」
「ざっくり1メートルぐらいの金属製だ。中身も詰まってるから結構な重さになる」
組織の男―――――フィニッチの言葉に資料の写真を取り上げてじっくり箱の外装を確認する。長方形の箱で暗い色合いに塗装されている。箱の淵辺りは持ちやすいようにか厚みを持たせてある。錬の所感としては、"四角くした棺桶"といった感じだ。
「回収後の引き渡しはどうしましょうか」
「もう一枚の写真のところに持ってこい。住所は裏に書いてある」
資料に置かれた建築物の写真を手に取って裏返してみるとボールペンのインクで住所が書かれている。自分の頭の中にある地図と照らし合わせて大体の位置に当たりをつけて内心首をひねる。自分の記憶が正しければここは――――――。
「他に確認事項はあるか。なければさっそく仕事をしてもらいたいが?」
「ん? ああでは、もう一つだけ」
「……なんだ」
「報酬の方を」
フィニッチはすさまじく機嫌の悪そうな顔をすると自分の座るソファの横に置いてあるアタッシュケースを机の上にドン、と荒々しく置いた。ちらりと確認の視線をやると開けてみろと言わんばかりに顎をくいっと振られる。
アタッシュケースのパッチン錠を外して蓋を開けてみると、中にぎっしりとディニーの札束が収納されている。その金額の大きさに顔を上げるとフィニッチはこちらの困惑顔に、こまっしゃくれた小坊主驚かせたのをお気に召したのか気分を良くした顔で口を開く。
「前金でそれを、依頼達成時にはもう1ケース分を支払おう」
「なるほど、よほどお急ぎのようだ。いいでしょう、ただちに依頼に着手いたします」
「それでいい。失敗は許さん」
「必ず」
フィニッチは必須の仕事は終わったとさっさと事務所を出ていった。それを見送った錬はソファに背中を預けてため込んでいた緊張感をため息に混ぜて吐き出した。
おもむろにアタッシュケースに納められた札束を一つ手に取ると帯を外してぱらぱらとディニー札を検め始める錬。ぼんやりと一通り見終わると机に札束を投げ出した。ばさっと机に広がるお札に不機嫌そうに睨む。
「異常な金払いのよさやらサイズ、デザインの違和感やらあったが……やーっぱり全部偽札か」
後でアイツに投げとくか、と呟きつつ偽札をアタッシュケースに戻してどけると、捜索物の資料を手に取ってどこかへと電話をかけ始める。通話画面に表示される相手の名は、『ニコ・デマラ』。
数度のコールの後、通話口に嫌そうな声で出てくる女性の声。
『……もしもし』
「もしもし、ニコか。何やらかしたんだお前」
『いきなり何よ!? 私が何かやらかすこと前提な訳!?』
「何かやっただろうからこっちに依頼が来るんだよ」
ニコ・デマラ。
そんな彼女が、明らかに反社会的組織から荷物を奪って、しかも口封じされそうになっている現状。ついでに自分も事が終われば口封じされそうな依頼を押しつけられたとあっては嫌味の一つも言いたくなる。
『……なるほどね、話は分かったわ。確かにホロウレイダーからかっぱらったなんかお高そうな箱はあるわ』
「ホロウ内でぶんどったのか」
『ええ、ちょっと仕事してたら出くわしてね。いきなり襲い掛かってきたからちょちょいっとぶっ叩いてやったら荷物ほっぽりだして逃げ出したから
「……もしかして、一回すでにタダで返せって言われて断ったりしてないだろうな」
『あら、よく分かったわね。交渉に来た偉そうな奴の横っ面、アタシのカバンでぶん殴ってやったわ』
こいつホント……と呆れながら口を開く。
「一応言っとく。金持ってきて交渉しようとしたなら基本偽札持ってきたと思え。こっちに持ってきた依頼の前金全部偽札だった」
『はぁ!? 自分とこの大切な荷物なんでしょ!? ったく、どんだけケチなのよそいつら』
「……。で、どうする。相手側は金で解決するつもりは無いらしいが」
お前が言うなよ、という忌憚のない意見を飲み下してこれからの方針を確認する。あの嫌味な若頭の依頼を遂行するつもりはさらさらないがニコの動きも確認しておきたい。
『ずーっと追われるのも面倒だしアンビーとビリーにも負担かかるだろうから、どうにか解決したいわね。ところでそっちはどうするつもり? 依頼を請けたんでしょ?』
「色々。それと仕事は請けていない。
そう言うと少しの沈黙のあと電話口の先からニコの爆笑する声が聞こえてくる。
『じゃあ提案。お互い火の粉を被った状態なんだし協力して振り払わない?』
「こっちはそっちからの延焼なんだよなぁ。まあそっちと協力するほうがまだ真っ当だし、構わない」
『オーケー、じゃあ一旦荷物はそっちに引き渡すわ。その時にプランを練りましょ』
「分かった。駐車場は開けておく」
通話を切り、立ち上がる。
事務所の壁にかけてあるヤヌス区の地図をなぞり写真の住所に合致する場所を探していく。地図をなぞって最終的にここだ、と一点を押さえる。そこに書かれている名前は新エリー都ヤヌス区自然保護公園。ホロウに侵食されていく世界でさまざまな自然を保護して公園にしよう、と建設された公園だ。建設の折には土地を供出した企業の癒着の噂が流れていた覚えがある。
「今はそこそこのエーテル機器会社だったか。ホロウレイダーのフロント企業と化してても不思議はないな」
表で通常業務、裏で傘下のホロウレイダーかギャングの支援。困ったときはギャングを使って脅しに走る。無くは無さそうな話だ。
となれば、事が終われば自分もギャングに襲わせて消される可能性がある。というより偽札で懐を痛めないようにしている時点でほぼ黒といったところか。やはり何とか現状をどうにかするべきだ。そう考えているとふと自分の手首にオレンジ色のぼんやりと光る糸が絡まっていることに気付く。
「これは、っ!!」
まずいと思った瞬間には腕が引っ張られて転倒する。咄嗟に受け身を取りながら事務所の床を転がって周囲の状況を即座に頭に入れる。
事務所の入口に黒いパーカーを羽織り、フードを被っている少女が居る。彼女のしている手甲からオレンジ色のワイヤーが伸びてこちらに巻き付いており動きを制限しようとその糸をさらに伸ばしてきていた。地面から起き上がりながら少女がどう出てもいいように体勢を整えて構える。
少女はこちらをじっと見てくるのみでこれといったアクションは仕掛けてこない。どうしたものかと考えたが、とりあえずこちらから声をかけて様子を見てみようと口を開く。
「いらっしゃいませ、どういった用事かな」
「……兄さんを」
「人探しの依頼かい? まあよくやるからやれるけど」
「兄さんを渡さないでほしい」
少女はちらりと来客用の机に置かれたままの写真に目を向ける。少女の言わんとすること、それは何となく錬は察したが、つまりはあの箱の中に人が居るのか、と推測しつつも驚く。
「あの箱の中に君のお兄さんが居る、ってことかい?」
「……うん。兄さんだけ、捕まった。連れ戻されそうになった時にピンクのお姉さんに兄さんが入ったケースを持っていかれた」
「なるほどな。ニコはお宝が入っていると思って奪ったが、実際は君のお兄さんが詰め込まれたところだったってことか」
「うん。取り返そうとしたけど、あのお姉さんあちこち逃げ回ってたから」
「だろうな」
荷物をかっぱらわれたホロウレイダーは間違いなくニコたちを追ったはずだ。そしてニコたちも当然それから逃げ続けるはず。ニコたちの移動手段は基本車でホロウ外まで荷物を搬出できたなら車に乗せて移動させたことになる。となれば目の前の少女がそれを奪い去るチャンスが無かったのは確かだ。しかし。
「君はどうやってここを突き止めたんだ? この件に関わってからニコたちに接触したのはさっきが初めてだ」
「兄さんを奪った奴等に命令してた男を見張ってた。そしたらここに来た」
「なるほどね。……君の言う事が本当かどうかは置いておいて一先ず、ニコたちが来るのを待とうか」
子供になら飲み物はココアかな、と飲料用の戸棚から缶を取り出して作り始める。ココアの素と砂糖を適当な比率で混ぜたものにホットミルクを少量いれてヘラでダマが出来ないように練っていく。完全に溶けたのを確認してまた少量ホットミルクを継ぎ足し継ぎ足し入れていく。
気が付けば甘い匂いに誘われたのか、少女はキッチンの自分の傍に立ち手元を覗き込んでいる。子供らしい興味津々な視線に苦笑しつつ出来上がったものを少女に差し出す。
「良ければどうぞ」
「……いただきます」
「熱いだろうから気を付けてね」
椅子に座ってココアをちびちびと飲み始めた少女を横目にとりあえず資料は片付けておくかと回収する。そう言えば名前を聞いていなかったなと少女を振り返る。
「聞き忘れてたけど、名前は?」
「星那。兄さんはソーマ」
「星那にソーマか。俺は風雅錬、しがない探偵事務所をやってる探偵さ」
「探偵……」
ぽつりと確かめるように呟く星那。初めて聞いたと言わんばかりの反応に錬は彼女の生まれがどういうものか気にかかるが、今は脇に置いておくべきだろう。
そこで携帯に着信が来る。画面に映る連絡先は先ほど連絡をしたばかりのニコ。一体何の用事だろうか、到着するには早すぎる気がするが、と電話に出てみると三人分の叫び声がスピーカーから響いてくる。うるさ、と一旦話した耳を当てる。
「ニコ、どうかしたのか?」
『ちょちょちょ、ビリー! 次の角を右に! バレエツインズのホロウに飛び込んで撒くわよ! GOGOGO!!』
「おい、ニコ!?」
通話先から聞こえてくる嫌な雰囲気の声に、思わず声を荒げるが真っ当な応答はなくぶつりと通話は途切れてしまう。圏外になり途切れてしまった電話口から鳴るツー、ツー、ツーという音。自分の側も通話を切りスマートフォンをしまいこむ。
「どうかしたの?」
「ニコたちが襲われたっぽくてな。幸い近所のホロウに逃げ込むらしいから探しに向かう」
そう言って外出の支度を進めると星那は慌てたようにココアを一気に飲み干し始める。
「ついてくるつもりか? 危ないから待ってなよ」
「兄さんが危険。だから私だけ安全なところで待っているつもりは無い」
「ホロウは子供が気軽に行けるほど安全なところじゃあない」
「あなたに不意打ち出来るぐらいには私は強い」
諫めようとする錬に、星那は強い言葉で食い下がる。
互いににらみ合う時間が少しだけ続いて、ため息を吐いて錬は口を開く。ニコたちに危険が迫っている以上、ここで言いあっている時間が惜しい。しゃがんで星那と視線を合わせて指を二本立てて言い含める。
「ついてくるなら、指示には従う事。命の危険がある場合は君のお兄さんを諦めてでも撤退する。この二つが守れるなら連れていこう」
「兄さんを諦めることは確約できない。けど出来るだけ努力する」
「……時間もない。急ごう」
ヘルメットを二人分持ち出して事務所を出ていく。星那は少しだけきょとんとした後に、慌てて錬の背中を追った。
事務所の下にあるガレージに下りてきた錬と星那。錬がシャッターを上げると外からの光が差し込んでくる。薄暗いシャッターが照らされてあらわになるとそこには一台のバイクが置いてある。オフロード用バイクを改造したと思しきそれは全体を白と青で塗装され、あらゆる衝撃に耐えられるよう補強が施されている。
「これに乗って向かう。ヘルメットをかぶって」
「うん」
星那がヘルメットをかぶると錬は固定具を調整して万が一にでも外れないようにする。
それが終わると彼女の体をひょいと持ち上げるとバイクの座席の後ろの方に乗せて自分もシートに跨る。クラッチを握りエンジンに火を入れ、ギアを選択。アクセルを吹かしながらクラッチを放す。ギアがかみ合い、バイクは走り出す。道路を走り抜けながら視線を近い位置にあるホロウに向ける。
「あそこにあるのがバレエツインズホロウだ。ニコは移動中に襲われて咄嗟にあそこに逃げ込んだらしい」
「お姉さんたち大丈夫かな?」
「身の危険自体は大して気にしなくていいだろう。ピンチになっても、ビリーとアンビーが本気出せばどうとでもなる。問題は例の箱の方だな。限界ギリギリまでは無いだろうが、最悪ニコが手放す可能性はある」
「兄さんが取られるってこと?」
「ああ。ニコはアレの中身を知らない、銭ゲバだからギリギリまで諦めないだろうが自分の仲間と天秤にかけることになったら間違いなく仲間を取るのは間違いない」
少なくともニコはそこだけは道を踏み外すことはないという信頼がある。
ニコたちを追っているホロウレイダーがどの程度の実力かは分からないが、少数精鋭の邪兎屋が数の暴力に晒されれば不利なのは明白。そこでニコが利益を放棄して仲間を守る選択を取る可能性は明確に否定できない。
「着いたぞ」
バレエ・ツインズホロウの外縁部、その周囲にある建築物は万が一の活性化に備えて活用はされていない。一応権利関係は残っているがよほどのことが無い限りは二度とホロウの外に出てくることはないので投げ売りされているのが現状だ。
そんなビル群の内にある棟の一つを錬はセーフハウスとして借りている。ガレージにバイクを置いてホロウの境界の前に立った錬は装備を確認する。
「一応確認するけど、浸食耐性は大丈夫か?」
「30時間以内なら」
「キャロット等のホロウ技術の運用は?」
「自作もいける」
「……優秀な子だ」
正確な年齢は分からないが、同年代の子でもここまで優秀な子はそうそう居ないだろう。
自身のキャロット――――――ホロウ内を観測し生成された地図、をディスプレイ上に表示して星那に見せる。目的地と現在地を地図上に示してその間のルートを浮かび上がらせる。
「目的地はここ。外部から車で侵入したのなら移動できるルートは限られるからそれを込みにした隠れられる場所がここだ。このキャロットは俺が持つけど、星那はもしはぐれたら近くの観測データ基地局を探してキャロットを再製作。ここを目指してくれ。エーテリアスにはくれぐれも気を付けて」
「分かった。エーテリアスも雑魚なら問題ない」
「よし……ではこれより邪兎屋救助作戦を開始する。状況開始」
二人は並んでホロウに足を踏み入れる。極彩色の空間に視界が染め上げられる。
空間が捻じ曲がるような感覚を覚えながら進み続けると、唐突に視界が通常空間に復帰する。隣をちらりと確認すると星那も問題なくホロウの外壁を通り抜けて同じ場所に到着していた。周囲をぐるりと確認すると事前に確保していたキャロット通りの入口へと移動できたようだ。
「最初は問題ないな。早速移動しよう」
「分かった。ついていく」
錬は腰から二刀を、星那は手甲を構えて進み始める。
ホロウ内部の空間は
「ん、錬」
「どうした」
「エーテリアス。雑魚ばっかだけど、そこそこ数がいる」
星那が示した先には、片腕が刃に置き替えられ、もう一方の腕が失われた人型の異形。テイルウィングと呼ばれる種だ。エーテリアスはホロウ内に満たされたエーテルによって浸食された物質が変質して産み落とされる化け物、彼らはどの個体も攻撃的かつ排他的。一度見つかれば命を奪うまで襲い掛かってくる。ここから先に行くにはあの集団は邪魔でしかない。
「進路上を塞いでいるな。回避ルートもあるにはあるが、時間がかかるしそちらにエーテリアスが居ない保証もない……仕方ない、強行突破だ。星那、戦えるか?」
「
「ならよし、行くよ」
二刀を構えた錬は物陰から飛び出すと手近に居たテイルウィングの頭部コアに不意打ちで刃を突き立てる。もう一刀で別の個体を切り伏せながら止まることなく次々と切り伏せていく。
(さて星那はどう戦う?)
テイルウィングを切り伏せながら錬はちらりと星那の方を見ると、星那は移動しながら手甲から発射したエーテルワイヤーをテイルウィングに絡みつかせて操り人形のようにして同士討ちをさせていた。力任せではなくてこの原理なども用いて数十倍に力を膨らませて、だ。
「ん!」
だが体格が負けているせいか、不意を打てなかった相手を操ることは出来ないようで、操る力を上回られると逆に体勢を崩してしまうようだ。もっとも本人はそれも織り込み済みなのか、別のワイヤーを組み合わせて一つの射出装置を作り、そこいらの瓦礫をエーテリアスにぶつけてダメージを負わせている。
(力不足は心配だけど、サポートするかしてもらうかすれば輝くな、星那は)
星那のワイヤーの檻の中にテイルウィングを蹴り込んでみれば瞬く間にテイルウィングは一塊となる。それを見計らって錬は一歩深く踏み込む。
「二刀抜剣、交点シーケンス・セヴァランス三式!」
一群となったエーテリアスに力を込めた一撃が叩きつけられる。
まとめて撃破されたエーテリアスの肉体は粒子状に砕けて空気に溶けていく。二刀を鞘に戻し、星那もエーテルワイヤーを巻き戻す。周囲に敵が来ていないことを確認して先に進めそうだと思う。
「しかし結構やるね、星那」
「今は糸しかないからぶきっちょ。やっぱり兄さんが居ないと」
「ああ、二人一組的な感じなんだ」
「うん」
ぐっぱぐっぱと手甲の調子を確かめながら星那はうなずく。元より、兄
「でも追いつくだけなら問題ないと思う。要警戒エーテリアス相手でも無ければ」
「……あー、そうだね。まあ今回は大丈夫かな」
「? 居るの、要警戒?」
「居る。ただ微妙に普通のエーテリアスとは違う挙動見せることが多いから断言は出来ないけど接敵する可能性は低く見てもいいと思う」
「分かった、じゃ放っておこう」
そんなことより兄さんだ、と言わんばかりに歩き出す星那。剣を納めてその後を追いかける錬。歩き始めた二人は。
背後でエーテリアスを吹き飛ばしながら現れた一台の車に驚いて振り向く。
「よぉっしゃあ! 空中にあった歪み見つけた時は私ラッキーと思ったけどホントにラッキーだったわ!」
「いやいやいや、さすがに無茶しすぎだってニコの親分! 歪みの出口が下向いてたら一発アウトだったって! アンビーも何とか言ってやってくれよ!」
「これが映画なら、着地した私たちの後ろでエーテリアスが大爆発を起こしてたわね」
「……いやそういう事じゃなくてよォ……」
ブレーキの甲高い音を立てて止まった車から下りてきた三人組。自信満々に胸を張る桃色の髪の女性、グロッキーそうな雰囲気で文句を言う知能機械人の男、遠い目で独特なことを言いつつ何故かハンバーガーを頬張る銀髪の少女。錬は頭が痛くなりながらため息を吐くと三人に声をかける。
「元気そうで何よりだよ、邪兎屋」
「何奴!? ……ってあれ、所長? なんでここに」
「あ、そういやアンタに電話かけてたわアタシ」
「こんにちは、所長さんと……娘さん?」
「違うわ。つーか忘れてたのかよ」
呆れて物も言えんわ、とニコをじとーっと見るとそっと顔を背けられる。
「べ、別に助けに来てって頼んだわけじゃないからお金支払う義務は発生してないわよね!?」
「じゃあこの最新版キャロットは要らんわけか」
「ごめんなさい嘘です追っかけまわされてキャロット作り損ねたから欲しいです」
へへーと頭を下げるニコに用意していた予備のキャロットを投げ渡す。すぐにそれを邪兎屋のボンプ、アミリオンに差し込みデータを反映させる。
「いやホント助かったわ。咄嗟にホロウに飛び込んだから何の準備もしてなかったのよね」
「で、ギャングかホロウレイダーかは分からんが襲ってきた奴等も突入してきてチェイスの真っ最中だったと」
「そ。で立体駐車場の屋上からジャンプすれば届きそうな位置に歪みがあったからワンチャン狙いで飛び込んで逃げてきたわけ」
「バッカじゃねえの」
どこに繋がってるかも分からない歪みに車ごと突っ込むなんて自殺行為もいいところだ。
先ほど言われていた出口が下向きならぺしゃんこになっていたところだ。
「もっと言ってやってくれよ所長。親分ったらこの子に無理させるんだぜ!?」
「いや自分で言えよビリー。自分とこの社長だろ」
「一人じゃ足りないから頼んでんの! アンビーもあの調子だしな!」
ぴっと指さされた先には星那を肩車してトリプルアクセルを決めるアンビーが居た。似たような風貌で性格も似通っているからか気が合ったらしい。いつの間にやら二人で戯れている。こちらの視線に気づいたのか動きを止めてこちらを向くと二人ともダブルピースを見せつけてくる。
「な?」
「な? じゃなくてマジで自分とこで完結させてくれ。俺は知らん」
「ねえ、一旦再会の挨拶はそんなとこにしてこれからのことを話し合わない? どっか安全なところで」
「分かってるよニコ。俺のセーフハウスに行こう、荷物は?」
「無事。後部座席に置いてあるわ」
「あの箱角が刺さっていてーんだよなぁ……」
そりゃあのサイズが置かれたら体格のいいビリーは押しつぶされるだろうな。
内心は言葉にせず、全員は一度その場を離れ、ホロウから離脱することとなった。
風雅錬
所属:風雅探偵事務所
性別:男
誕生日:9月17日
身長:190㎝
使用武装:「豪迅・風雷」
属性/タイプ:エーテル/強攻
備考
風雅探偵事務所所長。依頼人の利益を最優先をモットーにして今日も行く。
元同僚
「先輩ですか? ええ、いい人です。いい人過ぎるのも欠点ですが……いつかは恩返しがしたいと思っています。彼が去ったのは、私にも原因がありますから」
P
「いろんな調べ事を頼むと十全に答えてくれるね、調べ事を頼むなら彼に頼むのが一番だ。うん? どうしたんだい、Fairy。急にへそを曲げてしまって」
前職も現職も世話になっている情報屋
「なんでそんなに失せ物探しがうまいか聞いてみたんだが、何でも昔占い師の姉妹に観察力の使い方にアドバイスを貰ったらしい。それ以来細かいことが目に付くんだと。良くも悪くもな」